児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害児童に被害弁償した事例

 これは、弁護人から問い合わせを受けたので、弁護人には戸惑いもあったが、奥村弁護士から裁判例を提供を受けた上で、被害弁償を行った事例。

阪高裁平成13.2.15
右の者に対する千葉県青少年健全育成条例違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、わいせつ図画陳列同販売、同販売目的所持被告事件について、平成一二年七月二八日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
原判決を破棄する
執行猶予

理由
本件控訴の趣意は、弁護人作成の控訴趣意書に・記載のとおりであるから、これを引用する。
論旨は、原判決の量刑不当を主張し、被告人に対しては刑の執行を猶予するのが相当である、というものである。
そこで、記録を調査して検討すると、原判決が量刑の理由の項で被告人の量刑について説示するところは相当であって、原判示第一の l、二の各千葉県青少年健全育成条例違反、第一の四、・第二のl、二の各児童買春、第一の三のわいせつ図画ないし児童ポルノの各公然陳列、第一の五の児童ポルノの製造の各犯行は、いずれもー八歳に満たない青少年ないし児童の思慮浅薄に乗じて「 自己の性欲の満足とインターネットを利用しての裏画像有料公開による利益の獲得という一石二鳥を狙った、まさに児童を食い物にした悪質な犯行であって、その情操を著しく害するものであり、とりわけ、第l の三の犯行によりインターネット上での閲覧に供された画像については、これが将来にわたって被害児量らに悪影響を及ぼす可能性のあることも否定できないこと、この点に関する被害児童らの被害感情にも厳しいものがあること、第三の一、二のわいせつ図画販売、同目的所持の各犯行も、第一の三の犯行と同様、.インターネットを利用して巧妙かつ大規模に敢行されたものであり、被告人はこれらの犯行により多額の不法な利益を得て生計を維持していたものであって、職業的犯行そのものであること、この種の児童買春、インターネットを悪用したわいせつ物等の販売や公然陳列等の事犯が増加し、これらに対する社会的非難も高まりを見せ、一般予防の観点もとりわけ重視すべき状況にあることなどの点からすると、被告人の刑事責任を軽視することはできず、原判敦の言渡時を基準とする限り、被告人を実刑に処した原判決の量刑が重過ぎて不当であるとまでは考えられない。
しかしながら、当審における事実調べの結呆によると、原判決の言渡後、被告人は      と正式に婚姻するとともに、防災設備士の資格を生かした防災設備工事の仕事に従事するようになっており、生活状況が改善されるに至っていること、妻が被告人に代わって各被害児妻らに直接会って謝罪し、うち二名は被告人に対する寛大な判決を求める旨の歎願書を作成するに至っていること、右二名の被害児童に対し、慰謝料として各金10万円を支払うとともに、財団法人法律扶助協会に金二〇万円を蹟罪寄附するに至っており、原審に.おいて行ったものと併せると、同協会に対する蹟罪寄附の額は合計金四〇万円に上っていることなどの事実が認められ、右事情に加え、被害児童の保護者をも交えた正式な示談交渉を持つことができなかった点については、本件被害の詳細を親に知られたくないという被害児童の意向に配慮したものであって、本件事案の内容に鑑みるとやむを得ないとみられる面のあることも否定できないこと、被告人にはこれまで前科がなかったこと、本件で逮捕、勾留されて三か月余り身柄を拘束されるなど、既にある程度事実上の制裁を受けているともいえる状況にあること、前記のとおり、被告人の生活状況が改善される方向にあり、夫婦共々同じ過ちを繰返さないよう互いに注意し助け合うことが期待できる上、母親も原審公判廷に証人として出廷し、被告人に対する指導監督方を誓約するに至っていること、その他、被告人の年齢、反省の状況等、所論指摘の諸事情をも併せて、再度被告人の量刑について検討すると、現時点においては、被告人に対して実刑を科すのは些か酷といえる状況に立ち至ったというべきであり、今回に限り、その刑の執行を猶予し、
社会内で自力更生の途を歩む機会を与えるのが相当であると考えられるところである。

 そこで、刑事訴訟法三九七条二項により原判決中被告人に関する部分を破棄し、同法四〇〇条ただし書により更に判決することとし、原判決が認定した罪となるべき事実 (ただし、第一の一、二に各 「一八歳に満たない青少年であることを知りながら、」 とある次に 「専ら自己の性的欲望を満足させる目的で、」 を付加する。) に原判決が挙示する各法条に加え、刑の執行猶予につき刑法二五条一項を適用して、主文のとおり判決する。