児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し性的に羞恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう」宮城県青少年健全育成条例の解説h30

 この定義は、強制わいせつ罪については、大法廷h29.11.29で否定されたことになります。
 青少年条例についても、性的意図を要求する理由は無いので、定義を見直す必要があります。

みだらな性行為又はわいせつな行為の禁止(第31条)
(みだらな性行為又はわいせつな行為の禁止)
第31条何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
(昭60条例17・追加、平22条例22・一部改正)
【解説】
1 この条は、青少年に対して、みだらな性行為若しくはわいせつな行為をし、又はそれらの行為を故意に教えたり、見せたりする等、直接的に青少年の心身に傷痕を残すこととなる行為を禁止し、青少年の健全な育成を図ろうとするものである。
2 「みだらな性行為」とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺問し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交またば性交類似行為、又は健全な常識を有する一般社会人から見て、結婚を前提としない性的欲望を満たすためにのみ行う性交又ば性交類似行為をいう。
「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し性的に羞恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
3 この条は、青少年の合意の有無にかかわらず、適用される。
《罰則》
〇みだらな性行為又はわいせつな行為…… ・・・2年以下の懲役又は100万円以下の罰金・
〇みだらな性行為又はわいせつな行為を教え、又は見せた者・… ・・50万円以下の罰金又は科料
※年齢に対する過失処罰規定適用
当該青少年の年齢を知らないことを理由として処罰を免れることはできない。(過失のないときは除く。)

他人の著作物を無権限で複製して頒布・公衆提供した場合の、複製権侵害罪と頒布罪・公衆提供罪は包括一罪(某高裁某支部)

 特別法犯の法令適用は検察官も裁判所も弁護人も気に留めないでやってますので、控訴審では真っ先にチェックします。
 原判決の法令適用に理由不備はないといいながら、破棄自判して法令適用を修正しています。
 「包括一罪」という判断を引き出すのに併合罪だという主張をしていますが、不利益主張だという判断はありません。

原判決
第2 法定の除外事由がなく、かつ、著作権者の許諾を受けないで、
 1 平成28年月日頃、上記被告人方において、株式会社Iが著作権を有する映画の著作物である「■■■■■■■■■■■■■■■■」に登場するキャラクターである「■■■■■■■■■■■■■■■■」のイラストを色紙1枚に複写して複製した上、同月中旬頃、同色紙1枚を、都内又はその周辺から県(以下略)のJ方に宛てて発送し、その頃、同所にこれを到達させて同人に受領させ、代金1万2511円で販売して頒布し、
 2 平成28年月日頃、上記被告人方において、映画「■■■■■■■■■■■■■■■■」の宣伝用に作成されたK株式会社等7社が著作権を有する美術の著作物である「■■■■■■■■■■■■■■■■」のイラストを、色紙1枚に複写して複製した上、同年月日から同月日までの間、同色紙1枚を、「B」に出品し、Lら不特定多数の者に閲覧させて購入者を募り、その頃、同人にこれを落札させ、同月日頃、同色紙1枚を、同市内から県(以下略)所在のM(省略)号室の同人方に宛てて発送し、同月14日頃、同所にこれを到達させて同人に受領させ、代金1万7000円で販売して譲渡することにより公衆に提供し、
 もって上記各会社らの著作権を侵害した。
(法令の適用)
罰条
  第2の1 著作権法119条1項、21条、26条第1項
  第2の2 著作権法119条1項、21条、26条の2第1項
刑種の選択 第2についていずれも懲役刑及び罰金刑を選択
  第3、第4についていずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、懲役刑について47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第2の2の罪の刑に法定の加重)罰金刑について刑法48条2項
未決勾留日数の算入 刑法21条
労役場留置 刑法18条
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書

某高裁某支部H30
第1 弁護人及び■■■■■■■■■の控訴理由
2 原判示第2の事実について
(1) 不法な公訴の受理又は訴訟手続の法令違反及び法令適用の誤り(弁護人奥村の控訴理由第5の2及び■■■■■■■■■の控訴理由第5の2)
原判示第2の1は複製権侵害罪と頒布権侵害罪が,原判示第2の2は複製権侵害罪と公衆提供権侵害罪が,それぞれ併合罪となるから,これらをそれぞれ科刑上一罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある。また,これらの訴因はいずれも単一性を欠き,訴因不特定として公訴棄却されるべきであったのに,実体判断をした原判決には,不法に公訴を受理した違法があるし,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反もある。
(2) 理由不備(弁護人奥村の控訴理由第5の1及び■■■■■■■■■の控訴理由第5の1)
原判示第2の1については複製権侵害罪と頒布権侵害罪,原判示第2の2については複製権侵害罪と公衆提供権侵害罪が起訴されているのに,原判決は,それぞれ科刑上一罪とした罪数処理の条項を全く示しておらず,理由を附していない。また,原判決は,原判示第2の2の罪について併合罪加重をしているところ,複製権侵害罪と公衆提供権侵害罪のいずれに加重したのかも明らかにしていないから,理由を附していない。
↓↓
第2 控訴理由に対する判断
2 原判示第2の事実について
(1) 不法な公訴の受理又は訴訟手続の法令違反の主張及び法令適用の誤りの主張(前記第1・2(1)) について
原判示第2の1の複製行為と頒布行為,同第2の2の複製行為と公衆に提供した行為は,いずれも,継続した同一の犯意に基づいて一つの著作権を侵害した一連の行為と認められるから,いずれも包括して一罪と評価すべきである(なお,原審において,検察官はその旨明示的な釈明等をしておらず,また原判決もその法令の適用の項において「包括して」との表示をしていないが,原審の審理及び判決を通覧すればその趣旨であるものと容易に理解できる。)。したがって,原判示第2の1及ぴ2の各行為をそれぞれ科刑上一罪とした原判決に法令適用の誤りはない。そして,同各事実に係る公訴事実はできる限りの特定がされており,罰条の記載を併せみると,前記各犯罪が起訴されていることが明らかであるから, これが訴因の特定に欠けるところがないのも明らかである。したがって,前記各事実に係る訴因が不特定であるとして不法な公訴の受理あるいは訴訟手続の法令違反をいう主張は前提を欠く。
(2) 理由不備の主張(前記第1・2(2)) について
前記(1)のとおりであって,原判決に理由不備はない。
↓↓
第3 結論
刑事訴訟法39 7条2項により原判決を破棄し,同法400条但書を適用して被告事件について更に判決する。
第4 破棄自判
(犯罪事実及び証拠)
原判決と同じ。
(法令の適用)
原判決と同一の法令を適用した刑期の範囲内(ただし, 前記第2の2(1)のとおり,原判示第2の1の所為は包括して著作権法11 9条1項,に, 同第2の2の所為は包括して同法11 9条1項, 2 1条,2 1条, 2 6条1項2 6条の2第1項にそれぞれ該当する。) で・・・・

前刑(平成27年9月 懲役2年6月執行猶予3年)の執行猶予期間内に罪を犯し、平成30年3月に実刑判決を受け、被告人が控訴した事件につき、当初指定された弁論を延期して、控訴審判決を執行猶予切れ1週間前に指定してもらい、さらに2項破棄となった事案(弁当切り)

 裁判を長引かせて、執行猶予を徒過させるというのは道徳的には感心できませんが、適法です。
 こんな時系列を気にしながら訴訟行為をすることになります。
http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2018/03/01/000000
 1審の方が簡単です。
 控訴趣意書は判決を遅らせるために、とりあえず全論点を指摘した長大なものになります。

 上告期間中に前刑の執行猶予が経過しますので、執行猶予が取り消されることは無くなりました。
 2項破棄で宣告刑期が2月短縮され、控訴審未決も約6月算入されました。

誤認逮捕された男性についても「男性と似ている」と供述し、真犯人とされる男性についても「犯人と似ている」と供述する被害者

 やってないのに「民間会社の顔立ちの鑑定で男性と一致する可能性が高いという結果が出た」そうです。
 2人の被疑者はどれくらい似てるのかな。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180827-00010009-saitama-l11
県警によると、深谷市内の30代女性方で昨年9月、何者かが侵入して現金を盗み、女性の体を触るなどした事件が発生。女性方にあった防犯カメラに帽子をかぶった人物が映っていたことから、この画像を精査したところ、「容疑者の可能性が高い」という鑑定結果が出たことや、女性の証言などから、昨年11月9日に男性を強盗致傷容疑などで逮捕した。
・・
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180827-00000056-mai-soci
県警によると昨年1~9月、深谷市内で30代女性のアパートに男が複数回侵入し、現金数十万円を盗んだり、女性の体を無理やり触って軽傷を負わせたりする事件が発生。女性が設置した自宅の防犯カメラに映っていた人物について、被害女性が「男性と似ている」と証言。民間会社の顔立ちの鑑定で男性と一致する可能性が高いという結果が出たことなどから逮捕した。

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20180827-00000062-ann-soci
今年5月になって別の強盗事件で逮捕された容疑者(22)が深谷市の事件への関与もほのめかしたほか、被害者の女性も容疑者が「犯人と似ている」と証言したことから再逮捕しました。埼玉県警は男性に対し、26日に謝罪したということです。

「児童であることを知りながら」が立証できない児童買春行為について、青少年条例の年齢知情条項を適用して、過失の青少年条例違反とした事例(某支部)

 量刑理由に、出会い系サイトで、対償供与約束したことが出ています。青少年条例は適用されませんので、年齢知情条項も使えません。
 弁護人も児童買春罪で逮捕されたのが青少年条例違反に落ちたとして喜んでいる場合じゃなくて、無罪にしないとだめですよ。対応としては簡単で、全部の調書に「対償供与の約束があったこと」を記載してもらうことです。

強制わいせつ罪で起訴されたときには、どんな行為についても弁論でいいから裁判所にわいせつの定義を聞いておこう

 乳房もむとか陰部弄ぶという典型的な行為についても、精液つける、用便中の姿態を凝視する、足嘗める、裸写真を撮影送信させるなどという非典型な行為についても、裁判所はわいせつの定義が決められないので、積極的にわいせつの定義を聞いて下さい。
 「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)」という有名な定義については、馬渡論文で否定されていますから、きょうびそんな判決は書けません。
 ■■■■■■のところに、わいせつの定義についての判示をコピーすれば、控訴理由が一個できるようにしてあります。
 「わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。」というのが山口厚最高裁判事の見解なので、山口判事に当たるまで、当面、山口説押しでいきます。

控訴理由 理由不備・法令適用の誤り 「わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。」というのが正解であるところ、原判決の「■■■■■■■■■■■■■■■■」では定義を誤っており、かつ説明不足であること
1 原判決
 原判決は、弁護人からわいせつの定義を求められて、「■■■■■■■■■■■■■■■■」と判示した。
 しかし、わいせつ行為の定義の中に「わいせつ」が入り込んでいるのは、一見して循環論法であって、定義の体をなしていない。
 わいせつの定義についての解釈ができないまま強制わいせつ罪(176条後段)について有罪にした点で、理由不備・法令適用の誤りがあるから、原判決は破棄を免れない
 さらには定義できないような罪名を適用した点で、罪刑法定主義違反の法令適用の誤りがあるから、原判決は破棄を免れない。

2 判例
(1) わいせつの定義についてわいせつとは、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。」という判例違反(最判s26.5.10 名古屋高裁金沢支部S36.5.2 東京高裁h22.3.1)
 わいせつの定義の点で、原判決は、「わいせつとは、公然わいせつ罪・わいせつ物頒布罪と同様に、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいうとする判例最判昭26・5・10刑集5-6-1026)に反する。
 強制わいせつ罪の「わいせつ行為」についても「徒らに性欲を興奮又は刺戟せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反することをいうものと解すべき」とする判例(金沢支部S36.5.2 東京高裁h13.9.18 東京高裁h22.3.1)。にも反する。
 これは大法廷h29.11.29でも変更されていない。
名古屋高裁金沢支部S36.5.2*2
②東京高裁h13.9.18*3
③東京高裁h22.3.1*4

(2)性的自由侵害行為とする判例(大阪高裁H28.10.27 東京高裁h26.2.13 東京高裁h30.1.30)にも反する。
 これも大法廷h29.11.29でも変更されていない。

①大阪高裁H28.10.27
 大法廷h29.11.29の控訴審判決である。
「被害者の性的自由を侵害する行為」と定義づける
阪高裁H28.10.27
(2)ところで,強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由と解され,同罪は被害者の性的自由を侵害する行為を処罰するものであり,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,強制わいせつ罪が成立し,行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないと解すべきである。その理由は,原判決も指摘するとおり,犯人の性欲を刺激興奮させ,または満足させるという性的意図の有無によって,被害者の性的自由が侵害されたか否かが左右されるとは考えられないし,このような犯人の性的意図が強制わいせつ罪の成立要件であると定めた規定はなく,同罪の成立にこのような特別な主観的要件を要求する実質的な根拠は存在しないと考えられるからである。
 そうすると,本件において,被告人の目的がいかなるものであったにせよ,被告人の行為が被害女児の性的自由を侵害する行為であることは明らかであり,被告人も自己の行為がそういう行為であることは十分に認識していたと認められるから,強制わいせつ罪が成立することは明白である。
 以上によれば,強制わいせつ罪の成立について犯人が性的意図を有する必要はないから,被告人に性的意図が認められないにしても,被告人には強制わいせつ罪が成立するとした原判決の判断及び法令解釈は相当というべきである。当裁判所も,刑法176条について,原審と同様の解釈をとるものであり,最高裁判例(最高裁昭和45年1月29日第1小法廷判決・刑集24巻1号1頁)の判断基準を現時点において維持するのは相当ではないと考える。
・・・・・
②東京高裁h26.2.13
東京高裁h26.2.13
なお,本罪の基本犯である強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由であると解されるところ,同罪はこれを侵害する行為を処罰するものであり,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,同罪の成立に欠けるところはないというべきである。本件において,被告人の行為が被害者の性的自由を侵害するものであることは明らかであり,被告人もその旨認識していたことも明らかであるから,強制わいせつ致傷罪が成立することは明白である。被告人の意図がいかなるものであれ,本件犯行によって,被害者の性的自由が侵害されたことに変わりはないのであり,犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図の有無は,上記のような法益侵害とは関係を有しないものというべきである。そのような観点からしても,所論は失当である。
・・・・・・
③東京高裁h30.1.30*5
東京高裁h30.1.30
 所論は,①低年齢児に対するわいせつ行為では一般人の性欲を興奮,刺激させない,②低年齢児には性的羞恥心がないので,法益侵害がないなどと主張する。
 しかし,①については,6歳未満の低年齢児でも殊更に全裸又は下半身を裸にさせて性器を露出させてこれを撮影するならば,一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するものと解されるから,強制わいせつ行為に該当する。また,②については,強制わいせつ罪の保護法益は,個人の性的自由であると解されるが,所論のように性的羞恥心のみを重視するのは相当ではなく,一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反してされたならば,性的自由が侵害されたものと解すべきである。そして,ここで意思に反しないとは,その意味を理解して自由な選択によりその行為を拒否していない場合をいうものと解されるから,そのような意味を理解しない乳幼児については,そもそもそのような意思に反しない状況は想定できない。このことは,精神の障害により性的意味を理解できない者に対しても準強制わいせつ罪(刑法178条1項)が成立することによっても明らかである。本件では,生後4か月から5歳までの乳幼児に対し,性器を露出させるなどして,これを撮影したものであるから,同人らの性的自由を侵害したものと認められる。


3 わいせつの定義についての学説状況
 学説状況をみても、原判決のような見解はない。
 原判決が独創したものである。

4 わいせつの本質は性的羞恥心侵害であるから、「わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。」という定義が正解であること
 最近の学説では強制わいせつ罪の本質は羞恥心侵害と理解されている。

平野竜一「刑法各論の諸問題6」法学セミナー 第205号
強制猥褻罪を、性的自由に対する罪というだけでいいかも問題である。暴行・脅迫を用いたし場合は、たしかに自由に対する罪といいやすい。しかし、とっさに陰部にふれた場合、「陰部にふれられない自由」が侵害されたというだけでは、自由の内容があまりにも無内容である。性的な蓋恥感情・嫌悪感情が保護法益となっていると考えたとき、右の行為の犯罪性を理解できるように思われる
・・・
川端博 事例式演習刑法P40
本罪における保護法益は「被害者の差恥心」とするのが妥当だからである(平野一二八頁)。
・・
中森喜彦「刑法各論」63頁
端的に、人の性的羞恥心を害する行為をいうとすれば足りる(内田一五八頁、曽根六二頁)。

 さらに、刑法学者出身の山口厚判事の見解*6*7*8も同趣旨である。
 即ち、「わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。」。(山口厚刑法各論 第2版H28 p106)
 これが正解であり、原判決は誤りである。これが最高裁判例となるであろう。

 公開されている裁判例では、強制わいせつ罪(176条後段)の最年少は7歳であって、羞恥心侵害を理由としてわいせつ行為と評価している。

新潟地裁S63.8.26*9
 右認定事実によれば、右A子は、性的に未熟で乳房も未発達であって男児のそれと異なるところはないとはいえ、同児は、女性としての自己を意識しており、被告人から乳部や臀部を触られて羞恥心と嫌悪感を抱き、被告人から逃げ出したかったが、同人を恐れてこれができずにいたものであり、同児の周囲の者は、これまで同児を女の子として見守ってきており、同児の母E子は、自己の子供が本件被害に遭ったことを学校等に知られたことについて、同児の将来を考えて心配しており、同児の父親らも本件被害内容を聞いて被告人に対する厳罰を求めていること(E子の検察官に対する供述調書、B子の司法警察員に対する供述調書及びD作成の告訴状)、一方、被告人は、同児の乳部や臀部を触ることにより性的に興奮をしており、そもそも被告人は当初からその目的で右所為に出たものであって、この種犯行を繰り返す傾向も顕著であり、そうすると、被告人の右所為は、強制わいせつ罪のわいせつ行為に当たるといえる。
 従って、弁護人の主張は採用できない。

5 憲法違反~裁判所がわいせつの定義を示せないときは、刑法176条は罪刑法定主義違反となる。
 馬渡調査官の論稿によれば、わいせつは定義できないから最高裁は定義しないとされている。

馬渡香津子強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
最高裁平成29年ll月29日大法廷判決
ジュリスト 2018年4月号(No.1517)
(2)検討
 そもそも,「わいせつな行為」という言葉は,一般常識的な言葉として通用していて,一般的な社会通念に照らせば,ある程度のイメージを具体的に持てる言葉といえる。そして,「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには困難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。また,「わいせつな行為」を定義したからといって,それによって,「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえ,これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられ,それらの集積から,ある程度の外延がうかがわれるところでもある(具体的事例については,大塚ほか編・前掲67頁以下等参照)。
 そうであるとすると,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには,これをどのように定義づけるかよりも,どのような判断要素をどのような判断基準で考慮していくべきなのかという判断方法こそが重要であると考えられる。
 本判決が,「わいせつな行為」の定義そのものには言及していないのは,このようなことが考えられたためと思われる。もっとも,本判決は,その判示内容からすれば,上記名古屋高金沢支判の示した定義を採用していないし,原判決の示す「性的自由を侵害する行為」という定義も採用していないことは明らかと思われる(なお,実務上,「わいせつな行為」該当性を判断する具体的場面においては,従来の判例・裁判例で示されてきた事例判断の積み重ねを踏まえて,「わいせつな行為」の外延をさぐりつつ判断していかなければならないこと自体は,本判決も当然の前提としているものと思われる)。

 これでは、行為をもって行為を定義することになって、一般人の予見可能性がまったく失われることになる。罪刑法定主義違反(憲法31条)である。刑法176条は文面上無効である。
 実際、最高裁がはっきりしないので、下級審が定義できすに困っている。わいせつの定義がないと現場の裁判官はわいせつ性を判断できない。
 本件原判決の新定義もそういう混乱の一環であるし、東京高裁でも「一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するもの」としつつ性的自由侵害」ともする混乱した定義が示されている。

東京高裁h30.1.30
 所論は,①低年齢児に対するわいせつ行為では一般人の性欲を興奮,刺激させない,②低年齢児には性的羞恥心がないので,法益侵害がないなどと主張する。
 しかし,①については,6歳未満の低年齢児でも殊更に全裸又は下半身を裸にさせて性器を露出させてこれを撮影するならば,一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するものと解されるから,強制わいせつ行為に該当する。また,②については,強制わいせつ罪の保護法益は,個人の性的自由であると解されるが,所論のように性的羞恥心のみを重視するのは相当ではなく,一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反してされたならば,性的自由が侵害されたものと解すべきである。そして,ここで意思に反しないとは,その意味を理解して自由な選択によりその行為を拒否していない場合をいうものと解されるから,そのような意味を理解しない乳幼児については,そもそもそのような意思に反しない状況は想定できない。このことは,精神の障害により性的意味を理解できない者に対しても準強制わいせつ罪(刑法178条1項)が成立することによっても明らかである。本件では,生後4か月から5歳までの乳幼児に対し,性器を露出させるなどして,これを撮影したものであるから,同人らの性的自由を侵害したものと認められる。

 混乱を収束させるためには、御庁がわいせつの定義を示さなければならない。

6 付言
 難しい問題だが、裁判所は定義を判示しなければならない。
 大法廷判決h29は性的意図を不要としたので、わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)という定義も変更する必要に迫られ、弁護人も検察官も定義を捜したのだが、適当な定義が見つからなかったので、沈黙したのである。

①大法廷事件の検察官の弁論
なお,弁護人の所論は,判例を変更して犯人に性的意図を不要とした場合,わいせつな行為の範囲が極めて不明確になる,特に医療行為,乳幼児への養育行為及び身障者への介護行為が処罰対象になる,性的自由を観念できない乳幼児に対する強制わいせつ罪が成立しなくなりその保護に欠けるなどと主張する。
しかし,このように主張する所論は,いずれも失当である。
強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」の判断に当たっては,被害者の性別・年齢,行為者と被害者との関係,具体的な行為態様,周囲の客観的状況等を考慮し,通常人からみて,客観的に当該行為が「わいせつな行為」としで性的自由又は性的自己決定権を侵害する行為であるか否かを判断するべきものであり,かつ,これによって処罰範囲は十分に明確である。
すなわち,医療行為や養育行為,介護行為として,性器を露出させたり,性器に触れる行為があったとしても,被害者の性別・年齢,行為者と被害者との関係,具体的な行為態様,周囲の客観的状況等を考慮した上で,客観的に医療行為等として適切な行為であれば,わいせつな行為に該当しないことは明らかであるから,性的意図を不要としても,わいせつな行為の範囲が不明確になることはない。
た,所論は,乳幼児には性的自由を観念できないとするが,性的な事柄についての判断能力を有しない乳幼児であっても,他者から性的侵害を受けない自由という意味においで性的自由を観念することができ,この性的自由を保護しなければならないことは明らかである上,性的意図を不要とした場合であっても,行為者と被害者との関係,具体的な行為態様,周囲の客観的状況等を考慮した上で,客観的にわいせつな行為と認められるのであれば,乳幼児に対する強制わいせつ罪が成立するのであるから,その保護に欠けることはない。
・・・・・・
②大法廷事件弁護人弁論
第2 上告理由第1・第2(わいせつの定義)について
1 わいせつの定義は不可能であるから、立法により行為リストを列挙する方法で解決されるべきである。
 性的意図不要説に判例変更された場合、「わいせつ」の定義についても判例変更を試みるだろう。
 原判決は性的意図不要とした手前、わいせつの再定義を迫られ、また弁護人の控訴理由で権利侵害の定義では乳幼児の保護に欠けると指摘されたことから、短絡的に「わいせつ=客観的に性的自由を侵害する行為」と定義づけた。

 最近の学説をみても、学説は混沌としていて一致しない。「わいせつ=客観的に性的自由を侵害する行為」という原判決の定義は一般的ではない。
 しかも、いずれの見解でも、定義に加えて、現行の解釈でも「わいせつ」とされるいくつかの事例を紹介して、「このような行為が「わいせつ行為」である」との説明がされている。

前田雅英 刑法各論講義 第6版p95
本罪の実行行為は,わいせつな行為である.刑法上のわいせつ行為の意義は, 徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ,かつ普通人の性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反すること とされているが、公然、わいせつ罪(174条),わいせつ物頒布罪(I75条)に閲するもので,本罪は個人の性的人格・身体を直接侵害する以上,別異に考ーえられ,キスする行為もわいせつ行為である.着衣の上からであっても,女性の臀部を手のひらでなで回す行為も「わいせつ行為」に当たる.いわゆる痴漢行為は,本条の要件に該当する場合がある(態様により,条例による処罰にとどまることもある)
必ずしも被答者の身体に触れる必要はない. 裸にして写真を撮る行為も含む
 このような定義+事例という説明は、定義ができていないということを示す。 

 原判決の「客観的に性的自由を害する行為」というのは、たまたま手元にあった注釈刑法の和田説を採用したと思われるが、和田説は続けて「客体が13歳未満の場合は別の検討を要する。性的蓋恥心を,年齢を無視した一般的判断に服せしめ,乳幼児の啓部を撫でる行為にまで本罪を認めるのは過剰であろう。逆に,性的差恥心を個別的に判断し, それを有しない幼年者を,たとえば性交類似行為からも保護しないのは妥当でない。」と説明されていて、「客観的に性的自由を害する行為」という定義では説明しきれていない。この見解でも、裁判例に現れたわいせつ行為を列挙して、定義+事例で説明しようとしている。
注釈刑法第2巻各論1(H28) p617 和田俊憲*10
強制わいせつ罪

 結局、「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)」という従前の定義にしても、原判決が採用する「客観的に性的自由を侵害する行為」にしても、他の学説にして、処罰すべき「わいせつ行為」を説明しきれていないし、処罰される行為の列挙が欠かせないのだから、定義としては無意味なものである。

 もはや解釈による定義付けでは犯罪・非犯罪を区別することができないのであるから、判例変更は諦めて、立法により、行為をリストアップする方法で解決すべきである。
 児童買春罪の定義や、外国の立法例を紹介しておく。
立法例
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条2項
当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。

性犯罪の罰則に関する検討会第4回会議(平成26年12月24日)
http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00097.html
配布資料12 性犯罪に関する諸外国の法制に関する資料
ミシガン州性犯罪関連条文和訳(仮訳)
第 750.520a 条(定義)
(q)“性的接触”には,被害者若しくは行為者の恥部の意図的な接触,又は被害者若しくは行為者の恥部を直接覆う衣服の意図的な接触を含む。
 ただし,意図的な接触が性的興奮や満足を得る目的と合理的に考えられ,又は性的目的で行われたと合理的にいえ,又は以下の各号のために性的な態様で行われたものに限る。
(i) 復讐
(ii) 加虐
(iii) 怒り

ニューヨーク州性犯罪関連条文和訳(仮訳)
第130.00条【性犯罪;定義】
本条においては,次の定義が適用される。
3.「性的接触」とは,いずれか一方の側の性的欲望を満足させる目的で,性器その他の人目につかない人体の部分に接触することをいう。これには,直接又は着衣の上からかを問わず,行為者が被害者に接触することのみならず,被害者が行為者に接触することも含まれ,また,被害者が服を着ているかいないかにかかわらず,行為者が被害者の体の一部に精液をかけることも含まれる。

 これは下級審に課せられた宿題であるから、本件にふさわしい定義を判示すべきである。

7 まとめ
 かつて、強制わいせつ罪の保護法益には風俗という社会的法益が含まれることから、わいせつとは、公然わいせつ罪・わいせつ物頒布罪と同様に、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいうのが判例最判昭26・5・10刑集5-6-1026)であった。
 また最近の判例はわいせつ=性的自由を侵害する行為という。
 正解は「わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。」である。
 しかし、原判決は解釈を誤って、「■■■■■■■■■■■■■■■■」とわけのわからない判示した。
 この点で、原判決には法令適用の誤りと理由不備があるから、原判決は破棄を免れない

6

山口厚刑法各論 第2版H28 p106
わいせつな行為
「わいせつな行為」とは,性的な意味を有する行為,すなわち,本人の性的差恥心の対象となるような行為をいう(23)。これが, 13歳以上の男女に対しては,暴行・脅迫によって強要される場合に,その者の性的な自由が害されるのである(「わいせつな行為」それ自体に,概念内在的に,法益侵害性が備わっているわけではない)
本罪の「わいせつな行為」と公然わいせつ罪(刑174条)における「わいせつな行為」とは,保護法益が異なっており,その内容は異なる。前者は,本人の(自ら行うか否かについての)性的な自由の対象となる行為であるのに対して,後者は,他人の(他人が行うことを見るか否かについての)性的な自由の対象となる行為だからである。したがって,無理やりキスをすることは,現在のわが国においては,強制わいせつ罪の成立をなお肯定しうるであろうが(東京高判昭和32・1・22高刑集10巻l号10頁参照),公然わいせつ罪の成立を肯定することはできないと解されることになる。具体的には,乳房や陰部などに触れる行為,裸にして写真撮影する行為,男性に性交を行わせる行為24)などがそれにあたる。

7

山口厚 基本判例に学ぶ刑法各論2011
p18
2問題は,強制わいせつ罪が成立するためには,性的自由という法益の侵害があるだけでは足りず,本判決のいうように,「性的意図」がある場合に限られるのかということである。犯人の意図がいかなるものであれ,脅迫により裸にされて撮影されたAの性的自由が侵害されたことには変わりがない。「性的意図」といった法益侵害とは関係しない, しかも明文にない要件を要求する根拠があるかが問われることになろう。本判決に付された反対意見は,そうした処罰の限定に根拠がないとしているのである。これに対し,本判決は「性的意図」が要求される根拠について何も語るところがない
学説では,本判決と同様に,強制わいせつ罪について「性的意図」を成立要件として要求する見解は少数であり,多数の見解は,「性的意図」といった,被害者の性的自由という法益の侵害と関係のない要件を要求する理由はないと解している
本判決の後,女性を従業員として働かせる目的で同女を全裸にして写真撮影をしたという事案について,「強制わいせつの意図」があったとして強制わいせつ致傷罪(181条1項)の成立を認めた下級審裁判例があるが、そこでは.そのような意図はわいせつ行為の認識から肯定されている。これは,実質的には本判決の立場を否定したものであるといえよう。こうした裁判例や学説の動向を考えると,本判決に現在どの程度の先例的価値があるか疑問があるように思われる。

8

山口厚 刑法p243
(2) 構成要件
(i) わいせつな行為
わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。

撮影型強制わいせつ事件(176条後段)につき、児童ポルノ製造罪との罪数 問題を避けた起訴(横浜地裁h30.4.24)

 児童ポルノ画像があるから強制わいせつ罪が起訴されているのに、児童ポル
ノ製造罪は起訴していないというのでは、被告人の行為を評価し尽くしていな
い感じです。
 横浜地検は、観念的競合で起訴したり、併合罪で起訴したりで、わかんない
まま起訴してる感じです。

 罪となるべき事実は
 第1 3/28 A 強制わいせつ罪(176条後段)
 第2 4/1 B 強制わいせつ罪(176条後段)
 第3 7/9 C 強制わいせつ罪(176条後段)
 第4 7月中旬頃~ C 強制わいせつ罪(176条後
段)
 第5 9/5 D 製造罪
 第6 10/25  C 強制わいせつ罪(176条後段) 
 第7 12/28 E 強制わいせつ罪(176条後段) 
 第8 12/29 E 強制わいせつ罪(176条後段) 
 第9 12/29 F 強制わいせつ罪(176条後段) 
となっていて、強制わいせつ罪(176条後段)はいずれも撮影行為を含みます
が、製造罪は起訴されていません。
 Dに対する製造行為は強制わいせつ罪(176条後段)を含みますが、強制わ
いせつ罪(176条後段)は起訴されていません。被害者が強制わいせつ罪(176
条後段)での起訴を望まなかったからか。にもかかわらず製造罪での起訴はい
いのか。弁護人が指摘した形跡がありません。
 わいせつの定義が決まっていないのに、争われた形跡がありません。

裁判年月日  平成30年 4月24日  裁判所名  横浜地裁
事件名  強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰
並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号  2018WLJPCA04246003
出典 ウエストロー・ジャパン
 上記の者に対する強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制
及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所
は,検察官寺尾智子並びに私選弁護人藤代浩則(主任)及び同佐藤美由紀各出
席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1  平成27年3月28日(以下の月日は全て平成27年のものであ
る。)午前3時13分頃から午前3時14分頃までの間,沖縄県八重山郡〈以
下省略〉宿泊施設「○○」客室内において,A(当時11歳。アルファベット
による呼称と氏名との対応関係は別紙一覧表記載のとおり。以下同じ。)が1
3歳未満の男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその
陰茎を口淫した上,これを自己が使用するデジタルカメラで動画撮影し,もっ
て13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【29年6月27日付け追
起訴】
 第2  4月1日午前3時54分頃から午前3時55分頃までの間,上記
「○○」客室内において,B(当時10歳)が13歳未満の男子であることを
知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその陰茎を手指で直接触った上,
これを自己が使用するカメラ機能付きスマートフォンで動画撮影し,もって1
3歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【29年5月31日付け追起
訴】
 第3  7月9日午後5時6分頃から午後5時13分頃までの間,横浜市
〈以下省略〉a協同組合1階男子トイレ内において,C(当時11歳)が13
歳未満の男子であることを知りながら,同人の着衣をずらしてその陰茎を手指
で直接触った上,これを自己が使用するカメラ機能付きスマートフォン(商品
iPhone6)で動画撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為
をし,【29年3月28日付け追起訴第1】
 第4  7月中旬頃から8月上旬頃までの間に,上記第3記載の男子トイレ
内において,C(当時11歳)が13歳未満の男子であることを知りながら,
同人の着衣をずらしてその陰茎を手指で直接触り,口淫した上,これを上記第
3記載のスマートフォンで動画撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わい
せつな行為をし,【29年3月28日付け追起訴第2】
 第5  9月5日午後10時1分頃から午後10時2分頃までの間,東京都
●●●校庭内に設置されたテント内において,D(当時12歳)が18歳に満
たない児童であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらして,同人の
陰茎を露出した姿態をとらせ,これを上記第3記載のスマートフォンで動画撮
影し,その動画データ1点を同スマートフォン内蔵の電磁的記録媒体である記
録装置に記録して保存し,もって衣服の一部を着けない児童の姿態であって,
殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性
欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により
電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し,【29年7月24
日付け追起訴】
 第6  10月25日,神奈川県横須賀市〈以下省略〉bマンション301
の被告人方において,C(当時12歳)が13歳未満の男子であることを知り
ながら,同人の着衣をずらしてその陰茎を手指で直接触った上,これを自己が
使用するカメラ機能付き携帯型音楽プレイヤー(商品名iPod touch)で動画撮
影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【28年11月
28日付け起訴】
 第7  12月28日午前1時4分頃から午前1時24分頃までの間,群馬
県吾妻郡〈以下省略〉c研修センターC棟2階C601号室において,E(当
時9歳)が13歳未満の男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着
ずらしてその陰茎を手指で直接触り,口淫するなどした上,これを上記第3記
載のスマートフォンで動画撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつ
な行為をし,【29年1月31日付け追起訴第1】
 第8  12月29日午前1時14分頃から午前1時15分頃までの間,上
記第7記載のC棟2階C601号室において,E(当時9歳)が13歳未満の
男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその陰茎を手指
で直接触った上,これを上記第3記載のスマートフォンで動画撮影し,もって
13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【29年1月31日付け追起
訴第2】
 第9  12月29日午前3時24分頃から午前3時32分頃までの間,上
記第7記載のC棟2階C609号室において,F(当時10歳)が13歳未満
の男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその陰茎を手
指で直接触り,口淫した上,これを上記第3記載のスマートフォンで動画撮影
し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし【29年3月3日付
け追起訴】
 たものである。
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1ないし第4及び第6ないし第9の各行為
 いずれも平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の
刑法176条後段
 判示第5の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並び
に児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号
 刑種の選択 判示第5の罪について所定刑中懲役刑を選択する。
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も
重い判示第4の罪の刑に法定の加重をする。)
 未決勾留日数の算入 同法21条
 訴訟費用の負担 刑訴法181条1項本文
 (量刑の事情)
 (求刑 懲役7年)
 横浜地方裁判所第4刑事部
 (裁判官 片山隆夫)

宮城県青少年健全育成条例制定の背景は「昭和30年ころから「太陽の季節」「狂った果実」「処刑の部屋」等の太陽族映画と称される映画の影響により、青少年の非行の増加と社会環境の悪化が懸念された。」ことにある。宮城県青少年健全育成条例の解説平成30年版

宮城県青少年健全育成条例改正の経緯
制定・改正年月日
青少年保護条例制定
S35. 3 .31公布(宮城県条例第13号)
S35. 7. 1 施行


背景・理由等
【制定理由】
昭和30年ころから「太陽の季節」「狂った果実」「処刑の部屋」等の太陽族映画と称される映画の影響により、青少年の非行の増加と社会環境の悪化が懸念された。
青少年の非行化が、ここ数年増加の一途をたどり、その内容が集団化、凶悪化し、低年齢化するなど憂慮される状況にある。
青少年の非行化は、ちまたに氾濫する不良文化財、不健全娯楽の影響によるところが大きいと考えられることから、悪い環境から青少年を保護し、その環境のじゅん化に努め、もって青少年の健全育成を図ろうとするもの。


内容
1 青少年を直接の取締対象とせず、成人に対し、青少年を取り巻く環境のじゅん化に努めるよう義務付けた。
2 青少年の健全育成に悪影響を与えると認められる興行、図書及び広告物の指定基準を定め、これらのものを青少年の周囲から排した。
3 青少年からの質受入れ、古物買受けを制限し、経済面からの青少年の非行化を防止するようにした。
4 青少年に賭博、淫行又はわいせつ行為を行う場所を提供しないようにした。
5 青少年に危害を伴うがん具類等を所持させないようにした。
6 青少年が風俗営業を行う場所に立ち入るのを制限した。
7 条例に規定する措置は、社会福祉審議会の意見を徴して行うこととした。

「集団強姦」でっちあげ 「仕事行きたくなくて」ネットで依頼 虚偽通報容疑の女ら書類送検~目撃者からの通報は、火災や事件事故を早く察知する重要な手段だ。警察庁は「善意の通報なら、結果的に違っても罪に問われることは基本的にはない」と呼び掛ける。

 偽計による公務の妨害については刑法には執行妨害罪以外に明文がなく、適用されそうなのは軽犯罪法だけです。

刑法
第九六条の三(強制執行行為妨害等)
 偽計又は威力を用いて、立入り、占有者の確認その他の強制執行の行為を妨害した者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2強制執行の申立てをさせず又はその申立てを取り下げさせる目的で、申立権者又はその代理人に対して暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
〔平二三法七四本条追加〕
第九六条の四(強制執行関係売却妨害)
 偽計又は威力を用いて、強制執行において行われ、又は行われるべき売却の公正を害すべき行為をした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
〔平二三法七四本条追加〕
第九六条の五(加重封印等破棄等)
 報酬を得、又は得させる目的で、人の債務に関して、第九十六条から前条までの罪を犯した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
〔平二三法七四本条追加〕
第九六条の六(公契約関係競売等妨害)
 偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。
・・・
軽犯罪法
十六 虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
三十一 他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/442793/
「集団強姦」でっちあげ 「仕事行きたくなくて」ネットで依頼 虚偽通報容疑の女ら書類送検
2018年08月21日06時00分 (更新 08月21日 09時05分)

 福岡県宗像市で6月、男2人から性的暴行の被害に遭ったなどとうその通報をして警察の業務を妨害したとして、福岡県警が今月、偽計業務妨害の疑いで、県内の男女3人を福岡地検書類送検していたことが捜査関係者への取材で20日、分かった。

 書類送検されたのは、いずれも県内在住で、銀行員の20代の女と、女に協力した20代の男ら2人。書類送検容疑は6月中旬、共謀して、うその性犯罪事件をでっち上げ、警察官の業務を妨害した疑い。

 捜査関係者によると、女がインターネットを通じて知り合った男2人に「連れ去ってレイプしてほしい」などと依頼。2人は実際に、宗像市内で帰宅中の女を車で連れ去り、わいせつな行為をしたという。女が家族に「集団強姦(ごうかん)の被害に遭った」と相談し、両親が県警に通報した。

 県警は防犯カメラの映像などから男2人を特定。事情を聴いたところ、「女から頼まれた」と話し、女と連絡を取り合って計画していたことなどから虚偽の事件と判断した。女は動機について「仕事に行きたくなかった。彼氏の気も引きたかった」と話したという。

   ◇    ◇

捜査に延べ70人投入

 “事件”の一報を受け、県警は延べ70人以上の捜査員を投入した。浜松市の女性看護師(29)が車ごと拉致され、6月上旬に静岡県の山中で遺体が見つかった事件の発生直後で、捜査幹部は「手口に共通点もあり、大きく構えた。性犯罪は被害者の心情に配慮して細かく聞けない場合もあり、初動が肝心だ」と話す。

 うその通報で摘発されたケースは過去にもある。福岡県内では昨年11月、警察に虚偽の通報をして駆け付けたパトカーから走って逃げ回る「パト戦」という行為を繰り返したとして、15~17歳の少年約10人が軽犯罪法違反(虚偽申告)などの疑いで書類送検された。

 一方で、目撃者からの通報は、火災や事件事故を早く察知する重要な手段だ。警察庁は「善意の通報なら、結果的に違っても罪に問われることは基本的にはない」と呼び掛ける。

 今回、書類送検に踏み切ったことについて県警幹部は「虚偽の通報に対応している間に、別の重大事件が起きる可能性もある。うその代償は大きい」と指摘した。

=2018/08/21付 西日本新聞朝刊=

一夫多妻制の国の人が、日本国内で婚姻をすると重婚罪になる。

 

https://www.zakzak.co.jp/ent/news/180820/ent1808208026-n1.html
ところが日本では当然のことながら重婚になってしまう。ということで、北山はギニア国籍の取得を申請中という状況なのだ。手続きが終了する10月には挙式・披露宴を行うという。

刑法
第三条(国民の国外犯)
 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
五 第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦かん、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)、第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪
・・
第一八四条(重婚)
 配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。
・・・
法の適用に関する通則法
婚姻の成立及び方式)
第二十四条  
1 婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
2  婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
3  前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。

条解刑法
1 ) 本条の趣旨
一夫一婦制という婚姻の制度あるいは社会的秩序を保護法益とするものと解される。この規定によって配偶者ないしその家庭も保護されることになるが,それは,反射的な効果と解すべきであろう。

重婚
本罪の行為は,重ねて婚姻することである。この婚姻(後婚)も,法律上の有効な婚姻である必要がある。事実婚で足りるとする見解もあるが,本条が民法と同じ「婚姻」という文言を用い(民732等), 225条では「結婚」と表現されていることからも,法律婚と解すべきである。
日本人が国外で婚姻した場合,それが我が国でも有効なものであれば(法適用通則24参照),前婚・後婚を問わず,本条の要件を充たすことになる。なお,日本人が国外で後婚を行った場合にも( 3(5)), また外国人が日本国内で、後婚を行った場合にも本条が適用される(1①)。外国人の場合,その本国では重婚が許されていても,本罪が成立する。
・・・
注釈刑法(4) 各則(2)
(3) 外国で婚姻するばあい,届出のない婚姻がわが国法上有効と認められるぱあいがある(法例131但〉。前婚または後婚がかかる婚姻であることを妨げない(泉二・各414) ただし後婚は,日本人のばあいには外国でしでもよい(属人主義)が、外国人のぱあいにはわが国ですることを要する(属地主義) (泉ニ・各414。)
なお外国人のぱあい,本国法で重婚が許されていることを妨げない泉ニ・各414頁〉。
・・・
コンメンタール刑法第3版9巻
2 行為
4 行為は,重ねて婚姻することである.
ここに、婚姻は我が民法上有効に成虫している法律婚に限られる(前掲名古屋高判昭36・11・8. 通説である)事実婚で足りるとする説もあるが(団藤・注釈(4)所325 大塚・注解811員等参照).本条の趣旨に照らすと,処罰の範囲が広きに失すると思われると,本条と225条で婚姻と結婚を使い分けている点からも法律婚を指すと解すべきである(条解刑法485頁).
後婚が無効のものであるときは,本罪は成立しない.
4 外国法による婚姻
日本人同士の婚姻の場介は,婚姻挙行地が外国で,その地の方式によって婚姻した場合でも,婚姻成立の要件は本国法である我が国の民法によるので(担、適用通則24条.なお,婚姻の方式としては民泣、741条による届出も可能).前婚,後婚ともにこのような婚姻であっても本罪の成立を妨げない(団藤注釈(4)所325頁 条解刑法485頁参照).
「配偶者ある者」が外国人である場合は,我が国の婚姻制度を維持するという本条の趣旨からいって,後婚が日本人とあるいは日本の方式に従って行われることを要しよう。ただし外国人の場合には,後婚が日本国内で行われることを要する(3条5号参照) 外国人の本国法が重婚を許すものであってもよい(団藤・注釈(4)所325頁,条解刑法485頁参照)

強姦罪の起訴率の低下が著しい。一九九八年の七二・三%から徐々に低下をし て、強姦罪の下限が二年以上から三年以上に引き上げられ、これが二〇〇四年 でしたけれども、この二〇〇四年を経て、二〇〇五年からは低下の一途をたど っています。一昨年は三五・三%に半減しました。(193-衆-法務委員会-21号 平成29年06月07日)

 起訴猶予とか無罪になるというのは事件によるので

193-衆-法務委員会-21号 平成29年06月07日
○池内委員 裁判官が個人的な経験則やまた思い込みによって価値判断を下す
ようなことがあったら、本当に大変なことだと思います。
 裁判員制度の導入の後、性犯罪の量刑というのは、特に強姦致傷罪では若干
重い方へとシフトしています。この点で、裁判員に性犯罪を裁かせることは危
険ではないかと職業裁判官が危惧していましたけれども、むしろ真の危険は、
性犯罪の違法性、保護法益、被害の実態が正確に理解されず、経験則もジェン
ダーバイアスや時代おくれの強姦神話に基づいており、罰せられるべき加害者
が無罪や不当に軽い刑に処され、逆に被害者は二次被害セカンドレイプやP
TSDに苦しんできた、日本の刑事裁判そのものに潜んでいたのではないかと
強調したいと、島岡まな大阪大学教授が厳しく批判をしています。私は、この
ことを肝に銘じるべきだというふうに思うんです。
 強姦罪の起訴率の低下が著しい。一九九八年の七二・三%から徐々に低下を
して、強姦罪の下限が二年以上から三年以上に引き上げられ、これが二〇〇四
年でしたけれども、この二〇〇四年を経て、二〇〇五年からは低下の一途をた
どっています。一昨年は三五・三%に半減しました。
 嫌疑不十分による不起訴が増大しています。不起訴のうち嫌疑不十分が四割
から五割を占めている、この理由は何でしょうか。内閣府の女性に対する暴力
専門調査会では、学識経験者の方がこう言っています、検察は顔見知りの事件
を起訴しない傾向があると。この指摘はどうでしょうか。
    〔今野委員長代理退席、委員長着席〕

○林政府参考人 御指摘の強姦罪の起訴率、ここ十年ほど低下傾向にあるとい
うことは承知しております。ただ、これは刑法犯全体についても同様の傾向が
見られております。強姦罪に限って起訴率が低下しているものとは認識してお
りません。
 また、この起訴率でございますが、個別具体の事案に即しての起訴、不起訴
の判断の集積でございますので、起訴率の低下について、その原因あるいは評
価を一概に述べることはやや困難であろうかと思います。
 その上で、顔見知りの場合と顔見知りでない者との判断で検察官の評価が違
うかどうかということでございますが、この強姦罪について見れば、既に検挙
件数のうち半分半分、顔見知りの者による犯行あるいは顔見知りでない者の犯
行、これはほぼ半々でございます。
 捜査、公判の実務におきましては、被疑者となっている者については半分が
顔見知り、半分が顔見知りでない、そういった件数になっておりまして、こう
いった状況のもとで、検察官が、顔見知りの場合にはどのような起訴をする傾
向があるか、あるいは顔見知りでない場合にどのような起訴をするのかという
ことについては、その判断の中で全くその傾向はないものと考えております。

○池内委員 今、強姦罪の起訴率が低下しているということはお認めになって
いる。
 ほかのも起訴率は下がっていると言ったんですけれども、でも、強盗の起訴
率というのはおおむね六割から七割で推移していますよ。殺人罪だって実質五
割程度。強姦罪は格段に、これはほかとは比べられないぐらいに低下している
ということは私は言っておきたいし、また、半分半分だとおっしゃったけれど
も、暗数が物すごく多いということを考えれば、本来であればもっと性犯罪と
してちゃんと処罰しなきゃいけないものが隠れているということを私は指摘し
たいというふうに思います。
 二〇〇八年六月の大阪地裁の強姦罪無罪判決は、二十四歳の被告が出会って
二日目の十四歳の少女を姦淫した事件ですけれども、被害少女が性交に同意し
ていなかったことを認めながらも、加えられた暴行の程度に関し、被告人が被
害少女の足を開く行為及び被害少女に覆いかぶさる行為が、犯行を著しく困難
にする程度の有形力の行使であるとは認めがたいというふうにしました。結
局、叫ぶほどの拒絶、本気で抵抗するべきものという裁判官の強姦神話、女性
に対する厳格な貞操維持の義務を求めているとしか思えない判決じゃないかと
思います。
 起訴した検察は、こうした無罪判決が出ると、負けてしまうんだったら起訴
しないという方向に流れるんじゃないですか。

○林政府参考人 検察官といたしましては、法と証拠に基づきまして、その場
合に検察官として起訴するかどうかについては、的確な証拠によって有罪判決
が得られる高度の見込みがある場合に限って公訴を提起するという運用が行わ
れてきております。
 この点につきましては、性犯罪あるいは強姦罪とかいうものの罪名にかかわ
らず、全体として、検察官の処理といたしましてはそのように行っているとい
うことでございます。

○池内委員 これだけ不起訴がふえています。その理由が何なのか。暴行、脅
迫要件の立証が困難なのか、故意の認定が困難なのか、顔見知り、監護者以
外、親族からの被害がどの程度かなど、さまざま要因があると思うんですね。
 法務省自身が、なぜここまで不起訴がふえているのか検証していただきたい
し、研究者などがその内容をトレースできるように情報も提供すべきだと私は
思います。この点も強く検討を求めたいというふうに思います。
 次に、内閣府の調査では、性暴力事件の七割から八割程度が顔見知りの加害
者によって行われている、このことが明らかになっています。これは、民間団
体の相談現場での実感や、諸外国の傾向とも重なるものです。
 顔見知りの間でこそ、暴行、脅迫を立証しにくい、被害が潜在化している。
嫌疑不十分の不起訴というのがこれだけふえているというのは、私は何度も繰
り返していますけれども、ますます潜在化していくのではないか。積極的に起
訴すべきじゃないでしょうか。

○林政府参考人 先ほど申し上げましたが、被疑者と被害者が顔見知りである
か否かによってその被害者の例えば信用性を判断している、そういったことは
ございません。やはり個別の具体的な事案に即して、関係証拠の中で起訴すべ
き事件は適切に起訴しているものと承知しております。

○池内委員 顔見知りの間だと、暴行、脅迫というのは必ずしも必要ない場合
がやはり多いわけですよね。必ずしも必要ではない。そうすると、この暴行、
脅迫要件というのが被害者にとってはどう働くかといえば、やはり被害の選別
化に働いているのではないか、みずからの被害を立証するときに物すごく大き
なハードルになっている。性行為の同意の有無こそ、構成要件にすべきじゃな
いですか。

○林政府参考人 同意の有無そのものを直接の構成要件にした場合、これにつ
いては、同意というものの立証というのは非常に困難なものがございます。そ
ういったことによりまして、同意の有無を直接構成要件にした場合に、かえっ
てその立証のハードルが高くなるといったことはあり得ることと考えます。
 さらには、立証のみならず、同意の有無で構成要件を考えた場合に、どの場
合に犯罪が成立するかということになりますと、交際関係のある例えば男女の
場合に、どのような場合に犯罪が成立し、どの場合に犯罪が成立しないかとい
うことについては、当事者にとりましてもなかなか予測が困難、可能性が低く
なる、こういった問題もございます。
 そういったことから、同意の有無そのものを構成要件とするということ、す
なわち、例えば暴行、脅迫という構成要件を撤廃して、構成要件の中に同意が
あるかないか、同意がない場合の性交を犯罪とする、こういうふうに定めた場
合には、その立証の点におきましてもそうですが、当事者における犯罪成立の
予測可能性というものもかなり低くなってしまう、そういった問題があろうか
と思います。

○池内委員 現実に、被害者がどれだけ抵抗したかということが常に問題にさ
れる。でも、被害者からすれば、嫌なものは嫌だし、つまり、ノー・ミーンズ
・ノーと世界の女性たちが声を上げているように、嫌なものは嫌なんですよ。
 立証が難しいとおっしゃった。でしたら、なぜ同意があると思ってしまった
のか、加害者の側に挙証責任を負わせるべきじゃないですか。

○林政府参考人 もちろん、仮に加害者の側に同意があったものの挙証責任を
負わせるという形にすれば、立証は非常に容易なものとなると思います。しか
しながら、刑事訴訟法におきましては全て検察官が挙証責任を負うというのが
大原則でございまして、その部分について挙証責任を転換するということにつ
いては、刑事訴訟法の基本構造との関係で、かなりそれは問題が大きいものと
考えます。

○池内委員 刑事訴訟法の基本構造で個人の人権が虐げられるというのはおか
しいと思います。性犯罪のときにやり方を変えるということは幾らでもできる
んじゃないか。今おっしゃいましたよね、挙証責任を加害者に負わせれば立証
は大分やりやすくなる、容易になると。だったら、やってください、被害者の
個人の人権を守ってくださいよということを私は言いたいと思う。
 実は今、私が何だかとっぴなことを言っているとお感じになるかもしれない
けれども、世界ではこのような法改正が進んでいるということなんです。
 欧米諸国では三十年から四十年前から刑法を改正してきて、韓国もそうです
ね、我が国が参考にしてきたドイツでも、昨年の改正で、被害者の明示した意
思に反すれば暴行、脅迫は不要、このように改正をしました。そのほかにも、
加害者と被害者の年齢差や、社会的地位、親族からの被害や、教師と教え子、
地位や関係性を利用した類型を処罰するという法改正が何度も重ねられていま
す。レイプシールド法とあわせて、被害者が身の安全を確保する、訴えやすい
状況を社会としてふやしてきているわけです。こうした刑法や刑事司法の手続
の改革が、女性が積極的に被害を訴えられるように変化をもたらしている。
 法務総合研究所の研究が指摘しているフランスの事例を読み上げてくださ
い。

○高嶋政府参考人 御指摘の箇所は、法務総合研究所研究部報告三十八の十六
ページ目、下から五行目から十七ページ目三行までの八行ということでよろし
いかと思いますが、読み上げます。
  フランスにおける性犯罪の発生件数は増加傾向にあるが、この背景には、
性犯罪を警察に届け出やすい環境の整備(例えば、既述の性犯罪に関する公訴
権の消滅時効に関する法改正等)及び国民、特に女性の権利意識の変化がある
ようである。すなわち、以前は性犯罪の被害、特に家庭内や親族間で起きた強
姦事件等については、被害者である女性が警察に被害届を出さない傾向が見ら
れたが、二十年ほど前から、女性の人権意識(自己の権利はだれにも侵される
ことのない絶対的で崇高な性質のものであるとの意識)の高揚とともに、自ら
警察への被害届や通報をためらわずに行うなど、女性の性犯罪の被害に関する
意識が徐々に変化しており、これが統計的に性犯罪の増加をもたらした大きな
要因の一つであると考えられている。
以上でございます。

「同種事案の量刑傾向に照らして,執行猶予付き懲役刑が相当な事案といえる」として強制わいせつ1罪で懲役1年4月執行猶予3年(東京地裁H30.4.25)

 同種事案は圧倒的に「懲役1年6月執行猶予」ですが、被害者参加してもちょっと軽い。

東京地裁平成30年 4月25日
強制わいせつ被告事件
主文
 被告人を懲役1年4月に処する。
 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
 【罪となるべき事実】
 被告人は,被害者Aに強制わいせつ行為をしようと考え,平成29年6月3日午前4時11分頃,東京都〈以下省略〉先路上において,被害者に対し,その口を左手で塞ぐなどの暴行を加え,ワンピースの裾から右手を差し入れて下着の上からその陰部を触るなどした。
 【証拠の標目】
 【法令の適用】
 罰条 平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条前段
 刑の執行猶予 刑法25条1項
 【量刑の理由】
 早朝の路上で通行中の女性に背後から近付き,口を塞いだ上でわいせつ行為に及んだとの犯行態様は卑劣である。
 被害者が受けた精神的苦痛は大きく,示談成立後もなおその処罰感情は厳しい。
 自らの欲望を満たすためとの犯行動機にもとより酌量の余地はない。
 そうすると,本件は,軽視し難い路上類型の強制わいせつ事案ではあるが,紆余曲折もあって被害者の精神的苦痛が十分に慰謝されたとはいえないものの,被告人が被害者に損害賠償金50万円を支払って示談が成立したこと,被告人には前科がないことなども踏まえれば,同種事案の量刑傾向に照らして,執行猶予付き懲役刑が相当な事案といえる。以上に加えて,被告人が事実を認め反省の態度及び更生の意欲を示していること,父親が今後の監督等について証言し,母親も同旨の誓約書を作成していること,自業自得ではあるものの,被告人は,本件を契機に当時の勤務先であった大手新聞社を懲戒解雇され,また,現役の新聞記者が起こした事件として本件が実名入りで大きく報道されたとの社会的制裁も受けたことなども踏まえて,刑期及び執行猶予の期間を定めた。
 (検察官青木朝子,鎌田祥平,私選弁護人B,被害者参加弁護士C出席)
 (求刑 懲役1年4月)
 東京地方裁判所刑事第3部
 (裁判官 大川隆男)

強制わいせつ罪で逮捕して、暴行罪で略式起訴したら、簡裁が略式命令請求を拒否した事案

 林道春簡裁判事は、27期で元名古屋高裁部総括判事
 わいせつ目的の暴行は強制わいせつ(未遂)罪の一部であって、暴行罪にはならないという論点もありますが、強制わいせつ罪は簡裁の管轄外になります。

http://www.e-hoki.com/judge/2298.html
林道春
所属 岐阜簡裁判事
異動履歴 H.29. 3.25 ~ 岐阜簡裁判事
H.27. 4. 1 ~ H.29. 3.24 一宮簡裁判事
H.27. 2. 9 定年退官
H.23.12.19 ~ H.27. 2. 8 名古屋高裁部総括判事
H.22. 6.23 ~ H.23.12.18 津地家裁所長・津簡裁判事
H.20.10.31 ~ H.22. 6.22 山口地裁所長・山口簡裁判事
H.18. 4. 1 ~ H.20.10.30 名古屋高裁判事
H.13.11. 4 ~ H.18. 3.31 岐阜地家裁部総括判事
H.10. 2.10 ~ H.13.11. 3 名古屋地裁部総括判事
H. 9. 4. 1 ~ H.10. 2. 9 名古屋高裁判事
H. 6. 4. 1 ~ H. 9. 3.31 東京高裁判事
H. 4. 4. 1 ~ H. 6. 3.31 名古屋高裁判事

刑訴法
第四六三条[通常の審判]
1 第四百六十二条の請求があつた場合において、その事件が略式命令をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると思料するときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。
・・・
条解刑事訴訟法
1)略式命令をすることができないもの
略式命令の請求が法令上の方式に違反している場合のほか,形式的および実体的訴訟条件が具備していない場合,事件が罪とならない場合,および差し出された証拠資料によっては犯罪事実が合理的な疑いを超えて証明されたと認められない場合などをいう。
2)相当でないもの
略式命令の請求としては適法であるが,事案複雑で公判手続において慎重な審理をするのを相当と認められる場合,訴因・罰条の追加・撤回.変更を要する場合,量刑について検察官と著しく意見を異にする場合など,略式命令をすることが不相当と認められる場合をいう(461条注5参照)。
3)通常の審判手続への移行
裁判所は,略式命令請求が許されないものまたは不相当なものと認めたときは,略式手続によることなく,通常の事件として公判手続によって審理しなければならない。この場合には,別段その旨の決定をする必要はなく, また,公訴提起そのものは効力を失うわけではないので,そのまま通常の手続に移行することになる。まず第1に,起訴状謄本を被告人に送達することを要するから(4項.271),検察官に対し起訴状謄本の提出を促す意味で,検察官にその旨の通知をしなければならない。
・・・
略式手続の理論と実務
1 略式命令をすることができないとき
「略式命令をすることができないものである」とは,略式命令をすることが適法でない場合をいう。
(1) 略式命令請求の要件を具備していない場合
略式手続の告知手続書及び申述書の添附(第2章第1,第2)
(2) 形式的訴訟条件を具備していない場合
ア被告人に対する裁判権(第3章第1)
イ被告人の当事者能力
ウ同一事件について他に公訴の提起がないこと
エ公訴の取消しがあった事件については法340条の要件
親告罪については告訴があること
カ公訴提起の手続が有効であること(第2章第2)
(3) 実体的訴訟条件を具備していない場合
ア事件について既判力が生じていないこと
イ犯罪後の法令により刑が廃止されていないこと
大赦がないこと
エ公訴時効が完成していないこと(法250条)
(4) 公訴事実が要件を具備していない場合
ア事件が罪とならないとき
イ証拠が不十分で犯罪の証明がないとき(第3章第6)
2 略式命令をすることが相当でないとき
「略式命令をすることが相当でないものである」とは,略式命令請求自体は適法であるが,略式手続によることが相当ではなく,通常の公判手続により審理すべき場合をいう。
(1) 事案が複雑で,公判手続における通常の審理を相当と認めるとき
(2) 訴因・罰条の追加撤回又は変更を要するとき(第3章第5)
(3) 多くの日時を要する事実の取調べを必要とするとき
(4) 100万円以下の罰金又は科料以外の刑を科すべきものと認めたとき
(5) 量刑について検察官と著しく意見を異にするとき

 会同の資料なんて引用されても、入手できません

略式手続(七訂第二補訂版)裁判所職員総合研修所監修
p64
第4節 略式命令請求の拒否
1 要件
略式命令の請求があった場合において,裁判所は,次のいずれかの事由があるときは,通常の手続に従って審判しなければならない(法463)。
(1)事件が略式命令をすることができないものであるとき。
(2)事件が略式命令をすることが相当でないものであると思料するとき。
(3)検察官が法461条の2に定める手続をしていないとき。
(4)検察官が法462条2項に違反して略式命令を請求したとき。
何が「略式命令をすることができないもの」であり, また,何が「略式命令をすることが相当でないもの」に当たるかは, 「請求事件の審査」(第3章第1節29ページ)に関連して前に述べた。
1人の簡易裁判所判事の勤務する裁判所において,他に裁判官のてん補を求めることが困難であり,正式裁判の申立てがあるとその処理に困るような事情があるからといって,法463条にいう「略式命令をすることが相当でない」と解することはできない(注)。
(注) 刑裁資67号323ページ参照



p29
4相当性の審査
略式手続の請求を審査するに当たっては, 「略式命令をすることができないもの」(不適法)のほか, 「略式命令をすることが相当でないもの」(不相当)であるかどうかについても審査しなければならない。この相当性の審査は,形式上一応適法とされる略式命令の請求について行われる。例えば,
(1)事案が複雑で,公判手続において慎重な審理をするのを相当と認めるとき。
(2) 訴因・罰条の追加・撤回又は変更を要するとき(ただし,訴因の変更に至らない起訴状の訂正を含まない。) (注1)。
(3)複雑な事実の取調べを必要とするとき(注2)。
(4) 100万円以下の罰金又は科料以外の刑を科すべきものと認めたとき。
(5)量刑について,検察官と著しく意見を異にするとき。
などの場合には,通常手続に移して審判しなければならない場合が多いであろう。
なお,略式手続の告知手続及び被疑者の申述書(法461の2の書面)に記載された事件名が,起訴罪名と相違するときは,明らかに誤記と認められる場合を除いては, 同様に解する。告知された事実と起訴事実の同一性を知ることができないばかりでなく,法461条の2の異議権が十分に行使されたかどうかが疑わしいからである(注3)。
(注l) 「訴因の変更をしなければならない場合は,略式不相当として通常手続によることになろう。」(昭30.6仙台高裁管内簡裁判事会同・刑裁資258号17ページ。訴因の撤回につき,佐藤文哉・大学双書刑事訴訟法Ⅱ549ページ,訴因の変更につき,岩瀬徹・新実例刑事訴訟法(Ⅲ)300ページ以下。なお,昭51.2東京高裁管内簡裁判事会同・刑裁資221号342ページ参照。) 「略式手続における訴因変更の可否及び要否」(「法曹」203号81ページ以下)
(注2) 「略式命令においても刑の執行猶予をすることができることはいうまでもないが, (法461),略式命令は,書面審理に基づいてすべきものであるから,被疑者を直接取り調べる必要があるときは, 『略式命令をすることが相当でない場合」(法463) として,通常の規定に従って審判すべきであると思う。」(昭30.12高松高裁管内簡裁判事会同・刑裁資140号343ページ)
(注3) 「略式手続の告知手続および被疑者の申述書(刑訴461の2の書面)記載の事件名が起訴罪名と相違する場合は,告知された事実と起訴事実の同一性を知り得ない。同一性を認め得るとしても,刑訴法461条の2の異議権が充分に行使されたと考えることはできない。したがって,略式不相当として通常の規定に従い審判をしなければならない。」(昭31.5仙台高裁管内簡裁判事会同・刑裁資258号5ページ)

岐阜市職員巡り、略式起訴不相当 簡裁、わいせつ事件で /岐阜県2018.08.18 朝日新聞
 担当する生活保護受給者の女性に対する強制わいせつ容疑で逮捕された岐阜市職員について、岐阜区検は17日、暴行の罪で略式起訴した。岐阜簡裁はこの処分を「不相当」とし、正式な裁判が開かれることになった。
 起訴状によると、容疑者は2017年5月から今年4月にかけて、40代の女性に岐阜市役所内で抱きつくなどしたほか、今年6月には、岐阜市内の30代の女性宅で、女性を抱き寄せるなどしたとされる。
・・・
岐阜市職員巡る略式請求不相当 暴行罪で簡裁
2018.08.18 岐阜新聞
 岐阜区検は17日、生活保護を受給する女性3人に無理やり抱きつくなどしたとして、強制わいせつ容疑で逮捕された容疑者を暴行の罪で略式起訴した。岐阜簡裁(林道春裁判官)は同日、略式請求を「不相当」と判断し、正式裁判を開くことを決めた。
 起訴状などによると、2017年5月12日ごろ、岐阜市役所で同市の無職女性(44)に抱きついたり、今年4月10日ごろ、同市内のマンションの階段で抱き寄せたりした。また今年6月14日、同市の無職女性(34)の自宅で女性を抱き寄せたり、手を握ったりしたとされる。
被告は逮捕時、肩を抱いたり、手を握ったりする行為を認めた一方で、「下心はなかった」などと供述していた。
 岐阜地検は、同市の無職女性(35)の自宅で背後から女性の胸をもむなどした強制わいせつの罪については不起訴処分とした。17日付。
・・・
岐阜市職員の略式不相当 わいせつ行為、正式裁判へ
2018.08.18 共同通信 
 岐阜区検は18日までに、生活保護を受給する岐阜市の女性にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつの疑いで逮捕された容疑者を暴行の罪で略式起訴した。岐阜簡裁は「略式不相当」と判断し、正式な裁判が開かれる。17日付。
 起訴状によると、昨年5月~今年4月ごろ、市役所内や自動車内などで無職女性(44)に抱きつくなどし、今年6月14日には、無職女性(34)の自宅で女性を抱き寄せ、手を握ったとされる。岐阜中署によると、被告はケースワーカーとして2人の女性を担当していた。
 また岐阜地検は、被告が同じく担当していた無職女性(35)に対する強制わいせつ容疑については不起訴処分とした。処分理由は明らかにしていない。

逮捕報道

別の女性にも容疑で再逮捕 強制わいせつ容疑逮捕の岐阜市職員 /岐阜県2018.08.08 朝日新聞
 署によると、容疑者は2015年3月ごろから同年5月ごろまでの間に、複数回にわたり、職務で訪れた岐阜市内の30代の女性宅で、女性の背後から胸をもむなどした疑いがある。17年5月ごろから今年5月までの間には、40代の女性に市役所内で、複数回抱きつくなどした疑いがある。

sexting少女も自主退学

 欺したり、脅したりしなくても、裸送ってくるからなあ。
 広まっちゃうと、被害回復不能になる。

友人少女の裸動画拡散疑い、愛知 高校生ら14人書類送検
2018.08.17 共同通信 
 愛知県警少年課は17日、友人の少女に裸を撮影させ、その動画をLINE(ライン)で同級生らに送信し拡散させたなどとして、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造、提供、公然陳列)などの疑いで、いずれも同県在住の無職少年(16)と、15、16歳の高校生の男女13人の計14人を書類送検した。

 無職少年の送検容疑は5月29日、当時15歳の少女にスマートフォンのカメラで裸の動画を撮影させ、6月3日に少年のスマホに送信させた上、翌4日にかけて中学の同級生だった知人の男子高校生(15)ら3人に動画を提供するなどした疑い。

 少年課によると、男子高校生が同級生らのLINEグループに動画を投稿するなどして、最終的に14人の一部を含む少なくとも50人の高校生らに動画が拡散した。
・・・
◎少女の裸動画拡散容疑=高校生ら14人書類送検-愛知県警
2018.08.17 時事通信 
 女子高校生の裸の動画をスマートフォンで送信し拡散したなどとして、愛知県警少年課は17日、児童買春・ポルノ禁止法違反などの容疑で、愛知県内の無職少年(16)と高校生の男女13人を書類送検した。全員容疑を認めているという。
 無職少年の送検容疑は6月3日、中学の同級生だった少女(15)に撮影させた裸の動画を自分のスマホに送信させ、翌4日までに同級生ら3人に転送して提供した疑い。
 同課によると、動画はLINE(ライン)などを通じて転送が繰り返され、約50人に拡散したとみられる。同課は動画を受け取っただけでなく、転送するなどした13人を書類送検した。「知らない人の動画だから」などと軽い気持ちで転送していたという。 
 少女が警察に被害を相談。無職少年は高校を退学処分となり、少女も自主退学したという。
同課の杉浦巌課長は「被害者の保護も必要だが、警鐘を鳴らす意味で発表した」と説明した。

弁護士が警察に「面会が終わったことは署員に自分が伝えるので、そのまま帰ってほしい」と言ったらしい

 ここは守秘義務で黙秘で。
 計画性立証に使われちゃうかもで、信頼失う。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180817/k10011580451000.html
大阪の富田林警察署で勾留されていた男が、弁護士と面会したあと接見室から逃走した事件で、男が弁護士に対し「面会が終わったことは署員に自分が伝えるので、そのまま帰ってほしい」という趣旨の話をしていたことが関係者への取材でわかりました。警察は計画的に逃走したと見て、行方を捜査しています。

強盗傷害や窃盗の罪で起訴され、性的暴行をしようとした疑いで再逮捕されていた容疑者)は、今月12日の夜、接見室で弁護士と会ったあと、アクリル板を破って逃走しました。
発生から5日目となりますが、依然として行方はわかっていません。
警察のその後の調べで、容疑者が接見を終えて帰ろうとした弁護士に対し、「面会が終わったことは署員に自分が伝えるので、そのまま帰ってほしい」という趣旨の話をしていたことが関係者への取材でわかりました。
この警察署では接見室の扉を開けた時に鳴るブザーは、電池が抜かれていて使われておらず、弁護士は容疑者の要望どおり、署員に伝えずに警察署を離れていて、事件が発覚したのは、およそ1時間45分後でした。
警察は接見室で1人になる時間を作り計画的に逃走したと見て、いきさつを調べています。

https://mainichi.jp/articles/20180817/k00/00e/040/294000c
捜査関係者によると、容疑者は接見が終わる前、弁護士に「署員には言わなくてもいい」という趣旨の話をしたという。弁護士の事務所は「取材には一切答えられない」と話している。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20180817-OYT1T50121.html
容疑者が弁護士に「面会が終わったことは自分が署員に伝える」と虚偽の説明をしていたことが、わかった。署員に弁護士から接見終了が伝わるのを防いで面会室に1人で残る狙いとみられ、逃走が計画的だった可能性も浮上する。
・・・
捜査関係者によると、弁護士は府警に対し、容疑者が「留置場が忙しいので、面会が終わったことは自分が連絡する。そのまま帰ってください」などと話したと説明したという。

https://www.sankei.com/west/news/180817/wst1808170091-n1.html
容疑者は12日午後7時半ごろから、同署2階の面会室で弁護士と接見。同8時ごろに弁護士が退出した後、室内のアクリル板を蹴破って逃走した。捜査関係者によると、容疑者は接見を終える際、弁護士に「署員に終わったことを伝えなくていい」との趣旨の話をしたという。
同署では接見する弁護士に対し「終了した際は声をかけてほしい」と伝えていたが、このとき弁護士は署員に声をかけなかった。弁護士側の扉には開くとブザーが鳴る装置があったが、同署は「接見終了時に、弁護士が署員に声を掛けることが多いため不要」として電池を抜いていた。
 この結果、同署は接見終了に気付かず、留置場の担当者が長時間の接見を不審に思い、面会室を開けて誰もいないのに気付いたのは同9時43分だった。
 面会室につながる前室にも当時、執務時間外で署員は配置されていなかった。捜査本部は、署の態勢が手薄な日曜日の夜間を狙った可能性もあるとみている

条解弁護士法 第4版(2012年 弘文堂)
(秘密保持の権利及び義務)
第23条
弁護士又は弁護士であった者は,その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し,義務を負う。但し,法律に別段の定めがある場合は,この限りでない。
【1】本条の趣旨
本条は,弁護士文は弁護士であった者に対し,職務上知り得た秘密を保持する権利と義務があることを規定する。
依頼者は,法律事件について,秘密に関する事項を打ち明けて弁護士に法律事務を委任するものであるから,職務上知り得た秘密を他に漏らさないことは,弁護士の義務として最も重要視されるものであり,また,この義務が遵守されることによって,弁護士の職業の存立が保障されるともいえる。
この弁護士の秘密保持の権利と義務は,法1条2項に規定された誠実義務のー内容とみられるものである。
なお,弁護士の秘密保持義務については,刑法の秘密漏示罪(134条1項)により,刑罰をもって裏づけがなされている。


【5】保持の権利と義務
1 秘密保持の権利・義務は,本条但書により,法律に別段の定めがある場合にはないとされるから,その意味で制限的なものである。そして,法律に別段の定めのある場合とは,民事訴訟法197条2項,刑事訴訟法105条但書, 149条但書の場合がこれにあたるものと解される。
・・・
この関係で,問題となるのが,民事訴訟法や刑事訴訟法上,証言を拒絶することができる場合において,この拒絶の権利を行使しなかったとき,本条の秘密保持義務に違反するかという点であるが,肯定的に解すべきである。けだし,弁護士について証言拒絶権が保障されているのであるから,その権利を適正に行使しないことは正当な理由がないこととなるというべきだからである。

なお,証言拒絶権の行使をせずに証言した場合,刑法上の秘密漏示罪が成立するかについては見解が分かれるが,秘密を守られることによる本人の利益と弁護士が証言をすることによって得られる司法上の利益とを比較衡量し,後者が優越している場合には,違法性がないと解するのが相当であろう(斎藤秀夫他編『注解民事訴訟法(第2版) (7)」 438頁参照)。

刑訴第一〇五条[押収と業務上の秘密]
 医師、歯科医師助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者又はこれらの職に在つた者は、業務上委託を受けたため、保管し、又は所持する物で他人の秘密に関するものについては、押収を拒むことができる。但し、本人が承諾した場合、押収の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く。)その他裁判所の規則で定める事由がある場合は、この限りでない。

高中正彦 弁護士法第4版P109
3 義務の解除
23条本文には、刑法134条1項にある「正当な理由がないのに」という要件がないが、秘密を開示する正当な理由がある場合には、23条本文違反とはならないものと解するべきである(仙台高判昭46・2・4下民集22巻l・2号81頁)。正当な理由のある場合とは、秘密の主体の同意があった場合、弁護士自身が民事・刑事の係争当事者となったり、懲戒請求を受けた場合、すなわち自己防衛の必要性がある場合、依頼者の犯罪行為の意思が明確で実行行為が差し迫っており、その結果も重大である場合などが考え
られる。なお、民事訴訟法(196条)、刑事訴訟法(149条)の規定により証人としての証言拒絶ができる場合に、これをせずに証言を行い秘密を漏らしたときは、正当な理由があるとはいえないから、23条違反となるというべきである。
(12)加藤新太郎・コモンベーシック弁護士倫理(有斐閣・2006) 110頁。
(13)前掲大阪高判平19・2・28は、突然にメールを送信された弁護士が、送信者が実在するかを確認するためメールに名前が出ている弁護士に対しメールがあったことを告げた行為は、正当な理由によって守秘義務を免れる行為であって、守秘義務に違反しないとする。