児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

13歳未満との青少年条例違反罪と 強制わいせつ罪・強制性交等罪との関係

 暴行脅迫がない性行為について、13歳未満のときは、刑法、13歳以上のときは青少年条例だという棲み分けがあります。
 補充性がないといっても、13未満との強制わいせつ罪・強制性交等罪について、併せて青少年条例違反が起訴されたことはありません。

福岡高裁h21.9.16は補充性の余地を認めています

福岡高裁h21.9.16
第3 法令適用の誤りの主張について
1原判示第1についての法令適用の誤りの主張(控訴理由第1及び第6)について
(1)弁護人は,①13歳未満の者に対するわいせつな行為を刑法176条後段の強制わいせつ罪よりも軽く処罰する本件条例違反の罪は,憲法94条,地方自治法ト4条1項に違反し無効である,②本件条例違反の罪は,刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であると解され,被告人の原判示第1の行為は同罪に当たるから,本件条例違反の罪を適用した1審判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあると主張する。
(2)まず,①の主張については,刑法176条後段の強制わいせつ罪は,13歳未満の者の性的自由を保護するとともに,性的な情操を保護することによって,青少年の健全育成を図る趣旨であると解され,青少年の健全な育成を目的とする本件条例違反の罪とその趣旨を共通にする面を有しているが,他方で,たとえ13歳未満の者に対してわいせつな行為に及んだ場合であっても,行為者において,相手の年齢を13歳以上18歳未満であると誤信していたときは,刑法176条後段の強制わいせつ罪の故意を欠くため同罪は成立せず,本件条例違反の罪のみが成立することになる。そして,このような場合について,13歳未満の者の保護を図っている刑法が,行為者を同法176条後段の強制わいせつ罪よりも軽い法定刑を定めた本件条例違反の罪で処罰することを禁止しているとは解されないから,本件条例違反の罪が憲法94条,地方自治法14条1項に違反し無効であるはいえない。
(3)次に,②の主張については,本件条例違反の罪が刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であるとしても,刑事訴訟法が採用する当事者主義的訴訟構造下では,審判の対象である訴因をどのように構成するかは,検察官の合理的裁量に委ねられているから,検察官は,13歳未満の者に対するわいせつな行為をした行為者について,事案の内容や立証の難易,その他諸般の事情を考慮して,刑法176条後段の強制わいせつ罪ではなく,本件条例違反の罪として訴因を構成して起訴することは当然許されると解される(なお,本件条例違反の罪は,強制わいせつ罪と異なり,親告罪ではないが,13歳未満の者に対するわいせつな行為の事案において,被害者やその法定代理人である親権者等が,被害者の名誉等への配慮から事件が公になることを望まず,告訴しなかったり,あるいは告訴を取り下げた場合に,検察官が行為者を本件条例違反の罪で起訴することは現実的には想定しがたいから,13歳未満の者に対するわいせつな行為を本件条例違反の罪として起訴することを許容しても,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨が没却されるとはいえない)。これを本件について見ると,被告人は,刑法176条後段の強制わいせつ罪等の罪で逮捕,勾留されたこと,しかし,捜査段階の当初は,被害児童の年齢に関する認識について,「JR駅で被害児童の制服姿を見て,実際の12歳相応以上の年齢だということは分かった。この時私は被害児童の年齢について,12歳以上15歳以下の中学生であると確信した」旨供述していたが(1審乙4),その後,「初めて会った時被害児童から直接『10歳です』と年齢を聞いていたが,容姿などから,実際の年齢に近い12歳という年齢は想像がついた。しかし,実際に話してみて,話している内容が妙に大人びていたので,これまで刑事さんには『12歳から15歳位の中学生と思っていた』と話した」旨その供述を微妙に変遷させている(1審乙6)。このような被告人の捜査段階での供述状況その他の証拠関係等に照らすと,検察官は,被害児童の年齢に関する被告人の認識の立証が必ずしも容易でないこと等を考慮し,刑法176条後段の強制わいせつ罪ではなく,本件条例違反の罪として訴因を構成し,被告人を起訴したと推察され,そのような検察官の公訴提起に関する裁量権の行使には合理性があったと認められる。また,被告人は,原審公判では「電話のやり取りから被害児童は高校1年生だと思った」旨さらに供述を変遷させていることをも併せ考えると,原判決が,被告人に対して,検察,官が起訴した本件条例違反の罪の成立を認めたことに,法令適用の誤りがあるとは到底いえない。
(4)以上のとおり,原判示第1について法令適用の誤りをいう弁護人の主張は理由がない。

阪高裁h23.12.21も補充性を否定して、訴追裁量だという説明です

阪高裁h23.12.21
(3)原判示第3の1についての主張論旨は,上記事実は,当時12歳であった被害男児に対するわいせつ行為を内容とするものであり,かつ,被告人において被害男児の年齢の知情性に問題はなかったものであるから,刑法176条後段の強制わいせつ罪のみが適用されるのに,本条例21条1項違反とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかし,弁護人が指摘する被告人の検察官調書(原審検乙23,24)によれば,被告人の捜査段階の言い分としては,①被告人は,平成20年9月ころ,被害男児から今度中学生になると聞いたことがあったが,好みに合致する男児であれば年齢は何歳でもよかったので,同人に対して年齢までは尋ねなかった,②本件行為の際,被害男児からは,性交類似行為等を嫌がる様子が感じられなかった,というものであり,本件は①の翌年である平成21年5月に惹起され,被害男児は当時中学1年生であったごとを踏まえると,被害男児が13歳未満であったことについての被告人の故意の存在には疑義があった上,性交類似行為等の際に被害男児が反抗を抑圧されたことについても証拠上明確ではなかったのであって,一義的に13歳未満の者に対する強制わいせつ罪(刑法176条後段のほか,同条の場合も含む。)に該当することが明らかな事案であったとはいえない。
また,強制わいせつ罪が個人の自由意思の制圧ないしこれに準ずるような場合を罰するのに対し,本条例21条1項のわいせつ罪は,青少年の健全育成に鑑みて同意があってもその相手方を処罰するものであるから,処罰の趣旨,目的を異にし,強制わいせつが成立すれば本条項のわいせつ罪が成立しないというものでもない。
そうすると,起訴検察官が上記諸点に鑑みて,その起訴裁量に基づき,被告人にとって有利である本条例違反の罪で起訴したことに裁量逸脱は全くないし,公訴事実の範囲で犯罪事実を認定し,本条例21条1項を適用した原判決にも何ら違法はない。

秋田支部h27.6.30は補充性を否定して、訴追裁量だという説明です

秋田支部h27.6.30
第3法令適用の誤り及び訴訟手続の法令違反の主張(控訴理由第7及び第8)について
1論旨は,性交相手が13歳未満である場合,強姦罪(刑法177条後段。以下,本項及び次項で「強姦罪」というのは,同条後段の強姦罪をいう。)のみが適用され,本件条例27条1項,14条1項の適用はないから,本件条例14条1項違反の罪を認めた原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで検討すると,記録によれば,本件においては,検察官は,被告人が被害児童が13歳未満であることの認識を欠いていたため,強姦罪は成立しないと考えて本件条例14条1項違反の訴因で起訴したこと,これに対し,原審も同訴因の事実を認めて,原判示第2のとおり判決したことが認められる。
そして,関係証拠によれば,被告人は,被害児童が18歳未満であること,すなわち本件条例上の青少年に当たることは認識していたものの,13歳未満であることについてはこれを認識していなかったものと認められ,被告人には強姦罪の成立に必要な故意が欠けているため強姦罪は成立せず,本件条例14条1項違反の罪のみが成立すると認められる。
よって,・強姦罪が成立する場合には本件条例14条1項違反の罪は成立しないとの弁護人の主張は,前提を欠いており,失当である。
論旨は理由がない。
2論旨は,本件条例が適用されるとしても,13歳未満の被害児童に対する淫行の罪(本件条例14条1項違反の罪)は強姦罪と同一の行為であるところ,本件起訴は告訴を欠く親告罪の一部起訴であり,強姦罪親告罪とされている趣旨を潜脱するものであるから違法であるまた,13歳未満の被害児童に対する本件条例14条1項違反の罪は親告罪であると解すべきであり,本件では告訴を欠いているから,同罪に係る公訴提起は不適法であって,公訴を棄却するべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
そこで検討すると,検察官は立証の難易等諸般の事情を考慮して審判対象である訴因を構成することができ,裁判所の認定はその訴因に拘束され,訴因に掲げられた罪の成否を判断すれば足りるところ(最高裁昭和59年1月27日第一小法廷決定・刑集38巻1号136頁参照),前述のとおり,本件において,原審は,訴因に掲げられた本件条例14条1項違反の罪の成否について審理し,原判示第2のとおり認定したものであり,関係証拠上も,被害児童及びその法定代理人親権者母が被告人の処罰を求めていると認められることなどからすれば,本件条例14条1項違反の罪に係る公訴提起が強姦罪親告罪とされている趣旨を潜脱する違法なもの:であるとはいえない。
また,本件条例14条1項違反の罪を定める本件条例は青少年(6歳以上18歳未満の者をいう。6条1号)の健全育成に関する施策を推進するとともに,青少年を取り巻く社会環境を浄化し,もって青少年の健全な育成を図ることを目的とするものであるが(1条),13歳未満の女子を姦淫する行為を処罰する強姦罪は,被害女子個人の性的自由の保護を目的とするものであり,両罪は,保護法益において重なる部分があるものの目的や保護法益が必ずしも一致しておらず,さらに,本件条例14条1項違反の罪についてはこれを親告罪とする旨の規定がない。
このようにみると,本件条例14条1項違反の罪が親告罪であると解するべきであるとの弁護人の主張は,独自の見解といわざるを得ず,採用することはできない。
よって,公訴を棄却しなかった原判決には訴訟手続の法令違反はない。
論旨は理由がない。

「However, the government issued sentencing guidelines at the end of the reporting period directing prosecutors not to pursue fines in lieu of imprisonment in trafficking cases. 政府は、報告期間の終わりに検察官に対し、人身売買事件の懲役に代えて罰金を科さないよう指導する刑罰指針を発行した。」ってなんなの?

「However, the government issued sentencing guidelines at the end of the reporting period directing prosecutors not to pursue fines in lieu of imprisonment in trafficking cases. 政府は、報告期間の終わりに検察官に対し、人身売買事件の懲役に代えて罰金を科さないよう指導する刑罰指針を発行した。」ってなんなの?
 sentencing guidelines が出てて、アメリカには渡っているということか?
 
 こういう記事もあるが、児童買春罪は相変わらず罰金になっている。

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/428426/
【ワシントン共同】米国務省は28日、売春や強制労働などを目的とした世界各国の人身売買に関する2018年版報告書を発表した。昨年まで13年連続で4段階評価のうち上から2番目だった日本は、女子高生らによる親密な接客を売りにした「JKビジネス」などへの対策が評価され、最も高いランクに初めて格上げされた。
 国務省は日本に関し、少女売春の温床となっている「JKビジネス」撲滅に向け、関係機関を横断した取り組みが実施されていると指摘。一方で、児童買春などが軽微な処分で済まされるケースが多いとして、罰金刑ではなく実刑を科すなど厳罰化を勧告した。

https://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/countries/2018/282680.htm
PROSECUTION
The government increased some law enforcement efforts. Japan did not have a comprehensive anti-trafficking statute that included definitions in line with international standards. However, it criminalized sex and labor trafficking offenses through disparate laws pertaining to prostitution of adults and children, child welfare, immigration, and employment standards. Article 7 of the Prostitution Prevention Law criminalized inducing others into prostitution and prescribed penalties of up to three years imprisonment or a fine of up to 100,000 yen ($890) if fraudulent or coercive means were used, and up to three years imprisonment and a fine of up to 100,000 yen ($890) if force or threats were used. Article 8 of the same law increased penalties to up to five years imprisonment and a fine of up to 200,000 yen ($1,780) if the defendant received, entered into a contract to receive, or demanded compensation for crimes committed under Article 7. The “Act on Regulation and Punishment of Activities Relating to Child Prostitution and Pornography and the Protection of Children” criminalized engaging in, acting as an intermediary for, and soliciting the commercial sexual exploitation of a child and prescribed penalties of up to five years imprisonment, a fine, or both. The act also criminalized the purchase or sale of children for the purpose of exploiting them through prostitution or the production of child pornography, and prescribed a maximum penalty of 10 years imprisonment. The government reportedly also prosecuted trafficking-related offenses using the Child Welfare Act, which broadly criminalized transporting or harboring children for the purpose of causing them to commit an obscene or harmful act and prescribed penalties of up to 10 years imprisonment, or a fine of up to 1 million yen ($8,880), or both. The Employment Security Act and the Labor Standard Act both criminalized forced labor and prescribed penalties of up to 10 years imprisonment or a fine not exceeding 3 million yen ($26,650). When prescribed penalties allowed for fines in lieu of imprisonment for sex trafficking, they were not commensurate with penalties prescribed for other serious crimes, such as rape. However, the government issued sentencing guidelines at the end of the reporting period directing prosecutors not to pursue fines in lieu of imprisonment in trafficking cases. Penalties prescribed for trafficking crimes were sufficiently stringent. With respect to sex trafficking and in light of the aforementioned sentencing guidelines regarding fines, these penalties were also commensurate with those prescribed for other serious crimes, such as rape. Civil society organizations reported reliance on this series of overlapping statutes continued to hinder the government’s ability to identify and prosecute trafficking crimes, especially for cases involving forced labor with elements of psychological coercion.
・・・
Google 翻訳
予防措置
政府はいくつかの法執行活動を強化した。日本には、国際基準に沿った定義を含む包括的な人身売買禁止法がありませんでした。しかし、成人と子供の売春、児童福祉、移民、雇用基準に関する異種の法律により、セックスと労働者の人身売買犯罪を犯罪とした。売春防止法第7条は、他人を売春に誘拐し、詐欺的または強制的な手段を用いた場合に最高3年の懲役または最高10万円($ 890)の罰金を科し、最高3年の懲役および罰金を科した武力や脅威が使用された場合、最大10万円(890ドル)。同法第8条では、被告が第7条に基づく犯罪犯罪を受け取り、受領し、補償を求める契約を結んだ場合、最大5年間の懲役および最高20万円(1,780ドル)の罰金が科された。子どもの商業的性的搾取を仲介し、募集し、懲役5年以下の罰金を科すことを犯罪者に犯し、罰金を課し、罰金を科し、または両方。この行為はまた、売春や児童ポルノの作成を目的として子供を購入または売却することを犯罪とし、最大10年の懲役を処罰した。政府は、子どもの福祉法を用いて人身売買に関連した犯罪を起訴したと伝えられている。子ども福祉法は、子どもを猥褻または有害な行為をさせ、10年以下の懲役または最大罰金を処罰する目的で、 100万円(8,880米ドル)、またはその両方。雇用保障法と労働基準法は、強制労働と最長10年間の懲役または3百万円以下の罰金(26,650ドル)を犯した。性的人身売買の懲役に処せられる罰金が処罰されると、レイプなどの他の重大犯罪に処罰される罰則には釣り合わなかった。しかし、政府は、報告期間の終わりに検察官に対し、人身売買事件の懲役に代えて罰金を科さないよう指導する刑罰指針を発行した。人身売買犯罪に処罰される罰則は十分に厳格であった。性行為に関しては、前述の罰金に関する刑罰のガイドラインに照らして、これらの刑罰は、強姦などの他の重大犯罪に処罰された罰則にも相応していた。市民社会の組織は、この一連の重複する法令への依拠は、特に、心理的強制の要素を伴う強制労働を伴う場合の、人身売買犯罪を特定し起訴する政府の能力を引き続き妨げていると報告した。

未成年者誘拐,窃盗,嘱託殺人未遂,強制性交等被告事件で懲役6年6月(立川支部H30.4.24)

 口腔性交罪の事例です

「被害者に強制わいせつ行為をしようと考え,同日午後6時頃,同所において,被害者に対し,いきなりその乳房を手でもみ,同人が着用していたタイツとパンツをつかんで無理矢理脱がせるなどした上,その陰部を手指で触り,さらに,同人が怖がって反抗を抑圧されている状態を利用して同人と強制性交等をしようと考え,前記一連の暴行及びわいせつ行為により同人が反抗を抑圧されているのに乗じて同人と口腔性交をした。」というのは前半は強制わいせつ罪で後半が強制性交等罪ですが、特別関係で強制性交罪のみということでしょう。

条解刑法
強姦罪との関係
次条は本条の特別規定であり,姦淫の目的でわいせつ行為が行われた場合には,強姦罪の既遂又は未遂が成立し,本罪は成立しない。強制わいせつ行為の途中から強姦の犯意を生じて強姦に至った場合も,強姦のー罪が成立するものと解すべきであろう。

東京地方裁判所立川支部平成30年4月24日刑事第3部判決
       判   決
 上記の者に対する未成年者誘拐,窃盗,嘱託殺人未遂,強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官黒見知子,国選弁護人畑江博司各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文
被告人を懲役6年6月に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。


       理   由

【罪となるべき事実】
 被告人は,
第1 平成29年12月31日午前5時34分頃,東京都八王子市α×××番地×所在のb c店において、■がカウンター上に置き忘れた同店店長d管理の現金約2万1000円及びキャッシュカード2枚等23点在中の財布1個(時価約5000円相当)を窃取し,
第2 ソーシャルネットワーキングサービス「ツイッター」上に自殺願望がある旨表明していた■(当時17歳。以下「被害者」という。)が未成年者であることを知りながら,平成30年1月2日午前10時27分頃から同日午前10時42分頃までの間,東京都内において,自宅にいた同人に対し,自己の携帯電話のアプリケーションソフト「LINE」を使用して,「だからうちに来なよ」「一緒に死ねたら犯罪ではないし」「ホントに死にたいならうちに来てくれますか?」などとメッセージを送信し,当時の被告人方に来るように誘惑し,被害者にその旨決意させ,同人をその親権者に無断で東京都日野市β×丁目×番地の×所在のe株式会社f駅前まで誘い出し,同日午後3時32分頃,同所において被害者と合流後,バスを利用するなどして同人を東京都八王子市γ×丁目××番地××所在のg×××号室当時の被告人方まで連れて行き,同日午後5時頃から同月3日午前1時53分頃までの間,被害者を同所に留まらせて自己の支配下に置き,もって未成年者を誘拐し,
第3 同月2日午後5時頃から同日午後5時30分頃までの間に,同所において,被害者の財布内から同人所有の現金2万円を抜き取り窃取し,
第4 同日午後5時30分頃,同所において,被害者に対し,その嘱託を受け,殺意をもって,その頚部を手やビニールひもで絞め付けたが,同人が鼻部から出血したのを見て狼狽し,同人の頚部を絞め続けることができなかったため,同人に全治まで約4週間を要する眼球結膜下出血,顔面頚部皮下出血の傷害を負わせたにとどまり,その目的を遂げず,
第5 被害者に強制わいせつ行為をしようと考え,同日午後6時頃,同所において,被害者に対し,いきなりその乳房を手でもみ,同人が着用していたタイツとパンツをつかんで無理矢理脱がせるなどした上,その陰部を手指で触り,さらに,同人が怖がって反抗を抑圧されている状態を利用して同人と強制性交等をしようと考え,前記一連の暴行及びわいせつ行為により同人が反抗を抑圧されているのに乗じて同人と口腔性交をした。
【証拠の標目】《略》
【法令の適用】
罰条
判示第1及び第3の行為 刑法235条
判示第2の行為 刑法224条
判示第4の行為 刑法203条,202条後段
判示第5の行為 刑法177条前段
刑種の選択
判示第1,第3及び第4の罪 懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の処理 刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)
【量刑の理由】
 量刑の中心となる強制性交等についてみると,路上等で見ず知らずの相手を突然襲ったり,性交等のために強度の暴行・脅迫を加えたりした事案ではなく,計画性も認められないが,被告人は,嘱託殺人未遂の犯行により抵抗力が落ちていた被害者に対し,乳房を揉んだり陰部を触ったりするなどした後,口腔性交に及んでおり,犯行時間も短いものではないし,被害者が被告人との性交等に応じると誤解させるような事情は全く認められず,経緯等に酌み得る部分もない。被害者が被った精神的苦痛等も大きく,被害弁償も未了である。そうすると,これのみに限ってみたときに,強制性交等既遂1件からなる事案の中で比較的軽い部類に属するとはいえ,最も軽い部類に位置付けられるような事案とはいえない。 
 その余の犯行についてみても,嘱託殺人未遂は,被害者から殺害を嘱託された被告人が,ビニール紐で被害者の頚部を力一杯絞め付けるなどして殺害しようとしたものである。被害者は意識がもうろうとして座っていられない状況に陥り,判示傷害結果も負っており,生命侵害の危険性が低い犯行とはいえない。被害者が早く殺害するよう被告人に繰り返し求めるなどした経過は認められるものの,被告人は,嘱託を断ることが容易であったにもかかわらず,翻意させる努力もしないまま安易に被害者の要請に応じて犯行に及んでおり,これに先立ち,被告人が,一緒に住む女性を探したいという身勝手な動機に基づき,自殺願望を持っている被害者に目を付け,自殺に協力するなどと誘惑して被告人宅へと誘い入れるなどする未成年者誘拐の犯行も敢行していたことも併せみると,これらの犯行に対する非難の度合いも相当強い。さらに,被告人は,被害額が低額とはいえない2件の窃盗にも及んでいる。
 これらの犯情等を併せみると,被告人の刑事責任は重く,被告人が一連の犯行を全て認めて反省の態度を示していることや,被告人の母親が被告人の監督を誓約していること,被告人には前科がないことなどを考慮しても,主文の刑は免れない。
(検察官求刑・懲役8年)
平成30年4月27日
東京地方裁判所立川支部刑事第3部
裁判長裁判官 矢野直邦 裁判官 佐藤康行 裁判官 武田夕子

教員による強制わいせつ罪(176条後段)につき、教育委員会に慰謝料200万円を認容(訴額は600万円)した事例(名古屋地裁H30.6.29)

 刑事事件は 名古屋地裁岡崎支部H28.12.20懲役1年08月執行猶予3年没収 300万円で示談です。強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪が観念的競合になっています。
 損害が起訴されたわいせつ行為による慰謝料だとすると、教育委員会監督責任(教員とは不真正連帯債務)を認めたとしても、それを200万円と評価すると、支払い済みということで請求は棄却されます。
 教員に対して訴訟上の請求をしたとしても認容額は200万円だったことになり、それを300万円支払ったことになります。

https://mainichi.jp/articles/20180630/k00/00m/040/095000c
名古屋地裁わいせつ「前歴」教諭 教委の監督責任を認定
毎日新聞2018年6月29日 20時57分(最終更新 6月29日 23時50分)
 愛知県豊田市立小学校で担任教諭の男性にわいせつ行為をされた女児側が市に600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁岡崎支部は29日、200万円の賠償責任を認めた。長谷川恭弘裁判長は、男性が前任校で女子生徒の体を触るなどしており、市教育委員会は被害を予見できたのに監督責任を怠ったと判断した。
 一方、女児側と男性が示談し300万円が支払われているとして請求自体は棄却した。
 判決によると、女児は9歳だった2014年10月、校内で特別支援学級担任の男性に服を脱がせられ写真撮影された。男性は強制わいせつ罪などで懲役1年8月、執行猶予3年の判決が確定し、懲戒免職処分とされた。
 男性は前任の同市立中学校で12年、校内で2人きりとなった女子生徒の体を触るなどして学校の調査を受けたが処分されず、休職をした後、女児の小学校に復職した。
 判決は、前任校での男性の行為は性的な意味を持ち、その後に適切な監督も継続されておらず、市教委は男性が再び性的な行為に及ぶ恐れを予見できたと認定した。その上で、小学校校長に事情を説明して配置の検討や十分な監督を指導すべきだったと指摘した。

 また、前任校での行為は事実確定ができず対応できなかったとの市側主張を「生徒や児童の安全、教員の監督に関する意識の低さを示すもの」と批判した。男性は小学校で女児への行為前、別の児童を膝に乗せるなどしていたが、判決は校長の過失について「性的な行為まで予想できなかった」と否定した。

 判決を受け、女児の父親(44)は「一定の理解を示してくれたが損害賠償と示談は別。納得できず、(控訴に関しては)弁護士と相談する」と話した。

 豊田市教委は「教員によるわいせつ行為は大変重く受け止めており、おわびする。主張が認められなかった点があったとすれば残念。判決理由をよく見た上で対応を協議していく」とコメントした。市の担当者は「判決にかなり厳しい表現がある。不十分だったところは今後の対応に生かしたい」と述べた。

 判決書が届きました。
 損害はわいせつ行為によるもので、200万円と評価されていて、不真正連帯債務者の公務員(犯人)が300万円を支払っているので、全部弁済済ということで請求棄却になっています。
 刑事弁護的には、公務員が300万円で示談したというのは相場的にはいい線だったことが判決でも追認された感じになっています。
 さらに学校相手に別途600万円請求するには、特別な理論構成や損害立証が必要だったと思います。

岡崎支部h30.6.29
第1 請求
被告は,原告に対し, 600万円及びこれに対する平成年月日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告の設置及び管理する豊田市、学校(以下「本件小学校」という。)において,担任教諭である■■■(以下■■」という。)が原告に対して強制わいせつ行為(以下「本件わいせつ行為」という。)に及んだことについて,本件小学校の校長には担任教諭に対する適切な指導監督を怠った過失又は本件小学校に在籍する児童である原告への安全配慮義務違反があり,被告の教育委員会の教育長(以下「本件教育長」という。)には本件小学校の校長に対する指導監督等を怠った過失又は原告への安全配慮義務違反があるなどと主張して,被告に対し,選択的に,国家賠償法1条1項又は債務不履行安全配慮義務違反)に基づき,原告が被った精神的苦痛について慰謝料600万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成年月日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

裁判所の判断
3 争点(2) (原告の損害及びその額)について
(1) 本件においては,前記2(2)のとおり,本件教育長に,■:本件小学校に赴任する際に,校長である■■■■に対し,前件問題について具体的な事情を説明した上で,■が女子児童と二人きりになったりしないように配置を検討し,十分に監督するよう指導を行うべきであったにもかかわらず, これを怠った過失及び安全配慮義務違反があるから, この過失及び安全配慮義務違反と相当因果関係のある原告の損害及びその額について検討する。
(2) 原告の損害について
前記2(2)ウ鮒のとおり,本件教育長が,前記(1)の義務を果たしていれば,本件わいせつ行為を回避することができたから,本件わいせつ行為は,本件教育長の過失及び安全配慮義務違反と相当因果関係を有するものであり,本件わいせつ行為によって生じた損害は,上記の過失及び安全配慮義務違反と相当因果関係を有する損害である。原告は,前記1(3)力のとおり,本件わいせつ行為後,■■■■■■■■■■■■■■■■症状が生じて, これが残存するなどしており,生活にも支障を来し,本件わいせつ行為によって,多大な精神的苦痛を受けたことが認められる。
なお,原告は,本件わいせつ行為による精神的苦痛だけではなく,学校に対して不信感を抱きながら通学せざるを得ない精神的苦痛の損害を受けた旨主張する。
しかし,原告が学校に対して不信感を抱きながら通学せざるを得ない状況になったのは,本件わいせつ行為が発生したからにほかならないし,生活に支障を来したことの一側面なのであって,前記(1)の過失及び安全配慮義務違反によって,本件わいせつ行為によるものとは別のものとして,原告が学校に対して不信感を抱きながら通学せざるを得ない精神的苦痛を受けたと認めることはできない。
(3) 損害額について
前記(2)のとおり,原告は,前記(1)の過失及び安全配慮義務違反によって,本件わいせつ行為による多大な精神的苦痛を受けたと認められるから,その損害の額について検討する。
原告は,前記1(3)力のとおり,本件わいせつ行為後,■■■■■■■■■■■■■■■■状が生じて, これが残存するなどし,生活にも支障を来しており,原告の受けた精神的苦痛は非常に大きい。
また,本件わいせつ行為については,原告に対して直接教育をし,安全を守るべき立場にあった■垳ったこと, 当時9歳と年少であり,かつ特別支援学級の児童で,十分な判断能力のない原告に対する行為であることからすれば,悪質なものである。
もっとも,本件わいせつ行為は,暴行及び脅迫がないことや直接的な身体接触を伴うわいせつ行為ではないことなどからすれば, これらを伴う場合と比較して悪質性の程度は大きいものではないといわざるを得ない。
そうすると,本件わいせつ行為の悪質性の程度からすれば,原告に生じた苦痛の程度を最大限考慮しても,本件わいせつ行為による精神的苦痛に対する慰謝料の額は200万円であると認めるのが相当である。
(4) したがって,原告には,前記(1)の本件教育長の過失及び安全配慮義務違反
によって, 200万円の損害が生じたと認められ,被告は,原告に対し, 200万円の損害賠償義務を負う。
4争点(3) (本件示談による弁済)について
(1) 前記1(3)ウ及びエのとおり,本件わいせつ行為を含む本件公訴事実については,本件示談が成立しており, 300万円が支払われている。
前記3のとおり,本件教育長の前記3(1)の過失及び安全配慮義務違反は,本件わいせつ行為による精神的苦痛と相当因果関係を有するものとして損害賠償債務を負うものであるから,被告の原告に対する上記過失についての国家賠償法1条1項に基づく損害賠償債務及び上記安全配慮義務違反についての債務不履行に基づく損害賠償債務(200万円)は,B原告に対する本件わいせつ行為による不法行為に基づく損害賠償債務と同一の損害に向けられた債務であり,不真正連帯債務の関係に立つものである(なお,■行為それ自体についても,公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意によって違法に他人に損害を加えたときに該当し,被告は,原告に対し, 同条同項に基づく損害賠償義務を負うものである。)。そうすると,■が本件示談によって■原告に対する上記債務を弁済した場合には,被告の原告に対する上記各債務は,弁済の絶対的効力によって消滅することになる。
(2) 原告は,本件示談が原告及び原告の家族全員(合計■名) との間で行われたものであり,原告の本件わいせつ行為による損害については本件示談金(300万円)の約■分のの■万円しか弁済されていない旨主張する。
しかし,本件示談は,B刑事事件に関連して行われたものであり,刑事事件の被害者は原告であることからすると,主として原告の本件わいせつ行為によって生じた損害について賠償する趣旨のものであると認められる。
そして,本件示談は,文言上,原告及び原告の家族と■との間での示談となっているが,そもそも家族として誰を指定しているかも不明である。そうすると,仮に近親者の慰謝料が認められる可能性があるとしても, その額が合計100万円を超えるものとは認められない。また,本件示談は,原告及びその家族が提示した300万円の慰謝料を,■:そのまま受け入れて成立したものであるから, その支払によって,原告及びその家族が被った精神的苦痛は,いずれも慰謝されたものと認められる。
(3) そうすると, ■の原告に対する前記(1)の債務は,前記(1)の本件示談に基づ<300万円の支払によって,すでに弁済がされ,消滅したと認められる。そのため,被告の原告に対する前記3(4)の各債務(200万円)も,不真正連帯債務における弁済の絶対的効力によって,消滅する。したがって,被告の原告に対する前記3(4)の各債務は,いずれも■前記(1)の弁済によって,消滅したと認められる。
第4結論
以上によれば,被告は,原告に対して200万円の損害賠償義務を負うが,■弁済によって消滅したから,原告の国家賠償法条項に基づく請求及び債務不履行安全配慮義務違反)に基づく請求((選択的併合)はいずれも理由がなく, これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。

1992~2018の監禁行為のうち、2013年4月28日~18年1月21日を起訴した事例(神戸地裁H30.6.27)

 公訴時効の起算点は、「犯罪行為が終つた時から」で、監禁罪のような継続犯の場合は、最終時点=監禁を止めたときからになります。
 なので、1992~2018年の監禁行為について公訴時効は完成していないことになります。検察官の訴追裁量で、直近の5年のみを起訴したということです。
 ちょうど5年前ころに、監禁行為を中断したことがあるのかもしれませんが

刑訴法第二五三条[時効期間の起算点]
① 時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。
②共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。

刑法第二二〇条(逮捕及び監禁)
 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
刑訴法第二五〇条[公訴時効の期間]
②時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32300090X20C18A6AC8Z00/
 一方、被告が起訴内容を認め反省していることに加え「支援が必要な人々が尊厳ある生活を送るために地域社会が役割を果たすという自覚が全体に乏しく、支援体制の整備が十分でなかった」として執行猶予を付けた。

 判決によると、被告は妻と共謀して2013年4月28日~18年1月21日、ほぼ2日に1回、母屋で食事や入浴をさせる以外は、隣接するプレハブに置かれたおりに長男を入れ、南京錠で施錠して閉じ込めた。妻は1月末に病死。13年4月以前は監禁罪の公訴時効(5年)が成立している。
裁判は19日の初公判で即日結審。検察側は1992年ごろからおりの監禁が始まったと指摘したが、判決では全体の監禁期間の認定はなかった。弁護側は「適切な福祉サービスが受けられていなかった」と主張したが、市の対応の当否についても判示しなかった。

判例コンメンタール刑法第1巻P443
d 継続犯
定の法益侵害状態が継続する問、その犯罪が継続すると予定されている犯罪を継続犯と呼ぶ。例えば、監禁罪(220) 、住居侵入罪(130) 、不法所持などである。これを包括一罪に含める考えも有力であるが(平野・総論n419 など)、最初の法益侵害行為が継続していると認められる限り、構成要件が予定している犯罪の行為は不可分の1個であり、したがって、その結果もI罪であると考えられ、単純
一罪と解する方が妥当であろう。
・・・
判例コンメンタール刑法第3巻P14
2 保護法益
本条の罪の保護法益は、個人の行動 (場所的移動)の自由であり、逮捕罪も監禁罪も、継続犯であると解されている。
・・・
条解刑事訴訟法
包括一罪の場合,最終行為の終了時点を起算点とする(判例①)。状態犯の場合は構成要件的行為終了時点が起算点となる。継続犯の場合は,法益侵害の状態が継続する限り犯罪行為は終了しない。外国人登録法による登録不申請罪の公訴時効の起算点は同罪の性質との関連で問題となるが,判例は,同罪を継続犯と解し,申請のあった時点を起算点とする(判例②)。また,競売入札妨害罪について,判例は,競売開始決定に基づき現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向け,内容虚偽の契約書類を提出した行為は,刑法96の3第1項の「公の競売又は入札の公正を害すべき行為」に当たるが,その時点をもって本条1項にいう「犯罪行為が終った時」とはならず,虚偽の事実の陳述等に基づく競売手続が進行する限り, 「犯罪行為が終った時」には至らないとする(判例④)。

監護者性交等罪で1回結審求刑8年(松山地裁)、求刑7年(大津地裁)

 公訴事実以外の常習的な性的関係が求刑で考慮されています。軽い量刑目指すにはそこを争うことになるわけですが、起訴状には書いていないという不合理。おかしいと思わないのかなあ。
 情状立証1期日もらって、娘を性的対象とした歪んだところを治療しかけた点でも立証しないんしょうか。

http://mainichi.jp/articles/20180627/ddl/k38/040/478000c
監護者性的暴行
被告が起訴内容認める 地裁で初公判 来月24日に判決 /愛媛
毎日新聞2018年6月27日 地方版
 監督・保護者の立場を利用して18歳未満の子に性的暴行をしたとして、監護者性交等罪に問われた男の初公判が26日、松山地裁(末弘陽一裁判長)であった。被害者の特定を避けるため、被告の氏名や年齢などは伏せて審理が進められた。被告は「間違いありません」と起訴内容を認め、検察側は懲役8年を求刑。弁護側は寛大な判決を求めて即日結審した。判決は7月24日。

 検察側は論告で「自らの性欲を満たすためだけに、被害児童を欲望のはけ口にした」などと指摘。「抵抗が困難であることに乗じた常習的な犯行で、卑劣で極めて悪質」とした。

 また、検察側は冒頭陳述で、被告が国家公務員だと言及。被告の所属先は「判決が出てから厳正な処分をする」としている。【中川祐一】
・・・・・・・・・

長女暴行の男 懲役8年求刑 松山地裁初公判
2018.06.27 愛媛新聞社
 4月、実子の10代の長女に常習的に性的暴行をしたとして監護者性交等罪に問われた県内の被告の男の初公判が26日、
 松山地裁であり、被告は起訴内容を認めた。検察側は「長女の心の傷は深く、長期間苦痛にさいなまれる」と懲役8年を求刑、弁護側は寛大な判決を求め即日結審した。
 公判では事件関係者全員が匿名となった。検察側は被告が事件当時、国家公務員だったことを説明したが、年齢などは明かさなかった。末弘陽一裁判長は公判冒頭に「今回は被害者の名前などを法廷で明かさないと決定した」と説明した。

 検察側は冒頭陳述などで、被告は2014年ごろから同居の長女の体を触るようになり、18年4月24日深夜、自宅で性的暴行を加えたと指摘。長女が「やめたほうがいい」と涙を流して訴えたことがあったのに、被告が「本気で嫌がっているとは思っていなかった」と供述したことを明らかにした。

 論告で検察側は、性的虐待を受けた子どもは完全に意思を否定されたため、自分に価値がないと誤認するという専門家の分析を説明。抵抗が困難なことに乗じるなど卑劣で極めて悪質であり、自己中心的な解釈で犯行を繰り返し「動機に酌量の余地は微塵(みじん)もない」と述べた。

 弁護側は、被告は社会的制裁を受け、取り調べに応じて真摯(しんし)に反省しているなどとして「社会での更生が可能」とした。

 長女が教育関係者に相談し被害が判明した。

http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20180627000150
長女にわいせつ、男に懲役7年求刑 滋賀の監護者性交罪公判印刷用画面を開く
 長女にわいせつな行為をしたとして、監護者性交等罪に問われた男の初公判が27日、大津地裁(伊藤寛樹裁判長)であり、検察側が懲役7年を求刑して結審した。同罪の公判は京滋では初めて。判決は7月31日。

 同罪は、家庭内などで18歳未満が被害者となる性的虐待を取り締まるため、昨年7月に施行された。告訴なしでも罪に問える非親告罪になっている。公判では被害者保護のため、被告人の名前や年齢、居住地などが伏せられた。

 検察側は冒頭陳述で、男が数年前から長女にみだらな行為を繰り返したと指摘。長女が経済的、精神的に依存している状況を利用し、自身の欲求を満たしており、健全な発達に与えた影響は重大で悪質とした。

 弁護側は「被告は反省しており、家族の処罰感情も薄れている」として執行猶予付きの判決を求めた。

【 2018年06月27日 23時10分 】

わいせつ誘拐に児童淫行罪を加える訴因変更をしつつ、姿態をとらせて製造罪は追起訴した事例(宇都宮地検栃木支部)

 わいせつ誘拐の関係では、売春とか児童淫行罪とか強姦(強制性交等罪)とかも牽連犯になるので、製造罪も牽連犯になります。

山口地裁H21.2.4
(法令の適用)
罰条
 判示第1
  児童ポルノ製造の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条 3項,1項 (2条3項3号)
  強制わいせつの点  刑法176条後段
 判示第2
  わいせつ目的誘拐の点 刑法225条
  児童ポルノ製造の点  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及ひや児童の保護等に関する法律7条 3項, 1項 (2条3項3号)
  強制わいせつの点   刑法 176条後段
科刑上一罪の処理
 判示第1   刑法54条1項前段, 1 0条(重い強制わいせつ罪の刑で処断)
 判示第2   刑法54条1項前段,後段,1 0条(児童ポルノ製造と強制わいせつは, 1個の行為が 2個の罪名に触れる場合であり,わいせつ目的誘拐と児童ポルノ製造及びわいせつ目的誘拐と強制わいせつとの間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を1罪として最も重いわいせつ目的誘拐罪の刑で処断)
併合罪の処理  刑法45条前段,47条本文, 10条(重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
平成21年2月4日
・・・
第二二五条(営利目的等略取及び誘拐)
 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
・・・・・・・・
条解刑法
わいせつ目的
被拐取者に対して自らわいせつ行為をし,又は第三者をしてわいせつ行為をさせる目的,あるいは被拐取者にわいせつ行為をさせる目的をいう。
わいせつ行為の意義については, 174条注3. 176条注4参照。ただし, 176条と異なり,わいせつ行為には姦淫も含まれる(名古屋高金沢支判昭32・3・12高集102-157)。
したがって,被拐取者に売春をさせる目的もわいせつ目的に当たる。

児童買春・児童ポルノ禁止法違反で男を起訴 /栃木県
2018.06.26 朝日新聞
 児童ポルノを製造したとして宇都宮地検栃木支部は25日、容疑者を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春、児童ポルノ製造)の罪で起訴した。同日、2月に起訴したわいせつ誘拐罪の訴因について、児童福祉法違反の罪を加えるよう変更した。
・・・
少女に性的暴行、ビデオ撮影容疑 静岡の男を逮捕 /栃木県
2018.05.08 朝日新聞
 小山署は7日、容疑者を準強制性交等致傷と児童買春・児童ポルノ法違反の疑いで逮捕し、発表した。容疑者は「同意があった」と否認しているという。
 署によると、容疑者は1月21日、SNSを通じて知り合った県南在住で事件当時高校1年生の女子生徒に対し、自宅で入眠剤の成分を混ぜた飲み物を飲ませ、意識が混濁している状態にして性的暴行を加えてけがをさせた上、その様子をビデオ撮影した疑いがある。
 容疑者は1月21日、女子生徒を未成年者と知りながら連れ去ったとして未成年者誘拐の疑いで逮捕され、宇都宮地検栃木支部が2月9日、わいせつ誘拐罪で起訴した。

最近量刑理由が、量刑DBの事例との比較だよなあ。(水戸地裁H30.4.27)

 
 相場観ないのかなあ。

       主   文

被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中260日をその刑に算入する。

(量刑の理由)
1 まず,犯情について検討する。 
 被告人は,いずれの犯行(以下,判示第1の犯行を「X事件」,判示第2の犯行を「Y事件」,判示第3の犯行を「Z事件」という。)でも,殴る蹴るなどの強度の暴行はしていないが,被害者の体を手で押して路上に転倒させており,特にY事件,Z事件では,自転車で走行中の被害者にこの暴行を加えている。暴行の態様は,転倒の仕方によっては重大な傷害を負わせかねない,危険なものである。また,Y事件では,犯行日以外にも被害者を待ち伏せしていたものであり,犯意の強さが表れている。
 Y事件,Z事件の被害者2名が負傷している。また,突然被害に遭った被害者らの精神的苦痛も軽いものではない。
 犯行当時の被告人は,仕事上,家庭上のストレスを抱えていたが,被害者らを性的欲求のはけ口とすることを正当化する事情とは認められない。本件の経緯,動機に酌量の余地はない。
 もっとも,被告人がX事件,Y事件で行ったわいせつ行為の内容は,頬にキスをする,着衣の上から乳房を揉むなどというものであり,行為の内容や対象部位からすると,わいせつ行為の程度は後記同種事案の中では比較的軽いといえる。また,Z事件では,わいせつ行為をするに至っていない。
 以上の事情に照らせば,本件は,同種事案(前科のない被告人が単独で犯した路上における強制わいせつ致傷で,わいせつ行為は既遂に至り,凶器を使用せず,被害者が負ったけがの加療期間等が2週間以内であり,かつ,被害者は,13歳以上であり,被告人との面識がなく,落ち度がない事案のうち,処断罪を含め同一または同種の罪を2~4件伴うもの)の中で,やや軽い部類に属する。
2 次に,刑を調整する要素としての一般情状を検討する。
 Y事件,Z事件の被害者や保護者は厳罰を希望しており,X事件で被告人が被害者に30万円を支払い,示談が成立している事実を過度に重視することはできない。被告人は,断続的ではあるが3回も犯行を繰り返しており,相応の常習性が認められる。被告人は,被告人なりに反省の態度を示しているが,その供述内容からすると,自らが犯した罪と正面から向き合うことができているとは認められない。
3 以上の犯情,一般情状の評価を踏まえ,同種事案における量刑傾向も考慮すると,被告人を執行猶予とすることはできず,主文の実刑が相当である。
(量刑意見 検察官:懲役4年6月 弁護人:懲役3年執行猶予)
平成30年5月11日
水戸地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 小笠原義泰 裁判官 河野一郎 裁判官 安井亜季

少年条例違反で逮捕→迷惑条例で送検→不処分→熊本県/避難所の迷惑行為 「無罪」男性賠償請求 女児の母棄却求める

 見せたという動画も閲覧履歴も発見されませんでした。
 条例の、わいせつ行為として逮捕したものと思われますが、「わいせつ行為を見せる」でもないし、性器を見せつけてわいせつと言えるかどうかという感じですので、わいせつ画像を見せるというのはわいせつとしては弱いでしょう。
 避難所のわいせつ行為とかに神経質になっていた時期だからえdしょうね

熊本県少年保護育成条例の解説h27
(みだらな性行為及びわいせつ行為の禁止)
第13条
1何人も、少年に対し、みだらな性行為又はわいせつ行為をしてはならない。
2何人も、少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
解説
(3) 「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を刺激、興奮させたり、その露骨な表現によって正常な普通一般社会人に、性的しゆうち嫌悪の情をおこさせ善良な性的道義感に反するものをいう。
しかし、現にしゆうち嫌悪の情をおこさせたことを必要としない。このような情をおこさせる性質の行為であればこれに当たる。
例えば、単に陰部に触れる行為、乳房を撫でる行為、接吻行為等がこれに当たる。

熊本県/避難所の迷惑行為 「無罪」男性賠償請求 女児の母棄却求める 
2018.06.23 西日本新聞
 熊本地震の避難所で当時小学6年の女児に「わいせつな動画を見せた」と女児の母親から県警に被害を訴えられ、熊本家裁で刑事裁判の無罪に当たる不処分の決定を受けた男性=当時(19)=が、女児の母親に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が22日、熊本地裁(永田雄一裁判官)であり、母親側は「請求は不当」として棄却を求めた。
 訴状などによると、男性は母親の申告をきっかけに2016年5月に県少年保護育成条例違反容疑で逮捕。職場で県警から任意同行を求められたり、勾留されたりして精神的苦痛を受けたとしている。 (壇知里

女児への迷惑行為「無罪」の元少年 被害訴えた母親を提訴 熊本地裁
2018.06.22 西日本新聞
 2016年5月、熊本地震の被災者たちが身を寄せた避難所で当時小学6年の女児にわいせつな動画を見せたとして熊本県迷惑行為防止条例違反容疑で熊本家裁に送致され、刑事裁判の無罪に当たる不処分の決定を受けた当時19歳の会社員の男性(21)が、県警に女児の被害を訴えた母親を相手に損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こしていたことが分かった。提訴は5月8日付。
 県警などによると、女児の母親は避難所で隣り合う場所にいた男性が「娘にスマートフォンでわいせつ動画を見せた」と県警に訴えた。県警に逮捕された男性は、地検から家裁に送致されたが、スマホからわいせつ動画を閲覧した履歴が確認できず、家裁は「客観的な証拠がない」として非行事実なしと結論付けたという。男性は逮捕当初から容疑を否認していた。
 訴状によると、男性は母親の申告をきっかけに職場で県警から任意同行を求められたり、勾留されたりして精神的苦痛を受けたとしている。男性の代理人弁護士は「母親の説明はあいまいで、県警は主に母親の目撃情報だけで逮捕した」と批判。母親の代理人弁護士は「母親は提訴を遺憾に感じている」としている。 (壇知里

不処分報道

県迷惑条例違反で送致 19歳少年の不処分決定 熊本家裁 熊本地震
2016.10.13 西日本新聞
 熊本地震の避難所で4月、女子児童にわいせつな動画を見せ、熊本県迷惑行為防止条例に違反したとして熊本地検が送致した熊本市の会社員少年(19)の審判で、熊本家裁(船戸容子裁判官)が刑事裁判の無罪に当たる不処分の決定をしていたことが12日分かった。決定は11日付。

 付添人弁護士によると、少年のスマートフォンからわいせつ動画を閲覧した履歴が確認できず、家裁は「客観的な証拠がない」として、非行事実なしと結論付けたという。少年は一貫して容疑を否認していた。5月に少年を逮捕した熊本南署は「決定文を見ていないためコメントを控える」としている。
・・・

逮捕少年に「無罪」 避難所で女児にわいせつ動画 熊本家裁 平成28年熊本地震
2016.10.12 熊本日日新聞
 熊本地震の避難所で女児にわいせつ動画を見せたとして、県迷惑行為防止条例違反の非行事実で送致された熊本市の少年(19)の審判で、熊本家裁は11日、非行事実はないとして、刑事事件の無罪に当たる不処分を決定した。
 付添人の松本卓也弁護士によると、少年は逮捕時から一貫して「動画を見せていない」と否認。船戸容子裁判官は、決定理由で「目撃証言の信用性に疑いがあり、非行事実を裏付ける客観的な証拠がない」と述べたという。
 少年は5月1日夜、自らも避難していた熊本市内の避難所で、避難中の女児にスマートフォンでわいせつ動画を見せたとして、熊本南署に県少年保護育成条例違反の疑いで同16日に逮捕された。
 その後の捜査で、動画を見せたとされる日時を4月29日夜に、非行事実を県迷惑行為防止条例違反にそれぞれ変え、熊本地検が家裁送致した。
 署は「決定文の詳細を把握しておらず、コメントできない」としている。

逮捕報道

事件・事故=避難所でわいせつ動画見せた疑いで少年逮捕 熊本南署 平成28年熊本地震
2016.05.17 熊本日日新聞
 ■避難所でわいせつ動画見せた疑いで少年逮捕 熊本南署は16日、県少年保護育成条例違反の疑いで、熊本市の会社員の少年(19)を逮捕した。逮捕容疑は1日午後10時ごろ、同市内の避難所で、熊本地震で避難中の女児(11)にスマートフォンのわいせつ動画を見せた疑い。署によると少年も避難中。避難所に仕切りはなく、女児の母親が離れた間に、就寝しようと横になっていた女児に近づいたらしい。「動画を見せた記憶は無い」と否認している。

2/27家宅捜索で児童ポルノDVD1所持現認→5月罰金20万円→6/29停職1ヶ月・依願退職

 アリスクラブのDVD。
 元日以来度々の報道で購入者がパニック状態になったにもかかわらず所持し続けたんだ。
 1枚でも罰金20万円。起訴猶予率は低い。

児童ポルノ7200人購入名簿 検事、警官ら 200人まず摘発 2018.01.01 読売新聞
児童ポルノDVD、警察官に所持容疑 県警、書類送検 /和歌山県 2018.01.06 朝日新聞
県立高職員を減給処分 県教委 児童ポルノ所持で=岩手 2018.01.23 読売新聞

http://www.sanspo.com/geino/news/20180629/tro18062919170009-n1.html
018.6.29 19:17
「外国人の子どもに興味あった」児童ポルノ所持で50歳小学校教諭停職
 宮崎県教育委員会は29日、児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)の罪で略式命令を受けた小学校の男性教諭(50)を停職1カ月の懲戒処分にした。教諭は同日付で依願退職した。
 県教委によると、2月27日、摘発された業者の顧客リストに基づく警察による自宅の捜索で、児童ポルノのDVD1枚を所持していたことが発覚。教諭は同法違反罪で略式起訴され、5月に罰金20万円の略式命令を受けた。既に全額を納付した。「外国人の子どもに興味があった」と説明したという。

児童ポルノ製造罪の媒体は、3号物件として没収される

児童ポルノ製造罪の媒体は、3号物件として没収される
 間違えている判決がよくあるので
 こういうとこもチェックしています。

控訴理由~没収について
 1審判決は、刑法19条1項1号物件(組成物件)として、「 HDD、マイクロSDカード1枚」を没収した。

第19条(没収)
次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物
2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

 しかし、児童ポルノを記録した媒体は「犯罪行為によって生じた物(19条1項3号)であるから、1号で没収を認めた原判決には、法令違反がある。
 さらには、判例にも違反する。最高裁判所判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所判例と相反する判断をしたことに他ならないから原判決は破棄を免れない(405条3号

(1)文献
 本件のHDDは、児童ポルノ製造罪という犯罪行為により存在するに至ったものであるから、同項3号で没収すべきである。
条解刑法

(2)判例
 3号説が主流である。

①東京高裁H23.10.18
原判決は法令適用の項において 3項製造罪によって生じたsdカード2枚を没収する際の根拠条文として刑法19条1項1号 2項本文を摘示しているところ このような場合には19条1項3号 2項本文を適用すべきである
2刑 小西部長
・・・
②東京高裁H23.11.30
原判決は犯罪組成物としてsd2 マイクロsdの没収しているが、本件各カードは児童ポルノの製造という本件各犯行によって初めて作られたものであるから 犯罪行為により生じたものとして 19条1項3号 2項本文を適用して没収すべきであり 原判決の没収の法令適用には誤りがある
9部 小倉部長
・・・
③仙台高裁秋田支部H27.6.30*1
第1 法令適用の誤りの主張(控訴理由第1)について
 論旨は,要するに,本件3項製造罪に係る外付けハードディスク(秋田地方検察庁本荘支部平成27年領第2号符号4。以下「本件ハードディスク」という。)は,本件3項製造罪の犯罪行為により生じた物(産出物件)であるから,刑法19条1項3号2項本文を適用して没収するべきであるのに,これを本件3項製造罪の犯罪行為を組成した物(組成物件)として同条1項1号,2項本文を適用して没収した原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 そこで検討すると,弁護人指摘のとおり,記録によれば,本件ハードディスクは,原判示第1のとおり,本件3項製造罪の犯罪行為の不可欠な要素をなす物ではなく,その犯罪行為によって作り出された物と認められるから,刑法19条1項3号にいう「犯罪行為により生じた物」に当たるというべきである。したがって,これを本件3項製造罪の「犯罪行為を組成した物」として,同条1項1号,2項本文を適用して没収した原判決には法令適用の誤りがある。

追記2021/02/07
1号説の高裁判例も結構あるようだ。

児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
札幌高等裁判所
平成19年3月8日刑事部判決
しかし,本件各ビデオカセットに本件児童ポルノ製造罪に係るもの以外の画像が含まれていたとしても,本件児童ポルノ製造罪に係る画像も含まれており,両者が物理的に一体となっている以上,それらはそれぞれ本件児童ポルノ製造行為の犯罪組成物件(刑法19条1項1号)であり,かつ,被告人以外の者に属しない(同法2項)のであるから,いずれも刑法19条の任意的没収の対象となることは明らかである。また,没収は刑罰の一つであり,その対象物は被告人以外の者に属しないことが要件とされているから,憲法21条,29条に違反するとの所論は採用できない。論旨は理由がない。

強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
広島高等裁判所
平成22年1月26日第1部判決
 よって,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書により更に判決することとし,原判決が認定した罪となるべき事実に原判決挙示の法条(併合罪の処理を含む。)を適用し,その刑期の範囲内で,上記の諸事情を考慮し,被告人を懲役2年6月に処することとし,刑法21条を適用し,原審における未決勾留日数中20日をその刑に算入し,同法25条1項を適用し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,同法19条1項1号,2項本文を適用し,主文掲記のハードディスク1台を没収することとし,主文のとおり判決する。
平成22年1月29日

児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
名古屋高等裁判所
平成23年5月11日刑事第1部判決
(法令の適用)
 判示の各事実について,原判決と同一の法令(併合罪の処理まで)を適用し,その処断刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し,津地方検察庁四日市支部で保管中のMiniDV1本及びマイクロSDカード1枚は,判示第2の犯罪行為を組成した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項1号,2項本文を適用してこれらを没収し,原審における訴訟費用は,刑訴法181条1項本文によりこれを被告人に負担させることとする。

児童ポルノ単純所持で捜索→罰金→自衛官は停職1日、海上保安官は停職1月

 単純所持の懲戒処分は、他の児童ポルノ罪よりも軽いですよね。
 奥村が相談受けた事案では、捜索も罰金も懲戒処分もありませんでした。

児童ポルノDVDを所持した陸自隊員を停職処分 /京都府
2018.06.23 朝日新聞
 陸上自衛隊桂駐屯地(西京区)は22日、わいせつDVDを保管していたとして、中部方面後方支援隊の20代の男性陸士長を停職1日の懲戒処分とし、発表した。桂駐屯地司令業務室によると、陸士長は昨年5月以降、実家で児童買春・児童ポルノ禁止法に違反するDVDを約20枚所持。罰金刑を受けたという。

児童ポルノを所持 4管職員停職処分=愛知
2018.06.23 読売新聞
 第4管区海上保安本部は22日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反で摘発された1等海上保安士の男性職員(31)を停職1か月の懲戒処分にした。
 発表によると、男性職員は2017年12月14日、児童ポルノの画像や動画計14点を保存したハードディスク1台を所持していたという。男性職員は5月22日に罰金30万円の略式命令を受け、即日納付した。4管の鹿庭義久本部長は「あるまじき行為であり、大変申し訳ない」とコメントした。

姿態をとらせて製造罪で逮捕して、単純所持罪で罰金30万円(千葉簡裁h30.6.20)

 製造したら、所持に至るわけなので、製造罪でカバーされている部分もあると思います。

栃木の中学講師逮捕 少年に裸画像送らせた疑い 千葉県警
2018.06.01 千葉日報 
 千葉県内に住む10代の男子中学生に裸の画像を送らせたとして、県警少年課は31日、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで、講師、容疑者(26)を逮捕した。
 逮捕容疑は、昨年7月23日、ツイッターで知り合った男子中学生=当時=が18歳未満と知りながら、裸の写真を撮らせ、無料通信アプリ「LINE」(ライン)で自身のスマートフォンに送らせた疑い。
 同課によると、容疑者は「男性に興味があった」と容疑を認めている。2人は実際に会ったことはなく、金銭のやり取りはなかった。昨年8月、男子中学生の母親がスマートフォンを見て県警に相談した。
 千葉日報社の取材に同校教頭は「大変申し訳ない。勤務態度に問題はなかった」と話している。
千葉日報社

児童ポルノ所持で講師に罰金30万円 
2018.06.21 千葉日報  
 児童ポルノ画像3点をスマートフォンに保存したとして千葉区検は20日、児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)の罪で、講師(26)を略式起訴した。千葉簡裁は罰金30万円の略式命令を出し、講師は即日納付した。
 講師は昨年7月、千葉県内に住む当時中学生だった少年が18歳未満と知りながら裸の画像をスマホに送らせ、児童ポルノを製造した容疑で今年5月、県警に逮捕・送検されたが、地検は20日、不起訴処分とした。今回略式起訴された事件の被害児童とは別の人物。
千葉日報社

盗撮製造罪で執行猶予(函館地裁H30.4.17)

盗撮製造罪で執行猶予(函館地裁H30.4.17)
 これを函館地検で閲覧申請していましたが、D1LAWにでました。
 被害児童35名で執行猶予ですが「犯情の最も重い第1の罪の刑に加重」になっていて、「判示第1別表○版の罪に加重」となっていないことからは、1回の盗撮で数人撮影した場合を一罪とカウントしていて、被害児童の個性は問題となっていないようです。個人的法益説が徹底されていない場面です。

函館地方裁判所
平成30年04月17日
被告人
弁護人(私選) 廣田朋子

主文
被告人を懲役2年6か月に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。

理由
(犯罪事実)
 被告人は
第1 平成28年4月13日、北海道(以下省略)所在のA小学校保健室において、内科検診を受診していた同小学校の女子生徒である別表1(添付省略)記載の児童らがいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、乳首、胸部等が露出された各児童の上半身裸の姿態を腕時計型カメラで動画撮影し、同日頃、北海道(以下省略)所在の当時の被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し
第2 平成29年4月12日、前記小学校保健室において、内科検診を受診していた同小学校の女子生徒である別表2(添付省略)記載の児童らがいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、乳首、胸部等が露出された各児童の上半身裸の姿態をペン型カメラで動画撮影し、その動画データを同カメラに装着された電磁的記録媒体であるマイクロSDHCカードに記録して保存し
第3 同年7月4日、北海道(以下省略)の法面において、北海道(以下省略)所在のB方脱衣場で入浴後に全裸となっていたC(当時9歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、乳首、胸部等が露出された同児童の全裸の姿態を前記B方に向けたデジタルカメラで動画撮影し、その動画データを同カメラに装着された電磁的記録媒体であるSDHCカードに記録して保存し
もって、それぞれ、ひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造した。
(証拠)
 (省略)
(法令の適用)
 罰条(第1ないし第3) いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2条3項3号
 刑種の選択(第1ないし第3) いずれも懲役刑
 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い第1の罪の刑に加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 本件各犯行は、当時小学校教諭であった被告人が、自己の性欲を充たすために、勤務先の小学校に通う児童合計35名の裸体を盗撮して児童ポルノを製造したというものであるところ、その犯行態様がいずれも悪質であることはいうまでもないが、取り分け、判示第1及び第2の各犯行は、小学校教諭としての立場を悪用し、小学校内の保健室に隠しカメラを設置して敢行されたという非常に悪質なものであり、犯行動機にもおよそ酌量の余地はない。
 したがって、被告人の刑事責任を軽くみることはできない。
 他方、被告人が本件各犯行を認め、反省の態度を示していること、前科がないこと、当然のこととはいえ、小学校教諭を懲戒免職され、一定の社会的制裁を受けていること、父親が今後の被告人の監督を約束していることなど、被告人のために酌量すべき事情もある。
 そこで、これらの事情を総合考慮して、被告人を主文の刑に処し、今回に限り、その刑の執行を猶予することとした。
(求刑-懲役2年6か月)
刑事部
 (裁判官 橋本健)

6/13 20:18 逮捕、6/14 夜 起訴

 20日勾留というのは短縮できるということですね。

 逮捕中起訴から起訴後の勾留へ

時効まで27時間…強姦容疑の男を逮捕 さいたま地検、異例のスピード起訴
https://www.sankei.com/affairs/news/180614/afr1806140037-n1.html
 平成20年に10代の女性に性的暴行を加えたとして、埼玉県警川口署は13日、強姦の疑いで容疑者を逮捕した。時間は午後8時18分で、15日午前0時の時効成立まで27時間余りだった。さいたま地検は14日夜に容疑者を異例のスピード起訴した。
 刑事訴訟法は「時効は、当該事件についてした公訴の提起によってその進行を停止し」と定めており、逮捕によって止まらないため、速やかに起訴する必要がある。
 通常は48時間以内に警察から検察に送検され、20日間の勾留を経て起訴されることが多いが、県警と地検が事件の重大性を判断して異例の手続きを行ったとみられる。
 地検は起訴内容の詳細を明らかにしていないが、県警の逮捕容疑は20年6月14日午後11時ごろ、川口市内の路上で、帰宅途中の専門学校生の女性の肩をつかみ、「大声を出したら刺すぞ」と脅し、翌15日未明まで公園や空き地など数カ所を連れ回して性的暴行を繰り返したとしている。
 現場の遺留物と被告のDNA型が一致したため、指名手配して行方を追っていた。今月13日夜、川口市内の知人宅にいるのを捜査員が発見した。調べに対し、「記憶にない」と容疑を否認している。