児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

わいせつDVDに出演した女優は「頒布罪の幇助」か?

 女優はわいせつ製造行為の共犯だと思います。
 昭和時代に、改正刑法草案として、「製造、運搬、輸入及び輸出は、販売等の前段階の行為として所持と同等に評価することができる」としてわいせつの製造行為を処罰しようとしたことがあるのですが、実現していません。だとすれば、それらは不可罰という解釈が可能です。
 「販売の準備行為のうちの「所持」だけが処罰されている。製造、運搬、輸入及び輸出は処罰されていない」という解釈も成り立つと思います。
 わいせつ図画の罪に当然予定されている製造・運搬等の行為について罰条がないのは、処罰しないのが刑法の趣旨だという言い方も可能です。

改正刑法草案
第二四七条(わいせつ文書の頒布等〉
1わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然展示した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2前項の行為に供する目的で、わいせつな文書、図画その他の物を製造し、所持し、運搬し、輸入し、又は輸出した者も、前項と同じである。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131201-OYT1T00222.htm
発表によると、非常勤講師は、被告(45)(わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持罪で起訴)が10月23日に逮捕された際の捜索で見つかった無修整のわいせつ動画に、頒布されることを知りながら、女優として出演し手助けした疑い。
 非常勤講師は「間違いない」と容疑を認めている

法制審議会 改正刑法草案 附 同説明書 刑法改正資料 6 法務省 1974年
第二四七条(わいせつ文書の頒布等〉
?わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然展示した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
?前項の行為に供する目的で、わいせつな文書、図画その他の物を製造し、所持し、運搬し、輸入し、又は輸出した者も、前項と同じである。
P221
第二四七条(わいせつ文書の頒布等)
本条は、わいせつな文書、図画その他の物の頒布等の罪に関する規定であり、現行法第一七五条に相当するが、「猥褻刊行物ノ流布及取引ノ禁止ノ為ノ国際条約」(昭和一一年条約第三号〉の趣旨に従い、現行法で処罰の対象となっている「頒布」、「販売」 及び「公然展示」 のほか、「業として貸与」する行為を処罰するとともに(第一項〉、これらの行為に供する目的で行われる「製造」、「運搬」、「輸入」又は「輸出」についても新たに処罰規定を設け、さらに、「所持」については、販売の目的による場合だけでなく、頒布、業としての貸与又は公然展示の目的による場合をも処罰の対象に加えることとした(第二項)。このうち、所持その他の準備行為に関する第二項については、性的表現の自由もまた表現の自由の一部として尊重すべきであり、その自由化を図ることが世界的な傾向であることからみて、現行法どおり販売目的の所持を処罰するだけで十分であるとする意見もあったが(総会修正案71)、わいせつ物の頒布等について処罰規定を残す以上は、その内容を合理的なものとする必要があること、製造、運搬、輸入及び輸出は、販売等の前段階の行為として所持と同等に評価することができるだけでなく、現行法のもとでも所持にあたる場合が大部分であること、わいせつフィルムの所持について明らかなように、販売の目的で所持したか賃貸あるいは映写の目的で所持したかによってその可罰性を区別する合理的な根拠はないことなどから、準備行為に関する処罰の範囲をいくらか広げることとされた。
なお、芸術上又は科学上の作品について、一定の条件のもとに本条の適用を除外する趣旨の特例を設けるかどうかも検討されたが、他の著作物と明確に区別することが困難な場合もあること、わいせつ概念の解釈及び正当行為に関する総則の規定(第二二条)の適用によって認められる限度で不可罰とすれば足りることなどから、格別の規定は設けないこととされた。