児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

労役場留置

 「日当5000円」なんていうと、仕事とお金がもらえるみたいです。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090616-00000179-mailo-l27
道交法違反:悪質ドライバー60人を一斉逮捕へ−−府警 /大阪
6月16日16時1分配信 毎日新聞
 府警交通指導課と各署は15日、交通違反反則金を納めず、再三の呼び出しにも応じない悪質ドライバー60人について、道路交通法違反の疑いで逮捕状を取り、16〜22日に一斉執行すると発表した。また、罰金を納めない49人についても収容状を執行、支払わなければ日当5000円の軽作業労役が科される。

 実質的には、比較的短期間の懲役ですね。強制労働であって、日当がもらえるわけではありません。
 こういう判決になって、量刑の話で、必ず一日5000円という訳でもありません。

 主   文
 被告人を罰金○万円に処する。
 その罰金を完納することができないときは,金○○円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
 訴訟費用は被告人の負担とする。

関係法条

刑法第18条(労役場留置)
罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
2 科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。
3 罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、三年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、六十日を超えることができない。
4 罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
5 罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
6 罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。

第287条(労役場及び監置場の附置等)
労役場及び監置場は、それぞれ、法務大臣が指定する刑事施設に附置する。
2 監置の裁判の執行を受ける者は、最寄りの地に監置場がないとき、又は最寄りの監置場に留置の余力がないときは、刑事施設内の特に区別した場所に留置することができる。
3 労役場及び監置場については、第五条、第六条、第十一条及び第十二条の規定を準用する。
4 刑事施設視察委員会は、刑事施設に附置された労役場及び監置場の運営に関しても、第七条第二項に規定する事務を行うものとする。この場合においては、第九条及び第十条の規定を準用する。

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
第288条(労役場留置者の処遇)
労役場に留置されている者(以下「労役場留置者」という。)の処遇については、その性質に反しない限り、前編第二章中の懲役受刑者に関する規定を準用する。
第92条(懲役受刑者の作業)
懲役受刑者(刑事施設に収容されているものに限る。以下この節において同じ。)に行わせる作業は、懲役受刑者ごとに、刑事施設の長が指定する。

盗撮で罰金、うわさになり4か月後報告…秋田県の市職員処分

 逮捕もされてないのに、横手市役所では噂になっちゃうようです。
 公務員の場合秘匿するのに、弁護士も四苦八苦です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090617-00000030-yom-soci
市総務課によると、この職員は2月、横手市内のレンタルビデオ店で、女性のスカートの中をデジタルカメラで盗撮したとして、県迷惑防止条例違反の罪で5月8日に横手簡裁で罰金5万円の略式命令を受けた。職員は、うわさが広まったことから6月上旬に上司に報告したという。

噂の発信源は、犯罪者名簿を管理している部署かもしれません。市長は自分で管理しているわけだから、みれますよね。

被害児童との示談(ゼロ和解)

 利害状況によってはこういうこともあります。
 全ての場合で示談する必要があるわけではありません。安易な示談・被害弁償は、「対償の後払い(まだ、金で解決できると思っている)」と評価される危険がありますから警戒して下さい。
 福祉犯の被害は金銭で填補できませんが、被害弁償・示談は有利な情状と評価されています。

福岡県弁護士会「テレビ、ラジオCMのその後 費用対効果はあったのか」自由と正義60号P102

「年間CM費用2360万円で、弁護士の売上は7億8000万円、負担金収入は、前年より既に2875万円余りの増額」なんだって。

5 費用対効果
当会では、センター経由で多重債務事件受任にいたったときは、報酬額の約15%を負担金として会にお支払いいただいている。過去3年間の多重債務の相談件数と負担金収入は以下のとおりである。
・・・
但し、2008年度は2月までの集計であり、以上からすれば、負担金収入は、あと1カ月を残し、前年より既に2875万円余りの増額となり、CM関連支出2360万円を優に上回っている。
ちなみに、負担金収入から推測される会員の多重債務収入は7億8000万円余りとなる。

JAPAN (Tier 2) the Ninth Annual Trafficking in Persons Report P170

児童ポルノについては、あまり言及無いですね。

http://www.state.gov/documents/organization/123357.pdf
Recommendations for Japan:
Expand proactive law enforcement efforts to investigate trafficking in commercial sex businesses, especially in rural areas and including call-girl services (“delivery health”), “enjo-kosai” (compensated dating) sites, and social networking sites; establish and implement formal victim identification procedures and train personnel who have contact with individuals arrested for prostitution, foreign trainees, or other migrants on the use of these procedures to identify a greater number of trafficking victims; ensure that victims are not punished for crimes committed as a direct result of being trafficked; increase prosecutions for labor trafficking; send periodic formal instructions to the National Police Agency and to Japanese Embassies and Consulates instructing officials to cooperate with foreign authorities in investigating Japanese nationals involved in possible child sexual exploitation; continue to increase the availability and use of translation services and psychological counselors with native language ability at shelters for victims; and inform all identified victims of the availability of free legal assistance and options for immigration relief.

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090617-00000299-yom-int
政府の対策の程度に応じ、各国を4段階に分類している。評価が最高の「1」には欧州主要国が並び、日本は上から2番目の「2」にランクされた。北朝鮮やイランは、「2監視リスト」の下で最低評価の「3」とされた。
 日本については、人身売買の犠牲者の多くが外国人女性であると指摘。仕事を求めて入国したが、渡航費用などで最高5万ドル(約500万円)の借金を背負わされ、性産業に従事させられるケースを紹介し、「ヤクザ」が売買に介入していると批判した。日本政府に法整備の強化を求めた。

被害者参加人の意見入れ求刑より重い判決…佐賀地裁

 検察官の求刑ってなんなんだということになりますね。

 児童ポルノの事件でも、検察官は営利性にのみ着目して、弁護人は被害児童の年齢・人数に着目するものだから、求刑が弁護人が適正だと思う量刑より軽いことがありました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090617-00000533-yom-soci
被害者参加制度が適用された裁判で、検察側は禁固2年を求刑したが、事故で重傷を負った佐賀県内の自営業男性(31)は「禁固3年が適当」と意見を述べていた。
 伊藤ゆう子裁判官は「重い刑を求める被害者参加人の意見は合理的」として禁固2年6月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。昨年12月に始まった被害者参加制度に基づく裁判で、検察側の求刑を上回る量刑判断となったのは異例だ。
・・・
伊藤裁判官は「被告の過失は一方的で重大。被害者男性に見るべき落ち度は認められない」と指摘。「被害者や遺族に与えた苦痛や影響の甚大さを考えると、検察官の求刑はやや軽い」とした。
 自営業男性は弁護士を通じ、「執行猶予が付いたことに納得できない気持ちは残るが、自分が参加することで刑が重くなったこと自体はよかった」とコメントした。被害者参加制度については「直接被告に疑問点をぶつけ、口頭で回答を得ることができた点は評価したい」とした。
 一方、被告側弁護士は「裁判所の判断を重く受け止め、判断に従いたい」と控訴しない意向を示した。

 自白事件だと、執行猶予に控訴する人は普通いませんね。
 でも、この調子で量刑のインフレ現象になっても困ります。

甲府・路上暴行:懲役12年を求刑 県内初、新設賠償制度申し立て−−論告 /山梨

 この被害者参加人代理人はそうではないと思いますが、簡便な方法を選択して、立証をほとんど検察官に任せて、低い認容額で確定させてしまうのもまずいですよね。今は無資力でも、将来、相続等で資力を回復する可能性がありますし。
 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090617-00000135-mailo-l19
この裁判では、被害者参加制度と同時に新設された損害賠償命令制度に基づき、遺児4人が被告に総額7200万円の損害賠償を求める申し立てを甲府地裁に行た。被告に有罪判決が言い渡されれば、刑事裁判と同じ裁判官が引き続き賠償額などを審理する。甲府地検によると、県内での制度申し立ては初めて。
 同制度は昨年12月に施行された。賠償を求める被害者が民事裁判を起こす負担を軽くすることなどが目的で、審理結果には民事裁判の判決と同じ効力がある。殺人や傷害など、故意に人を死傷させた事件などが対象で、刑事裁判の記録を基に同じ裁判官が扱うため、迅速な審理が期待できるとされる。審理は原則4回までで、長期化する場合などには民事裁判に移行する。
 遺族の弁護人は「被告に支払い能力があるとは思えないが、法的責任を明確化する意味でも命令を確定しておきたいと思い、申し立てた」と話している。

罪数で原判決を破ろう。

 刑法学会で会った高裁判事からは「児童ポルノ関係の罪数論はわからないから勘弁してくれ」と言われました。
 たくさん罪数があると、数個つないでも処断刑期に影響はありませんが、2個だけだと、確実に処断刑期に影響有りますよね。

注釈刑事訴訟法〈新版〉第六巻〔第351条〜第418条〕(立花書房・平10)p182
次に、罪数の評価を誤った場合、例えば、科刑上一罪を併合罪と評価しあるいはその逆に併合罪を科刑上一罪と評価したときはどうか。右の違法は構成要件的評価に影響を及ぼす場合とみるべきでなく、主刑を導き出す法的操作の誤りとして主文に影響を及ぼすかとうかという観点から判決への影響を検討すべきことは前述したo そうすると、この場合は(2)の1つの場合ということになる。判例も、このような考えに立ち、右の違法の結果処断刑の範囲に差を来たすかどうか、これが否定されるときは判決に影響を及ぼさないが、肯定されるときは判決に影響を及ぼすとしている。

東京高等裁判所判決平成5年8月20日 
次に、原判決の法令の適用について職権で判断するに、原判決は、被告人が本件覚せい剤、コカイン及び大麻樹脂を所持していたことをそれぞれ別個の所持と認めて併合罪として処断している。 しかし、関係証拠によると、既に認定したとおり、被告人は、原判示当日の早朝、ビニール袋入り本件大麻樹脂二袋及び本件覚せい剤一袋の在中する赤色小物入れを衣のポケットに入れ、金属製ケース入り本件大麻樹脂一個の入ったビニール手提げ袋を手に所持して、友人であるAの住居である原判示場所を訪れて、ソファーに横になり、右手提げ袋をソファー上の手の届く所に置いたままテレビを見るなどしていたことが認められ、同所でその日の午後逮捕されるまでの間のプラスチックケースに入れたビニール袋入り本件コカイン四袋を右手提げ袋に新たにしまいこんだ事実があったにしても、右のような事実的支配の関係は全体を一個のものとみて、観念的競合として一個の行為で三個の罪名に触れるものとして処断するのが相当であるというべきである。したがって、原判決は法令の適用を誤ったものであって、右の誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。 よって、刑訴法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条ただし書を適用して被告事件について更に判決する。

東京高等裁判所判決平成2年12月12日
論旨は原判決の量刑不当をいうものであるが、職権をもって検討すると、原判決には法令の解釈、適用の誤りがあり、その誤りは判決に影響を及ぼすことか明らかであるから、既にこの点において原判決は破棄を免れないものである。すなわち、原判決は、「罪となるべき事実」として、被告人が、A及びBと共謀の上、横浜市金沢区《番地略》所在の甲野荘二階一号室に居住する中国人労働者から金品を強取することを企て、平成元年六月一一日午前二時三○分ころ、同室内において、就寝中のC(当時一九歳)、D(当時二六歳)、E(当時二二歳)及びF(当時二五歳)の四名に対し、順次その腹を足蹴りするなどして起こしつつ、所携の短刀及び鉄棒を示しながら、かわるがわる「金を出せ」、「持っている金を全部出せ。」などと脅迫し、更に、被告人がCに、また、BがFにそれぞれ短刀を押しつけ、あるいはB及びAがFを鉄棒で小突くなどの暴行を加え、いずれもその犯行を抑圧した上、Cから現金三一万八○○○円及びテレホンカード二枚(時価合計二〇〇〇円相当)を、Dから現金二万円びパスポート等三点を、Eから現金一万四〇〇〇円をそれぞれ強取し、その際、右暴行によりC及びFに対し、それぞれ加療約七日間を要する右上腕部刺創の傷害を負わせた旨の事実を認定し、右事実に対する「法令の適用」として、「被告人の判示所為のうち、D、E、C及びFから金員を強収するため右各人に暴行、脅迫を加え、右C及びFに傷害を負わせた各強盗致傷の点はそれぞれ刑法六〇条、二四〇条前段に該当するところ、右は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから同法五四条一項前段、一○条により一罪として犯情の重いCに対する強盗致傷罪の刑で処断することとし」と判示している(なお、原判決は、「被告人の判示所為のうち」、「D、E、C及びFから金員を強取するため右各人に暴行、脅迫を加え、右C及びFに傷害を負わせた各強盗致傷の点」を除く、その余の所為につき、何らかの犯罪が成立するか否かという点については、明示的には何ら触れるところがない。)。しかし、本件の事実関係、特に、被告人は、共犯者であるA及びBことBと共謀の上、前記甲野荘二階一号室に起居している中国人労働者である原判示被害者らから(なお、原裁判所において取り調べた関係各証拠によれば、同室は、人材派遣を業とする乙山産業株式会社が同会社に所属する中国人労働者の寮として使用しているものであり、本件犯行当時は、同会社に所属する中国人労働者であるCが同室内の西側の部屋、すなわち玄関から入って右側の部屋に、同じくD、E及びFが同室内の東側の部屋、すなわち、玄関から入って左側の部屋に起居していたことが認められる。)各人の所持する金品を強取しようとして、同人らに対し、個々に暴行、脅迫を加えて反抗を抑圧した上、C、D及びEから各人の所持する前記各金品をそれぞれ強取し、その際、右暴行によりC及びFに対し、それぞれ原判示の傷害を負わせたという本件犯行の態様に徴すると、被告人の右所為は、負傷した被害者C及び同Fの各人ごとに強盗致傷罪が成立するほか、金品を奪取された被害者D及び同Eの各人ごとに強盗罪が成立し、以上は刑法四五条前段の併合罪として処断すべきものと解するのが相当である(なお、本件の起訴状には、「罪名・罰条」として、「強盗致傷 刑法第二四〇条前段、第六〇条」と記載されているだけであるが、「公訴事実」の欄においては、D及びE対する各強盗の事実が訴因として十分に明示されていて、被告人の防御に実質的な不利益が生ずるものと解すべき特段の事情も存しないから、被告人の本件所為に右の「刑法二四〇条前段、六○条」のほか、起訴状に記載されていない「刑法二三六条一項」を適用することも許されるものと解される。)。そうすると、これと異なり、被告人の所為については一個の強盗致傷罪だけが成立し、両者がいわゆる一所為数法の関係にあるものとして処断すべきものとした原判決は、法令の解釈、適用を誤ったものであり、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点において原判決は破棄を免れない

東京高等裁判所判決平成元年5月10日
法令適用の誤りについて被告会社に関する量刑不当の主張について判断するに先立ち、職権によって原判決の法令の適用の当否を検討するのに、原判決は、被告人両名に関する原判示第二の事実に適用した罰条として、単に建築基準法九九条一項二号、六条一項四号、被告会社につき一〇一条等を挙げている。しかし、同法九九条一項の罰条は、昭和六二年法律第六六号「建築基準法の一部を改正する法律」によって刑の変更がなされ、改正前の罰金額が「一〇万円」であったものが、右改正によって「二〇万円」に引き上げられ、同年一一月一六日から施行されると共に、同法附則四条によって、改正前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によることとされたことが明らかである。従って、改正法施行後に判決をした原裁判所が同法を適用するに当たっては、罰則の適用に関する右経過規定によって、本件については改正前の同法同条同項を適用する旨を明示しなければならなかったのに、原判決は、その点の明示をしておらず、このままでは、法令適用の原則に従い、刑が引き上げられた裁判時法を適用したものと判断せざるを得ないから、その点で原判決には法令の適用を誤った違法があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであると考えられる。 更に、原判決は、被告人両名に関する原判示第一の廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反の事実について、原判決別紙記載の番号一、二の各事実」とに同法二五条一号、一四条五項違反の罪か各別に成立するものとし、それぞれの罪について罰金刑を選択した上、併合罪として刑法四 条二項により刑の加重をしている。しかし 同法二五条一号、一四条五項違反の罪は、所定の許可を受けないで事業の範囲の変更をすることによって成立する罪であるから、例えば許可された事業の範囲に保管行為が入っていない場合に、二個の排出事業所から日時を異にして収集した廃棄物を、ある時点以降同じ場所で、同時・並行的に保管していることが事業変更に当たるという本件のようなときには、収集先や保管開始時期等は各別であっても、事業の範囲の変更はその双方につき全体として一つと考えられるから、一個の同法条違反罪が成立すると考えるのが相当である。従って、これを併合罪であるとして刑の加重をした原判決には、罪数に関し法令の適用を誤った違法かあると考えられる。そして、同罪の法定刑(一年以下の懲役又は五〇万円以下の罰金)と、被告人両名について成立に争いのない建築基準゛違反の罪の法定刑(一〇万円以下の罰金)を比較対照すると、廃棄物の処理及 清掃に関する法律二五条一号、一四条五項違反の罪の法定刑の方が重いから、重い方の罪の罪数判断を誤ることは、処断刑に影響し、一般に判決に影響を及ぼすことがないとはいえないと考えられる。もっとも、罪数判断を誤った場合であっても、処断刑である刑期の範囲や合算罰金額の範囲にそれほどの変更かなく、しかも宣告刑がその処断刑期や罰金合算額の範囲内の甚だ低い方にとどまっている場合には、その法令適用の誤りは、判決に影響を及ぼすことが明らかとはいえない場合があると考えられるが、本件の場合には、判決に影響を及ぼすべきものといわなければならない。以上に述べたところによれば、原判決は、被告会社及び被告人乙の双方について、破棄を免れない。 次に、原判決は、被告人乙に関し、原判示第一の廃棄物の処理及 清掃に関する法律違反の事実について同法二五条一号、一四条五項、刑法六〇条を、また、原判示第二の建築基準法違反の事実について同法九九条一項二号、六条一項四号をそれそれ適用し、その上でその余の法下適用をしていることか明らかである。ところで、廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、事業の範囲の変更につき知事の許可を受けるべきであった者は、産業廃棄物処理業の許可を受けていてその事業範囲の変更をしようとしていた被告会社であり、従って、同法一四条五項に違反したのは直接には同会社であるから、同条違反についてその行為者である同会社の代表者被告人乙を処罰するに当たっては、前記罰条の外、同法二九条を適用することが必要であると考えられる(最高裁判所昭和五五年一一月七日第一小法廷決定。刑集三四巻六号三八一頁参照)。同様に、建築基準法違反についてその行為者である同会社の代表者被告人乙を処罰するに当たっては、同法九九条一項二号、六条一項四号のほか、一○一条を適用することが必要であると考えられる。ところが、原判決は右各罰条を適用していないので、その点において法令の適用を誤ったものといわざるを得ず、その誤りは判決に影響することが明らかであるから、原判決は、その点で同被告人につき、破棄を免れない