児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

公然陳列の犯行場所はどこか?

 メールの場合、DLしてから読むから、受信者が読んだときには、メールサーバー上にデータがないことがあります。
 MLのサーバーにもメール本体が残らない設定もあるわけです。
 何処に存在する何を陳列したことになるのでしょう?

 大阪高裁H15.9.18の影響を受けて、頒布罪不成立。検察官は弁護人から指摘されるまで、その判例を知らなかったと見えて、論告も苦し紛れ。


名古屋地裁h16.1.22
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20040603#p2
当初訴因
第2 Y株式会社がインターネット上で提供しているメーリングリストサービスに登録されているグループのメンバーであるが,同グループの管理者で,同グループのメールアドレスに送信された電子メ匝ルの配信を承認する権限を有するBと共謀の上,メーリングリスト機能を利用して児童ポルノ等を同グループの多数のメンバーに頒布しようと企て,同15年5月8日午前6時57分ころ,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを撮影した児童ポルノであり,被告人の性器をあわせて撮影したわいせつな図画である画像データ1画像を,電子メールの添付ファイルとして,東京都ビル内に設置された上記Y株式会社が管理するサーバーコンピュータに送信して記憶・蔵置させた上,同月9日午前零時3分ころ,上記Bが,ウェブ上で同メールを閲覧してその配信を承認し,よって,同画像を,同メールの添付ファイルとして,別紙一覧表記載のとおり,受信用メールサーバー欄記載の受信用メールサーバーに配信させて,被頒布者氏名及び住居欄記載の同グループのメンバーであるCほか1名が住居に設置したパーソナルコンピュータで再生閲覧可能な状態を作出し,もって児童ポルノであり,わいせつな図画である画像データ1画像を頒布しヽたものである。

訴因変更
被告人に対する平成15年10月16日付け起訴状記載の訴因第2につき,下記のとおり,予備的に訴因並びに罪名及び罰条を追加したく請求する。

被告人は,Y株式会社がインターネット上で提供しているメーリングリストサービスに登録されているグループのメンバーであるが,同グループの管理者で,同グループのメールアドレスに送信された電子メールの配信を承認する権限を有するBと共謀の上,メーリングリスト機能を利用して児童ポルノ等を同グループの不特定多数のメンバーに閲覧させようと企て,平成15年5月8日午前6時57分ころ,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを撮影した児童ポルノであり,被告人の性器をあわせて撮影したわいせつな図画である画像データ1画像を,東京都ビル内に設置された上記Y株式会社が管理するサーバーコンピュータに送信して記憶・蔵置させた上,同月9日午前零時3分ころ,上記Bが,ウェブ上で同メールを閲覧してその配信を承認し,よって,同画像を,Cら不特定多数の者の受信用メールサーバーに配信して,同画像を同人らのパーソナルコンピュータで再生閲覧可能な状態を作出し,もって児童ポルノであり,わいせつな図画である画像データ1画像を公然と陳列したものである。

冒頭陳述
2 平成13年1月20日ころ,被告人はインターネットの掲示板上に被害児童であるA(当時 年,以下「本件被害児童」という。)の「 の  歳です。2万円でどうですか。」などという書き込みを発見し,本件被害児童にメールを送信して児童買春行為を申し込んだ。同月27日ころ,被告人は本件被害児童を被告人車両に乗せ,公訴事実第1記載の犯行を敢行した。被告人は,犯行の際,本件被害児童との性交類似行為をビデオカメラやデジタルカメラで撮影した。
3 被告人は,平成11年ころ,ヤフー株式会社がインターネット上で提供しているメーリングサポートサービスに登錬されているグループ(eグループ)中の少年のわいせつ画像を互いに交換する少年愛グループに加入し,グループ内で少年のわいせつ画像等をグループのメンバーと交換していた。なお,メーリングサポートサービスとは,グループの一人にメールを送ると,そのメールがグループに登録している全員に同じメールが届くシステムである。このほか,被告人は,「 」と称するホームページを立ち上げその中で自己の収集した少年に関するわいせつ画像を公開するなどした。
4 共犯者Bは,平成14年ころからeグループ内でメンバーと少年に関するわいせつ画像を交換するなどしていた者であるがB自身も少年に関するわいせつ画像を交換する目的で「 」と称するeグループ(以下,「本件グループ」という。)を立ち上げ,Bが同グループの管理者となって,メンバーから送信されてくるわいせつ画像をチェック(承認行為)した上,他のメンバーに配信していた。被告人は,平成15年5月ころ,本件グループに参加し,メンバーからわいせつ画像を受信するなどしていたが,自分の所有する本件被害児童のわいせつ画像を本件グループに投稿しようと考え,公訴事実第2記載の犯行を敢行した。

論告
第1 事実関係
本件各公訴事実は,当公判廷において取調べ済みの関係各証拠により,証明十分である。
なお,弁護人は,公訴事実第2について,頒布罪ではなく陳列罪で処断されるべきである旨主張するが,陳列罪で処断された事案は,行為者が管理会社のサーバーコンピューター上にホームページを開設し,同コンピューターの記憶装置にわいせつ画像のデータを記憶・蔵置させ,客がそのホームページにアクセスし,同サーバーコンピューターの記憶装置に記憶・蔵置されたわいせつ画像を自己のパソコンにダウンロードし,パソコン画像上に顕現させた事案であって,本件のごとく,わいせつ画像データを電子メールの添付ファイルとしてメールサーバーに配信し,管理者がグループメンバーに配信した事案とは異なっている。そして,本件同様に,わいせつ画像を販売する目的で,わいせつ画像データを電子メールの添付ファイルとして送信した事案につきわいせつ図画販売罪を認めた裁判例横浜地方裁判所川崎支部平成12年7月6日判決)があることに照らすと,本件も同様に頒布罪で処断すべき事案といえる。