児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

サイバー犯罪条約とわいせつ図画

 サイバー犯罪条約児童ポルノについて規定していますが、わいせつ図画については規定していない。
 わいせつ図画についての刑法改正は、サイバー犯罪条約とは関係ないって、法制審議会の会議録にも出てたと思うよ。
  法制審議会030414
  それから,要綱の第二の「わいせつ物頒布等の罪の改正」につきましては,
  直接にはサイバー犯罪条約に対応するものではございません。

 東京地裁判決のその部分は訂正してもらいたいところだ。


http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/0/06AE18CE0A3B7D2D49256E530022F513?OpenDocument
事件番号  :平成14年刑(わ)第3618号
事件名   :わいせつ図画頒布
裁判年月日 :H16. 1.13
裁判所名  :東京地方裁判所
部     :刑事第2部
 b(a) しかしながら,日本国内においても,近時,様々な性表現物が氾濫して,一般の人々にも比較的容易に入手可能な状態となり,その内容も過激さを増してきており,その傾向は,インターネットの普及によって更に強まってきていることがうかがわれるところ,このような性表現物をめぐる社会状況の変化は,それ自体,性的秩序やその基礎となる最少限度の性道徳,更には健全な性風俗の維持にも脅威を及ぼしかねないものというべきである。
 (b) こうしたインターネットの普及を受けて,いわゆるサイバー犯罪への対応のため,平成13年11月,「サイバー犯罪に関する条約」が欧州評議会で採択され,我が国もG7諸国や欧州の大多数の国と共に同条約に署名している。その後,法務大臣は,同条約の締結批准に向けた法整備のために,法制審議会に対し,ハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備に関する諮問を行い,これを受けて,法制審議会は,平成15年9月に,その要綱(骨子)の答申を行ったが,その審議の過程において,刑法175条の処罰範囲を,わいせつな電磁的記録に係る記録媒体の頒布等のほか,電気通信の送信によるわいせつな電磁的記録その他の記録の頒布等といったいわゆるサイバーポルノに拡張するための改正(同要綱(骨子)第2)については,全会一致で採択されている(ジュリスト1257号参照)。
 このようなサイバーポルノ規制の立法化に向けた動きは,我が国の法律専門家の間で,わいせつ物の頒布等を処罰する必要性のみならず,その処罰範囲をサイバーポルノにまで拡張する必要性についても,コンセンサスが得られていることを示すものである。
 (c) また,刑法175条の運用状況についてみても,露骨な性表現を内容とするビデオテープ,DVD,写真集等の頒布等については,今日においても,捜査当局による摘発が頻繁に行われ,その相当数が同条により処罰されている。すなわち,警察によるわいせつ物頒布等被疑事件の検挙人員は,昭和58年の2388人をピークに減少傾向にはあるが,平成10年が881人,平成14年も483人(このうちネットワーク利用犯罪の検挙件数は109件)を数える(各年度の犯罪白書による。)。わいせつ物頒布等の罪で有罪判決又は略式命令を受けた人員についても,ほぼ同様の傾向がみられるのであり,詳細な罪名別の統計が公表された最終年である平成10年には,有罪判決を受けた者が218人,略式命令を受けた者が311人の合計529人に及んでいる(各年度の司法統計年報2刑事編による。)。そして,このような刑法175条の運用について,一般国民から,特に不当とみられることなく,むしろ当然のこととして受け入れられていることは,公知の事実である。
 この点,捜査当局による摘発は,おびただしい数に上る性表現物の一部についてのみ行われ,同様の露骨な性表現物であっても,その相当数が摘発を免れているとうかがわれるが,これは,捜査当局の人員や捜査能力の限界に基づくものにすぎず,露骨な性表現物が事実上放任されているなどと評価すべき筋合いのものでないことはいうまでもない。