児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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児童買春被害弁償事例

 信用されない弁護人が多いので、再掲。

東京高裁H12.12.28
上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童保護等に関する法律違反事件について,平成13年2月6日東京地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官藤宗和香出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役1年に処する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
 本件控訴の趣意は,弁護人M作成名義の控訴趣意書に記載されたとおりであるから,ころを引用する。論旨は量刑不当の主張である。
 そこで検討すると,本件は,印刷会社に勤務する被告人が,数年前から女子中高生の裸体写真やビデオを購入して楽しむなどのいわゆる趣味を募らせた末,女子中高生に性的行為の提供を求める高報酬のアルバイト募集チラシを自ら作成した上,これを駅前に駐めてあった自転車の前籠に入れて広く配布し,このチラシを見て連絡してきた15歳の女子児童(中学3年生)とホテルへ赴き,客室内において,同女に現金4万円を供与して性交し,さらに,その約2ヶ月半後,ホテル客室内において,同女の紹介を受けた14歳の女子児童(中学2年生)に現金10万円を供与して性交したという児童買春2件の事案である。
 本件は,いずれも,被告人が自己の性的欲望を満足させるために行ったもので,動機に酌量の余地はない。また,本件は,被害児童らの判断能力の未熟さにつけ込んだ計画的で悪質な犯行である。特に,中学2年生の被害児童に対しては,未だ性体験のない同女の裸体や性器の写真撮影などもしているのであって,犯情は悪い。加えて,被告人は,中学3年生の被害児童に対し,犯行後も執拗に電話をかけて性交を求めていたほか,高額の報酬を約束して性体験にない女子児童の紹介を依頼しており,犯行後の情状も悪い。
 本件がもたらした被害児童らへの悪影響は大きく,保護者の苦悩も深刻であるにもかかわらず,原審段階においては,被害者側に対し何らの慰謝の措置も講じられていなかったことが認められる。
 そうすると,被告人が本件について反省の言葉を述べていること,東京少年友の会に30万円の贖罪寄付をしたこと,父親が被告人の指導監督を誓い,保釈中の被告人を善導していること,被告人にはこれまで前科前歴がないこと等,被告人のために酌むべき事情を充分考慮しても,被告人を懲役1年の実刑に処した原判決の量刑は,その宣告の時点においては,相当であったといえる。
 しかしながら,原判決後,被告人は反省の念をより一層深め,2名の被害児童及びその保護者宛に贖罪の手紙を出していること,父親が引き続き被告人の日常生活を詳細に把握して指導監督の徹底を図っていること,中学2年生の被害児童に父親に対し慰謝料として金100万円を支払って示談が成立するに至ったこと等の事情が認められ,これら原判決後の情状に前記被告人のために酌むべき事情を併せ考慮すると,原判決の前記量刑は執行猶予を付さなかった点で重きに失するに至ったものというべきである。
 そこで,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書に従い,当裁判所において更に次のとおり判決する。
 原判決が認定した罪となるべき事実に原判決が適用した法令を適用し(刑種の選択,併合罪の処理を含む。),その刑期の範囲内で被告人を懲役1年に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予することとし,主文のとおり判決する。
(原審での求刑 懲役1年2月)