児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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児童買春被害弁償事例

 これも100万円
被害弁償しないと辛いですよ。

福岡高裁H14.4.23
平成14年(う)第73号
主文
原判決を破棄する。被告人を懲役1年6月に処する。
原審における未決勾留日数中10日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人が提出した控訴趣意書記載のとおりであるから,これを引用する。論旨は,量刑不当の主張であり,要するに,被告人を懲役1年6月の実刑に処した原判決の量刑は重すぎて不当であり,本件については刑の執行を猶予するのが相当である,というのである。そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも加えて検討する。
本件は,被告人が,中学3年生の児童(当時14歳)に対し,同児が18歳未満であることを知りながら,現金3000円を対償として供与し,自己の性的好奇心を満たす目的で,児童の性器に右手指を挿入して弄ぶなどして児童の性器を触ったという児童買春の事案である。
被告人は,被害児童が小学6年生の時に同児にいたずらをしようとした件で警察の取調べを受けたことがあるにもかかわらず,同児が中学2年生の時に再会してから,同児と挨拶をしたり,話をしたりするうちに,CDなどの物品や現金を対償として供与し,あるいは,供与する約束をしては,性的好奇心を満たす目的で,同児の性器や乳房を触る行為をし,その中には性交に及んだこともあるという関係を約10か月にわたって継続した上で,本件児童買春に及んだもので,犯行の動機に酌量の余地はない。被告人は,性的行為に対する理解が必ずしも十分でない被害児童に対し,欲しがっていたCDなどの物品を予め聞き出してこれを用意したり,これがないときは現金を渡したりして,継続的に前記行為をしたもので,犯行態様も芳しくないものである上,本件が将来にわたり被害児童に悪影響を与えることも憂慮されるなど,犯行の結果も軽視できない。
本件被害を知った被害児童の両親の衝撃は大きく,厳罰を求めて,原審段階において,示談に応じなかったのも無理はない。被告人は,逮捕された当初において,本件事実を否認し,自己保身を図る供述をするなど犯行後の行状も芳しくない。以上の事情からすると,本件の犯情は悪く,被告人の刑責は重い。そうすると,被告人は被害児童側に対する慰謝の措置を取るべく努力をしたこと,被告人は,当初において否認するなどしていたが,その後本件犯行を認め,反省の態度を示していること,被告人の姉が原審公判において社会復帰後の被告人の更生に協力すると述べているこ七など,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,原判決が被告人に実刑を科したことをもって,あながち,重すぎるということはできない。
しかしながら,当審における事実取調べの結果によれば,原判決後,被害者側に示談金として100万円が支払われたことが認められ,これにより被害者側の処罰感情も幾分かは緩和されるに至ったものと推測されるところ,このような新たな事情に上記のとおりの被告人のために酌むべき事情をも併せ考慮するときは,原判決の量刑を維持し,被告人に実刑を科すのはいささか酷に過ぎると考えられ,被告人に対しては,今回に限り,社会内での自力による更生の機会を与えるのが刑政の本旨に沿うものと考えられる。その意味において,原判決の量刑は,現時点においては重すぎる結果になっていると考えられる。よって,刑訴法397条2項により原判決を破棄した上,同法400条ただし書により,当裁判所は被告事件について次のとおり判決する。