児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春男に懲役7年の実刑

 関与してないんですけど、最近、これくらいのがバンバン出てるので緊張しますね。
 「など」の方が重いんですけど。
 「強姦・強制わいせつ」という性犯罪を報道上の配慮で表に出さないのであれば、「児童ポルノ・児童買春」にも福祉犯なんだから配慮して欲しいところです。

http://www.sankei.co.jp/chiho/saitama/070111/stm070111001.htm
 インターネットで女児のわいせつ画像を提供するなどして、児童買春・ポルノ禁止法違反などの罪に問われた被告(38)の判決公判が10日、さいたま地裁で開かれた。中谷雄二郎裁判長は「犯行は卑劣で悪質。被害児童に与えた影響は深刻」として懲役7年(求刑懲役8年)を言い渡した。

 強制わいせつ・強姦と製造の罪数処理くらい控訴して高裁できっちり解釈してもらえと言いたいところです。
 多分、併合罪処理されていると思いますが、東京高裁では児童淫行罪とは観念的競合なんだから、全部観念的競合にしてもらわないと理屈が合わない。

 

選挙運動

 officeのライセンス認証の途中で、運動員の弁護士が2名みえました。
 大阪弁護士会に奥村の見解なんて反映しないんですけど、選挙以外では聞きに来てくれることもないので、ちょっと言っておきました。
  21世紀なのにいつまでも廃藩置県の枠で考えるなよ
  期の若い弁護士の意見を聞かないと分裂するぞ
って。

「さきほど警察から事情聴取したいという要請があったのだが・・・」という場合

 こういう相談で年始に緊急で動きました。
 FAQなので、素人向けに単純化して説明します。

 まず、この種犯罪は原則逮捕だという覚悟を持ってください。
 当たり前ですが、出頭した時に、
① 逮捕状が出ている場合→出頭したところで逮捕
② 逮捕状が出ていない場合→出頭時点では逮捕されない。当日以降逮捕状が請求される可能性はある
ということです。
 もともと証拠の揮発性が高い上、証拠隠滅しやすい犯罪なので、被害児童や関係先からの資料(携帯の履歴とか戸籍謄本とか)によって簡単に逮捕状は出ます。罪質からしてこの種の罪を犯せば逮捕されて元々と考えてください。
 逮捕状が出ているかどうかは、弁護士が警察に問い合わせても教えてくれませんが、状況からして弁護士にもわかることがあります。
 
 とすると、弁護士を依頼する場合の依頼内容は、
① 逮捕状が出ている場合→出頭したところで逮捕→早期の釈放
② 逮捕状が出ていない場合→出頭時点では逮捕されない。当日以降逮捕状が請求される可能性はある→逮捕状請求を断念させる・在宅捜査で処理してもらう
ということになって、依頼して全く無駄になることはありません。
 しかし、実際の刑事処分の厳しさと、報道など社会的制裁の厳しさとを比較すると、逮捕されてしまうと、数日早く釈放されても、結果に大差ないことはご案内の通りです。
 
 ということをご理解いただいた上で、「警察から事情聴取要請があったのだが・・・」という場合には、逮捕状が出ているか・いつ出るのかがわからないことを前提にして、
① 逮捕状が出ている場合→出頭したところで逮捕→早期の釈放
② 逮捕状が出ていない場合→出頭時点では逮捕されない。当日以降逮捕状が請求される可能性はある→逮捕状請求を断念させる・在宅捜査で処理してもらう
の両面で弁護士を依頼することになります。
 弁護士は最悪を想定してかつ可能性を信じて活動することになります。「弁護士の予想よりも重かった」というのでは依頼者から恨まれますから、「弁護士の予想よりも軽かった」というのを目指すわけです。
 体験談ですが、呼び出しに応じず「来なければ逮捕する」との最後通告を受け、弁護士と準備をして指定の日時に警察に出頭した方が、出頭するなり弁護士の目前で通常逮捕(逮捕状の執行)されたことがありますが、準備が効を奏して当日夜や翌朝に釈放されたという経験があります。
 他方、弁護士としては、急に依頼されても有効な活動ができないかもしれませんから、相談のみを受けて受任しないという選択肢もあります。こちらの方が気楽です。

   逮捕されるんか、逮捕されへんのかはっきりさせてや
   弁護士やのにそんなこともでけへんのか!
という相談者もおられますが、それはわからないんですよ。

少女買春、対価は覚醒剤 27歳男を逮捕

 「対償」の事例としては珍しくありません。覚せい剤とか合法ドラッグとか何でもエサになって、何にでも食いついてきます。

http://www.sankei.co.jp/shakai/jiken/070111/jkn070111008.htm
容疑者は昨年12月3日ごろ、横浜市内のホテルで、都立高2年の女子高校生に覚醒剤約0・9グラムを注射し、わいせつな行為をした疑い。自分にもほぼ同量を注射した。

 被害者の考えが浅いことは法定刑に織込済ですので、量刑は重いです。



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?b=20070111-00000068-mai-soci


対償の事例
 ホテル代
 漫画本3冊
 携帯電話
 MDMA合成麻薬)1錠
 1ヶ月××万円
 70万円とシンナー
 バッグ

プロバイダ責任制限法 発信者情報開示関係ガイドライン

 名古屋地裁H19.1.10が掲示板開設行為を幇助犯とした理由付けをみると、単にこういうガイドラインを守っていても、脇の甘いプロバイダは幇助で立件できそうです。

プロバイダ責任制限法第4条に基づく発信者情報開示制度の円滑かつ適切な運用を支援する取組
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/070110_1.html

プロバイダ責任制限法 発信者情報開示関係ガイドラインhttp://www.telesa.or.jp/consortium/provider/2007/20070110.htm
http://www.telesa.or.jp/consortium/provider/pdf/20070110_provider_guideline_2.pdf

 違法情報を媒介しないように日々努力して、権利侵害の連絡があったら、しかるべき対応をしていて、初めて民事刑事の責任を逃れうるという感じですね。
 ざっと読んでみても、(法律は変わらないのだから)目新しい事項はなくて、マニュアル的に細かく・丁寧に・わかりやすく記載されているだけで、迷ったら、弁護士とか裁判所に聞けということのようです。
 これでなにか変わるでしょうか?

プロバイダ責任制限法発信者情報開示ガイドライン(案)

http://www.telesa.or.jp/consortium/provider/pdf/20070110_provider_guideline_2.pdf
発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の判断
(1) プロバイダ等は、請求書の記載に基づいて、請求者が発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有しているかについて判断することとする。
(2) 発信者情報の開示を求める理由が、①損害賠償請求権の行使のためである場合、②謝罪広告等名誉回復措置の要請のため必要である場合、③発信者への削除要請等、差止請求権の行使のため必要である場合には、通常は、請求者は発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有しているものと考えられるが、例えば差し止め請求の場合に既に権利侵害情報が削除されており、請求の必要性がなくなっていることなどもありうることから、発信者の意見も考慮した上で判断する必要がある。
 その他の理由であって、正当な理由を有しているか否かについての判断が困難な場合には、プロバイダ等は、弁護士等の専門家に相談した上、判断を行うことが望ましい。

IV 権利侵害の明白性の判断基準等
総論
発信者情報開示請求権は、匿名で発信された情報の流通により被害を受けた者の救済の観点から有益なものであるが、他方で、発信者情報は発信者のプライバシーや表現の自由、通信の秘密とも深く結びついた情報であるため、そのバランスをとることが重要である。法第4条は、このような被害者救済の必要性と、発信者の利益の調和を図る観点から、発信者情報の開示については、「権利が侵害されたことが明らか」であることを要件として定めている。

ここで、「明らか」とは、権利の侵害がなされたことが明白であるという趣旨であり、不法行為等の成立を阻却する事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことまでを意味すると解されている。

したがって、①情報の流通により権利が侵害されたこと及び②不法行為等の成立を阻却する事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことが認められる場合には、発信者情報の開示を行うことが可能となるものである。

ところで、情報の流通による権利侵害の態様としては、類型的に、①名誉毀損、プライバシー侵害、②著作権等(著作権及び著作隣接権をいう。以下同じ)侵害、③商標権侵害が考えられるところであり、本ガイドラインにおいては、発信者情報の開示が認められた裁判例等を参考に、各類型ごとに権利が侵害されたことが明らかと考えられる場合や、その判断要素等について記載するものである。本ガイドラインで取り上げていない類型の権利侵害については、当該事案に応じて、権利侵害の明白性の有無が判断されるべきことは言うまでもない。

名誉毀損、プライバシー侵害
(1) 名誉毀損
b) これらの事情等は、個別の事案の内容に応じて判断されるべきものであり、プロバイダ等において判断することが難しいものでもある。したがって、現時点において権利侵害の明白性が認められる場合についての一般的な基準を設けることは難しい。発信者に対して意見を聴取した結果、公益を図る目的がないことや書き込みに関する事実が真実でないことを、発信者が自認した場合などには、名誉毀損が明白であると判断してよい場合があるが、それ以外の場合については、以下の発信者情報の開示を認めた裁判例等を参考にして、権利侵害の明白性の判断を行い、判断に疑義がある場合においては、裁判所の判断に基づき開示を行うことを原則とする。

年齢不知(知情否認)の主張

 いま2件ほど否認しています。細かい事実関係を聞くと確かに微妙なのもありますわ。

 一般論。文献によれば、統計的に見れば、ある年齢n(n<18)になれば、各種の第二次性徴が全部発現してしまって、その年齢以上になると、n才なのか、n+1才なのか、n+2才なのか、n+3才なのかわからなくなりますよね。
   外国人ならn=○○
   日本人ならn=××
という統計がある。
 否認事件の弁護人はそういう文献を入手すべき。否認が通じるかどうかがわかります。

 これは一般論なので、番狂わせに遅発とか早発の児童が出てくると適用されませんが、だとすると、事実認定の問題としては、ある特定の児童がn才以上の時に、児童であるとの認識があったというには、犯人に具体的に年齢の知情(未必も可)あった証拠が必要となるでしょうね。捜査機関は犯人からの供述を得ようとするでしょう。
 
 個別事案は被害児童の年格好によるんですが、まさか、捜査機関がその児童の各種の第二次性徴程度を調べるわけにもいかないので、着衣の外見+一般論で処理されています。

交通死亡事故無保険・加害者無資力の場合

 自転車(無保険)の死亡事故では被害者の代理人をやって、
 過失相殺率が争点で争われた交通死亡事故の被告(加害者)代理人をやって、両方やったんですけど、なんやかんややってても、最終的に払えない場合は、訴訟やっても、経済的利益はありませんよね。真面目にやってるんですけど。
 誰と誰が事故の当事者になるかわからないので、ほんとに無資力の加害者が登場するんです。
 
 和解するにしても長長期しかできないし、判決は執行困難だし。
 そう考えると、自動車事故は比較的恵まれています。(補償が十分というわけではなありません)

正当化する動機はあるのか?

 「動機」「動機」で耳にタコができました。
 取調で「犯行動機」を聞かれます。
 弁護士も「動機」を聞きます。生来的なものだと対応変わるから。原因を除去すれば再犯危険が減るから。
 被告人も聞かれると言い訳として動機を語ります。長々と述べる人もいる。
 裁判所も「動機」を語らせておいて、「・・・という動機では如何ばかりも正当化できない・身勝手・自己中心的」と切り捨てます。
 
 中には喧嘩傷害とか動機(正当防衛的とか)によってある程度正当化される罪もあるので、犯行動機は欠かせないんですが、福祉犯はだめですよ。どういういきさつがあっても正当化されない。
 ただ、結婚目的だったとか多少真剣交際の場合は少しどうかなと思うんですけどね。
 例えば、師弟関係の児童淫行罪のように、結婚に至れば事実上処罰されませんが、途中で破綻すると実刑ですなんですよ。折衷的な量刑はできないんですかね。
 「控訴理由」としては「量刑不当」という固い感じの主張なんだけど、お願いですから、人情として、そういう事情も考慮する余地を残しておいて欲しいのですよ。