児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

馬渡香津子調査官「児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」の意義・児童福祉法34条1項6号にいう「させる行為」に当たるか否かの判断方法」法曹時報70巻8号

 「させる」というのがゆるゆるの感じです。

馬渡香津子調査官
最高裁判所判例解説法曹時報70巻8号
1 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」の意義
2 児童福祉法34条1項6号にいう「させる行為」に当たるか否かの判断方法
平成26年(あ)第1546号同28年6月21日第一小法廷決定棄却
第1審福岡地裁飯塚支部第2審福岡高裁刑集70巻5号369頁

イ青少年保護育成条例との関係
昭和60年判例で問題とされた青少年保護育成条例にいう「淫行」の主体は「児童の相手となる者」であって,児童の相手側の行為に視点を置き,児童を相手に淫行することを対象とする規制であるのに対し,児童福祉法上の「淫行」の主体は,保護されるべき被害児童自身であって,児童に視点を置き,児童に淫行をさせることを対象とする規制である。したがって, このような青少年保護育成条例違反行為については,行為者の側の行為が昭和60年判例で示された「淫行」( I青少年を誘惑し,威迫し,欺固し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為, Ⅱ青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為)をする行為を行うだけで,処罰対象とされるものであって(前掲亀山研修367号59頁は,抽象的危険犯と整理している。),児童の意思決定に対する影響力の有無や助長・促進行為の有無を考慮する必要がないなどの点において,本罪と異なり,同条例の解釈が本罪の解釈に直接的な影響を与えることはないと考えられる。なお,昭和60年判例で示されている上記Iのような手段に関する要素は,児童福祉法上では, 「させる行為」該当性において実質的に考慮されることになろう。
ウ監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪との関係
平成29年改正により新設された刑法179条の監護者わいせつ罪・監護者性交等罪は, 18歳未満の者に対し,監護者であることによる影響Jがあることに乗じてわいせつな行為・性交等をした場合について,強制わいせつ罪・強制性交等罪と同様の法定刑で処罰するものである。このような行為は, 18歳未満の者が抵抗せずに応じたとしても,その意思決定は,そもそも精神的に未熟で判断能力に乏しい18歳未満の者に対して,経済的にも精神的にも依存している監護者の影響力が作用してなされたものであり, 自由な意思決定ができないと考えられることから,性的自由なし、し性的自己決定権を侵害するものとして,強制わいせつ罪又は強制性交等罪と同等の悪質性・当罰性があるものとして, これらの罪同様に重く処罰するものとされている(松田哲也・今井將人「刑法の一部を改正する法律について」法曹時報69巻11号247頁,橋爪隆「性犯罪に対処するための刑法改正について」法律のひろば70巻11号7頁
, (注8)等参照)。
これに対し,児童福祉法の定める本罪は,性的行為の意思決定能力がある13歳以上18歳未満の者の自発的意思に基づく性交等についても処罰対象となり得るのであって,本罪の保護法誌は性的自由ではなく,あくまで児童の健全育成と解される。
したがって,監護者わいせつ罪・監護者性交等罪は,本罪と保護法益を異にしており,平成29年刑法改正による監護者わいせつ罪・監護者性交等罪の新設は,児童福祉法上の本罪の解釈に直接的に影響することはないと考えられる(前掲松田・今井255頁, 267頁注17, 18,今井猛嘉「監護者わいせつ罪及び(注9)監護者性交等の罪」法律時報90巻4号65頁注13参照)。


(注9) なお,本罪と監護者わいせつ罪・監護者性交等罪とでは保護法益が異なるとの立場からは,本罪と監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪との罪数関係は,観念的競合であると説明されている(前掲松田・今井255頁,前掲橋爪11頁等)。これに対し,新設された監護者わいせつ罪・監護者性交等罪は,性的自己決定の保障のみならず,被監護者の人格の発展も併せて保護の対象に取り込んでいるとして,本罪の保護法益と異質のものではなく,本罪は監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪に吸収されるとの見解もある(前掲深町342頁,樋口亮介「性犯罪規定の改正」法律時報89巻11号118頁)。


21年判例とか平成24年高裁判例は奥村弁護人です。

⑤平成21年判例最高裁平成21年10月21日第一小法廷決定・刑集63巻8号1070頁)
平成21年判例は,中学校の教員である被告人が,前後20回にわたり,犯行開始当時に被告人勤務の中学校に在籍していた被害児童(当時14~15歳)をして,被告人を相手に性交させ,又は性交類似行為をさせ, もって児童に淫行をさせるとともに,上記20回のうち13回におし、て,児童をして性交等に係る姿態をとらせて撮影するなどして児童ポルノを製造した事案において,本罪と児童ポルノ製造罪との罪数関係について判示したものであるが,行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為が,本号に該当することを当然の前提として判示している。
・・・

平成24年高裁判例は,被告人が中学校教諭で剣道部顧問であり,被害児童2名が同校元生徒で剣道部部員であった旨を罪となるべき事実に記載していた第1審判決について理由不備の違法があるとした。

今井將人「強制わいせつ及び強姦の犯行状況を隠し撮りしたデジタルビデオカセットが「犯罪行為の用に供した物」に該当するとして没収した事例最高裁平成30年6月26日決定(裁判所ウェブサイト登載)」捜査研究2018年9月号p2

 撮影行為はわいせつ行為、児童ポルノ製造はわいせつ行為で、観念的競合でどうですか?
 強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ製造の判例では、強制わいせつ行為(176条後段)と撮影行為とは通常伴わないと言われています。次にさわって撮影という強制わいせつ罪(176条後段)を受けたら、単一性欠くという主張しますよ。

今井將人「強制わいせつ及び強姦の犯行状況を隠し撮りしたデジタルビデオカセットが「犯罪行為の用に供した物」に該当するとして没収した事例最高裁平成30年6月26日決定(裁判所ウェブサイト登載)」捜査研究2018年9月号p2

(2) また,第一審判決で, 「このような被告人による隠し撮りは, Bら4名に対する実行行為そのものを構成するものでなく, もとより被告人がこうした隠し撮りを行ったことをもって訴追されたわけでもない」とされているように,本件では,撮影行為自体は実行行為の一部とされていなかった。
しかし,事案によっては,わいせつ行為等を撮影する行為自体も,強制わいせつ等の実行行為の一部として評価し,公訴事実に含めることが可能であると考えられるところであり9),例えば,直接身体に触れなくても,被害者を裸にして写真を撮る行為が,わいせつな行為に当たるとした裁判例(東京地判昭和62年9月16日判例時報12糾号143頁),被害者の寝姿をビデオ撮影しながら自慰行為を行い着衣に精液をかけた一連の行為について準強制わいせつ罪の成立を認めた裁判例(福岡地判平成13年10月17日警察公論第58号第1巻59頁。),婦人科医が,患者3名に対して, 同人らが治療に必要な診察のみを受け,それ以外の行為を受けることはないと誤信して抗拒不能の状況にあるのに乗じ, 同人らにわいせつな行為をしようと考え,診察室において,看護師の立ち会いのない診察時に,下半身の衣類を脱いで, 同室の内診台に仰向けに寝て開脚し,抗拒不能の状況にある同人らに対し, 同人らの同意なく,無断でその陰部をデジタルカメラで撮影した行為について,準強制わいせつ罪の成立を認めた裁判例(東京高判平成21年4月30日・公刊物未登載)などが参考になると思われる。
その上で,撮影行為自体が実行行為の一部と認められる場合には,撮影に用いたデジタルカメラ等は, 「犯罪行為の用に供し」た物であり,撮影されたデジタルビデオカセット等の記録媒体は,刑法19条1項3号の「犯罪行為により生じ」た物であるとして, これらを没収することができると考える余地もあり得ると思われる'0)。
9) 前掲中村・149~152頁は,撮影行為と強制わいせつ罪・強姦罪の犯罪行為との関係について詳述しており,本件についても,隠し撮りをする行為について,その他の被告人による一連の行為と相まって強制わいせつ罪におけるわいせつ行為と評価し得るものに至っているものとして,審判の俎上に載せる余地があったことなどを指摘しており,実務上参考となると思われる。
10) 前掲中村・156頁参照。

中村功一「強姦・強制わいせつの犯行状況等を隠し撮りして録画されているデジタルビデオカセットについて、犯罪行為の用に供した物として没収した事例〔宮崎地方裁判所平成27年12月1日判決・控訴中・公刊物未登載〕」警察学論集69巻2号p1451 撮影行為と強制わいせつ罪・強姦罪の犯罪行為との関係(1)刑法第19条第1項は、第1号において、犯罪行為を組成した物(犯罪組成物件)、第2号において、犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物(犯罪供用物件)、第3号において、犯罪行為によって生じ(犯罪生成物件)、若しくはこれによって得た物(犯罪取得物件)又は犯罪行為の報酬として得た物、第4号において、第3号に掲げる物の対価として得た物を、それぞれ没収の対象として規定している。
本判決は、被告人が撮影して録画された本件各デジタルビデオカセットについて、犯罪供用物件にゝl`たるとして没収を認めたものであるが、没収の対象となるか否かを検討する前提として、まず、撮影行為と強制わいせつ罪・強姦罪の犯罪行為との関係を考えてみることとする。
(2)強制わいせつ罪や強姦罪の犯人が、被害者に対するわいせつ行為や姦淫行為を撮影しつつ、被害者に対し、抵抗するなどしたときは撮影した画像をばらまくなどと申し向けたような場合には、その撮影行為は、強制わいせつ罪や強姦罪における脅迫行為の一部であるとも言い得る。
また、裸にして写真を撮影する行為が強制わいせつ罪におけるわいせつ行為に当たるとされた裁判例2.があるとおり、撮影行為が、強制わいせつ罪におけるわいせつ行為3)に当たることもあるものと考えられる。
ただ、強姦罪の犯人が、その犯行状況、すなわち被害者を姦浮する状況を撮影した場合、その撮影行為は、強制わいせつ罪におけるわいせつ行為に当たり得るとしても、強姦罪における姦淫行為に当てはまるとは言えないであろう。
もっとも、同一の被害者に対して接着して強制わいせつ行為と強姦行為が行われた場合には、両者を包括して強姦の一罪が成立すると解されること4りに照らすと、強姦罪の犯人が、その犯行状況、すなわち被害者を姦浮する状況を撮影した場合において、その撮影行為が強制わいせつ罪におけるわいせつ行為に当たるときは、「可―の被害者に対して同時に強制わいせつ行為と強姦行為が行われたものであって、撮影行為についても、これらを包括して成立すると解される強姦の一罪の犯罪行為の一部として、公判における審理・判決の対象とすることができると考えてよいように思われる。
実際に発生している強姦事案を見ると、姦淫行為に様々なわいせつ行為が伴うことが多いと思われ、実務上、姦淫行為に加ぇて他のわいせつ行為をした事実が認められる事案であっても、公訴事実や罪となるべき事実において、あえてこのようなわいせつ行為を摘示することまではせず、姦淫の事実のなを摘示する場合が多いと思われる。
これは、姦淫の事実のみを摘示し、その他のわいせつ行為は重要な情状として評価すれば、適切に量刑をすることができるとの考えからであると思われ、これrl体は、実務上の取扱いとして、今理的であって妥当であると思われるが、理論上は、姦淫行為が存在し、これが強姦罪に当たると評価されることによって、その同一の機会になされたわいせつ行為、とりわけ、姦淫行為に必然的に伴うものではなく、姦淫行為に包含されるとはいえないようなわいせつ行為について、犯罪行為として評価することができなくなるというわけではないと解される。
例えば、裁判の結論に影響するのであれば、そのようなわいせつ行為も、起訴状の公訴事実として記載して公判における審理の対象に含まれるものとして明示し、判決の罪となるべき事実にも摘示することが必要となる場合が、実務的にもあり得よう。
(3)問題は、本件のように、犯行状況を隠し撮りした場合、すなわち、被害者が撮影されていることを認識していない場合である。
被害者の裸体の単なる隠し撮りについては、一般に、強制わいせつ罪におけるわいせつ行為には当たらず、盗撮を禁止する地方公共団体の条例違反5'や、のぞき見を処罰する軽犯罪法違反6)に当たるとされている。
もっとも、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて行ったわいせつ行為については、準強制わいせつ罪として処罰することとされ(刑法第178条第1項)、被害者が、被害時(犯人の側から言うと、行為時)には、わいせつ行為の被害に遭っていることを認識していない、ないし認識することができない状態であっても準強制わいせつ罪が成立し得ることからすると、被害者の裸体の隠し撮りにおいて、被害者が撮影されていることを認識していないことは、わいせつ行為に当たらない根拠となるわけではないと思われる。
そうすると、仮に、被害者の裸体の単なる隠し撮りがわいせつ行為に当たらないとするのが正当であるとするならば、その根拠は、撮影行為のみでは、カメラという機械を通じてではあるし、画像という記録が残るわけではあるが、単に、既に裸体となっている姿を見るという範時にとどまる限り、この行為単独では強制わいせつ罪におけるわいせつ行為'1と評価されるにまでは至っていないからであるというところに求められると思われる8'。
そして、隠し撮りを含め、撮影行為は、着衣を脱がせて裸にするなどの他のわいせつ行為と併せて行われることによって、強制わいせつ罪におけるわいせつ行為に該当し得ることになるものと考えられるのであるり。
(4)もちろん、強制わいせつ罪や強姦罪の犯人がその犯行状況を隠し撮りをする行為が、強制わいせつ罪におけるわいせつ行為に者たるかどうかの判断に当たっては、強制わいせつ罪における性的意図の要否及びその内容についてどのような見解に立つかにもよるが、そのような隠し撮りをすることについての被告人の意図等についても、別途検討する必要があろう。
本判決は、被告人が犯行状況を隠し撮りをした目的について、「録画を行った被告人の意図については、自己の性的興奮を高めることなど、検察官が主張するような事情も、可能性としてはあり得る」としたにとどまり、「被害者らとの間で後に紛争が生じた場合に、本件各デジタルビデオカセットをその内容が自らにとって有利になる限度で証拠として利用することを想定していた」との限度でのみ認定しており、隠し撮りをした行為について、「Bら4名に対する実行行為そのものを構成するものでなく、もとより被告人がこうした隠し撮りを行ったことをもって訴追されたわけでもない」としているとおり、公判における審理・判決の対象とはされなかったようである証拠関係を承知していない立場で軽々しく断ずることはできないが、本件において、被告人は、既に裸になった被害者を単に撮影したに過ぎないというにとどまらない。
本件犯行に当たって、被告人の指示により被害者を裸にさせて施術台に横たわらせ、アイマスクを着用させていた上、撮影行為とともに、被害者の乳房を直接もむなどのわいせつ行為や、姦淫行為に及ぶなどしていたのである。
そうすると、そのような隠し撮りをする行為について、その他の被告人による一連の行為と相候って強制わいせつ罪におけるわいせつ行為と評価し得るものに至っているものとして10'、審判の俎上に上げ、そのように認定する余地もあったように感じられる。
3 犯罪生成物件該当性について本件各デジタルビデオカセットは、犯罪供用物件として没収されたものであるが、これは、いわば、未だ犯行状況が録画されていないデジタルビデオカセットを撮影に用いたということであって、そこでは、撮影行為によって、犯行状況の画像が録画されたデジタルビデオカセットが存在するに至ったこと自体は、没収の対象となるか否かを検討する上で直接的に評価されたものとは言い難い。
そこで、撮影行為をも犯罪行為、つまり、強制わいせつ罪におけるわいせつ行為に当たるとした」で、犯罪行為たる撮影行為によって、犯行状況の画像が録画されたデジタルビデオカセットが存在するに至った犯罪生成物件として、当該デジタルビデオカセットを没収することはできないだろうか。
撮影行為によって、画像という電磁的記録(無体物)が生じているが、刑法第19条の規定による没収の対象は、有体物に限られるというのが、揺るぎなく確立された考え方であり、有体物であるデジタルビデオカセットそのものは犯罪行為の前後を通じて存在しており、犯罪行為によってデジタルビデオカセットという有体物が存在するに至ったものではない。
そして、強盗強姦罪の犯行において、犯人が姦浮する際の様子を撮影して記録されたビデオテープについて、犯罪生成物件として没収した原審の判断を否定して、犯罪供用物件として没収するとした東京高判平成22年6月3日判夕1340号282頁も、「〔刑法第19条第1項第3号〕の「犯罪行為によって生じ」た物とは犯罪行為によって作り出された物をいうものと解されるのであって、 上記各ビデオテープには強盗強姦の犯行がなければ撮影されなかった画像が記録されているものの、ビデオテープ自体は強盗強姦の犯行によって生じた物ではなく、同号に該当する物とはいぇないから、原判決には法令適用の誤りがある。
」としている。
しかしながら、犯罪行為によってデジタルビデオカセットという有体物が新たに存在するに至ったものではないとする上記の考え方を突き詰めていくと、犯罪生成物件に当たることについて争いのない文書偽造罪における偽造文書についても、その素材である有体物である紙そのものは偽造行為によって存在するに至ったものではないとして、犯罪生成物件に当たることが否定されてしまうことにもなりかねない。
そこで、犯罪生成物件の定義は、「当該物の存在ないしその現在の特性が、その作出を目的とした実行行為によって直接的に生じさせられたもの」とすべきであつて、前記東京高判におけるビデオテープが犯罪生成物件に当たらない理由について、強盗強姦罪は姦淫行為の録画を目的とする犯罪でないという直接目的連関性の欠如に求める見解がある(注17)。
たしかに、強盗強姦罪自体は、姦淫行為の録画を目的とする犯罪ではない。
また、撮影行為自体が犯罪行為とされていないのであれば、そもそも、録画された記録媒体について、「犯罪行為によって」生じたものということもできない。
しかしながら、被害者を姦淫する行為を撮影して記録媒体に録画する行為について、これをわいせつ行為という犯罪行為であると捉えた場合においては(注18)、文書偽造罪における偽造文書と同様に、デジタルビデオカセットのような記録媒体という素材に、犯罪行為たる撮影行為によって画像という電磁的記録を記録し、当該電磁的記録が記録された記録媒体という有体物を生じさせたとし、当該記録媒体を犯罪生成物件に該当するものとして没収することができると考える余地は、 上記東京高判を前提にしてもなお、未だ残されているように思われる。
文書偽造罪とは異なり、強制わいせつ罪において撮影行為は構成要件要素として明示されているものではないけれども、被害者を姦淫する行為を撮影して記録媒体に録画する行為がわいせつ行為という犯罪行為に当たることを認めることができるのであれば、記録媒体について、単に、犯罪行為の用に供したいわば素材としてではなく、わいせつ行為という犯罪の構成要件に該当する行為としての撮影行為によって、直接的に、画像という電磁的記録が記録された記録媒体を生じさせたものとして、これを没収することも、十分に考えられるのではないだろうかか5)例えば、東京都の公衆に若しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第5条第1項第2号は、「何人も、正当な理由なく、人を著しく差恥させ、又は人に不安を覚ぇさせるような行為であって」、「公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する11的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること」をしてはならないと規定し、その連反行為を処罰している。
6)軽犯罪法第1条第23′′は、「正当な理由がなくて人の住層、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を処罰するものとしている。
7)強制わいせつ罪におけるわいせつ行為の意義については、公然わいせつ罪等における「わいせつ」と同様に、徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的差恥心を害し、書良な性的道徳観念に反する行為をいうものといわれているが、保護法益に照らし、端的に、人の性的自由、性的感情を害する性質の行為を対象とすると解すべきであるなどともいわれている(前掲亀山‐河村67頁参照).8)しかしながら、他人の裸体等を撮影し、その動画・静止画を記録媒体に記録するという行為は、その裸体等の姿がその人の意思に反して記録に残されるものであるから、単に日で見るだけという行為とは異なるのではないかという感が拭えない。
特に、性的なプライバシーの程度が最も高いといえる性交等を含めた性的行為をしている状況を相手方の意思に反して撮影して記録に残す場合には、その感が強い9)撮影行為についてわいせつ行為に当たるとされた前掲注2)に掲げた裁判例も、裸にする行為をも併せてわいせつ行為に当たるとしている。
また、個室使所の人口扉の施錠を外して開扉し、個室使所内で和式便器にしゃがみ込んで用便中であった女性の姿態を背後から見る行為や、女性宅に侵人し、就寝中の女性の寝姿をビデオカメラで撮影しながら自慰行あをして女性の身体に向けて射精し、女性の着衣に精液をかける行為について、わいせつ行為に当たるとされた裁判例(前者について釧路地判平成14年2月28日公刊物未登載、後者について福岡地判平成13年10月17日公刊物未登載)があるが、裁判所は、前者については、「人が個室使所で用便をする ためには、着衣を引き下ろしてド半身を露出する代わりに、その姿態が他人の日に触れるのを防ぐため個=便所の人「1扉を開め、さらに施錠をするものであるから、相手方が個宅使所内で用使中であろうとの認識のもと、その姿態を眺めて自己の性的欲求を満足させる目的で、相手方が施錠した個室使所人11扉を解錠してこれを開扉し、その用便中の姿態を眺め、相手方をしてそれを自己の眼前にさらすことを余儀なくさせる行為は、自己の性的欲求を満足させるため無理矢理相手方の着衣を引き下ろしてその姿態を眺める行為と同等のものと評価することができる。
」(傍点は筆者による。
)として、わいせつ行為に該当すると判示し、後者については、「遅くとも相手方の着衣に精液をかけるに至った段階においては、乳房等への接触や接吻と同様に、相手方の性的自由を侵害するものと考えられるから、準強制わいせつ罪にいうわいせつな行為慨遂)に該当すると解するのが相当である。
」とした上で、黙苺専即々でヽマたキ?t沐悴'く`そ|てヽ、然肯本で行″。
当時1:やでてヽ、押モ々々ヾ直ちに被告人の行為を認識し得る状況にあったか否かは、同罪におけるわいせつな行為の成否を左右するものではないと解すべき」(傍点は筆者による。
)と判示している。
両裁判例についての解説として、松F裕子・警察公論58巻1号59真参照18)この場合には、撮影して録画すること自体が、撮影対象者の性的自由、性的感情を害するものであって、犯罪の「I的となっているともいえるのではなかろうか。

30年前の青少年淫行の刑事責任について


取材を受けたので出先で調べました。
施行時期や行為の点で条例に抵触しない場合は、違法とは言えない。

東京都の淫行処罰はH09~

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説 (平成23年7月)
p19
〔参考〕平成9年条例一部改正の特徴
平成9年の改正条例は、他県の青少年保護育成条例と比較して、
① いわゆる「淫行」概念をとらず、売買春等の相手方となった大人を処罰する買春等処罰規定を導入したこと、
② 処罰規定の導入に際し、青少年の基本的人権等への配慮、を条例に明記したこと、
③ 規制だけでなく、青少年の性的判断能力を育成するための施策を条例に明記したこと、
に大きな特徴がある。
他県のいわゆる「淫行処罰規定」は、「青少年に対するみだらな性行為又はわいせつな行為」を規制対象とし、処罰の範囲が広い上に、構成要件に、倫理的、主観的な側面があるため、青少年の性に関する行動全般を不良視するおそれや、構成要件が不明確になるおそれが指摘されていた。そこで、平成9年度の条例改正では、規制対象を「金品等の供与等を伴う性交又は性交類似行為及び周旋による性交又は性交類似行為」(買春等)とし、処罰の範囲を限定するとともに、構成要件の客観化、明確化を図っている。
・・・
p26
〔参考〕平成17年条例一部改正の概要
(2) 青少年の性に対する関わり方に関するもの
①保護者等は、安易な性行動により、人間形成が阻害されないよう、慎重な行動を促す啓発・教育を行うよう努める。心身の変化が著しい青少年に、特に慎重であるよう配慮を促すよう努める。
②青少年に情報を提供する者は、健全な育成を阻害する情報を提供しないよう、自主的な取組に努める。
③青少年とみだらな性交等の禁止。違反者に罰則(青少年は免責)

大阪府の条例はs59から。

大阪府青少年健全育成条例
第1 章総則(第1~9 条)
施行昭和59年3月28日大阪府条例第4号
一部改正昭和59年12月22日大阪府条例第57号

第3章青少年の健全な成長を限害する行為の禁止
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第18条
1 何人も、次に掲げる行為を行つてはならない。
(1) 青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
(2) 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

愛知県はs52から規制しています

愛知県青少年保護育成条例の解説s55
(いん行、わいせつ行為の禁止)
第9条何人も、青少年に対じて、いん行又はわいせつ行為をしではならない。
2 何人も、青少年応対して、前項の行為を教え、文は見せてはならない。
全部改正 昭和52年条例第8号〕

中山祐次郎「有罪か無罪か。どちらも地獄の外科医わいせつ容疑事件」

 性器接触を伴う医療行為については、従前は「正当行為」「性的意図がない」ということで処罰されませんでしたが、強制わいせつ罪に性的意図は必ずしも不要とされたので(大法廷h29.11.29)、「性的意図がないからok」という弁解が効かなくなり、「行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為もある。その上,同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない。そして,いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄であると考えられる。」ということになりました。
 こう説明されてもよくわかりませんよね。
 実はこの判例以降、わいせつの定義もできなくなっていて、処罰範囲もわからなくなっています。
 とりあえず、1対1で対応することがないようにしてください。

大法廷h29.11.29
(5) もっとも,刑法176条にいうわいせつな行為と評価されるべき行為の中には,強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められるため,直ちにわいせつな行為と評価できる行為がある一方,行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為もある。その上,同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない。そして,いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄であると考えられる。
 そうすると,刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。したがって,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし,そのような場合があるとしても,故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。

有罪か無罪か。どちらも地獄の外科医わいせつ容疑事件
2018/9/13 中山祐次郎(総合南東北病院外科)
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/kittenuu/201809/557795_2.html
もし有罪だったら。もし有罪だとしたら、いえ、もしあの先生がこんな行為をしていたとしたら、これは医者全体の信頼を大きく揺るがす問題です。全身麻酔が醒めやらぬ患者さんにわいせつ行為をするなど、もしあったとしたら卑劣極まりない行為ですよね。断罪されるべきです。医師、そして医療界全体への不信は高まることでしょう。

 こういうことを防ぐために、手術室に家族が入って術後までずっと監視するとか、患者さんの体につけた小型カメラでずっと医者を撮影するとか、逆に萎縮し同性でしか乳腺や婦人科領域は診療しない、などなるかもしれません。医療者と一般の人々の間の溝はこの一件で大きく広がるでしょう。お互い猜疑心の中で行われる医療。まさに地獄。心から、そうではないことを願っています。

 しかし、もし無罪だったらどうでしょうか。警察の無理筋な捜査と、薄い根拠で意味不明な長期間の勾留を許可した裁判所、そして実名と住所(当時はかなり細かいところまで報道されていました)と顔まで報道したメディアはどう責任を取るのでしょうか。もちろん1mmも責任は取らないでしょうから、我々医者や医療者はいっそう彼らへの不信を強めることでしょう。

 無罪だった場合、私や他の医療関係者はこれら関係機関へ強い反省と謝罪を求めることになります。そもそも起きていなかったことを一生懸命事件としてでっち上げ、ひとりの人間と家族の精神を破壊し、人生を狂わせたのです。そういう人たちがこの国の安全と正義を守っている。地獄でしかない。

 このように、どちらにも取れるようなことを言っている自分にもヘドが出ますが、とにかく本件はどちらに転んでも地獄が待っているのです。

 そして、医学的にみて重要な点は、術後せん妄に関連した性的な幻覚の可能性があるという点です。ここ日経Onlineのコラムで薬師寺先生は、この点についてこう書いていらっしゃいました。

「現実問題、取れる範囲の対策として、
(1)なるべく1人で診察をしない(特に若い女性)
(2)処置は全て詳細にカルテ記載する
というくらいしかありません」(明日は我が身か、医師わいせつ逮捕事件)
 本当におっしゃる通りです。

 将来的に、術後せん妄関連の性的幻覚による医療者への訴訟について、本気で対策をするとしたらどうすればいいのでしょうか。例えば、医者も患者も病室も、みんなビデオ録画し続けながら診療をする、などでしょうか。交通事故のときの証拠用として、ずっと録画しつづけるドライブレコーダーもすごく売れているそうですしね。いや、まさに地獄ですね。

 引き続き、経過を注視していかねばと思っております。それではまた次回。

「大阪は淫行特区」のワケ 生徒にわいせつ行為の教育実習生「不起訴」を考察

 大阪府条例の「専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。」は、兵庫県等の条例の「何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」と比較すると、手段の要件が限定されているので、犯罪となりにくいという解説です。
 これらの府県では、児童淫行罪と青少年条例との間に隙間ができています。

「大阪は淫行特区」のワケ 生徒にわいせつ行為の教育実習生「不起訴」を考察
https://headlines.yahoo.co.jp/cm/main?d=20180916-00008552-bengocom-soci&s=create_time&o=desc&p=1

大阪府青少年健全育成条例
(淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第三十九条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
二 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
大阪府青少年健全育成条例の解説h26
2 第2号
性的欲望を満足させるため、心身ともに未熟な青少年を、正常な判断を行わせないような状態において、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うことを禁止するものである。
ア 「専ら」とは、概ね7割ないし8割程度以上をいうが、「専ら」に該当するかは、当該者の行為の態様、動機などを総合的に勘案することになる。
イ 「満足させる目的で」とは、行為者自らだけでなく、第三者の性的欲望についても含めるものである。
ウ 「威迫し」とは、暴行、脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により心理的威圧を加え、相手方に不安の念を抱かせることをいう。例えば、暴力団の構成員であると言ってすごむことなどが挙げられる。
エ 「欺き」とは、嘘を言って相手方を錯誤に陥らしめ、又は真実を隠して錯誤に陥らしめる行為をいう。例えば、婚姻をするつもりはないのにもかかわらず婚姻をするつもりであると言うことなどをいう。
オ 「困惑させて」とは、立場を利用したり、言語や態度により相手方を惑い困らせることをいう。例えば、雇用や金銭融通の恩義その他義理人情の機微につけ込むことや、職場の上司、教師などの立場を利用することにより、青少年が拒否の意思表示をできなくすることなどをいう。
・・・・・・・・
山口県青少年健全育成条例の解説h19.
(みだらな性行為又はわいせつの行為の禁止等)
第12条何人も、青少年に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
(j)金品その他の財産上の利益を供与し、若しくは役務を提供し、又はこれらの供与若しくは提供を約束して性行為又はわいせつの行為をすること。
(2) 相手方を欺き、若しくは困惑させ、又はその困惑に乗じて性行為又はわいせつの行為をすること。
(3) あっせんを受けて性行為又はわいせつの行為をすること。
2 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつの行為を教え、又はこれらを見せてはならない。
解説
3 欺岡・困惑(第2号関係)
本条第1項第2号は、青少年の精神的、知的な未熟さや情緒的な不安定に乗じて性行為又はわいせつの行為をする場合であり、例えば、家出中の少女が金銭も宿泊する所もなく途方に暮れているのに付け込んで性行為又はわいせつの行為をする場合が含まれる。
(1) 「欺き」とは、青少年をだまして真実と合致しない観念を生ぜしめる場合をいうものである。
(2) 「困惑させ」とは、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意思を拘束することによって精神的に自由な判断ができないようにすることをいうものである。
(3) 「困惑に乗じて」 とは、直接医惑させなくても、既に上記の困惑に陥っている状態に付け込むことをいうものである。
・・・
長野県子どもを性被害から守るための条例の解説書
【威迫等による性行為等の禁止】
第17条第1項
何人も、子どもに対し、威迫し、欺き若しくは困惑させ、又はその困惑に乗じて、性行為又はわいせつな行為を行ってはならないb (罰貝ll : 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)
l 「何人も」とは、県民はもとより、旅行者、滞在者を含み、年齢、性別、国籍等を問わず長野県内にいる全ての者をいう。また、行為者が子どもの場合でも本条違反に該当するが、第20条(適用除外)の規定により罰則は適用しない。
2 「子ども」とは、18歳未満の者をいう。
なお、婚姻の有無は問わない。
3 「威迫」とは、暴行、脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により、心理的威圧を加え、相手方に不安の念を抱かせることをいう。
4 「欺き」とは、嘘を言って相手方を錯誤に陥らせ、又は真実を隠して錯誤に陥らせる行為をいう。
5 「困惑」とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう。
6 「困惑に乗じて」とは、困惑状態を作為的に作り出した場合だけではなく、既に子どもが何らかの理由により困惑状態に陥っており、それにつけ込んで(乗じて)性行為等を行う状況をいう。
7 「性行為」とは、「性交及び性交類似行為」と同義である(昭和40年7月12日新潟家裁長岡支部決定)。『性交類似行為』とは、実質的にみて、性交と同視し得る態様における性的な行為をいい、例えば、異性間の性交とその態様を同じくする状況下におけるあるいは性交を模して行われる手淫・口淫行為・同性愛行為などであり、児童買春・児童ポルノ禁止法における性交類似行為の解釈と同義である。
8 「わいせつな行為」とは、「いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的差恥心及び嫌悪の情をおこさせる行為」をいう(昭和39年4月22日東京高裁判決)。具体的には、陰部に対する弄び・押し当て、乳房に対する弄び等がこれにあたる。

 幼児ABにつき、Aの陰茎をBの口腔内に入れさせてそれぞれに口腔性交をさせるという強制口腔性交罪を観念的競合とした事例・ABに,被告人が同児童らの陰茎を触る姿態,同児童らに性器を露出させる姿態等をとらせ,これらを携帯電話機の撮影機能を用いて撮影するという姿態をとらせて製造罪を観念的競合とした事例(さいたま地裁H30.7.30)

 このパターンが強制性交等になるというのは、法文上よくわかりません。
 

(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

「刑法の一部を改正する法律」の概要
今井將人
研修(平29. 8,第830号)法の焦点
(2)要件
「性交」とは,改正前の刑法177条の「姦淫」と同義であり,膣内
に陰茎を入れる行為をいう。
「肛門性交」とは肛門内に陰茎を入れる行為をいい, 「口腔性交」とは口腔内に陰茎を入れる行為をいう(注4)。
「性交」, 「肛門性交」及び「口腔性交」を合わせて「性交等」ということとされており, これらの行為には, 自己又は第三者の陰茎を被害者の膣内等に入れる行為だけでなく, 自己又は第三者の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為(入れさせる行為)を含む。具体的には,女性が行為主体となって,男性の陰茎を自己の膣内に入れさせる行為や,男性が別の男性の陰茎を自己の肛門内に入れさせる行為も,強制性交等罪による処罰対象となる。

(注4)例えば,陰茎を口腔内に全く入れずに単に舌先でなめる行為や,女性の外陰部をなめる行為などは, 「口腔性交」には当たらない。

【文献番号】25561082
強制性交等,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
さいたま地方裁判所
平成30年7月30日第3刑事部判決
       判   決
       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 ■(当時6歳)及び■(当時4歳)がいずれも13歳未満のものであることを知りながら,同人らに性交等をさせようと考え,平成29年9月18日午後零時30分頃から同日午後3時頃までの間に,さいたま市α区■の駐車場及び同区■の■駐車場において,同人らに対し,その衣服を脱がせて全裸にした上,前記■に前記■の陰茎を手淫させ,被告人が前記■の陰茎を手淫し,前記■の陰茎を前記■の口腔内に入れさせてそれぞれに口腔性交をさせて,被告人が前記■の陰茎を手淫し,もって性交等をした,
第2 前記■(当時6歳)及び前記■(当時4歳)がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午後1時50分頃から同日午後2時23分頃までの間,前記各駐車場において,別表記載のとおり,被告人が同児童らの陰茎を触る姿態,同児童らに性器を露出させる姿態等をとらせ,これらを携帯電話機の撮影機能を用いて撮影し,その静止画データ37点及び動画データ3点を同携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録して保存し,もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)《略》
(累犯前科)
(法令の適用)
罰条
判示第1の所為のうち
 ■を口腔性交した点 刑法177条後段
 ■を口腔性交した点 刑法177条後段
判示第2の各所為 被害児童ごとに包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項2号,3号
科刑上一罪の処理
判示第1の各強制性交等罪につき
 刑法54条1項前段,10条(犯情の重い前記■に対する強制性交等罪の刑で処断)
判示第2の各児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の罪につき
 刑法54条1項前段,10条(犯情の重い前記■に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の刑で処断)
刑種の選択
判示第2の罪につき 所定刑中懲役刑を選択
判示第1及び第2の各罪の刑につき
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に刑法14条2項の制限内で法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
(量刑の理由)
(検察官佐野嘉信,私選弁護人中原潤一(主任),同関哉直人,同山田恵太各出席)
(求刑:懲役6年)
平成30年7月30日
さいたま地方裁判所第3刑事部
裁判長裁判官 松原里美 裁判官 結城剛行 裁判官 須川智裕

20年前の児童淫行につき「女子生徒側から男性教諭に当時を振り返る電話があったことを受けて、教諭が現在勤めている高校の校長に打ち明け、問題が発覚し」懲戒免職になった事例

 自首すれば停職くらいになると期待したんでしょうか? 児童淫行罪は半分以上が実刑になる重罪ですので、甘く考えないことです。
 まず、弁護士に相談してください。 
 懲戒免職になると、退職金も失うし、教員免状も失効して、官報に実名が載ることになります。
 行為後に依願退職して再就職していれば、懲戒処分はありませんので、そういう回避行動を提案しています。
 「女子生徒側から男性教諭に当時を振り返る電話があったことを受けて、教諭が現在勤めている高校の校長に打ち明け、問題が発覚した」というのであれば、弁護士に相談した上で、打ち明けないで、依願退職した方がリスクが小さいということになります。そういう選択で、一旦転職して、刑事責任・民事責任も処理した後、報道もされず、私学の教員になっている人がたくさんいます。

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12249-086876/
20年前に“女子生徒と性的関係” 都立高教諭を懲戒免職
2018年09月12日 21時00分 TOKYO MX NEWS

20年前に“女子生徒と性的関係” 都立高教諭を懲戒免職
 東京都教育委員会は、20年ほど前に勤務していた高校の女子生徒と性的な関係を持ったとして、59歳の男性教諭を懲戒免職処分にしました。
 都教委によりますと、多摩地域の都立高校に勤務する59歳の男性教諭は、1999年11月から2001年3月まで、当時勤務していた高校で担任をしていた女子生徒と合意の上、複数回にわたって性行為を行いました。今年2月になって、女子生徒側から男性教諭に当時を振り返る電話があったことを受けて、教諭が現在勤めている高校の校長に打ち明け、問題が発覚したということです。都教委は9月12日付でこの男性教諭を懲戒免職処分にしました。男性教諭は「教師として取り返しのつかないことをしてしまった。反省し、後悔している」と話しているということです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180912/k10011626911000.html
19年前に教え子と性的関係 高校教諭を懲戒免職 東京
2018年9月12日 18時54分
東京・多摩地域にある都立高校の59歳の男性教諭が、19年前の平成11年からおよそ1年半の間、当時の教え子の女子生徒と性的な関係を持っていたとして、東京都教育委員会は12日付けで、この教諭を懲戒免職の処分にしました。
懲戒免職の処分を受けたのは、東京・多摩地域にある都立高校の59歳の男性教諭です。
都の教育委員会によりますと、この教諭は19年前の平成11年からおよそ1年半の間、当時、担任を務めていたクラスの女子生徒と性的な関係を持つなどしていたということです。
この教諭はことし2月になって、教え子だった女性本人から当時の関係について指摘を受けたため、翌月に現在の高校の校長に当時の事実を報告し、問題が発覚したということです。
都の教育委員会は平成11年の時点で、教諭が児童や生徒にわいせつな行為をした場合、懲戒免職にするという処分の基準を設けていて、この基準に従って12日付けで処分を行ったということです。
都の教育委員会によりますと、この教諭は調査に対して、「教師として取り返しのつかないことをしてしまった。反省し、後悔している」と話しているということです。
一方、都の教育委員会は処分した教諭の名前や所属する学校名については、女性の人権に配慮する必要があるとして公表していません。

科刑上一罪である建造物侵入罪と盗撮(埼玉県迷惑行為防止条例違反,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)の比較対照においては,重点的対照主義の立場に従し,重い罪である建造物侵入罪に定められた「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が処断刑となるとした事例(東京高裁h30.5.24)

第一三〇条(住居侵入等)
 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

 弁護人は50万円くらいの罰金にしろと主張したんでしょうか。



速報番号3646号
建造物侵入,埼玉県迷惑行為防止条例違反
平成30年5月24日
東京高等裁判所第2刑事部控訴棄却
【第一審】さいたま簡易裁判所
科刑上一罪である建造物侵入罪と盗撮(埼玉県迷惑行為防止条例違反,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)の比較対照においては,重点的対照主義の立場に従し,重い罪である建造物侵入罪に定められた「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が処断刑となるとした事例
裁判要旨
数個の罪が科刑上一罪の関係にあるとき,数個の罪の比較対照において,それぞれに選択刑がある場合,法定刑における最も重い刑のみを比較対照すべきとする重点的対照主義の立場によるべきであることは判例実務上確立しているところ,判例上,重点的対照主義は適宜修正されているが,その修正は,重点的対照主義を形式的に適用するだけでは,他の法条の最下限の刑よりも軽く処罰することはできないという,刑法54条1項の趣旨に反する結果になる場合に行われているのであって,本件では,重い罪である建造物侵入罪の刑によって処断することに不都合はなく,判例により重点的対照主義の適用が修正されているものとは事案を異にする。
裁判理由
所論は,仮に,被告人に科すべき刑を罰金10万円とすることが被告人の罪責として軽いということであっても,罰金刑ではなく懲役刑を選択することは,不当に重い量刑であり,10万円を超え50万円以下の罰金刑で処断すべきである,最高裁判例は,形式的に重点的対照主義を適用するのではなく,刑法54条1項の規定の趣旨等に鑑み,適宜,重点的対照主義を修正しており(最高裁昭和28年4月14日第三小法廷判決・刑集7巻4号850頁,同平成19年12月3日第一小法廷決定・刑集61巻9号821頁参照),原判決が,重い罪に選択的に規定されている罰金刑より軽い罪に選択的に規定されている罰金刑が重い場合に,これらを総合判断して罰金刑については軽い罪の罰金刑にしたがうものとする判断は,重点的対照主義として確立された最高裁判例に根本的に違背するものであるとして,10万円を超える罰金刑で処断することはできないと判断しているのは最高裁判例の解釈を誤ったものである,という。そこで検討すると,数個の罪の比較対照において,それぞれに選択刑がある場合に,刑種選択をする前の法定刑における最も重い刑のみを比較対照すべきとする重点的対照主義の立場によるべきことは判例実務上確立しているところである。そして,判例上,重点的対照主義が,刑法54条1項の趣旨等に鑑み,適宜,修正されていることは所論が指摘するとおりであるが,その修正は,刑法54条1項が,数個の罪名中最も重い刑で処断することに加え,他の法条の最下限の刑よりも軽く処罰することはできないという趣旨を含むと解されるところから,例えば,重い罪には罰金刑が選択刑としてあるが,軽い刑には懲役刑しかない場合(前記昭和28年判例の事案)や,重い罪には懲役刑のみしかないが,軽い罪には罰金刑の任意的併科の定めがある場合(前記平成19年判例の事案)など,重点的対照主義を形式的に適用するだけでは,上記の趣旨に反する結果になる場合に行われているのである。本件では,刑法54条1項の趣旨に照らし,重い罪である建造物侵入罪の刑によって処断することに不都合はなく,判例により重点的対照主義の適用が修正されているものとは事案を異にする。そもそも,選択刑の定めがある数個の罪について,その選択刑のそれぞれを比較して,それぞれの重い刑をもって処断刑を形成するというのは,重点的対照主義を修正するものではなく,刑法施行法3条3項が規定する重点的対照主義に反するものであり,判例とは立場を異にする見解である。原判決が,重い罪に選択的に規定されている罰金刑よりも軽い罪に選択的に規定されている罰金刑が重い場合に,これらを総合判断して罰金刑については軽い罪の罰金刑にしたがうものとする判断は,重点的対照主義として確立された最高裁判例に根本的に違背するものであるとしたことに誤りはない。
参照条文
刑法130条前段,埼玉県迷惑行為防止条例12条2項1号,2条4項刑法54条1項,10条,刑法施行法3条3項
備考

教育実習生による生徒に対する淫行が、起訴されない理由~~生徒にわいせつ行為「起訴相当」 大阪検審が議決、教育実習生に

 大阪府警大阪地検としては、一応師弟関係だから、児童淫行罪を検討するのですが、こういう判例もあるし、実習生の前例もないので、教育実習生というのは権限もなく影響力が弱いので、児童淫行罪を諦めます。

平成26年(あ)第1546号 児童福祉法違反被告事件
平成28年6月21日 第一小法廷
決定
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人竹永光太郎の上告趣意のうち,憲法31条違反をいう点は,児童福祉法34条1項6号の構成要件が所論のように不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
所論に鑑み,職権で判断する。
児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,同法の趣旨(同法1条1項)に照らし,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,同号にいう「淫行」に含まれる。
そして,同号にいう「させる行為」とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが(最高裁昭和39年(あ)第2816号同40年4月30日第二小法廷決定・裁判集刑事155号595頁参照),そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である。
1これを本件についてみると,原判決が是認する第1審判決が認定した事実によれば,同判示第1及び第2の各性交は,被害児童(当時16歳)を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり,同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は,校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し,ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んでいることが認められる。
このような事実関係の下では,被告人は,単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず,同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められる。
したがって,被告人の行為は,同号にいう「児童に淫行をさせる行為」に当たり,同号違反の罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小池 裕 裁判官 櫻井龍子 裁判官 山浦善樹 裁判官池上政幸 裁判官 大谷直人)

 次に青少年条例違反を検討するのですが、他府県と比べると、大阪府条例は威迫・欺き・困惑が要件になっているので、成立しにくくなっています。
 福岡県青少年条例について大法廷昭和60年10月23日が「本条例10条1項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。」と定義した行為のうち、大阪府条例では「威迫し、欺罔し又は困惑させる」の場合(第1類型)だけを処罰します。

大阪府青少年健全育成条例
(淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第三十九条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
二 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
・・
比較
兵庫県少年愛護条例
(みだらな性行為等の禁止)
第21条
1 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。

大阪府青少年健全育成条例の解説h26
2 第2号
性的欲望を満足させるため、心身ともに未熟な青少年を、正常な判断を行わせないような状態において、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うことを禁止するものである。
ア 「専ら」とは、概ね7割ないし8割程度以上をいうが、「専ら」に該当するかは、当該者の行為の態様、動機などを総合的に勘案することになる。
イ 「満足させる目的で」とは、行為者自らだけでなく、第三者の性的欲望についても含めるものである。
ウ 「威迫し」とは、暴行、脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により心理的威圧を加え、相手方に不安の念を抱かせることをいう。例えば、暴力団の構成員であると言ってすごむことなどが挙げられる。
エ 「欺き」とは、嘘を言って相手方を錯誤に陥らしめ、又は真実を隠して錯誤に陥らしめる行為をいう。例えば、婚姻をするつもりはないのにもかかわらず婚姻をするつもりであると言うことなどをいう。
オ 「困惑させて」とは、立場を利用したり、言語や態度により相手方を惑い困らせることをいう。例えば、雇用や金銭融通の恩義その他義理人情の機微につけ込むことや、職場の上司、教師などの立場を利用することにより、青少年が拒否の意思表示をできなくすることなどをいう。

 児童淫行罪だけを念頭に捜査していると、「先生に求められて内申が悪くなるなど考えて逆らえませんでした」などと師弟関係で逆らえなかったかという点に重点が置かれて、「困惑しました」等という威迫・欺き・困惑の調書を取っていないので、今さら罪名変更しづらいと思います。

生徒にわいせつ行為「起訴相当」 大阪検審が議決、教育実習生に
2018.09.10 共同通信 社会 (全390字) 
 大阪第2検察審査会は10日までに、実習先の中学校の生徒にわいせつ行為をしたとされる教育実習生について大阪地検が不起訴とした処分を不当とし、「起訴相当」と議決した。8月23日付。

 議決書によると、実習生は大阪府内の中学校で授業をし、終了後に14歳だった生徒と大阪市内の駅で待ち合わせ、ホテルの部屋でわいせつな行為をした。大阪地検児童福祉法違反容疑で捜査したが、3月30日に不起訴とした。生徒が処分を不服とし、検審に審査を申し立てた。

 議決書は「自己の欲望を満足させるため、生徒の興味をあおって誘導した。生徒の未熟さに乗じ、行為を拒否するのが困難な状況を作出した」と指摘。「中学生の判断能力と責任を成人の場合と同様とした不起訴処分には到底納得できない」とした。

 その上で「仮に児童福祉法違反に問うことに法律上の問題があっても、府青少年健全育成条例には明らかに違反する」と判断した。

共同通信社


 被疑事実に「立場利用」が記載されていないので、この時点で児童淫行罪は成立しません。
 実習生に影響関係の基礎となる立場がないので、立場利用が証明できません。
 最決平成28年6月21日の要件を検討した形跡もないし、大阪府条例も深く検討してないので、検察庁は再捜査して、判例の要件を潰して、再度不起訴にするような気がします。

議決の趣旨
本件不起訴処分は不当である。起訴を相当とする
議決の理由
1 被疑事実の要旨
大阪府内の中学校に教育実習生として派遣され、教壇に立つなどしていたものであるが、同校の生徒である申立人(当時14歳)が18満たない児童であることを知りながら、大阪市内のホテルの客室内において、同児童をして自己を相手に性交させ、もって児童に淫行させる行為をしたものである。
2 検察審査会の判断
被害児童は、被疑者に対し友好的な感情を持ち、被疑者と被害児童との関係性については、常勤の教師と生徒に比べ相当緩やかな上下関係であったところ、授業及び勤務終了後に地下鉄○○駅で待ち合わせ、ホテルに同行した。
被害児童が、被疑者は成績評価には関与しないため、不利益等を被る可能性があるとした不安を感じることはなかったこと、物品等を受け取ることで交際がなされていた事実はないこと、被疑者から威圧的な言動を受けたと認められる証拠もないことから、被疑者が、被害児童に淫行を拒否することが困難と感じさせる状況を作出したと認めることができないか否かについて、当検察審査会は、次のとおり判断した。
(1) 中学生に対する教育現場における教育実習生は、「先生」の立場であって、感情や感覚が合えば、信頼して手本とできる人物であり、単なる上下関係というより、安心して従属できる存在である。
(2) 当該被害児童は、他の同級生からも人気のある被疑者と親しくすることで周りの生徒たちに対し優越感を得ており、興味のある話やその関係を継続したいと思っていた。精神的に弱い面があり、友人が少ない被害児童にとっては、被疑者と親しくできる関係は、居心地よく壊したくない思いが大きかったものと思われる。
(3) 被害児童が被疑者からの誘いを断ることは、 (1)の信頼関係の下、 (2)の関係を断ち切ることになると思うがゆえに勇気を要し、提案を拒否することが困難な状況に陥ったと考え、こ被害児童の行動の是非は別として、被疑者との約束は責務と感じて果たしたものと思われる。
(4) 被疑者は、教育実習に関する誓約書に署名押印しているがこれに反し、そもそも誓約内容に同意できないと思っていた項目が含まれていたなどと説明しており、自分本位であって、関係機関や生徒との信頼を反故にした。
(5) 中学生が成人のような感覚で振る舞うことは、背伸びしたい年頃ということもあって、これ自体は何ら法に触れることはないところ、触法行為について、未成年者にその意思、判断及び責任を成人の場合と同等に扱うことはできないと考える。
(6)本件現場であるホテルに入室後、行為実勢の確認が何度か行われただろうと思われる双方の供述はあるが、被疑者から「中止するという選択肢」の提示が一切なかったことは、被害児童の意思を積極的に確認したものとは言い難い。
(7) 性交等は興味本位で行うものではなく、生命を尊ぶ行為であることを説明した上で、的確な判断ができる年齢までは、安易に行うものではない旨の助言や指導がなされて然るべきところ、被疑者は、興味を煽り、自己の欲望を満足させるため、被害児童を誘導したというべきである。
(8) 大人の行動に興味を向けさせ、実行しやすい状況を提供することは、正にそそのかしであって、本件は、被疑者の目論みどおりに進んだ計画的なものであったといえる。
(9) 被疑者の行為は、被害児童からの信頼を利用して、未知な性行為について好奇心と興味をそそらせ性行為を実行することを提案し、本件被害児童を大人として扱うことで対等な関係だと位置付けて行われたものである。
以上のことを総合考察すると、当検察審査会としては、被疑者が被害児童の未熟さに乗じ、淫行を拒否することに困難な状況を作出したといえると判断するため、中学生の判断能力とその責任を成人の場含と同様視された不起訴処分には、到底納得できない。
なお、仮に児童福祉法違反を問うことに法律上の問題があったとしても、大阪府青少年健全育成条例には、被疑者は被害児童を欺き又は困惑させて淫行させたという点で、 明らかに違反しているものと考える


追記2019/03/05
 前記のとおり、改めて不起訴になりました。
 児童淫行罪の「立場利用」とか「影響関係」の証拠が取れないからだと思います。

https://mainichi.jp/articles/20190304/k00/00m/040/259000c
わいせつ「起訴相当」議決の男性、改めて不起訴 大阪
毎日新聞2019年3月4日 23時49分(最終更新 3月5日 09時47分)
 中学生にわいせつ行為をしたとして児童福祉法違反容疑で送検され、不起訴処分になっていた元教育実習生の男性について、大阪地検は4日、改めて不起訴処分にした。大阪第2検察審査会が昨年8月に「起訴相当」と議決し、再捜査していた。
 地検は処分の理由を明らかにしていない。男性は実習先の中学校の生徒にわいせつ行為をしたとして昨年1月に大阪府警に逮捕され、同3月に不起訴になっていた。【高嶋将之】

「マッサージ店や事務室など私的空間で成人を盗撮する行為を取り締まる全国一律の法令はない。」(2018.07.12)→「「私的な場所では迷惑防止条例違反に該当しないこともある」と説明。トイレや浴場など以外の衣服を脱がない場所では、「のぞき見」を禁じた軽犯罪法にも当たらないとした。」(2018.9.9)

http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2018/07/20/000000
で指摘されたからか「窃視罪」に気付いたようです。

 迷惑条例は、基本的には社会的法益の罪ですので、私的空間には適用しにくい罪です。一部地域では「公共の場所」を撤廃して、軽犯罪法との衝突が問題になっています。
 羞恥心・性的自由等個人的法益を保護するには、別罪を設けることが望ましい訳ですが、撮影行為はわいせつ行為とされることがあるので、強制わいせつ罪の「わいせつ」の定義とか「強制」を外すような議論になります。

軽犯罪法
第一条[軽犯罪]
 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

盗撮罪:「新設を」弁護士団体訴え 宮崎の事件契機に
2018.07.13 
 全国の弁護士有志でつくる「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」が12日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し「盗撮罪」の新設を訴えた。盗撮は駅や路上など公的な場であれば自治体の迷惑防止条例、相手が18歳未満なら児童ポルノ禁止法に違反するが、マッサージ店や事務室など私的空間で成人を盗撮する行為を取り締まる全国一律の法令はない。フォーラムは「刑法に盗撮罪を新設し盗撮は性犯罪と位置づけてほしい」と求めた。

 盗撮を巡っては、宮崎市の元マッサージ店経営者が女性客への強姦(ごうかん)罪などに問われた事件で、性的暴行を盗撮したビデオ原本と引き換えに弁護士が被害者に示談を求めたため、被害者はビデオ原本の没収を求めた。起訴されていない盗撮のビデオを没収できるかが争われたが、宮崎地裁は2015年12月にビデオ原本を没収。最高裁も先月、地裁判決を支持して没収を認めた。

 フォーラムの高橋正人事務局長は「性的な盗撮被害は多いが、取り締まる条例がある自治体とない自治体があるため罪に問えるかは地域格差がある。全国一律に取り締まる法整備をしてほしい」と主張した。

◎刑法に「盗撮罪」新設提案 犯罪被害者支援 弁護士らシンポ 東京 福井からも実態訴え
2018.09.09 
刑法に「盗撮罪」新設提案
犯罪被害者支援 弁護士らシンポ 東京
福井からも実態訴え
 全国の弁護士有志でつくる「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」は8日、東京都内でシンポジウムを開き、刑法に「盗撮罪」を新設するよう提案した。盗撮を処罰する迷惑防止条例自治体によって異なる上、私的な場所での盗撮は摘発できないケースがあると指摘。「盗撮や画像拡散などに対して、深刻な被害実態に見合う、より重い規制をすべきだ」と訴えた。

 「性犯罪のない社会を目指して」と題して開かれ、被害者支援関係者や弁護士ら約130人が聴講した。

 盗撮罪の必要性を訴えた弁護士は、▽社長が社長室で秘書のスカート内を盗撮▽マッサージ店で店主が施術中の客を盗撮-などのケースを挙げ、「私的な場所では迷惑防止条例違反に該当しないこともある」と説明。トイレや浴場など以外の衣服を脱がない場所では、「のぞき見」を禁じた軽犯罪法にも当たらないとした。

 福井から参加した同フォーラム副代表の川上賢正弁護士(65)は「福井でも被害に気付いていなかったり、被害に悩んでいたりする人は多いはず。深刻な被害実態に法律が追い付いていない。刑法でしっかり刑罰を科し犯罪抑制につなげるべきだ」と話していた。

 盗撮した男性の治療プログラムに携わる精神保健福祉士社会福祉士の齊藤章佳さん(39)は、上川陽子法相が聴講する中、406人のデータを紹介し▽盗撮方法の7割はスマートフォンスマホのうち9割はシャッター音を消す「無音アプリ」を使用▽20、30代が全体の7割―と説明した。(嶋本祥之)

わいせつ容疑の乳腺外科医の裁判、今日再開

 大法廷h29.11.29が性的意図不要としたので、こういうのは構成要件レベルでは準強制わいせつ罪を疑われるリスクも増えますよね。
 録画は難しいですが、女性看護師を立ち会わせるとか予防策を徹底しないとね。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201809/557745.html
準強制わいせつで起訴された乳腺外科医の弁護団に聞く
わいせつ容疑の乳腺外科医の裁判、今日再開
2018/9/10 増谷 彩=日経メディカル

 2016年8月25日、右乳腺腫瘍摘出手術後で麻酔が残る女性患者に対し、術後診察に訪れた医師がわいせつ行為をしたとして、柳原病院(東京都足立区)の非常勤外科医が準強制わいせつで起訴された事件の裁判が今日、再開された。

 この事件の初公判が開かれたのは、2016年11月30日。そこから2年弱の時間が空いたが、その間に証拠の整理が行われてきた。弁護団によれば、特に検察側の証拠開示に時間が掛かったという。

争点はDNA型の鑑定と定量

 本事件の初公判では、検察側が女性の胸部から、アミラーゼ反応を認め、そこから男性のDNA型が検出されたことを指摘。逮捕後に被告医師の口腔粘膜を採取して調べた結果、DNA型が一致していた、との見解を示していた(わいせつ容疑の外科医、初公判で無罪を主張)。

 しかし弁護団によると、手術当日、被告医師が患者や患者の知人と話しながら患者の胸部を撮影した際や、手術台で他の医師と話し合いながら患者の胸部にマジックでマークをした際、超音波検査をした際に被告医師がマスクを付けていなかったことが明かになっており、被告医師のDNAを含んだ唾液の飛沫が胸部に付着した可能性があるという。また、被告医師は、手術前に、手術してない方(左胸)も触診をしていたため、手指を介して被告医師のDNAが付着した可能性もある。こうしたことから弁護団は、以前から「女性の胸部から、唾液反応と被告医師のDNA型が出ることはおかしくない」と主張していた。

 このアミラーゼ反応やDNA型鑑定方法の適切さや科学性・再現性に加え、女性の胸部から採取されたDNAが被告医師のものだとしても、それによって「なめたことにより付着した」と断定できるのかどうかが争点となる。

 検察側は、採取されたDNAの量により、そのDNAが唾液の飛沫や手指を介したものではないと断定できると主張している。弁護団は、検察側に検体の保管状況、鑑定の方法や時間、使用した薬品の量など、鑑定の過程の開示を求めてきたが、開示に時間がかかった上、全ての過程は開示されなかったという。

 弁護団は、法医学者に依頼し、適切な方法での再現実験を実施。唾液の飛沫、触診、なめる行為において採取されるDNA型やDNAの量を計測し、結果の分析や鑑定書の作成などを行ったという。その結果は、今後の公判の中で明らかにされる。

 弁護団は「唾液からDNAが検出されるのは、口腔内の細胞が剥がれたり、口腔内の出血で細胞が唾液に混じるため。そうした条件によって唾液から検出されるDNAの量は大きく変わる」と話している。

「女性患者はせん妄状態だった」

 また、被害者とされる女性がせん妄状態であったとの主張も引き続き行っていく意向だ(準強制わいせつ容疑の医師「やっておりません」)。手術では、麻酔を13時35分に開始し、14時40分に終了した。手術開始は14時、終了は14時32分だった。

 麻酔薬は、笑気ガスを13時37分に開始し14時22分に終了(総量60L)、セボフルラン吸入麻酔液15mLを13時37分に開始し14時32分に終了、プロポフォール静注1%20mL(200mg)を13時37分に使用、ペンタゾシン5mgを14時に使用、ジクロフェナクナトリウム50mg坐剤を13時39分に使用した。

 こうした麻酔薬や鎮痛剤の使用量やそれぞれの副作用、病室での女性の言動、当時の状況などから、せん妄状態であった可能性を示す精神科医の鑑定意見書などを作成しているという。

 勾留状の被疑事実では、右乳腺腫瘍摘出手術の女性患者に対し、5月10日の午後2時45分ごろから同日午後2時50分ごろまでの間にわいせつ行為をし、同日午後3時7分ごろから同日午後3時12分ごろまでの間に自慰行為をするなどわいせつ行為をしたとされていた。一方で起訴状では、2016年5月10日午後2時55分ごろから同日午後3時12分ごろまでの間、病室のベッドに横たわる患者に対し、着衣をめくって左乳房を露出された上、その左乳首をなめるなどし、わいせつな行為をしたとしており、「自慰行為」の表記や時刻などが変わっていた(患者への準強制わいせつ罪で外科医を起訴)。

 弁護団は「検察側の主張する事実が時間が経つにつれて変化していること、DNAや唾液に関する鑑定が科学的とは到底言えないことなど、ずさんな点を指摘したい」と話している。

 被告医師は、2016年8月25日に女性患者へのわいせつ容疑で逮捕され、柳原病院は抗議声明を発表していた(わいせつ容疑で医師逮捕、病院が抗議声明)。その後、9月6日には勾留理由開示公判が行われたが勾留は続き、9月14日に起訴となった。被告医師は身体拘束が続いていたため、医療関係者有志で作った「外科医師を守る会」が早期釈放を求める嘆願署名を東京地方裁判所に提出(外科医の早期釈放求め2万筆弱の嘆願署名を提出)。初公判後に保釈されている

5/18逮捕→8/17初公判・論告(求刑5年)・弁論→9/7 判決(懲役3年6月)(仙台地裁H30.9.7)

 5年求刑なのに、1回で結審して、実刑になっています。情状立証が尽くされていない感じです。
 被害者は数人いると思われます。

https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201805/20180519_13030.html
勤務先の保育所で女の子の裸撮影し逮捕の保育士、事件当時は仙台市の臨時職員
 仙台市は18日、岩沼署が児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで17日に逮捕した保育士容疑者=は事件当時、市立保育所の臨時職員だったと発表した。
 岩沼署によると、逮捕容疑は2016年7月27日、勤務先の保育所で、通っていた女の子の裸をスマートフォンで撮影し、児童ポルノを製造した疑い。
 市によると、容疑者は16年4月から17年3月まで市立保育所に勤務。14年1~3月にも別の市立保育所で働いていた。市はいずれの保育所も名前や所在地を明らかにしていない。
 市は二つの保育所の保護者に対し、19日にも文書で事件の概要を報告する。事件当時の保育所に在籍していた子ども約90人の保護者には今後、説明会も開く。
 市は市内37カ所の市立保育所の保育士に対し、勤務中のスマホの使用を禁止していた。事件を受けて使用禁止を徹底する。
 記者会見した郷内俊一幼稚園・保育部長は「保護者や市民に迷惑、心配をお掛けし、おわびする」と謝罪した。

https://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201808/20180818_13026.html
勤務先の仙台市の市立保育所に通う女児にわいせつな行為を行うなどしたとして、強制わいせつと児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた元保育士のアルバイト被告の初公判が17日仙台地裁で行われた。
検察側は懲役5年を求刑し、弁護側は執行猶予付き判決を求めて結審した。判決は9月7日。
被告は、被害者が幼く被害を訴えられないと見込んでいたと認めた。検察側は論告で「保育士の立場を利用し、子どもの信用に乗じた悪質な犯行だ」と指摘した。


https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180907-00010007-oxv-l04
女子園児にわいせつな行為」強制わいせつなどの罪で元保育士に懲役3年6ヵ月
9/7(金) 19:26配信 仙台放送
2016年、当時勤務していた仙台市内の保育園で、女子園児にわいせつな行為をしたとして強制わいせつなどの罪に問われている男に対し、仙台地裁は7日、懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡しました。
判決を受けたのは、元保育士被告です。
起訴状によりますと、被告は、2016年、当時勤務していた仙台市内の保育園で、昼寝をしていた女子園児の下半身を触るなどのわいせつな行為をしてその様子を撮影、保存していたとされています。
7日の判決で、仙台地裁の加藤亮裁判官は「低年齢の幼児であれば、何をされているかわからないだろうと考えた犯行は相当に悪質」とした上で、「保育時間内の犯行は重い非難に値すると言わざるを得ない」などとして、懲役5年の求刑に対し、懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡しました。

青少年条例違反等について、真剣交際の弁解が排斥された事例(神戸地裁h30.5.11)

 学歴とか嘘つくとだめですね
 供用物件として没収されていますが、生成物件で没収するのが判例です。控訴して指摘すれば未決多めにもらえます

①東京高裁H23.10.18
原判決は法令適用の項において 3項製造罪によって生じたsdカード2枚を没収する際の根拠条文として刑法19条1項1号 2項本文を摘示しているところ このような場合には19条1項3号 2項本文を適用すべきである
2刑 小西部長
・・・
②東京高裁H23.11.30
原判決は犯罪組成物としてsd2 マイクロsdの没収しているが、本件各カードは児童ポルノの製造という本件各犯行によって初めて作られたものであるから 犯罪行為により生じたものとして 19条1項3号 2項本文を適用して没収すべきであり 原判決の没収の法令適用には誤りがある
9部 小倉部長
・・・
③仙台高裁秋田支部H27.6.30*1
第1 法令適用の誤りの主張(控訴理由第1)について
 論旨は,要するに,本件3項製造罪に係る外付けハードディスク(秋田地方検察庁本荘支部平成27年領第2号符号4。以下「本件ハードディスク」という。)は,本件3項製造罪の犯罪行為により生じた物(産出物件)であるから,刑法19条1項3号2項本文を適用して没収するべきであるのに,これを本件3項製造罪の犯罪行為を組成した物(組成物件)として同条1項1号,2項本文を適用して没収した原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 そこで検討すると,弁護人指摘のとおり,記録によれば,本件ハードディスクは,原判示第1のとおり,本件3項製造罪の犯罪行為の不可欠な要素をなす物ではなく,その犯罪行為によって作り出された物と認められるから,刑法19条1項3号にいう「犯罪行為により生じた物」に当たるというべきである。したがって,これを本件3項製造罪の「犯罪行為を組成した物」として,同条1項1号,2項本文を適用して没収した原判決には法令適用の誤りがある。

D1-Law.com
■28262779
神戸地方裁判所
平成29年(わ)第277号/平成29年(わ)第491号/平成29年(わ)第601号/平成29年(わ)第711号/平成29年(わ)第797号/平成29年(わ)第892号
平成30年05月11日

主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中210日をその刑に算入する。
押収してある偽造学生証1枚(平成29年押第11号符号1)、神戸地方検察庁で保管中の携帯電話機(アイフォン)1台(平成29年領第1377号符号1-1)、iPad1台(同領号符号2-1)及び携帯電話機(アイフォン、黒色)1台(平成29年領第529号符号1-1)を没収する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 (平成29年7月21日付け起訴状の公訴事実第1)
  C(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、平成27年1月18日午後2時24分頃から同日午後2時26分頃までの間、E所在の同児童方において、同児童に、被告人に乳首及び陰部を手指で触られる姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第2 (平成29年7月21日付け起訴状の公訴事実第2)
  C(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、平成27年3月25日午後5時50分頃から同日午後5時51分頃までの間、E所在又はF所在の同児童方において、同児童に、被告人に乳首を手指で触られる姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第3 (平成29年7月21日付け起訴状の公訴事実第3)
  C(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、平成27年4月7日午後9時56分頃から同日午後9時57分頃までの間、F所在の同児童方において、同児童に、被告人の手指をその陰部に挿入される姿態、被告人に乳首及び肛門を手指で触られる姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房、陰部及び肛門を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第4 (平成29年7月21日付け起訴状の公訴事実第4)
  C(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、平成27年7月26日午前11時11分頃から同日午前11時13分頃までの間、F所在の同児童方において、同児童に、同児童が被告人の陰茎を口淫する姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房が露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第5 (平成29年3月30日付け起訴状の公訴事実第1)
  A(当時14歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら、平成27年12月29日午後4時50分頃から同日午後6時31分頃までの間、N市b区cd丁目e番f号ホテルG(省略)号室において、自己の性欲を満たす目的で、同人と性交し、もって青少年に対し、みだらな性行為をし、
第6 (平成29年3月30日付け起訴状の公訴事実第2)
  A(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第5記載の日時場所において、同児童に衣服の一部を着けず、乳房を露出した姿態及び被告人の手指をその陰部に挿入される姿態をとらせ、これをカメラ機能付きタブレット型情報端末(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号2-1)及びカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同端末及び同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの及び他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第7 (平成29年7月6日付け起訴状の公訴事実)
  自己の身分をH大学医学部生と偽ってAと交際していたものであるが、同人を介して同人の母親であるBから学生証の呈示を求められたため、偽造の学生証を作成して行使しようと企て、平成28年4月12日頃、N市g区hi丁目j番地のk所在の被告人方において、行使の目的で、ほしいままに、パーソナルコンピュータ等を使用し、H大学の学生証様の書式の所属欄に「医学部」、氏名欄に「I」、生年月日欄に「平成J年K月L日」、証明者欄に「H大学長」などと入力し、これを用紙に印刷した上、自己の顔写真の写しとともに、ラミネートフィルムで挟み込んで、もって上記大学長作成名義の学生証1通(平成29年押第11号符号1)を偽造した上、
 1 同日午前3時59分頃、同所において、前記偽造学生証を撮影した画像データを、自己が使用する携帯電話機から、アプリケーションソフト「O」を利用し、Aが使用する携帯電話機に送信し、同日、同人に閲覧させて了知させ、
 2 同日午前4時29分頃、同所において、前記画像データを、自己が使用する携帯電話機から、Bの使用する携帯電話機にメールで送信し、同日、同人に閲覧させて了知させ、
 もって前記偽造学生証1通をあたかも真正に成立したもののように装って行使し、
第8 (平成29年5月25日付け起訴状の公訴事実第1)
  Aとの性行為中に撮影した動画データ等を所持していること等を利用して同人を脅迫し、同人に自己への面会や交際の継続をさせようと考え、平成28年7月17日頃から同月19日頃までの間、兵庫県内において、自己が使用する携帯電話機から、アプリケーションソフト「O」を利用し、A(当時15歳)の携帯電話機に、「別れる気はない。あえばすぐかわる。許すと思う?こっちはもう動画はネットにあげてる。もちろんまだ公開してないよ。そこに保存してるだけ。俺らの大切な思い出は全てPにある。a〈1〉、終わり。この世とな。それがこうなってそうなっても生きていられるか。まあa〈1〉はそういうの見られんの好きやしね、あ、もう今夜するね。」、「俺としては、a〈1〉の未来はつぶしたくない。だから、ちゃんと月2回逢おう。a〈1〉が裏切ることに関し、俺からはすべての金銭、精神的損害賠償を求めるし、学校にも通達する。進学は不能。」旨記載したメッセージを送信して、いずれもその頃、同人に閲読させ、同人が被告人との面会や交際の継続に応じなければ、前記動画データ等を流布させるなどして同人の名誉等にいかなる危害を加えかねない旨告知して脅迫し、もって同人に義務のないことを行わせようとしたが、同人が警察に相談するなどして応じなかったため、その目的を遂げず、
第9 (平成29年5月25日付け起訴状の公訴事実第2)
  Aとの性行為中に撮影した動画データ等を所持していること等を利用して同人を脅迫し、同人に自己への面会をさせるとともに、同人が警察に相談するのを阻止しようと考え、平成28年7月25日頃、兵庫県内において、自己が使用する携帯電話機から、ソーシャルネットワーキングサービス「aa」を利用し、Aの携帯電話機に、「そんな逃げ方、許すと思う?警察に相談して。ま、退学したくないから無理やろけどな。俺は会いに来てもらうことが望み。警察に話せば、変態らしい姿をみせざるをえないうちに評価は決まる。俺の持つ資料は、すべて出さないといけない。写真、動画、文章、すべて世間に出る。やめようぜ。いま、a〈1〉が警察に相談したら、俺は折れる気ないし、負けない。必ず中学に通報入る。それは曲げない。中学生なのに人生潰したくないやん?やるなら、やるけど。中学生なのに流出ごめんな。」旨記載したメッセージを送信して、いずれもその頃、同人に閲読させ、同人が被告人との面会に応じず、警察に相談に行けば、前記動画データ等を流布させるなどして同人の名誉にいかなる危害を加えかねない旨告知して脅迫し、もって同人に義務のないことを行わせようとするとともに権利の行使を妨害しようとしたが、同人が警察に相談するなどして応じなかったため、その目的を遂げず、
第10 (平成29年6月15日付け起訴状の公訴事実)
  Aとの性行為中に撮影した動画データ等を所持していること等を利用して同人の実母のBを脅迫し、Aに自己への面会をさせるとともに、同人及びBが警察に相談するのを阻止しようと考え、平成28年7月19日頃から同月28日頃までの間、兵庫県内において、自己が使用する携帯電話機から、B(当時44歳)の携帯電話機に、「法的に問題のない範囲でaaを通じて画像と僕らの婚約について送信します。」「彼女が反省して元に戻るまで手を緩めるきはありません。明日なら謝罪と反省を受け付けます。」「学校への報告をするのではなく、現在のa〈1〉さんの志望校の方とaaで繋がり、愛に満ちた問題のない画像とともに、こういう人だと伝えるということです。」「最後になるとしても、ちゃんとあって、a〈2〉さんの気持ちを聞きたいです。」「僕としては物の返還だけでなく、謝罪、あるいは話し合いを正当に要求しています。」「お互い警察には行かないことを約束してください。」「それより問題なのは、警察沙汰になった場合、そうした画像がもしa〈1〉さんが嫌だとしても、みんなが話題にし、有名になり世界中に拡散されることです。他の証拠画像についても弁護士や警察にアップする必要が出てきます。裁判ではそれらが公開されます。」「交際の事実を示す程度の画像で、怖いと言われても困ります。汚名を晴らすために確実に交際の根拠となる写真を数点流しただけです。」「警察や法律機関に相談した場合、証拠として、彼女の身元も画像も全てニュースなどからさらされることになり、こんなもんじゃすまなくなると警告しています。身元は中学生なら出ないとお思いでしょうが、今のネットワーク社会は多様です。まず特定されます。」旨記載した電子メールを送信して、いずれもその頃、Bに閲読させ、同人がAと被告人との面会をさせず、Bらが警察に行けば、前記動画データ等を流布させるなどしてAの名誉にいかなる危害を加えかねない旨告知して脅迫し、もってBに義務のないことを行わせようとするとともに権利の行使を妨害しようとしたが、同人が警察に相談するなどして応じなかったため、その目的を遂げず、
第11 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第1)
  D(当時16歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら、平成29年1月20日午後6時22分頃から同日午後8時2分頃までの間、N市ab区mn丁目o番p号ホテルM(省略)号室において、自己の性欲を満たす目的で、同人に自己の陰茎を口淫させ、同人の乳首及び陰部を手指で触り、もって青少年に対し、みだらな性行為及びわいせつな行為をし、
第12 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第2)
  D(当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第11記載の日時場所において、同児童に、同児童が被告人の陰茎を口淫する姿態、被告人に乳首及び陰部を手指で触られる姿態及び同児童が衣服の全部又は一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第529号符号1-1)で5回にわたり動画撮影し、その各動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第13 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第3)
  D(当時16歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら、平成29年3月13日午後8時33分頃、N市q区rs丁目t番u号ab5階af内において、自己の性欲を満たす目的で、同人の乳首及び陰部を手指で触り、もって青少年に対し、みだらなわいせつな行為をし、
第14 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第4)
  D(当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第13記載の日時場所において、同児童に、被告人に乳首及び陰部を触られる姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第529号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第15 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第5)
  D(当時16歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら、平成29年3月16日午後8時43分頃、N市v区wx丁目y番z号ホテルQ(省略)号室において、自己の性欲を満たす目的で、同人と性交し、もって青少年に対し、みだらな性行為をし、
第16 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第6)
  D(当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第15記載の日時場所において、同児童に、同児童が被告人と性交する姿態、被告人に乳首を触られる姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第529号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
たものである。
(証拠の標目)略
(事実認定の補足説明)
第1 弁護人の主張
  弁護人は、判示第9の事実について強要未遂罪が成立することは争わないが、(1)判示第5、第11、第13及び第15の各青少年愛護条例違反の事実について、被告人はA及びDといずれも真摯に交際している中で性行為を行ったのであるから青少年愛護条例21条1項にいう「みだらな性行為又はわいせつな行為」に該当しない、(2)判示第1ないし第4、第6、第12、第14及び第16の各児童ポルノ製造の事実について、真摯な交際による性行為の様子を撮影したものであるから社会的相当行為であり違法性が阻却される、(3)判示第8及び第10の各強要未遂の事実について、人を畏怖させる程度の行為ではなく、脅迫の意思も強要の目的もないから強要未遂罪は成立しない、(4)判示第7の有印公文書偽造等の事実について、被告人が作成した学生証(以下「本件偽造学生証」という。)は、作りが粗雑で一般人をして真正なものと誤信させるものではないため偽造有印公文書に当たらない旨主張し、被告人もこれに沿う供述をする。そこで、以下に検討する。
第2 青少年愛護条例違反の各事実(判示第5、第11、第13及び第15)について
 1 前提となる事実
  関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。
  (1) Aについて
  ア 被告人は、平成27年6月頃、ネットを通じて、A(当時14歳、中学2年生)と知り合ったが、当時、Aに対して「R」なる偽名を名乗り、年齢は19歳、身分はH大学医学部生、元acであるなどと詐称しており、Aはそれを信じていた。なお、被告人は、当時、32歳で職業はアルバイトであった。
  イ そして、被告人は、その後もネットでAとのやり取りを続け、同年10月頃、Aと直接会って交際を開始し、その後間もなく、カラオケ店でAの膣に指を入れて胸を触る、さらにホテルで性交をするなどし、それ以後、Aと会うと頻繁に性的行為をするようになった。他方で、被告人は、Aの勉強の相談に乗ったり、商業施設等に遊びに行ったりするなどの交際もしていた。
  ウ 被告人は、Aとの性的行為において、Aに対して、手錠様の物を用いて手を拘束する、性的道具をAの陰部に当てる、Aに首輪を付ける、ボールを口にくわえさせるなどしたほか、被告人の尿を飲ませる、Aの陰毛を剃るなどし、被告人は、これらのAの姿態を写真や動画で撮影していた。
  (2) Dについて
  ア 被告人は、平成28年10月頃、ネットを通じてD(当時16歳、高校1年生)と知り合い、当時、Dに対して、年齢は19歳、身分はS高校3年生、ad留学の経験がある、志望校はH大学医学部、aeに自宅があり、父親は病院のお偉いさんであるなどと詐称しており、Dはそれを信じていた。なお、被告人は、当時、33歳で無職であった。
  イ そして、被告人は、1、2週間後にDと会って交際を開始し、数週間後には、Dとホテルで性交をし、それ以後、被告人は、Dと会うと頻繁に性的行為をするようになった。他方で、被告人は、Dの勉強の相談に乗ったり、商業施設等に遊びに行ったりするなどの交際もしていた。
  ウ 被告人は、Dとの性的行為において、Dの手を縛る、ボールを口にくわえさせる、テニスコートでズボンを脱がせ、お尻を触るなどしたほか、Dに対して、被告人の尿を飲んでほしいなどと要求し、これらのDの姿態を動画撮影していた。

 2 当裁判所の判断
  青少年愛護条例(昭和38年兵庫県条例第17号)21条1項は、「何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない」と規定し、相手の意思に反するか否かを問わず「みだらな性行為又はわいせつな行為」を禁止しているところ、その趣旨は、青少年は、性的行為に強い興味を抱く傾向にあるが、未成熟で判断能力が劣り、性的行為が自己に及ぼす影響を適切に判断できないことから、青少年を保護するため、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある性的行為を禁止することとしたものと解される。したがって、「みだらな性行為又はわいせつな行為」に該当するか否かについては、被害者や行為者の年齢、性的行為が行われた経緯、性的行為の態様等に鑑みて青少年の健全な育成を阻害するおそれがあるかという観点から、青少年との交際が真摯なものとはいえず、性的行為が社会的に相当とは認められないか否かを判断するのが相当である。
  これを本件についてみると、被告人とA及びDとはネットを通じて知り合って一般に見られるような男女の交際を続けていたとみられる面もあるが、被告人は、当時14歳で中学2年生のA及び当時16歳で高校1年生のDに対して、真実の年齢や職業等を隠して、Aに対しては「19歳、H大学医学部生、元ac」、Dに対しては「19歳、S高校3年生、父親は病院のお偉いさん」などと、十代半ばの被害者らにとって誘惑的な嘘をつき、知り合ってから交際中まで始終年齢や身上を詐称し続けていたのであるから、Aらが心身ともに未成熟であることに乗じた不当な手段により、Aらと男女の交際を開始して性的行為に及んだと認められる。さらに、被告人は、Aらとの性的行為において、Aらの手を拘束し、ボールを口にくわえさせる、尿を飲むように要求するなどし、Aらのその姿態を撮影するなどしているところ、このような被告人の性的行為は通常青少年が受ける性教育とかけ離れており、青少年の健全な育成に著しい悪影響を与える行為にほかならず、本件の各性的行為は、その一環としてなされたものと認められる。そして、被告人は、当時14歳ないし16歳のA及びDに対して、同様の手段を用いて交際を開始して同様の性的行為に及んでいるのみならず、後記のとおり、当時15歳のCに対しても、ほぼ同様の手段で交際を開始し、Cにわいせつな姿態をさせてその動画を撮影するなどしており、被告人のこれらの行動状況からすると、被告人は、自己の性的な趣向を満たすための対象としてA及びDに接近して性的行為に及んだと認められる。
  この点に関し、弁護人は、被告人はAらと知り合って又は初めて会ってすぐに性的行為に及んでいないこと、交際中は専ら性的行為をしていたのではなくデートやAらの相談に乗るなどの交流があったこと、被告人はAらと真剣に結婚したいと考えてその意思を伝えていたことなどの事情から、被告人とAらとの交際は真摯なものであって、本件各性的行為には社会的相当性が認められる旨主張する。
  しかしながら、弁護人が指摘するような事情があるからといって、直ちに、被告人のAらとの交際が真摯であり、Aらとの性的行為が社会的に相当なものであるとはいえず、むしろ、一般に相手の年齢や身上などは交際や性的関係を持つにあたって考慮される重要な事情であるのに、被告人は年齢や身上などについて嘘をついてAらをだまして交際を開始し、その後もAらをだまし続けて性的行為を重ねており、Aらの性的自由にかかる意思決定を誤らせていることは明らかである。また、被告人は自分の年齢や身上を偽ったままでAらとの結婚を約束しているが、そのような結婚の約束などはおよそ現実性がなく真摯なものとはいえず、Aらとの性的な関係を続けるための方便というほかない。そうすると、弁護人の主張する事情は、被告人の行為が社会的に相当でないとの判断を左右するものとはいえない。
  さらに、弁護人は、被告人とAらとの交際及び性的行為については、Aの母親であるB及びDの母親の承諾があり、このような保護者らの了解は、交際の真摯さや社会的相当性を裏付ける旨主張するが、被告人は、Bらに対しても身上等を偽っていることに加え、仮に、Bらにおいて、Aらが被告人と何らかの性的行為を行っていることを察知してこれを容認していたとしても、Aらの人格を無視した態様の性的行為を認識、了解していたとは到底いえず、被告人の行為が社会的に相当であるとする事情に当たるとはいえない。
  そうすると、本件各性的行為は、いずれも社会的に相当な行為とは認められず、「みだらな性行為又はわいせつな行為」に該当するから、A及びDに対する各青少年愛護条例違反がそれぞれ成立すると認められる。
第3 児童ポルノ製造罪の各事実(判示第1ないし第4、第6、第12、第14及び第16)について
 1 前提となる事実
  関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。
  (1) Cについて
  ア 被告人は、平成26年夏頃、ネットを通じて、C(当時14歳、中学3年生)と連絡を取り合うようになったが、当時、Cに対して「T」なる偽名を名乗り、年齢は22歳、身分はH大学医学部生などと詐称しており、Cはこれを信じていた。なお、被告人は、当時、31歳で職業はアルバイトであった。
  イ 被告人とCは、同年9月か10月頃に直接会って交際を開始し、同年11月か12月頃、ホテルで性交をした。その後、Cは、被告人を母親に紹介し、同年12月頃から、被告人は、Cの自宅に同居するようになり、被告人とCは、Cの自宅で頻繁に性的行為をするようになった。
  ウ 被告人は、Cとの性的行為において、Cに対して、手を縛る、ボールを口にくわえさせる、性的道具を陰部に当てる、Cの陰毛を剃るなどしたほか、被告人の尿を飲んでほしいなどと要求したことがあった。
  エ そして、被告人は、Cが被告人の陰茎を口淫する姿態、被告人の手指をその陰部に挿入される姿態及び衣服の一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態など、Cとの性的行為の様子を携帯電話やiPadで動画撮影した。
  (2) Aについて
  ア 交際経緯等については、前記第2・1の(1)に記載したとおりである。
  イ 被告人は、Aが衣服の一部を着けず、乳房を露出した姿態や被告人の手指をその陰部に挿入される姿態など、Aとの性的行為の様子を携帯電話やiPadで動画撮影した。
  (3) Dについて
  ア 交際経緯等については、前記第2・1の(2)に記載したとおりである。
  イ 被告人は、Dが被告人と性交する姿態、被告人の陰茎を口淫する姿態及び被告人に乳首及び陰部を手指で触られる姿態など、Dとの性的行為の様子を携帯電話で動画撮影した。
 2 当裁判所の判断
  児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律の趣旨は、児童に対する性的搾取等から児童を保護し、その権利を擁護することにあり(同法1条)、同法が、姿態をとらせた上での児童ポルノの製造行為を処罰の対象としているのは、かかる行為が、児童が同意していたか否かにかかわらず、それ自体、当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為であり、かつ児童ポルノが流通する危険を創出する行為と認められるためである。
  そして、本件についてみると、被告人のA、C及びDに対する本件児童ポルノ製造行為が、いずれも同人らの心身に有害な影響を与える性的搾取行為であり、かつ流通の危険を創出する行為であることは、被告人が製造した本件児童ポルノの内容自体により容易に認められる。また、本件児童ポルノに流出の危険があることは、真摯な交際を自称する被告人自身が、判示第8ないし第10のとおり、Aとの性的行為が撮影された画像を流出させかねない行為を行っていることによっても裏付けられている。
  弁護人は、被告人は、A、C及びDと真摯に交際していた上、同人らは被告人による動画撮影行為を認識し、当時これを許していたのであるから、被告人の行為は社会的相当行為として違法性が阻却される旨主張する。しかしながら、前記1に認定した事実によれば、被告人のA、C及びDとの交際はいずれも到底真摯なものとは認められない上、同人らが撮影を許していたのは、当時好意を抱いていた被告人の要求に対して、これを拒否するなどの適切な対応ができなかったという、まさに児童の未熟さゆえの結果であって、被告人はかかる未熟さに乗じて本件各撮影行為を行ったものと認められる。そうすると、弁護人が主張する事情は、何ら本件児童ポルノ製造行為が社会的に相当とはいえないとの判断を揺るがすものではない。
  よって、A、C及びDに対する各児童ポルノ製造罪が成立する。
第4 A及びBに対する強要未遂の事実(判示第8及び第10)について
  関係各証拠によれば、被告人は、Aとの性的行為を携帯電話等で撮影してその多数の動画データを保存していたこと、Aは、遅くとも平成28年7月17日までに、被告人に対して、Oで、別れたい旨のメッセージを送信したところ、被告人は、同日午前4時20分頃、Aに対して、Oで、「別れる気はない」とメッセージを送信したほか、Aに対して判示第8及び第9の、Bに対して判示第10の各メッセージを送信したことが認められる。
  判示第8のメッセージによれば、同メッセージが、Aが被告人との面会や交際の継続に応じなければ、Aとの間の性的行為を撮影した動画データを流布させる趣旨のものであること、判示第10の電子メールによれば、同メールが、警察等に相談すれば、Aとの間の性的行為を撮影した動画データを流布させる趣旨のものであることが認められる。
  そして、これらのメッセージ等を送信する被告人の行為が、Aの名誉を大きく毀損し、A及びBをして畏怖させるに足りるものであることは明らかであり、強要罪における脅迫にあたると認められ、被告人は、メッセージ等の内容を認識した上で、A及びBにそれぞれ送信しているのであるから、強要の故意が認められる。
  弁護人は、判示第8及び第10の各行為について、被告人には強要の目的がなかった旨主張するが、被告人が、Aから別れるという内容のメッセージを受信するや、判示第8のメッセージを送信し、さらに、判示第9のとおり、Aに対して面会等を強要するメッセージを送信し、その後、Aに連絡を取ることができなくなると、Bに対して判示第10のメールを送信しているという経緯からすると、被告人が、本件各メッセージ等を送信することによって、Aに対し交際の継続を強いるとともに、Bに対しAと面会させるよう求め、AやBが警察に通報することを阻止しようとしたことなどの意図があったと認められる。
  したがって、A、B両名に対する強要未遂罪が成立する。
第5 有印公文書偽造、同行使の事実(判示第7)について
 1 前提となる事実
  関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。
  (1) 被告人は、A及びBに対して、H大学医学部生を詐称していたところ、平成28年4月11日頃、Aから、Oで、Bが学生証を見たいと言っているとのメッセージを受信した。そして、被告人は、同月12日頃、被告人方において、パーソナルコンピュータなどを使用して、本件偽造学生証を作成した。
  (2) 本件偽造学生証は、本体となる紙片1枚、被告人の顔写真の紙片1面及びラミネートフィルム1枚により構成されており、所属欄に「医学部」、氏名欄に「I」、生年月日欄に「平成J年K月L日」、証明者欄に「H大学長」などと記載されている。そして、本件偽造学生証は、本体となる紙片及び顔写真の紙片がラミネートフィルムに挟み込まれているのみで、ラミネートフィルムが本体や顔写真の紙片には貼り付けられていない。
  (3) 被告人は、同日、携帯電話で本件偽造学生証を撮影し、Aに対してはOで、Bに対しては電子メールで、それぞれ本件偽造学生証を撮影した画像を送信した。
 2 当裁判所の判断
  本件偽造学生証は、ラミネートフィルムが本体に貼付されていないなど、実物を手に取ると一見して偽造文書であると分かる程度のものであることから、有印公文書偽造罪の客体に該当するかが問題となり、弁護人もこの点を指摘するため、当裁判所の判断につき補足して説明する。
  公文書偽造罪は、公文書に対する社会的信用を保護法益とし、本件で偽造された国立大学の学生証についても、大学長等の発行権者が発行し、学生である所持者の身分を公的に証明する文書として、社会的信用の対象となっている。そして、電子コピー、デジタル写真などの文書複製手段が発達し、他者と画像等を共有するための通信手段も多様に存在する現代社会においては、文書の行使方法や認識方法は、作成された物を交付して直接目視させる以外にも様々あり得るのであるから、文書に対する社会的信頼を保護するためには、偽造文書に該当するかどうかは、交付に限らず当該文書について通常想定される行使方法によった場合に、一般的に相手が真正な文書であると誤信するに足りる程度の形状を備えているか否かという観点から判断するのが相当である。そして、文書の行使方法が多様化する中で、文書を写真撮影し、その画像を各種通信機能を通じて相手に送信し、相手が携帯電話等の画面を通して当該文書を確認するということはしばしば行われているところであり、公的な身分証明書もこの例外とはいえない。
  確かに、本件偽造学生証は、その実物を手に取って見れば、ラミネートフィルムが本体に貼付されておらず、縦横の縁も曲がっていることなどから、本物のH大学学生証でないことが容易に見て取ることができる。しかし、携帯電話で撮影した画像では、ラミネートフィルムが貼付されていないとか、縁が曲がっているなどといった状態を確認することはできず、他方で、校章、学籍番号及び「H大学長」の名義など、あたかも本物の学生証に記載されていると考えられるような事項の表示が見て取れることからすれば、本件偽造学生証は、通常想定される行使方法において、真正に成立したH大学学生証であると誤信させるに足る形状を備えているものと認められる。そして、実際にも、A及びBは、本件偽造学生証が本物であると誤信していたものである。
  したがって、本件偽造学生証は、一般人をして真正な文書と誤信させるに足りる形状を備えていると認められるから、被告人に対しては有印公文書偽造・同行使罪が成立する。
(法令の適用)
  判示第1ないし第3、第6及び第14の各所為はいずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項2号、3号に、判示第4の所為は同法律7条4項、2項、2条3項1号、3号に、判示第5、第11、第13及び第15の各所為はいずれも青少年愛護条例(昭和38年兵庫県条例第17号)30条1項2号、21条1項に、判示第7の所為のうち、有印公文書偽造の点は刑法155条1項に、A及びBに対する各偽造有印公文書行使の点はいずれも同法158条1項、155条1項に、判示第8及び第9の各所為はいずれも同法223条3項、1項に、判示第10の所為は同法223条3項、2項に、判示第12及び第16の各所為はいずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号、2号、3号にそれぞれ該当するところ、判示第7の有印公文書偽造とA及びBに対する各偽造有印公文書行使との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、刑法54条1項後段、10条により結局以上を1罪として犯情の最も重いAに対する偽造有印公文書行使罪の刑で処断し、判示第1ないし第6及び第11ないし第16の各罪についていずれも懲役刑を選択し、以上は同法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により最も重い判示第7の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役4年に処し、同法21条を適用して未決勾留日数中210日をその刑に算入し、押収してある偽造学生証1枚(平成29年押第11号符号1)は判示第7のAに対する偽造有印公文書行使の犯罪行為を組成した物で、被告人以外の者に属さないから、同法19条1項1号、2項本文を適用し、神戸地方検察庁で保管中の携帯電話機(アイフォン)1台(平成29年領第1377号符号1-1)は判示第1ないし第4及び第6の犯罪行為の用に、同庁で保管中のiPad1台(平成29年領第1377号符号2-1)は判示第6の犯罪行為の用に、同庁で保管中の携帯電話機(アイフォン、黒色)1台(平成29年領第529号符号1-1)は判示第12、第14及び第16の犯罪行為の用にそれぞれ供した物で、いずれも被告人以外の者に属さないから、いずれも同法19条1項2号、2項本文を適用して、これらをいずれも没収し、訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
  被告人は、14歳ないし16歳という年少者の被害者らに対して、年齢や身上等を偽る方法によって接近し、「19歳、H大学医学部生、S高校3年生」などと同人らにとって誘惑的な嘘をついて交際を開始し、交際中も詐称を続けた上、その過程で、被害者らが被告人に好意を抱いていることを利用して、A及びDに対してその身体を弄ぶような不健全な性的行為を繰り返すばかりか、A、C及びDに対してこれらの姿を動画撮影し児童ポルノを製造しており、被告人の行為は、被害者らの精神的な未熟さにつけ込んで、被害者らを自らの性的欲求の対象として扱っている行為というほかない。加えて、被告人は、各人との交際が終わるごとに次々と別の年少者に接近して性的関係を持ち、同様の行為を繰り返しており、この種の犯罪に対する規範意識は相当に鈍麻している。
  また、被告人は、AやBに本当の身分等を話せば、Aとの交際が続けられなくなることを当初から自覚しながら、自らが作り出した嘘を貫き通す手段として有印公文書偽造、同行使の犯行に及び、その後、Aから別れたい旨告げられると、Aとの交際を維持し、警察に通報されることなどを阻止するため、自ら製造した児童ポルノ等の性的動画データを悪用して、A及びBに対して、自己の意に沿う行動をとらなければこれらの動画データを流布させる旨述べて脅迫しており、被告人の行為はまことに卑劣であって、A及びBが抱いた恐怖感は大きかったと認められる。
  さらに、被害者らが受けた精神的被害は重大であり、被害者らの健全な成長に対する悪影響も懸念されるところ、被害者らやその保護者らが厳重な処罰を求めるのも十分に理解できる。
  そして、被告人は、被害者らをだまして申し訳ないなどと、一応は反省の言葉を述べているが、被害者らとは真摯な交際をしていたなどと不合理な弁解に終始しており、自己の行為について十分に内省がなされているとはいえない。
  したがって、本件の犯情は悪質であり、被告人の刑事責任は相当に重いものがある。
  そうすると、被告人に対しては、相当期間の実刑は免れないところ、他方で、有印公文書偽造等の偽造態様が稚拙であること、被告人が外形的事実自体は概ね認めていることや、前科がないことなど、被告人に有利な事情も考慮した上、主文のとおり量刑した。
(求刑 懲役5年、偽造学生証1枚、携帯電話機(アイフォン)1台、携帯電話機(アイフォン、黒色)1台、iPad1台の各没収)
第1刑事部
 (裁判長裁判官 芦髙源 裁判官 神原浩 裁判官 池見祥加)

監護者性交1罪求刑6年宣告5年(長崎地裁h30.5.16)

 内済の連れ子への児童淫行1罪だと3~4年の実刑だったので、監護者性交罪の下限程度まで引き上げられた感じです。
 当然の話ですが、改正前の児童淫行罪。強制わいせつ罪・強姦罪が、改正後の強制性交等・監護者性交等になる場合については、法定刑の下限の引き上げの影響をもろに受けます。
 内縁関係の場合の情状弁護としては、児童淫行罪では内縁解消して、生活支援するようなことが一般的です。

裁判年月日 平成30年 5月16日 裁判所名 長崎地裁 裁判区分 判決
事件番号 平30(わ)6号
事件名 監護者性交等被告事件
文献番号 2018WLJPCA05166004
主文
 被告人を懲役5年に処する。
 未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
理由
 (犯罪事実)
 被告人は,平成29年8月当時,内縁の妻Aの娘であるB(当時16歳)と同居してその寝食の世話をし,その指導・監督をするなどして,同人を現に監護していた者であるが,Bが18歳未満の者であることを知りながら,同人と性交をしようと考え,平成29年8月25日から同月26日までの間に,福岡市〈以下省略〉において,Bを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交をした。
 (証拠の標目)(各証拠書類等に付記した番号は,検察官請求の証拠番号である。)
 (法令の適用)
 罰条
 被告人の判示行為は,刑法179条2項,177条前段に該当する。
 宣告刑の決定
 所定刑期の範囲内で,被告人を懲役5年に処する。
 未決勾留日数の算入
 刑法21条を適用して未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
 訴訟費用の処理
 訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。
 (量刑の理由)
 犯行態様は,被告人がAやBらとホテルに宿泊した際,隣のベッドにAらが寝ているにもかかわらず,同じベッドに寝ていたBと性交するというものであり,大胆かつ悪質である。しかも,被告人は避妊措置をとっておらず,その点でも非難は免れない。Bは,すぐ近くに実母であるAらが寝ている中で性交をするという異常な状況に置かれており,本件犯行により受けた精神的苦痛は非常に大きく,また,肉体的苦痛も軽視できない。犯行の動機も,自身の性欲を解消するとともに,Bの実母であるAらが横で寝ている状態でBと性行為に及ぶスリルを感じるためという身勝手極まりないもので,特に酌むべき事情はない。
 以上によれば,被告人の刑事責任は重く,酌量減軽を行うべき事情は見当たらないが,他方で,想定される監護者性交等の犯行態様の中で,本件をことさらに重く処罰すべき事情も存在しない。
 そして,被告人が公判廷において事実を認め,反省の弁を述べていること,Bとその家族に二度とかかわらない旨誓約していること,被告人に前科がないこと等の被告人に有利な事情が認められるので,それらの事情も考慮し,主文のとおりの刑に処するのが相当と判断した。
 (検察官大西杏理,国選弁護人中田昌夫各出席)
 (求刑―懲役6年)
 平成30年5月17日
 長崎地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 小松本卓 裁判官 堀田佐紀 裁判官 佐野東吾

警察見解によれば、盗撮被害者が立ち去っても迷惑条例での立件は可能。

 盗撮とか痴漢の「後日逮捕」の相談でよく聞かれます。
 被害届が出なければいいということにはなりません。

地域警察官のための軽微犯罪の措置要領(2010年 立花書房)
Q4
甲は,電車内において,乗車中のは(2時のスカートの下から股聞をカメラ付き携帯電話で撮影していたところを,会社員に目撃されて取り押さえられた。しかし, A女はそのまま立ち去ってしまい,また甲を警察に突き出したところ,カメラ付き携帯電話の記録媒体には画像が記録されていなかった。
A
甲の行為が,「卑わいな行為」であることに疑いはない。また,被害者が立ち去る等して,被害者からの供述が録取できなかったとしても,逮捕者や目撃者からの供述により「実害発生の可能性がある卑わいな言動」が立証できれば,迷惑防止条例違反事件として送致することは可能である。
問題は,「盗撮」行為の処罰規定がある条例の適用であるが,行為自体は「卑わい(粗暴)行為」に該当しているのであるから,撮影した画像が記録媒体に残っていない場合であっても,通常の「卑わい(粗暴)行為」の罰則を適用すればよい。
このような事件を立件するに当たっては,目撃者から目撃情報等を詳細に録取した参考人供述調書を作成し調書化するとともに,その内容に整合した実況見分調書を作成することが必要である。