児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

検証に基づく必要な処分として携帯電話機を修理し、画像データを確認することができる

 頻出問題
 警察の見解

KOSUZO 試験に出る事例集 SA&論文試験対策 2016年
第35問
X署A警部補は、無理矢理女性を姦淫してその状況を携帯電話機で撮影した甲を、強姦罪で通常逮捕し、捜索差押許可状に基づき、犯行時に使用した携帯電話機を自宅で差し押さえた。しかし、同電話機は故障しており、保存された撮影画像をディスプレイに表示して内容を確認するには、部品交換を伴う修理を行う必要があるほか、修理を実施すればデータが消滅するおそれがあることも判明した。この場合、A髻部補は、どのような手続で画像を確認すべきか。なお、甲は、本件犯行を否認し、携帯電話機の修理にも同意していない。

以上より
検証に基づく必要な処分として甲所有の携帯電話機を修理した上、保存されている画像データを確認すべきである

KOSUZO 試験に出る事例集 SA&論文試験対策 2018年
第34問
X署A警部補は、女性にわいせつなことをし、その状況を携帯電話機で撮影した甲を、強制わいせつ罪で通常逮捕し、犯行時に使用した携帯電話機を差し押さえた。しかし、逮捕時に甲が携帯電話機を壁に投げ付けたため、携帯電話機は故障
しており、保存された撮影画像をディスプレイに表示して内容を認するには、部品交換を伴う修理を行う必要があるほか、修理を実施すればデータが消滅するおそれがあることも判明した。この場合、A警部補は、どのような手続で画像を確認することができるか。
なお、甲は、本件犯行を否認し、携帯電話機の修理にも同意していない。

検証に基づく必要な処分として携帯電話機を修理し、画像データを確認することができる

準強制性交等被告事件(無罪) 岡崎支部H31.3.26

準強制性交等被告事件(無罪) 岡崎支部H31.3.26
 westlawが一番乗りか。TKCが二番手。

 僭越ながら奥村が加筆したのを公開しています。
okumuraosaka.hatenadiary.jp

 判決批判するには、「その程度が法律上抗拒不能の状態に至っていると認められるかどうかについては,なお合理的な疑いが残る」としている点を、お手持ちの経験則とか新証拠をもって論難して下さい。
 セットで前田先生の批判も出ています。

https://www.westlawjapan.com/column-law/2019/190509/
第166号刑法178条2項の「心理的抗拒不能」の意義
名古屋地裁岡崎支部平成31年3月26日判決 準強制性交等被告事件※1~
文献番号 2019WLJCC011
日本大学大学院法務研究科 教授
前田 雅英
Ⅰ 判例のポイント
 近時の性犯罪に関する実務の流れは、「被害女性の視線」を重視する方向にあったように思われる。最高裁大法廷は、強制わいせつ罪に関し、50年ぶりに判例変更を行い、行為のわいせつ性を認識していれば、必ずしも「性欲を刺激興奮させるとか満足させるという性的意図」がなくても犯罪は成立するとした(最大判平成29年11月29日刑集71-9-467・WestlawJapan文献番号2017WLJPCA11299001)。これは、現に性的羞恥心が害され、法益侵害性が明らかな事案においては、「性的意図の存否」は重要ではないという解釈論が強まってきていたことに沿うものといってよい。
 そして、性犯罪に関する裁判例には、複数の強姦や強姦未遂行為が認定された事案に関し、大阪地判平成16年10月1日(判時1882-159・WestlawJapan文献番号2004WLJPCA10010004)が、懲役12年の求刑に対し懲役14年の刑を言い渡し、東京高判平成24年6月5日(高刑速平成24年130頁・WestlawJapan文献番号2012WLJPCA06056002)は、強姦致傷等の事案について、懲役10年の求刑に対して、懲役12年に処した原審の判断を維持した。刑事手続において、求刑を上回る刑の言い渡しは、例外的であるといってよい(さらに、さいたま地判平成22年5月19日(判例集未登載・WestlawJapan文献番号2010WLJPCA05199005)参照)
※1 本判決の詳細は、名古屋地岡崎支判平成31年3月26日WestlawJapan文献番号2019WLJPCA03266001を参照。

裁判年月日 平成31年 3月26日 
裁判所名 名古屋地裁岡崎支部 裁判区分 判決
事件番号 平29(わ)549号 ・ 平29(わ)599号
事件名 準強制性交等被告事件
文献番号 2019WLJPCA03266001
主文
 被告人は無罪。 
理由
第1 公訴事実
 本件公訴事実の要旨は,
「被告人は,同居の実子であるA(当時19歳)が,かねてから被告人による暴力や性的虐待等により被告人に抵抗できない精神状態で生活しており,抗拒不能の状態に陥っていることに乗じて,Aと性交しようと考え,平成29年8月12日午前8時頃から同日午前9時5分頃までの間に,愛知県a市所在の○○会議室において,同人と性交し,もって人の抗拒不能に乗じて性交をした(平成29年11月7日付け起訴状記載の公訴事実)」というもの及び
「被告人は,同居の実子であるA(当時19歳)が,かねてから被告人による暴力や性的虐待等により被告人に抵抗できない精神状態で生活しており,抗拒不能の状態に陥っていることに乗じて,Aと性交しようと考え,平成29年9月11日午前11時3分頃から同日午後零時51分頃までの間に,愛知県b市所在のホテル△△において,同人と性交し,もって人の抗拒不能に乗じて性交をした(平成29年10月11日付け起訴状記載の公訴事実(但し,同年11月7日付け訴因変更請求書による訴因変更後のもの))」
というものである。

《書 誌》
提供 TKC
【文献番号】 25562770
【文献種別】 判決/名古屋地方裁判所岡崎支部(第一審)
【裁判年月日】 平成31年 3月26日
【事件番号】 平成29年(わ)第549号
平成29年(わ)第599号
【事件名】 準強制性交等被告事件
【事案の概要】
【上訴等】 控訴
【裁判官】 鵜飼祐充 岩崎理子 西臨太郎
【全文容量】 約23Kバイト(A4印刷:約12枚)
【文献番号】25562770

準強制性交等被告事件
名古屋地方裁判所岡崎支部平成29年(わ)第549号,平成29年(わ)第599号
平成31年3月26日刑事部判決

       判   決

被告人 X 昭和■年■月■日生


       主   文

被告人は無罪。


       理   由

第1 公訴事実
 本件公訴事実の要旨は,「被告人は,同居の実子であるA(当時19歳)が,かねてから被告人による暴力や性的虐待等により被告人に抵抗できない精神状態で生活しており,抗拒不能の状態に陥っていることに乗じて,Aと性交しようと考え,平成29年8月12日午前8時頃から同日午前9時5分頃までの間に,愛知県a市所在の■■■■会議室において,同人と性交し,もって人の抗拒不能に乗じて性交をした(平成29年11月7日付け起訴状記載の公訴事実)」というもの及び「被告人は,同居の実子であるA(当時19歳)が,かねてから被告人による暴力や性的虐待等により被告人に抵抗できない精神状態で生活しており,抗拒不能の状態に陥っていることに乗じて,Aと性交しようと考え,平成29年9月11日午前11時3分頃から同日午後零時51分頃までの間に,愛知県b市所在のホテル■■■■において,同人と性交し,もって人の抗拒不能に乗じて性交をした(平成29年10月11日付け起訴状記載の公訴事実(但し,同年11月7日付け訴因変更請求書による訴因変更後のもの))」というものである。
第2 当事者の主張等

追記2019(令和元)年5月15日
という指摘がありましたので、消しました。

ご存知とは存じますが、弊社は、「Westlaw Japan」に収録されている判決書の全文を、弊社の許可無くインターネット等で公衆送信することは、原則として禁止をさせていただいております。(利用規約第17条)

PCSC協定の実施に関する法律で情報提供される対象について、国内法における罪名は決まってない

 「重大な犯罪を防止し,及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定」「重大な犯罪を防止し,及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律」についての相談があったので、調べてみました。
 警察庁にも問い合わせたんですが、日本法の罪名は決まってないようです。
 強制性交・強制わいせつ罪。児童ポルノ・児童買春は入るんでしょうが。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2014pdf/20140501035.pdf
具体的には、1)テロリズム又はテロリズムに関連する犯罪、2)拷問、3)殺人、傷害致死又は重過失致死、4)重大な傷害を加える意図をもって行う暴行又はそのような傷害をもたらす暴行、5)恐喝、6)贈収賄又は腐敗行為、7)横領、8)重罪に当たる盗取、9)住居侵入、10)偽証又は偽証教唆、11)人の取引又は密入国、12)児童の性的搾取又は児童ポルノに関連する犯罪、13)麻薬、マリファナその他の規制物質の不正な取引、頒布又は頒布を意図した所持、14)火器、弾薬、爆発物その他の武器の不正な取引又は火器に関連する犯罪、15)詐欺又は欺もう的行為を行う犯罪、16)税に関連する犯罪、17)犯罪収益の洗浄、18)通貨の偽造、19)コンピュータ犯罪、20)知的財産に係る犯罪又は製品の偽造若しくは違法な複製、21)身元関係事項の盗取又は情報のプライバシーの侵害、22)環境に係る犯罪、23)外国人の許可されていない入国・居住又は不適正な入国の助長、24)人の器官又は組織の不正な取引、25略取、誘拐、不法な拘束又は人質をとる行為、26)強盗、27)文化的な物品の不正な取引、28)偽造(行政官庁の文書(例えば、旅券及び旅行証明書)又は支払い手段の偽造を含む)、29)生物学的物質、科学的物質、核物質、放射性物質の不正な取引・使用又はこれらの不法な所持、30)盗取・偽造された物品又は盗取された若しくは不正な文書・支払手段の取引、31)強姦その他の重大な性的暴行、32)放火、33)航空機・船舶の不法な奪取又は公海における海賊行為、34)妨害行為、という犯罪等の 34 類型が附属書Ⅰにおいて規定されている。

[155/159] 186 - 参 - 内閣委員会 - 17号 平成26年05月27日
山本太郎君 新党と名のりながら独りぼっちの山本太郎です。新党ひとりひとり、山本太郎です。よろしくお願いします。
 重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う、コンバットする上での協力の強化に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定と、PCSC協定の実施に関する法律案について御質問いたします。
 私は、このPCSC協定、日米指紋照合、情報提供システム協定は、何かこれ、同じ臭いがするものがあったなと思うんですよね。それ思い出したんですけれども、去年大変な問題となりました、多くの国民の反対の意思を押し切って成立してしまった、現在も多くの議論がある、そして私自身これは廃止するべきだと思っております特定秘密保護法と何か似ているところがあるんじゃないかなと思いました。行政機関が市民、国民のコントロールの利かないところで、市民、国民の自由と人権を侵害する協定、法律になるんじゃないかなと心配しております。
 日本弁護士連合会、日弁連ですね、この協定と法案の問題点を大きく分けて六つ挙げられておられます。第一に、日米捜査共助条約の運用状況から見て制度新設の必要性に疑問があること、第二に、自動照会システムであるため自動照会の要件を確認する仕組みとなっておらず、照会の濫用をチェックすることができないこと、第三に、対象犯罪が広範に過ぎると考えられること、第四に、対象となる指紋情報等の範囲が広過ぎること、第五に、提供された指紋情報等が本来の利用目的以外の目的で利用される可能性があること、第六に、提供される情報が将来拡大されるおそれがあること、以上の問題点が克服、解決されない限り本協定の締結は承認されるべきではないと、本実施法案は成立させるべきではないと日本弁護士連合会の意見書には書いてあります。僕もこれを読んだときに、ああ、同じ意見だなと思いました。
 そこで、まず外務省に質問したいと思います。
 この協定、法案は、重大な犯罪(特にテロリズム)を防止し、及びこれと戦うためのものということなんですけれども、この重大な犯罪(特にテロリズム)の中に特定秘密保護法違反、含まれていますか

○政府参考人(河野章君) お答え申し上げます。
 この協定におきまして重大な犯罪というのを定義付けておるわけでございますけれども、それは二つのカテゴリーございますが、一つには、死刑、無期又は長期三年以上の拘禁刑に当たる犯罪、それと、もう一つのカテゴリーが長期三年未満一年超の拘禁刑に当たる犯罪であって附属書Ⅰに掲げる犯罪の類型に該当するものと、こういうふうに書いてあります。
 特定秘密保護法におきましては、特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処するなど、それ以外にも罰則規定はございますけれども、そういった罰則規定を置いておるものというふうに承知しております。
 このように、協定に定めます重大な犯罪の定義、長期三年以上の拘禁刑に当たる違反行為につきましては、この協定におきまして重大な犯罪に該当することになります。
 いずれにしましても、具体的な事案によりまして特定秘密保護法の違反に当たるのかどうか、またいかなる罰則が適用されることになるのかというのは、個別の事案に応じてしかるべく判断されていくことになるというふうに考えております。

山本太郎君 協定第一条、定義では、重大な犯罪とは、死刑又は無期若しくは長期一年を超える拘禁刑に処することとされている犯罪を構成する行為であってこの協定の不可分の一部を成す附属書Ⅰに規定されるもの、この附属書Ⅰには、犯罪又はこれらの犯罪の未遂、共謀、幇助、教唆若しくは予備と書いてあり、さらに、及び死刑又は無期若しくは長期三年以上の拘禁刑に処することとされている犯罪を構成するその他の行為と書いてあります。随分幅が広いなあって感じてしまうのは、これ、僕だけなんですかね。
 現在の日本の法律でこれらに該当する犯罪、幾つあるんでしょうか。法律の条文の数で答えていただけますか。

○政府参考人(河野章君) お答え申し上げます。
 この協定に規定します重大な犯罪というのは、今委員から御指摘ありました長期三年以上というのと、それから長期一年から三年ということに分かれておりますけれども、附属書Ⅰにおきまして、その長期一年から三年につきましては三十四の類型というものを掲げてございます。
 この三十四の類型という書き方になっておりますのは、それはアメリカにおける規定の仕方と日本における規定の仕方、法律の規定の仕方というのが必ずしも一致していないことから、あるいはアメリカにおきましては州と連邦においても違うと。そのような事情もあって逐一、一対一でその法律と対応させるということは極めて煩雑といいますか、非常に膨大な作業になるということもありまして、この犯罪の類型という格好で掲げたものでございます。
 この三十四の犯罪類型というのは我が国の法令における罪名と一対一に対応しているものではございません。この犯罪類型に該当する具体的な事案というのが我が国の法令においていかなる罪名に該当することになるのかというのは、それぞれの個々別々の具体的な事実関係を踏まえて個々の事案ごとに判断されることになるということになります。
 具体的な事案を離れまして、一般論として附属書Ⅰの犯罪類型が我が国においてどのような犯罪に該当するのかとか、あるいは該当する犯罪の数について包括的にお答えをすることは、申し訳ございませんが、困難でございます。

山本太郎君 条文の数は答えられないという一言で終わるような話だったと思うんですけれども、随分と丁寧に御説明ありがとうございました。
 とにかく、一年以上、三十四の犯罪の類型。一年以上というところ、三十四の類型と、そしてそれ以外にも三年以上という部分をくくりにしてざっくり切っているだけだと、その一つ一つの犯罪、どういうものに当たるのかということはまだ一度も数えたことがないんだという話ですよね。
 それでは、条文の数とその法律の条文の一覧表というのを資料請求したいんですけれども、提出していただけますか。

○委員長(水岡俊一君) 河野参事官、質問に答えてください。


○政府参考人(河野章君) 申し訳ございません。
 ただいま申し上げましたとおり、この類型として書いております犯罪につきまして、逐一該当する国内の犯罪というのは何であるかという条文を特定するというのはちょっと困難でございますので、今御指摘いただきましたその一覧表というものを作ることはちょっと困難かと思います。

山本太郎君 まあ面倒くさいということだけなんだと思うんですけれども、そうですか、残念ですね、本当にね。
 協定の附属書なんですけれども、Ⅰには三十四の犯罪類型、先ほどから言っております、というのが示されているんですけれども、日本の法律でどういう犯罪になるのかというのがよく分からないものありますよね。例えば、二番目にある拷問であったり、十九番にあるコンピューター犯罪であったり、三十四番目にある妨害行為、サボタージュ、これ日本ではそれぞれどんな犯罪に当たるのかという部分を説明していただきたいんです。手短にお願いします。

○政府参考人(河野章君) お答え申し上げます。
 全般的な前提は先ほど申し上げておりますので繰り返しませんけれども、今御指摘ありました拷問ということにつきましては、あえて一般論として申し上げれば、傷害罪、刑法で申し上げれば第二百四条、あるいは暴行罪、刑法第二百八条などが該当するのではないかというふうに思われます。それから、コンピューター犯罪につきましては、不正指令電磁的記録作成罪、これは刑法第百六十八条の二でございます。あるいは、不正指令電磁的記録取得罪、刑法第百六十八条の三などがこれに該当し得るだろうというふうに考えております。それから、妨害行為、サボタージュでございますが、これにつきましては建造物損壊罪、刑法第二百六十条、あるいは器物損壊罪、刑法第二百六十一条等に該当する可能性があるというふうに考えております。
 ただ、いずれにしましても、個別具体的な事実関係を踏まえて、個々の事案ごとに該当、何であるかというのを判断することになると考えております。

強制性交等致傷被告事件無罪(浜松支部h31.3.19)

 判決はここに載る予定です。
 証拠見ないで判決読んじゃうと納得しちゃうよね。



判例ID】 28271467
【裁判年月日等】 平成31年3月19日/静岡地方裁判所浜松支部刑事部/判決/平成30年(わ)397号
【事件名】 強制性交等致傷被告事件
【裁判結果】 無罪
【裁判官】 山田直之 横江麻里子 村島裕美
【出典】 D1-Law.com判例体系
【重要度】 -

強姦無罪(静岡地裁h31.3.28)

 児童ポルノ・児童買春法違反は単純所持
 出典はD1-Law
 
こういう目的のために単純所持が起訴されているようですね「検察官は、被告人が児童ポルノを所持していたことから、被告人が低年齢の女児に性的興味を持っており、若年の本件被害者を姦淫したことが一定程度推認でき、本件被害者の証言の信用性を裏付けていると主張する。しかしながら、そもそも、検察官は児童ポルノの所持に関する証拠を強姦事件についての証拠として請求していないから、上記主張は証拠に基づくものとはいえない上、仮に、検察官が主張するように被告人が低年齢の女児に性的興味を抱いていたとしても、そのことと実子である本件被害者を姦淫することとは性質を異にするものであるから、ただちに本件公訴事実を推認させる事情とはいえない。検察官の主張は採用できない。」

 児童ポルノ所持罪の罪となるべき事実については、1号3号に該当する具体的な事実が記載されていないから、理由不備の疑いがある

判例ID】 28271529
【裁判年月日等】 平成31年3月28日/静岡地方裁判所/刑事第1部/判決/平成30年(わ)37号/平成30年(わ)148号
【事件名】 強姦、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 伊東顕 新城博士 長谷川皓一
【出典】 D1-Law.com判例体系
【重要度】 -

静岡地方裁判所
平成30年(わ)第37号/平成30年(わ)第148号
平成31年03月28日
本籍 ●●●
住居 ●●●
●●●
●●●
●●●
 上記の者に対する強姦、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官菊池真希子、同麻生川綾、国選弁護人間光洋(主任)、同伊藤みさ子各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を罰金10万円に処する。
未決勾留日数中、その1日を金1万2500円に換算して、その罰金額に満つるまでの分をその刑に算入する。
本件公訴事実中強姦の点については、被告人は無罪。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、自己の性的好奇心を満たす目的で、平成30年1月25日、静岡県●●●静岡県●●●警察署において、児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した動画データ3点を記録した児童ポルノである携帯電話機1台を所持したものである(平成30年5月7日付け起訴状記載の公訴事実)。
(証拠の標目)
括弧内は、証拠等関係カードにおける検察官請求証拠番号を示す。
・ 被告人の公判供述
・ Aの警察官調書謄本(甲20(不同意部分を除く。)、22)
・ 実況見分調書(甲18、19、21、25(不同意部分を除く。)、26)
・ 写真撮影報告書(甲23)
・ 捜査報告書謄本(甲24)
(法令の適用)
罰条 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段、2条3項1号、3号
刑種の選択 罰金刑を選択
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の処理 刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)
(量刑の理由)
 被告人は、インターネット上のウェブサイトから児童ポルノをダウンロードし、個人的に閲覧する目的で動画データ3点を所持しており、所持していた児童ポルノの数は多くないものの、被告人の責任を軽微とまではいえない。
 一方、既に指摘した事情に加えて、被告人は、事実を認め、今後、児童ポルノの閲覧、所持をしない旨供述していること、前科、前歴がないことなど被告人にとって酌むべき事情が認められ、これらを考慮すると被告人を主文の罰金刑に処するのが相当である。
(強姦の公訴事実について)
1 強姦の公訴事実(平成30年2月14日付け起訴状記載の公訴事実。以下「本件公訴事実」という。)等
  本件公訴事実は、「被告人は、実子である別紙記載の本件被害者(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら、平成29年6月16日頃、別紙記載の被告人方において、本件被害者と性交し、もって13歳未満の女子を姦淫した。」というものである。
  弁護人は、本件公訴事実に関して、本件被害者に対する姦淫被害がなく、被告人は無罪であると主張し、被告人もこれに沿う供述をしているところ、この点についての主要な証拠は、本件被害者の証言であって、以下のとおり信用できず、結局、犯罪の証明があったとは認められない。
2 本件被害者の証言の信用性
 (1) 本件被害者は、要旨、以下のとおり証言している。
  小学校5年生の冬頃から、週3回程度の頻度で、夜に自分の部屋の布団で寝ているとき、被告人が自分の体の上に被さり、被告人のちんちんを自分の股の下の穴に入れ、体を動かすことがあった。いつも、何度も「やめて」と言って被告人の体を押したり、隣で寝ている妹の名前を呼んだりした。また、立ち上がって部屋から脱出しようとしたところ、自分の体を被告人が引っ張って連れ戻されるということもあった。「やめて」という声は小さい声ではなかったが、同じ部屋の布団で寝ていた妹が気付いた様子はなかった。その後、被告人がちんちんを抜くと自分の股の下の穴の近くに白くてぬるぬるする液体が付いていたのでトイレで拭いていた。
  最後に被告人にちんちんを入れられたのは保護所に行くちょっと前で、そのときも白いのを出していた。ぬるぬるしたからそれを拭いたが、パンツは替えないで寝た。そのときは、家の中には家族全員がいた。
 (2) 本件被害者は、姦淫されたとする際の手足の向きや位置などの体勢、その後に自分の股に白くてぬるぬるする液体がついていたのでトイレで拭いたことなど、全体として相応に具体的な内容の証言をしていると評価できる。
  しかしながら、上記のとおり、本件被害者は、約2年間にわたり週3回程度の頻度で自宅で姦淫被害に遭い、その都度「やめて」などと言って抵抗したなどと証言するところ、被告人が家族に気付かれずに長期間、多数回にわたり姦淫を繰り返すことができたとする点は以下のとおり甚だ不自然、不合理といわざるを得ない。
 (3) すなわち、被告人方では、被告人夫婦、被告人夫婦の長男である本件被害者の兄、被告人夫婦の次男である本件被害者の弟、被告人夫婦の長女である本件被害者、被告人夫婦の次女である本件被害者の妹、本件被害者の祖母の7人が生活していた。
  被告人方全体や各部屋の広さ、本件公訴事実当時(平成29年6月)の間取りや家具の配置等について、検察官は、客観的証拠に基づく具体的な立証を行っていないものの、甲3号証(平成30年1月当時の被告人方の様子に関するもの)や弁2号証(同年8月当時の被告人方の様子に関するもの)に加え本件被害者及び別紙記載の被告人妻の供述状況も考慮すると、被告人方は全体として狭小で、各部屋の配置や間取りについては、これらの証拠から認められる状況と大きな相違はなかったものと推認される。また、本件被害者及び妹は同室で、被告人方南側中央の寝室(以下「本件被害者らの寝室」という。)で就寝しており、就寝時の両者の距離は50センチメートル程度も離れていなかったと認められる。さらに、被告人夫婦、兄及び弟は、本件被害者らの寝室の東側の寝室で一緒に就寝しており(以下「被告人夫婦らの寝室」という。)、本件被害者らの寝室の西側には祖母の寝室があり、本件被害者らの寝室は被告人夫婦らの寝室と祖母の寝室の間に位置していたと認められる。
  各寝室は、石こうボードなどの板で仕切られていたが、天井付近などに隙間があり各寝室は完全に仕切られていなかった。各寝室の間には布で仕切られた出入り口が設けられていたが、扉は設置されていなかったと認められ、実際に、祖母のいびきが被告人夫婦らの寝室まで聞こえてくるなど、隣の部屋の物音がよく聞こえてくる構造であったと認められる(証人被告人妻、甲3、13、弁2。)。
  本件被害者は、上記のように、約2年間、週3回程度の頻度で家族が就寝した夜に、寝室で姦淫被害を受け続け、その際、小さくない声で何度も「やめて」と言ったり、隣で寝ている妹の名前を呼んだりしたなどと証言しており、そうであれば相応の頻度で相応の音量の物音が発生していたはずである。そして、上記のように、被告人方の各寝室は隣室に音が聞こえてくる構造で、本件被害者の寝室は被告人夫婦らの寝室と祖母の寝室の間にあったのであるから、真実、本件被害者のいうような姦淫被害があったとすれば、同じ寝室で就寝していた妹や隣の寝室にいた家族が、姦淫被害に気付くのが自然である。仮に他の家族が就寝していたとしても、家族が寝静まった状況下で本件被害者が声を出して抵抗すれば、誰かしら目を覚ますと考えるのが合理的であり、約2年もの間、週3回の頻度で姦淫があったにもかかわらず、他の家族が誰一人姦淫被害ばかりか、本件被害者の「やめて」という声にさえ気付かなかったというのは余りに不自然、不合理である。また、他の家族が姦淫被害に気付きながらあえてこれを隠していることをうかがわせる事情もない。したがって、本件被害者の証言内容は客観的な状況に照らすと余りに不合理であり、弁護人の指摘するその余の事情を考慮するまでもなく、信用することはできない。
 (4) これに対し、検察官は、被告人夫婦が日常的に性交していたにもかかわらず、他の家族がそのことに気付いていなかったのであるから、本件姦淫被害について他の家族が気付かなかった可能性が十分に考えられると主張する。しかし、被告人の妻は、夫婦の性交の際、物音や声を出さないように意識していたというのであり(証人被告人妻)、姦淫されないように必死に抵抗する際の声と同様に考えることはできず、検察官の指摘する事情は上記判断を左右するものとはいえない。
  また、検察官は、本件被害者と同室で就寝していた妹は、睡眠薬を処方されており、熟睡して本件被害時の物音や気配に気付かなかった可能性があると主張する。しかし、妹が睡眠薬の処方を受けていたとしても、2年間、毎週3回繰り返されたという姦淫被害時に毎度睡眠薬によって熟睡していたといえるか疑わしい上、検察官の指摘する事情を踏まえても他の家族が姦淫被害に気付かなかったとは考え難い。
 (5) したがって、検察官の指摘する事情を踏まえて検討しても、本件被害者の供述を信用することはできない。
3 本件被害者の証言の信用性に関する検察官のその他の主張
 (1) 検察官は、本件被害者が、児童相談所の職員であるB(以下「B」という。)に対し、当初暴行の被害を訴え、一時保護解除予定日前日に至って姦淫被害について打ち明けたことなど被害を開示するに至った経緯が自然かつ合理的であること、被害開示の際の被害者の様子が怯えた様子で毛布にくるまって顔面蒼白であるなど実際に姦淫被害を体験した者の態度として自然であること、被害開示の際に本件被害者に対して実施したPTSDスクリーニングテスト(IES-R)の結果が高い数値であり、実際に姦淫被害を体験したことと整合することを指摘し、本件被害者の供述は信用できると主張している。
  しかし、実際には姦淫被害がなかったにもかかわらず、本件被害者が姦淫被害があるかのように振る舞った可能性を否定することができない。PTSDスクリーニングテスト(IES-R)についても、同テストは、PTSDの原因となった出来事を想起した状況や頻度を直接質問するなどするものであり、本人の主観的な認識を申告させ、これを点数化して、PTSDの重症度を判定するものであることは公知のものであるところ、このようなテストの内容からすると被害を誇張して申告することで容易に高い得点を得られるものであることは明らかであって、被害を受けたことを客観的に裏付けるものとはいえない。検察官の主張は採用できない。
 (2) 検察官は、本件被害者がBに姦淫被害を打ち明けた時点ではわずか12歳であり、証言当時も14歳と若年であって、架空の姦淫被害を訴える程度の性的知識を有していないから、虚偽の供述をすることはできなかったと主張する。しかし、本件被害者の年齢に加え、同人が軽度の知的障害を有していること(証人B)を踏まえても、本件被害者が性的な情報から完全に隔離されていたとはうかがわれず、タブレット端末、知人の話や自己の経験等を通じて性的知見に関する情報を得て、架空の性被害を訴える程度の性的知識を獲得していた可能性は否定できない。この点の検察官の主張も採用できない。
  また、検察官は、暴行被害を訴えて児童相談所という安全な場所に一時保護されていた本件被害者には、わざわざ虚偽の姦淫被害を訴える動機がなかったと主張する。しかし、被告人方への帰宅を翌日に控えた本件被害者が被告人方への帰宅を免れるために虚偽の姦淫被害を訴える可能性は十分に考えられる。検察官のこの点の主張も採用できない。
 (3) さらに、検察官は、本件被害者は、姦淫被害を受けていること、その被害が金曜に行われることが多かったことなど核心部分の供述について一貫しており、本件被害者の証言は信用できると主張する。しかし、本件被害者は、Bに初めて姦淫被害を打ち明けた際、毎週金曜日に姦淫被害を受けており金曜日が来るから家に帰りたくない旨供述していたのに対し、証人尋問においては、週3回程度姦淫被害を受けていた、前は金曜日だったが、被告人に嫌だと言ったら叩かれて、その後は金曜日じゃなくなったなどと証言しており、証言内容のうちの重要な要素である被害の頻度や曜日について供述が変遷している(証人本件被害者、証人B)。検察官の主張は採用できない。
 (4) 加えて、検察官は、被告人が児童ポルノを所持していたことから、被告人が低年齢の女児に性的興味を持っており、若年の本件被害者を姦淫したことが一定程度推認でき、本件被害者の証言の信用性を裏付けていると主張する。しかしながら、そもそも、検察官は児童ポルノの所持に関する証拠を強姦事件についての証拠として請求していないから、上記主張は証拠に基づくものとはいえない上、仮に、検察官が主張するように被告人が低年齢の女児に性的興味を抱いていたとしても、そのことと実子である本件被害者を姦淫することとは性質を異にするものであるから、ただちに本件公訴事実を推認させる事情とはいえない。検察官の主張は採用できない。
 (5) その他、検察官は、本件被害者の記憶や供述に汚染が認められないこと、本件被害者の証言と被告人方にコンドームが存在しないこととに整合性があることなど様々な主張をするが、いずれも採用することはできず、本件被害者の証言の信用性に関する前記判断を左右するものとはいえない。
4 結論
  以上のとおりで、本件公訴事実を立証する唯一の直接証拠である本件被害者の証言は信用することができず、他に本件公訴事実を裏付ける適確な証拠もない。したがって、本件被害者に姦淫の被害があったとする証明があったとはいえず、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により、被告人に対し無罪の言渡しをする。
(求刑 懲役7年)
刑事第1部
 (裁判長裁判官 伊東顕 裁判官 新城博士 裁判官 長谷川皓一)

「性犯罪被害者の支援に長年携わっておられます臨床心理士の先生を講師として、被害時の被害者の心理状態やその後の心理状態等について理解を深める講演と意見交換」の執務資料

 情報公開ではなかなか出てきません。

[002/116] 198 - 参 - 予算委員会 - 14号
平成31年03月26日

○辰巳孝太郎君 最後に裁判官です。取組を教えていただけませんか。

最高裁判所長官代理者(安東章君) お答え申し上げます。
 裁判所といたしましても、性犯罪に直面した被害者の心理等の適切な理解は裁判官にとって重要と考えておりまして、これまでも性犯罪の被害者の心理に詳しい精神科医等を講師とした研修を実施しているところですが、先ほど言及のございました附帯決議の趣旨も踏まえまして、平成二十九年十月には、裁判官を対象とした司法研修所の研究会において、性犯罪被害者の支援に長年携わっておられます臨床心理士の先生を講師として、被害時の被害者の心理状態やその後の心理状態等について理解を深める講演と意見交換を行いました。
 また、研究会に参加しなかった裁判官に対してもこの研修の内容を伝えるために、こうした講演の内容や意見交換の結果等については、取りまとめました冊子を作成して、執務資料として全国の裁判所に配付しております。
 さらに、各高等裁判所におきましても、性犯罪被害者やその支援者の方などを講師としまして、被害者の心情等について理解を深めることなどを目的とした研究会を開催しておるところでございます。
 裁判所としましては、今後とも、以上のような研修などを通じまして、性犯罪に直面した被害者の心理等の適切な理解に努めてまいりたいと考えているところでございます。

○辰巳孝太郎君 研修したと言うんですけれども、参加人数は四十人なんですよ、裁判官。冊子を配ったと言いますけれども、これ、全体でいうと三人から四人に一冊しか配られていないんですね。
 私、改めて提案したいんですけど、これ全ての裁判官に届けて、研修を是非全員に受けてもらうように検討していただけませんか。

最高裁判所長官代理者(安東章君) お答え申し上げます。
 先ほども申し上げましたとおり、委員御指摘の執務資料につきましては、全国の性犯罪などの刑事事件を担当する裁判官の執務室などに備え置きまして、いつでも裁判官が参照できたり、あるいは裁判官同士で議論する際の素材としてもらうこととしております。このため、研修に参加しなかった刑事事件担当の裁判官だけでなく、今後異動などによって新たに刑事事件を担当することになる裁判官につきましても、執務資料に目を通し、これを素材として議論するなどして研修の内容等が共有されていくものと承知しておるところでございます。
 裁判所としましては、適切な研修を実施することは当然でございますが、このような研修内容の共有あるいは裁判官同士の議論を繰り返していくことによりましても専門的な知見等についての裁判官の理解を深めていきたいと、そのように考えております。

○辰巳孝太郎君 やはり起訴するにも、これが犯罪として立証されるかどうか、検察というのはやっぱり裁判官の認識がどうなのかということもあるというふうに言われていますので、是非全員に研修をしてもらえるよう提案したいと思うんです。
 内閣府は、全国に性暴力被害者救援センターを整備し、なるべく多くの被害者に相談してもらえるよう取り組んでいます。このワンストップセンターの整備状況を教えてください。

女性を加害者,男性を被害者とする性器結合の事例

 量刑が知りたいなあ

 法制審議会
刑事法(性犯罪関係)部会
第1回会議 議事録
第1 日 時 平成27年11月2日(月) 自 午前 9時15分
至 午前11時41分
第2 場 所 法務省第一会議室

資料番号15は女性が加害者,男性が被害者となった性交の事例に関する資料であります。事務当局において把握できた範囲ですが,平成26年1月から12月までの1年間に公判請求された事案で,女性を加害者,男性を被害者とする性交の事例について把握できたものが2件ございました。

議 事
○東山参事官 皆様おそろいのようでございますので,性犯罪の罰則に関する検討会の第8回会合を開会させていただきます。
・・・
資料44は,加害者を女性,被害者を男性とする,いわゆる性器結合の事例に関する資料でございます。事務当局において把握できた範囲で,女性を加害者,男性を被害者とする性器結合の事例は2件ございました。いずれも,実母が実の息子に対して性交をさせた事案でありますが,番号1は,被害者が7歳及び8歳のときの犯行であり,強制わいせつ罪で処罰されております。番号2は,参考事項欄に記載しておりますとおり,被害者が10歳の頃から継続的に繰り返されていた事案ですが,公訴事実の犯行時は被害者が17歳であり,児童福祉法違反で処罰されているものでございます。
http://www.moj.go.jp/content/001143833.pdf

被害青少年(14)が、被疑者と結婚の相談をしていたにもかかわらず「結婚なんてあり得ない。被疑者は私の体目当てで付き合っていただけ。」などと供述した事例

 親にバレちゃうと、そうなるものです。
 奥村が経験した事件でも、数件の淫行があって、警察が青少年条例違反で捜査して、略式起訴されて、罰金払えないので正式裁判になったところで、全部の淫行について強制性交の告訴が出たことがあります。
 検察官請求証拠は青少年条例違反で出来上がっていて、暴行脅迫の証拠がないので、強制性交罪であれば無罪(青少年条例違反も不成立)になるので、被告人・弁護人は強制性交への訴因変更を希望しましたが、検察官から「取下させますから」という連絡があり、検察官が被害者を説得して、告訴取下となり、青少年条例違反で罰金になりました。

研修(平31. 4, 第850号)北から南から
新任検察官奮戦記 加藤由衣検事
3被害者の本音2つ目は,青少年保護育成条例違反の事件です。
この事件は, 中年男性の被疑者が, 当時14歳の女児と性交し,青少年育成条例で罰則規定のある「青少年とのみだらな性行為」(結婚を前提としない単に欲望を満たすためのみに行う性行為)に及んだとして逮捕された事案でした。
被疑者は,女児と性交したことは認めるものの,結婚を前提に交際する中で性交したのであって,単に欲望を満たすためではない旨供述し,「みだらな」該当性を否認していました。
一方,女児は,警察の取調べで「結婚なんてあり得ない。被疑者は私の体目当てで付き合っていただけ。」などと供述しており,私自身も,被疑者と女児には二回り以上の年の差があり,女児は結婚を具体的に考えられる年齢でもなかったこと等から,結婚を前提とした交際は考えにくく,被疑者の弁解を排斥して起訴する方針で検討していました。
しかし,捜査を進めていくと,被疑者と女児のメッセージのやりとりの中には,結婚の時期や,子どもの人数や名前の相談, また,被疑者から女児に対して,女児の気持ちの準備ができるまで性交を待つことを伝えるなどのメッセージが確認され, さらに,女児が, 当初「被疑者は真剣に付き合っている彼氏だから捕まえないでほしい。」などと言っていたこと等が明らかになりました。
私は,警察の取調べでの女児の供述に何となく違和感を覚え,処分方針に悩み,指導担当検事に相談したところ,指導担当検事から, 「自分で直接確かめないと処分は決められない。女児が本心ではないことを話したのだとしたら, どうしてなのか, どうしたら本心を話してくれるのか考えて,取調べをしたらどうか。」といった御指導をいただき,女児の取調べを行うことにしました。
女児の取調べの前に,女児の生活環境等について捜査を行うと,女児が親と不仲であったことや,女児の供述は本件発生後に親と接触してから一変したこと等が明らかになり, これらの事情から,女児が,親の顔色をうかがって供述を変遷させた可能性が出てきました。
女児からどのように話を聞くか悩みましたが,女児の立場だったら,話が親に伝わることを危愼すると思い,女児に対しては, 聞いた話を親に報告することはしないと伝えた上で,話を聞くことにしました。
すると,女児は,取調べで,被疑者に対する正直な思いを語ってくれました。
女児の供述は変遷したわけですが, その理由は,予想していた内容に近い,納得できるものでした。
私は,女児の話を聞いて附に落ちる感覚があり,最終的な処分は,青少年保護の観点等からよくよく悩みましたが,不起訴処分としました。
この事件を通じて,供述に違和感を覚えたら, なぜその人がそのような供述をするのか想像力を働かせ, どうしたら本当のことを話してもらえるかを検討することの重要さと難しさを学びました。

青少年ABに対するわいせつ行為を包括一罪とした事例(和歌山地裁h29.8.31)

 社会的法益だから、個人にこだわらないということでしょうか。

TKC
和歌山地方裁判所平成29年8月31日和歌山県青少年健全育成条例違反被告

       判   決
 上記の者に対する和歌山県青少年健全育成条例違反被告事件について,当裁判所は,検察官氷室隼人及び私選弁護人前畑壮志各出席の上審理し,次のとおり判決する。


       主   文

被告人を懲役1年6月に処する。
この判決が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。


       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,平成29年5月23日,和歌山市■の■中学校■において,
1 ■(当時13歳。以下「被害者A」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,同日午後1時頃から同日午後3時30分頃までの間に,専ら自己の性欲を満たす目的で,同人に対し,背後から,手をその乳房に押し当てて弄び,
2 ■(当時13歳。以下「被害者B」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,同日午後1時頃から同日午後5時頃までの間に,専ら自己の性欲を満たす目的で,同人に対し,背後から,手をその乳房に押し当てて弄び,
もって,それぞれ青少年に対し,わいせつな行為をした。
(証拠の標目)《略》
(法令の適用)
1 罰条 包括して和歌山県青少年健全育成条例33条1項,26条1項(判示の各わいせつ行為は,同一の犯行場所において犯行時刻を一部重なり合って行われたものであるから,包括一罪として処理)
2 刑種の選択 懲役刑を選択
3 刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,被害者らが18歳に満たない青少年であることを知りながら,同被害者らの背後から手を乳房に押し当てて弄んだという和歌山県青少年健全育成条例違反の事案である。その態様は,当時中学校教師であった被告人が,被害者ら生徒のために開いた補習授業において,解答の誤りを指導する口実で各被害者の肩に触れた際に,胸元まで手をまわして乳房に押し当てるというものであって,教師の立場を利用した悪質なものである。
 その上,被告人は,平成29年3月下旬頃から同様のわいせつ行為を繰り返す中で本件犯行に及んでいる。本件犯行当時、被告人が過重労働状態にあったことはうかがわれるものの,初めてわいせつ行為に及んだ後に自省する機会があったにもかかわらず,被害を受けた生徒が抵抗や被害申告をしないことに乗じて,その後も自己の性的欲求を満たすため同様の行為を繰り返して本件犯行に及んでいるのであるから,本件犯行は卑劣というほかなく,経緯にもさほど酌むべき点があるとはいえない。
 また,被害者のうち1名は,本件犯行の発覚後に欠席日数が増えるなど,本件犯行が当時中学2年生の青少年である被害者らの心身に与えた影響は計り知れず,当然のことながら,被害者らやその母親らはいずれも厳しい処罰感情を有している。 
 以上によれば,被告人の刑事責任は軽視できるものではなく,懲役刑をもって臨むほかない。
 しかしながら,他方において,被告人には,事実関係を認めた上,公判廷においても被害者らに対する謝罪の意思を表明するなど反省の態度を示していること,本件により懲戒免職処分を受けるなど一定の社会的制裁を受けていること,被告人には前科前歴がないことなど,被告人にとって酌むべき事情も認められる。
 そうすると,被告人を今直ちに刑務所に送ることにはいささかためらいを感じる面があることを否定できないから,当裁判所は,以上の諸事情を総合考慮して,被告人に対しては,主文の懲役刑を科してその刑事責任の重さを明らかにした上,今回に限りその刑の執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断し,主文の刑を決めた次第である。
 よって,主文のとおり判決する。
(検察官求刑-懲役1年6月)
平成29年8月31日
和歌山地方裁判所刑事部
裁判官 奥山浩平

盗撮犯人が複製した場合は、ひそかに製造罪。盗撮してない者が盗撮画像を複製するのはひそかに製造罪には当たらない(名古屋高裁h31.3.4)

 7条5項の製造罪って複製も含むようです。
 児童ポルノ写真集とかビデオでこっそり複製するのも含むように読めますが、そうではない・盗撮で撮影した者が自ら複製する場合に限るという判例ができました。理由はわかりません。
 単純複製は適法だというのが共通認識なので、単純複製は処罰しないという解釈のようです。この法文をどう読めばそう読めるのかがわかりません。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

判例番号】 L07420140
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ禁止法)違反,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件
【事件番号】 名古屋高等裁判所判決/平成30年(う)第383号
【判決日付】 平成31年3月4日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載


名古屋高裁h31.3.4
 (4) 弁護人は被告人方での外付けハードディスクへの保存につき「ひそかに」児童の姿態を「描写」したといえないから児童ポルノ製造罪は不成立というけれども,ひそかに同法2条3項3号の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に描写した(温泉施設の盗撮がこれに当たること明らか)者が当該電磁的記録を別の記録媒体に保存させて(被告人方での外付けハードディスクへの保存がこれに当たること明らか)児童ポルノを製造する行為は同法7条5項に当たる。

(罪となるべき事実)
 被告人は, 共謀の上,平成31年4月23日,大阪府大阪市西天満温泉」北側森林内において,同施設で入浴中の氏名不詳の女児2名がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同児童らの全裸の姿態を,望遠レンズを取り付けたビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録である動画データを同ビデオカメラの記録媒体等に記録した上,
同年4月29日,被告人方において,同人が前記動画データを前記記録媒体等からパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録して保存し,もってひそかに衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

自称20歳(実は16歳)に対する児童買春事件で、当初否認を自白に持ち込む方法

 
 こういう取調流行ってるんでしょうかね。

 15歳を超えると外形的には児童にも見えるし、18歳以上にも見えるので、被害者は逮捕時の弁解録取とか勾留質問では

16歳と言われると16歳にも見えますが
サイト上では「18歳以上」「20~22」となっていたので
20歳くらいだと思っていました

と供述しますよね。
 これだと児童の未必的故意が取れないので、

今から思えば16歳にも見えました

と切り出した調書を取ります。
 
 そうすると

16歳と言われると16歳にも見えますが
サイト上では「18歳以上」「20~22」となっていたので
20歳くらいだと思っていました

今から思えば16歳にも見えました

という変遷について、理由を説明させられますよね。
 児童は始終「20歳」と言ってるので、見かけしかないわけですが、被疑者は、必死で考えて

幼児体型だった。頭でっかちだった
肌つやが幼かった
乳房が小さかった・陰部は未発達だった

と嘘の理由を供述します。

 16歳が18歳と比較して

幼児体型だった。頭でっかちだった
肌つやが幼かった
乳房が小さかった・陰部は未発達だった

ということはないですよ。その16歳はほぼそのまま18歳になるから。

児童ポルノ所持も考慮されて、スプレー事犯はわいせつ目的で行われたと理解する方が自然である,ということはできる~ 傷害、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件(田辺支部H30.11.29)

 westlawも、d1lawも、起訴状を付けてないので事実がわかりません。
 わいせつ目的の傷害って、強制わいせつ致傷であって、傷害罪じゃないよね。
 児童ポルノ所持罪を起訴することで「被告人は,児童ポルノ事犯及び関連事件も起こしている。被告人は,当公判廷において,児童ポルノ事犯はこれらの動画に「珍しさ」があったからであり,関連事件は女児と話をしたかったからである旨供述し,これらの事件についても性的欲求との関連を否定するが,児童ポルノ事犯,関連事件及びスプレー事犯という一連の行為を総合的に観察すれば,共通の背景として女児に対する性的欲求が存在したとの推認に傾く。」という認定に使われます。

裁判年月日 平成30年11月29日 
裁判所名 和歌山地裁田辺支部 裁判区分 判決
事件名 傷害、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2018WLJPCA11296005
主文
理由
 (罪となるべき事実)
 第1 平成30年1月31日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるから,これを引用する。
 第2 平成30年2月20日付け起訴状記載の公訴事実のとおりであるから,これを引用する。
 (証拠)
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1の行為につき
 刑法204条
 判示第2の行為につき
 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段,2条3項3号
 刑種の選択
 判示第1,第2の各罪について,いずれも懲役刑
 併合罪の処理
 刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)
 執行猶予
 刑法25条1項
 保護観察
 刑法25条の2第1項前段
 (量刑の理由)
 1 犯行に至る経緯
 被告人が小学5年生のときに両親が離婚し,被告人は,親権者となった母親に監護養育されるようになったが,母親は仕事のために不在がちであった。母親は,5年前から甲状腺がんを患っている。父親は,被告人住所地とは離れた山間地で飲食店を経営しており,被告人とは,たまに会う程度の交流はあった。
 被告人は,平成29年4月に,市役所に非常勤職員として採用された。同年秋には正職員となるための採用試験を受けたが,不合格となった。再度の受験を志した被告人は,予備校に通うことを上司から勧められたので,父親にその費用の援助を申し込んだが,金銭的余裕がないとして断られた。
 被告人は,他人と話をするのが苦手である。
 2 本件各犯行及び関連事件
  (1) 判示第2の犯行(以下「児童ポルノ事犯」という。)
 被告人は,平成28年春ころから,十歳台前半くらいの女児が裸になって性器を見せたり自身の性器を触ったりしている動画(以下「児童ポルノ」という。)をインターネット経由で入手し,自らのパソコンにダウンロードして,自宅でハードディスクに保管するようになった。児童ポルノ事犯は,その一環である。
 被告人は,これらの動画をダウンロードするまでには,通常のウェブサイトへのアクセスと異なり,専用のアプリを使って暗号のような文字を入力する必要がある等手が込んでいたことから,児童ポルノにかかわることが合法ではないらしいとの漠然とした認識は有していた。
  (2) 関連事件
 被告人は,平成28年6月30日,児童公園で遊んでいた小学生の女児を公園内のトイレの個室に誘い込み,内部から鍵をかけたが,程なくして鍵を開けて女児を外に出した。
  (3) 判示第1の犯行(以下「スプレー事犯」という。)
 被告人は,犯行当日,有給休暇を取得して,和歌山市へ,次いで堺市へ行った。その帰路,カーナビの目的地を,自宅へ向かう道筋から外れた山間部にある犯行現場付近の大字に設定し,その案内に従って走行した。
 被害女児は,その大字の中では比較的建物が多い集落にある小学校から,山間部の奥にある自宅へ,徒歩で帰宅する途中であった。被告人は,小学校の近くで,車を運転しながら,被害女児が三叉路を山間部の奥の方へ向けて曲がるのを見かけた。その約3分後,集落付近で車を転回させるなどした後,自宅へ向かって人気のない道筋を歩いている被害女児を追い越し,路肩に駐車した。自動車に積んでいた催涙スプレー(以下「本件スプレー」という。)を持って,被害女児に歩み寄った。被害女児に声をかけ,これに応じて被告人の方に顔を向けた被害女児の顔面をめがけて,催涙スプレーを噴射した。
 この催涙スプレーは高濃度の唐辛子成分を含有し,眼及び皮膚に強い刺激を与えるものであった。被害女児は,突然催涙スプレーを噴射され,その痛みに泣きながら歩き出し,近くの建物で働いていた大人に助けを求めた。被害女児には,両頬が赤く変色する等の症状が生じた。
 被害女児の痛みは数日で収まり,皮膚の変色も次第に消えて,特段の後遺症は残らなかった。しかし,事件前はひとりで就寝できていたのに保護者と同じ布団で寝ることをせがんだり,一人でいることを極端に嫌がったりするようになった。
 3 スプレー事犯の動機ないし目的について
  (1) 被告人の供述の変遷
   ア 被告人は,平成29年12月20日にスプレー事犯を被疑事実として逮捕された。
 逮捕直後の取調べでは,「女の子が飛び出してきた。注意しようとしたが,無視したので腹が立ち催涙スプレーをかけた。」と供述した。
 しかし,同日中に,「催涙スプレーをかけて女の子の目が眩んだ隙に胸や体を触ろうと考え,女の子の顔に催涙スプレーをかけました」と供述し,同旨の自供書を作成した。
   イ 被告人は,強制わいせつ致傷の罪名で検察官送致され,同月22日に勾留された。後に,勾留期限は平成30年1月10日まで延長された。
 この勾留期間中の平成29年12月30日の取調べでは,スプレー事犯の動機について,「女の子が片足を軸にしてクルクルと体を回転させているのが見えました。私は,そのクルクルと体を回している女の子の姿を見て無性に腹が立ってきました。」「女の子の行動に腹が立ったので催涙スプレーをかけてやろうと考えました。」と供述した。
 また,同日,催涙スプレーについて,護身用に購入していたものであり,その威力を試してみたいという思いもあって被害女児に向けて使用した旨供述した。
   ウ 被告人は,スプレー事犯による勾留の延長後の期限である平成30年1月10日,スプレー事犯については処分保留のまま,関連事件につき,未成年者誘拐・監禁の罪名で逮捕され,同月12日に勾留された。後に,勾留期限は同月31日まで延長された。
 この勾留期間中の同月24日,被告人は,スプレー事犯につき,司法巡査Bに対し,「女の子に催涙スプレーをかけた本当の目的は,女の子の体を触ったり,服を脱がして裸を見たかった」,「わいせつなことをする為の手段として,予め催涙スプレーを用意していました。今回,私は催涙スプレーを使って目をくらませ,女の子を私の車に乗せようと思っていました。そして,車内で女の子の身体を触ったり,服を脱がして裸を見たいという思いがありました。」等と供述した。
 また,動機ないし目的についての供述を変えた理由については,「前の取り調べで,……女の子の写真を見せて貰った時,女の子の顔や手が真っ赤に腫れている姿を見た」,「その女の子の姿が頭から離れませんでした。悪いことをした,申し訳ないことをしたとずっと考えるようになりました」,「女の子のことを考えると,罪悪感で嘘を突き通す(原文ママ)ことに疲れました」等と供述した。
   エ 同月31日,被告人は,スプレー事犯につき起訴され,関連事件については不起訴となった。
   オ 当公判廷における被告人の供述内容は,上記イの内容とおおむね同一である。
  (2) スプレー事犯の動機ないし目的について,わいせつ行為が目的であった(以下「わいせつ目的」という。)旨の検察官の主張と,被害女児に対する腹立ちの動機及び催涙スプレーの試用の目的によるものであった(以下「非わいせつ動機・目的」という。)旨の弁護人の主張が対立している。
 よって検討するに,以下の理由によれば,スプレー事犯はわいせつ目的で行われたと理解する方が自然である,ということはできる。
   ア 被告人は,児童ポルノ事犯及び関連事件も起こしている。被告人は,当公判廷において,児童ポルノ事犯はこれらの動画に「珍しさ」があったからであり,関連事件は女児と話をしたかったからである旨供述し,これらの事件についても性的欲求との関連を否定するが,児童ポルノ事犯,関連事件及びスプレー事犯という一連の行為を総合的に観察すれば,共通の背景として女児に対する性的欲求が存在したとの推認に傾く。
   イ 非わいせつ動機・目的をいう被告人の供述は,逮捕直後の平成29年12月20日の取調べにおける「女の子が飛び出してきた。注意しようとしたが,無視したので腹が立ち催涙スプレーをかけた。」という供述と,同月30日の取調べ及び本件公判廷における「クルクルと体を回している女の子の姿を見て無性に腹が立ってきました。」という供述とで,大きく食い違っている。
   ウ ドライブレコーダーの解析結果等によれば,被告人は,集落内の三叉路を山間部の奥へ向けて歩く被害女児の姿を見た後,その三叉路を一旦直進通過したのに,車をUターンさせてその三叉路まで戻り,被害女児が歩いて行ったのと同じ方向へ曲がっている。この行動は,三叉路で被害女児を見た時点で,被害女児に対して何らかの行動を仕掛けようとする意図があった,という推論と結び付く。
 被告人の上記平成29年12月30日の供述においても,「クルクルと体を回している」被害女児を見たのは,被告人が車で三叉路を曲がってしばらく走った後であるから,被告人の供述する非わいせつ動機・目的では,三叉路を曲がって被害女児と同方向へ向かったという被告人の行動を説明できない。
  (3) もっとも,わいせつ目的,非わいせつ動機・目的のいずれが,スプレー事犯の犯情として,より悪質であるのかは,一概に決められない(非わいせつ動機・目的でスプレー事犯に及んだことの背景について,弁護人は,職場で意に沿わない異動があったこと,父親から予備校の費用援助を断られたこと等からくるストレスや苛立ちがあった旨主張し,被告人もその旨供述するが,その程度の背景のもとで,「クルクルと体を回している女の子の姿を見て」腹を立て,無抵抗の弱者である女児に対してスプレー事犯のごとき犯罪行為にまで及んだのであれば,被告人はきわめて危険な粗暴犯としての犯罪性向を有することになる。)。したがって,スプレー事犯がわいせつ目的であったか非わいせつ動機・目的であったかは,本件の量刑には必ずしも影響しない事情といえる。
 そして,わいせつ目的であれ,非わいせつ動機・目的であれ,いずれも被告人の内心に係る事柄であって,両者が併存することも有り得る。そもそも,被告人自身がスプレー事犯の当時の自己の内心を的確に把握できていたとは限らないし,当時の自己の内心について,捜査官の取調べや公判廷での質問に対して的確に供述できるとも限らない。
 そうすると,スプレー事犯の動機ないし目的は,被告人の矯正及び更生をより効果的なものにするため,心理学的な知見を踏まえつつ分析・判断されるべきものであって,本判決において事実認定の対象とするにはなじまない。
  (4) なお,弁護人は,平成29年12月24日に被告人がわいせつ目的を認める供述をしたのは,捜査官から,関連事件を不起訴にすることとの取引を持ち掛けられたためである旨主張するが,証人Bの公判供述に照らして,弁護人の主張は採用することができない。同供述によれば,関連事件について被告人がわいせつ目的を認める供述をしたので,同証人がスプレー事犯についても何度か尋ねたところ,被告人は,最初は黙っていたが,数日経って「今更ですけど,話を変えてもいいんですか」と言ってわいせつ目的を認める供述を始めたというのであり,これはこれで自然な流れである。同証人が関連事件の不起訴との取引を持ち掛けたという弁護人の主張には,その裏付けとなり得る証拠は被告人の公判供述以外に存在せず,一つの憶測にとどまると言わざるを得ない。
 4 量刑事情について
 スプレー事犯の犯行態様は非常に危険で悪質であり,実際に生じた被害結果も重大である。また,児童ポルノ事犯は,児童ポルノの製造や提供を助長しかねない犯行であって強い非難に値する。
 他方,被告人のために酌むべき事情として,前科前歴はないこと,児童ポルノの所持を始めた時点では未成年であったこと,本件各犯行時も成年に達したばかりであったこと,本件各犯行が広く報道された上に市役所からは懲戒解雇される等して大きな社会的制裁を受けたことが挙げられる。
 なお,示談等については,被告人及びその両親が被害女児の父親と一度面談し,謝罪するとともに示談の申入れもしたが,話合いには応じてもらえず,その後進展していない。被告人及びその両親には,損害賠償の資力は現段階では乏しいが,その義務は認識している。
 これらの事情を総合考慮して,主文のとおり,被告人を懲役刑に処してその刑事責任を明らかにした上,その執行を猶予するのが相当である。
 また,その執行猶予の期間中,被告人を保護観察に付するのを相当と認める。スプレー事犯がわいせつ目的であったのならばもちろんのこと,非わいせつ動機・目的に基づくものであったとしても,被告人には矯正すべき重大な犯罪性向があったといえることは上記のとおりであるから,保護観察下で,自らカウンセリングを受けるなどしてその矯正に努めるべきである。
 (求刑 懲役2年6月)
 和歌山地方裁判所田辺支部
 (裁判官 上田卓哉)

「女の子の体に興味があり、柔らかい体を僕の全身で感じたかった」という意図で背後から女子高校生に飛びつき体を密着させた行為は強制わいせつ罪か?

 わいせつ行為の定義がないのでこういうのが出てきますが、札幌地裁浦河支部H29.1.12は強制わいせつ未遂としています。

 馬渡論文を前提にすると、こういう非典型的行為はわいせつ行為としにくいことになります。

強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
最高裁平成29年11月29日大法廷判決最高裁調査官馬渡香津子 ジュリスト1517 p78
V・「わいせつな行為」の定義,判断方法
1. 「わいせつな行為」概念の重要性性的意図が強制わいせつ罪の成立要件でないとすれば, 「わいせつな行為」に該当するか否かが強制わいせつ罪の成否を決する上で更に重要となり, 「わいせつな行為」該当性の判断に際して,行為者の主観を一切考慮してはならないのかどうかを含め, これをどのように判断し,その処罰範囲を明確化するのかが問題となる。
また,強制わいせつ致傷罪は,裁判員裁判対象事件であることも考えれば, 「わいせつな行為」の判断基準が明確であることが望ましい。
2 定義
(1) 判例,学説の状況
強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」の定義を明らかにした最高裁判例はない。
他方, 「わいせつ」という用語は,刑法174条(公然わいせつ), 175条(わいせつ物頒布罪等) にも使用されており, 最一小判昭和26.5. 10刑集5巻6号1026頁は, 刑法175条所定のわいせつ文書に該当するかという点に関し, 「徒に性慾を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと認められる」との理由でわいせつ文書該当性を認めているところ(最大判昭和32.3・13刑集ll巻3号997頁〔チャタレー事件〕も,同条の解釈を示すに際して,その定義を採用している),名古屋高金沢支判昭和36.5.2下刑集3巻5=6号399頁が,強制わいせつ罪の「わいせつ」についても, これらの判例と同内容を判示したことから,多くの学説において, これが刑法176条のわいせつの定義を示したものとして引用されるようになった(大塚ほか編・前掲67頁等)。
これに対し,学説の中には,刑法174条, 175条にいう「わいせつ」と刑法176条の「わいせつ」とでは,保護法益を異にする以上, 同一に解すべきではないとして,別の定義を試みているものも多くある(例えば, 「姦淫以外の性的な行為」平野龍一.刑法概説〔第4版) 180頁, 「性的な意味を有する行為,すなわち,本人の性的差恥心の対象となるような行為」山口厚・刑法各論〔第2版] 106頁, 「被害者の性的自由を侵害するに足りる行為」高橋則夫・刑法各論〔第2版〕124頁, 「性的性質を有する一定の重大な侵襲」佐藤・前掲62頁等)。
(2) 検討
そもそも, 「わいせつな行為」という言葉は,一般常識的な言葉として通用していて,一般的な社会通念に照らせば, ある程度のイメージを具体的に持てる言葉といえる。
そして, 「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには困難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。
また, 「わいせつな行為」を定義したからといって, それによって, 「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえ, これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられ,それらの集積から,ある程度の外延がうかがわれるところでもある(具体的事例については,大塚ほか編・前掲67頁以下等参照)。
そうであるとすると,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには, これをどのように定義づけるかよりも, どのような判断要素をどのような判断基準で考慮していくべきなのかという判断方法こそが重要であると考えられる。

https://www.sankei.com/west/news/190410/wst1904100033-n1.html
女子高生に体を密着、容疑の高2男子逮捕 奈良
2019.4.10 22:58産経WEST
 背後から女子高校生に飛びつき体を密着させたとして、奈良県警桜井署は10日、強制わいせつの疑いで奈良県天理市に住む私立高校2年の男子生徒(16)を逮捕した。「女の子の体に興味があり、柔らかい体を僕の全身で感じたかった」と容疑を認めている。

 逮捕容疑は、昨年11月30日午後8時5分ごろ、同県桜井市の路上で、下校中だった高校3年の女子生徒=当時(18)=に背後から飛びつき、体を密着させたとしている。

 同署によると、少年はおんぶされるような格好で女子生徒に無言でしがみついたが、抵抗されたため逃走。走って駅に向かう姿が近くの商店街の防犯カメラに写っており、制服などから身元を特定した。

 桜井市内では昨年3~10月、14~18歳の女子中高生4人が同様の被害に遭っており、同署が関連を調べている。

児童ポルノ販売者検挙への購入者の対応

 購入者リストを基にして、購入者に順次捜索かけて、児童ポルノが出れば、単純所持罪で検挙するというパターンがあります。
 単純所持罪単独での逮捕はありません。
 捜索前に破棄していれば罰金にはなりません。
 そういう対応をしない警察もあって、購入者からの相談が多数来ます。電話で問い合わせただけでは教えてくれないようです。
 そういう時は、弁護士に相談して、ある程度の事実関係をまとめて警察に送って相談してください。警察の対応がわかります。

ダウンロード販売目的で、被告人が自宅で所持しているポータブルHDD内のわいせつ画像については、わいせつ電磁的記録有償頒布保管罪ではなく、わいせつ物有償頒布目的所持罪が成立するとした名古屋高裁h31.3.4(所持罪のみ説)の上告事件が、保管罪説を採る山口厚判事の第一小法廷に係属した。

 刑法の通説としては、犯人の手元にあるhddの場合は、わいせつ物所持罪とわいせつ電磁的記録記録媒体保管罪が成立するというのですが、名古屋高裁は所持罪だけだというのです。

http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2019/01/14/000000
2 「所持」「保管」(刑法175条2項)の一般的な説明
 一般的には物の場合は「所持」、電磁的記録の場合は「保管」と説明されているようである。
①条解刑法
②杉山徳明・吉田雅之「『情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律』について」警察学論集 第64巻10号
③「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」について(上) 法曹時報64-04 H24

の続報

 山口判事の論文でも、刑法の通説通り、電磁的記録の場合は「保管罪」と説明されているので、「どうするねん」って、上告理由で指摘する予定。

山口 厚サイバー犯罪条約に関連した刑法改正案 Law & technology : L & T (26) 2005.1 p.4~11
ジュリスト1257号 15頁 2003年12月1日発行 サイバー犯罪に対する実体法的対応 山口厚東京大学教授
山口厚「サイバー犯罪の現状と課題」現代刑事法 2004.1
さらに,わいせつな電磁的記録を頒布の客体としたことから,従来の販売目的所持罪の客体を電磁的記録にまで拡張している(有償頒布目的でのわいせつな電磁的記録の保管)。これは,電磁的記録を頒布の客体とする以上,当然の改正であるといえよう。