児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ製造罪において,同一被害児童に対する27日間, 14回にわたる撮影等の行為を包括一罪とした事例(東京高裁H28.12.21)

 
 児童淫行罪と併せて起訴されると包括一罪になりがちで、強制わいせつ罪(176条後段)と併せて起訴されると併合罪になりがちだという印象です。

速報番号3589号
児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
東京高等裁判所第1刑事部
平成28年12月21日
1審 千葉地方裁判所
○判示事項
児童ポルノ製造罪において,同一被害児童に対する27日間, 14回にわたる撮影等の行為を包括一罪とした事例
○裁判要旨
児童ポルノ製造罪の罪数判断においては,被害児童の撮影機会の同一性のみを基準とすることは相当ではなく,被害児童の異同,製造日時,場所,工程及び犯意等にも着目すべきであり,被告人が同一又は一連の機会に,単一又は継続した意思により被害児童に係る児童ポルノを製造したときは,構成要件を充足する行為が多数回にわたっていても,被害児童が同一である以上,包括して一罪を構成するというべきである。
被告人は,自慰行為に用いるために, 27日間にわたり,被害児童に係る児童ポルノを撮影し, これを同一の記録媒体に集積していたもので,単一又は継続した意思により14回の各犯行に及んだとみられるから, これらは包括一罪となる。
○裁判理由
原判決は,原判示第2の平成28年3月21日午後3時31分頃から同年4月16日午後10時40分頃までの計14回の各児童ポルノ製造の所為はそれぞれ(ただし,そのうち同月2日における11回の犯行,同月16日における2回の犯行は,いずれも同一の機会における犯行であるから各包括して)児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項, 2条3項1号, 3号に該当する旨判示している。
この点,同法7条4項の児童ポルノ製造罪を処罰する趣旨は, 当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取又は虐待であり,かつ,流通の危険性を創出する点で非難に値することに基づくものであることに照らすと,同法2条3項所定の姿態を被害児童にとらせて撮影した機会の同一性のみを罪数判断の基準とすることは相当ではなく,被害児童の異同のほか,製造日時,場所,工程(電磁的記録や記録媒体の同一性等)及び犯意等にも着目すべきであり,被告人が, 同一又は一連の機会に,単一又は継続した意思により当該児童に係る児童ポルノを製造したときは,構成要件を充足する行為が多数回にわたっていても,被害児童が同一である以上,
包括的に観察して一罪を構成するというべきである。被告人は, 自慰行為に用いるために, 27日間にわたり,被害児童に係る児童ポルノを撮影し, これを同一の記録媒体に集積していたもので,単一又は継続した意思により原判示第2の犯行に及んだとみられるから,原判示第2の所為は包括して同法7条4項, 2項(2条3項1号, 3号)に該当し,併合罪の処理に当たっても,刑法47条ただし書の制限内で重い原判示第1の罪の刑に法定の加重をすべきであり, これと異なる原判決の法令の適用には誤りがある。
しかしながら,原判決の宣告刑は,正当な処断刑の範囲内にあり,かつ原判示第2の撮影の機会ごとに併合罪とされたが故に殊更重く量刑された事情はなく本件事案の内容等に照らし,その量刑が重きに過ぎるとも認められないから,前記の誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。

性交後の裸の児童を不意打ちで撮影した行為について「姿態をとらせて製造罪(7条4項)」で検挙されたが、「姿態をとらせ」でもないし「ひそかに」でもないとして、嫌疑不十分で起訴猶予となった事例

 動画中「撮らないで~」という言動があるので、「姿態をとらせ」でもないし「ひそかに」でもないということになりました。
 被害弁償はしてません。
 児童ポルノを撮影したのに製造罪にならないという隙間があるようです。

「傾向犯でない」としても, 「治療行為の形式を備えておれば,いかにわいせつ目的があろうと処罰すべきではない」ということには,必ずしもならない~日本大学大学院法務研究科教授前田雅英「傾向犯」 捜査研究800号

 治療目的・性欲目的併存事例は、強制わいせつ罪になるそうです。
 前田先生、性欲要件外すとき わいせつ(176条)はどう定義しますか?

前田雅英刑法各論講義 第4版p119
わいせつの意義
本罪の実行行為は,わいせつな行為である.刑法上のわいせつの意義は,主として公然わいせつ罪(174条),わいせつ物頒布罪(175条)の解釈論の中で議論されて,「徒に性欲を興奮または刺激せしめ,かつ普通人の性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反すること」という定義が維持されている(最判昭26・5・10刑集'6・1026).ただ,強制わいせつ罪は個人の性的人格を直接侵害する罪である以上,公然わいせつ罪等のわいせつ概念よりも広くならざるを得ない.無理やりキスする行為は強制わいせつであるが(東京高判昭32・1'22高刑集10・1・10),映画のキスシーンが,善良な道義観念に反するとは考えられない.174条は第三者的視点からのわいせつ性判断であるのに比し,176条は被害者本人の視点によるもので,しかも明確な意思に反した直接的な侵害であるということが加わりわいせつ行為の幅が広がる.
着衣の上からされたものであっても,女性の啓部を手のひらで撫で回した行為が強制わいせつ罪の「わいせつ行為」にあたる(名古屋高判平15・6・2判時1834・161).契約手続のために自宅を訪問した自動車販売会社の係員の臂部などを撫で回した行為について強制わいせつ罪に問擬した例もある(東京高判平13・9・18束高刑時報52・1・12・54).
また,176条のわいせつ行為は,必ずしも被害者の身体に触れる必要はない.裸にして写真を撮る行為も含むのである(最判昭45.1.29刑集24・1.1)8).


傾向犯 
強制わいせつ罪は,強制的にわいせつな行為をしている認識(通常の故意)に加えて,犯人の性欲を刺激,興奮させ,または満足させる性的意図という主観的超過要素(わいせつの傾向)がなければ処罰し得ないとされる(大塚100頁 総論47頁参照).例えば,医師が裸の患者に触れても強制わいせつ罪にならないのは,わいせつな主観的傾向がないからであるとされる.最高裁も主観的超過要素が必要だとし,自己の性的な欲望の満足のためではなく報復.仕返しの目的で,「硫酸をかける」と脅し23歳の女性を約5分間裸で立たせ写真を撮影した行為につき,強制わいせつ罪の成立を否定した9)(最判昭45・1・29刑集24・l・l)
このように,客観的構成要件要素の認識に加え,内心的傾向を要求することは,処罰を限定することになる.しかし,176条には目的犯の目的のような形で「わいせつ傾向」が規定されてはいない.被害者に性的な蓋恥心を抱かせるに足る客観的行為を行い,そのことを十分に認識しているⅡの場合,強制わいせつ罪の法益侵害性,責任非難ともに可罰性を満たす.被害者の性的な自由・感情が害されたか否かは,行為者の主観とは無関係に客観的に決まるし,責任を高めるわいせつ傾向が欠けたからといって,構成要件該当性を否定する理由は見あたらない.
たしかに,「わいせつ傾向を欠く強制わいせつ行為」は例外的で処罰の必要性はなく,類型的にわいせつ傾向の認められる場合のみを禁圧すれば足りると解することも不可能ではないが,実際にかなりの事案が生じている以上,そのような政策的判断は説得性が弱い.
傾向犯を認める論拠の最大のものは,内心傾向を問題としなければ処罰範囲が決定し得ないという点であった.しかし,例えば治療行為かわいせつ行為かは,外形的に見て区別すべきである.完全な治療行為であれば,いかにわいせつ目的があろうと処罰すべきではない.逆に性的差恥心を著しく害する行為であり,そのことを認識しつつ行為するのであれば,わいせつ目的が欠けても処罰に値する.被害者の側からみれば十分な法益侵害を被っているし,被告人の側からみても,処罰に値する責任非難が可能なのである.

前田雅英 刑法各論講義 第6版p95
本罪の実行行為は,わいせつな行為である.刑法上のわいせつ行為の意義は, 徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ,かつ普通人の性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反すること とされているが.公然、わいせつ罪(174条),わいせつ物頒布罪(I75条)に閲するもので,本罪は個人の性的人格・身体を直接侵害する以上,別異に考ーえられ,キスする行為もわいせつ行為である.着衣の上からであっても,女性の臀部を手のひらでなで回す行為も「わいせつ行為」に当たる.いわゆる痴漢行為は,本条の要件に該当する場合がある(態様により,条例による処罰にとどまることもある)
必ずしも被答者の身体に触れる必要はない. 裸にして写真を撮る行為も含む

日本大学大学院法務研究科教授前田雅英「傾向犯」 捜査研究800号
たしかに処罰範囲は,安易に拡大してはならない。たしかに,わいせつ傾向を要件としなければ,性的差恥心を著しく害する行為を行っていることを認識しつつも,わいせつ目的が認定し得ない場合を処罰化することになる。
しかし,東京高判平成筋年のパイプ挿入行為や,本件の陰茎をくわえさせる行為を,わいせつ目的・傾向が認定できないので強制わいせつに該当しないとすることは,国民の常識からしても,不合理であるように思われる。女性・児童の視点をより考慮することにより,被害者に性的な侵害が生じ,行為者がそのことを完全に認識している以上,強制わいせつ罪の構成要件該当性を認める時期に来たといってよい。前述の下級審判例の指摘にも見られるとおり, 「処罰は狭いほど良い」という命題は,常に妥当するわけではない5)。
たしかに,強制わいせつ罪の保護法益は,単純に被害者個人の「性的自由」被害者の差恥感情」に尽きるものではない。「風俗」「倫理」も,その犯罪性に影響する。ただ,現代の日本社会では,本件のような行為を,わいせつ傾向なしで行っても,処罰に値する法益侵害性を認めるべきである。わいせつ傾向が欠け,その意味で「反倫理性の低い」被告人でも,本件のような行為を故意に行えば,強制わいせつ罪は成立すると解すべきである6)。
「報復目的なのだから,わいせつ犯罪の類型にはあたらない」という結論と, 「わいせつの傾向がないのだから, さらにわいせつな行為を行う危険性は低く,倫理的な非難も処罰に値する程度に達しない」という説明は,心から恥ずかしい思いをしたと思っている被害女性にとっては,説得性を欠き納得のいかない説明であり,割り切れなさを超えて憤りを感じるであろう。そして,その不当さを,被害女性に限らず,国民の大多数が共有することになってきていると思われる。
5) 傾向犯性を否定すると,処罰範囲が狭まる面もある。いかに反倫理的目的で行為しても,一般人から見て客観的なわいせつ行為がなければ,強制わいせつ罪にはならない。
「わいせつ傾向があれば,客観的に被害者や一般人が性的蓋恥心を感じない行為を行っても,強制わいせつ罪が成立する」とすべきではないのである。たとえば, 自己の特異な性的欲求を満足させるため女子高校生の口腔内に中指を押し込んで同人に嘔吐させたような行為は,いかにわいせつ目的からの行為であっても,暴行にすぎず,強制わいせつ行為を行ったとは認定されなかった(青森地判平成18.3.16裁判所web・口淫した女性がその後嘔吐したアダルトビデオを観て性的興奮を覚えたことから,女子高生と性交したり, 口淫させて嘔吐させたいと考え,本件犯行を思い立った事案であった。)。

6) そうだとしても,わいせつ目的の有無は,実際の犯罪の成否の判断に影響し得る。「傾向犯でない」としても, 「治療行為の形式を備えておれば,いかにわいせつ目的があろうと処罰すべきではない」ということには,必ずしもならない。いかに治療に役立っても,わいせつ行為を行う認識があり被害者が差恥心を感じていることも認識している場合には, 176条は成立し得る。わいせつ行為を行っているという故意の認定は,わいせつ傾向と連続的な微妙な判断なのである。
わいせつ目的を否定した最近の例として,臨床検査技師Xが,患者Aに対し,検査名目で肛門部から陰核に至るまで,検査器具を押し当てながら往復させたという準強制わいせつの事案において,わいせつ目的を有していたことの徴表とみる余地のある事情も存するが,それらを総合しても,被告人がわいせつ行為に及んだとの確信を抱くには足りず,被告人にわいせつ目的があったと認定するには合理的な疑いが残るとしている(京都地判平成18.12.18裁判所Web)。
また,東京高判平成19年3月別日(高裁刑裁速報(平19)号181頁)は,暴行を加えて,深夜で人気のない公園の方向に意図的に連行しようとした行為について,①襲った相手が若い女性であり,②その時間帯と場所,暴行の態様や連行状況等に照らすと,わいせつ行為ないしは金員奪取あるいは拉致監禁もしくは通り魔的な暴行以外には想定し難く,③わざわざ百数十メートルの距離がある公園の方まで連行し, しかも被害者に対する金品要求行為や持ち物の奪取行為には及んではおらず,被害者が暴行脅迫を受けて抵抗をやめると,連行行為を別にして更なる暴行を加えようともしていないことなどからすれば,金品奪取や暴行それ自体を目的としていたとはにわかには考え難いことを根拠に, 「最終的な目的は被害者に対するわいせつ行為にあった疑いが濃厚ではある」としつつ,関係証拠を総合しても,本件暴行,脅迫行為の時点において,わいせつ行為目的があったと断定するまでには至らないとした。
捜査研究No.800(20I7.8.5)

東京地方検察庁検事村上史祥「内妻の13歳未満の実子に対する強姦事件において,同人から有効な告訴を得た事例」捜査研究800号

 13未満の場合は、児童がある程度の任意性を持って犯人と「淫行した」ことが要件になるようです。

次に,児童福祉法違反罪(同法34条1項6号の「児童に淫行をさせる行為」)については,裁判例によれば, 「児童に淫行をさせる行為」に当たるというためには, 「児童に対し,事実上の影響力を及ぼして淫行するように働きかけ,その結果,児童をして淫行をするに至らせることが必要である」とされるところ,検討時点での証拠関係から認定できる事実では, 「児童に淫行をさせる行為」に当たるとの判断が困難であるという問題点があった。
しかしながら,本件の悪質性に鑑みれば,問題点を何とかして克服し,状況の打開を模索すべきではないかと考え,Aに適正妥当な刑罰を与えるという観点からは, とりわけ,強姦罪の成立に向けて打開策を講じる必要があると考えた。
・・・
6処理状況等
以上の捜査を遂げ,本件については,強姦罪で公判請求した。
児童福祉法違反については,逮捕後に,Aに対する取調べやVに対する再度の取調べ等の捜査を尽くしたものの,本件ではAからVに対し,暴行や脅迫等による強制行為はもとより,強い要求行為によって被害者が性交に応じざるを得ないような心情に追い込まれた等の事情がうかがえず, また,本件犯行時の性交に至る具体的なやり取りも不明であり,前記の裁判例に照らし,「児童に淫行をさせる行為」に当たるというのは困難であると判断し,訴因から除外した。

名の変更の要件及び効力~設題解説戸籍実務の処理/9/

 目次だけ紹介します

名の変更の要件及び効力
第一 名の変更一般
第二 名の変更
問52 名は、どのようにして決まるか。
問53 名の変更は、どのような意義があるか。
問54 旧法当時における改名は、どのような手続で行われていたか
問55 どのような場合に、名の変更が許されるか。
問56 名を変更しようとする場合、どのような手続を要するか。
問57 名の変更について「正当な事由」に該当するとされた事例には、どのようなものがあるか。また、該当しないとされた事例はどうか。
問59 名の変更の効力は、いつ生ずるのか。

児童ポルノ画像を含むファイルをインターネットにアップロードして提供し,その約1年3か月後別個の児童ポルノ画像を含むファイルを同様にアップロードして提供した場合,前の提供罪と後の提供罪は併合罪であるとした事例(東京高裁h29.1.24 判決速報3592号)

 
 検察庁ではこういう分析がされたようです。

速報番号3592号
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反
平成29年1月24日 上告(弁)
東京高等裁判所第10刑事部
原判決破棄・自判
控訴申立人 弁護人
1審 東京地方裁判所
○判示事項
1児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下児童ポルノ法」という。)の保護法益は,個別の具体的な権利にとどまらず,児童を性欲の対象として捉える社会的風潮が広がることを防ぐことも要請されており,の意味で社会的法益の保護も含まれる。
2児童の写真を素材としてコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)より作成されたものであっても児童ポルノとなり得る。
3撮影時に18歳未満であった児童の写真を素材として児童ポルノを製造した場合,製造時に同児童が18歳以上の年齢であっても, また,撮影時,児童ポルノ法が施行されていなくても,児童ポルノ製造罪が成立する。
4児童ポルノ画像を含むファイルをインターネットにアップロードして提供し,その約1年3か月後別個の児童ポルノ画像を含むファイルを同様にアップロードして提供した場合,前の提供罪と後の提供罪は併合罪であるとした事例

スマートフォンの交流アプリを通じて知り合った9歳の女子児童に裸の写真などを送らせたという児童ポルノ製造+強制わいせつ罪(176条後段)の事例(札幌地裁h29.8.15)

 撮影送信させるという行為については「わいせつ行為」という判例はなく、奥村の事件では検察官が「わいせつ行為ではない」と主張してたりしてます。
 同種事案はないことはなくて、
  東京地裁
  大分地裁
  丸亀支部
  西条支部
  岡山地裁
でも観測されています。
 強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪の罪数処理はまちまちで、大法廷の判断待ちです

08月15日 18時30分
http://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20170815/5871601.html
スマートフォンの交流アプリを通じて知り合った9歳の女子児童に裸の写真などを送らせたとして児童ポルノ禁止法違反などの罪に問われた愛知県の元保育士に対し、札幌地方裁判所は執行猶予の付いた懲役2年の判決を言い渡しました。
告(22歳)はことし2月にスマートフォンの交流アプリを通じて知り合った道内に住む当時9歳の女子児童に裸などの画像や動画を送らせたとして、児童ポルノ禁止法違反や強制わいせつの罪に問われました。
15日の判決で札幌地方裁判所の金子大作裁判官は「少女の未熟さにつけこみ自分の性欲のはけ口とした犯行は悪質で、少女が被った精神的痛手は大きいといえる」と指摘したうえで「被告は反省し示談も成立している」と述べて懲役2年、執行猶予3年の判決を言い渡しました

集団強姦罪誕生~法制審議会刑事法(凶悪・重大犯罪関係)部会 h16

法制審議会刑事法(凶悪・重大犯罪関係)部会
第5回会議 議事録










第1 日 時  平成16年7月30日(金)  自 午後3時33分
                       至 午後4時45分

第2 場 所 法務省第1会議室

第3 議 題
   凶悪・重大犯罪に対処するための刑事法の整備について

第4 議 事 (次のとおり)






議    事

● 大変お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会刑事法(凶悪・重大犯罪関係)部会の第5回会議を開催いたします。
  なお,本日の審議に御利用いただくということで,○○委員をはじめとするお三方作成の意見書,それから後ほど御説明いたしますが,事務当局作成の附帯決議案,並びに,これは原案でございますが,諮問第69号の要綱(骨子),それにつきましていずれも席上に配布させていただいております。
  そのほか,前回の部会以降届けられました意見書につきましては,事務当局の方で保管しておりますので,適宜御活用いただければと思います。
● 前回まで,要綱(骨子)の内容及び強盗関係につきまして,様々な観点から御議論をいただいたところでございますが,本日は,これまでの議論を踏まえまして,諮問に付されました要綱(骨子)の採否,それから附帯決議の要否などを具体的に検討いたしまして,当部会として総会に報告すべき意見を取りまとめたいと考えております。
  今回の会議につきましては,要綱(骨子)に対する賛否及び附帯決議の案に関する意見書が,○○委員,○○委員及び○○幹事から提出されております。また,事務当局におきましても,前回までの議論を踏まえまして,附帯決議の案を作成していただいております。
  そこで,まず意見書の提出者を代表していただく形で○○委員にその御説明をしていただきまして,その後に事務当局から事務当局作成の附帯決議案につきまして御説明をしていただきたいと存じます。その上で,質疑及び議論をお願いいたしまして,議論が収束しましたならば,順次,部会としての意見の取りまとめに入りたいと思っております。
  本日の議事進行につきましては,以上のような形でよろしゅうございましょうか。--それでは,そのようにさせていただきたいと思います。
  まず○○委員から,先ほどの意見書につきまして御説明をお願いいたします。
● 私どもが作成しました「諮問69号について」という書面について,意見を述べさせていただきたいと思います。これは,今までこの部会で私どもが述べさせていただいたものをまとめたものですので,もう既に皆さんはお聞きになっているということになってしまうものですが,またこの席上で申し上げさせていただきたいと思います。
  ここに書いてありますのは,要綱(骨子)の順序で意見という形でまとめております。
  まず,要綱(骨子)第一の「有期の懲役及び禁錮の法定刑の上限の改正等」についてということでありまして,これについては私どもとしては長期的視点を必要とする刑法改正においては,やはり長期的スパンで物事を見て現在を判断していくという姿勢が一つは必要であるというふうに考えております。ここに記載してありますように,平成12年版「警察白書」に記載されている凶悪・重大犯罪について検討してみますと,この近年がとりわけ際立って長期的スパンの中で犯罪が増えているという傾向にはないということをやはり見ていく必要があるだろうというのが一つ。
  それから,近年,確かに強姦等の犯罪が増加していることは間違いないのですが,その原因等を分析して,その原因を除去しながら犯罪の増加を防いでいくという,総合的な立案検討が必要だろうというふうに考えております。そういう中で,刑法というものがどういう役割を果たすかという,刑法の謙抑性という視点が必要ではないか,そういった点から見ますと,ここ近年を見るだけで刑法を改正して,その刑を重くしていくということだけでよろしいのかという疑問があるということがまず最初に述べていることであります。
  次には,今回の有期の懲役及び禁錮の法定刑の上限の改正に伴って影響を受ける罪が104あるわけですが,その罪を一つ一つ検討することなく,一律に上げることに問題があるのではないかという提起であります。
  その罪の中には,一つは御璽等偽造等の罪がありまして,これは日弁連としては日本国憲法上問題があるのではないかという指摘をかねてからしてきたことでありますが,今回の改正において,更に公印偽造等の罪との比較をしますと,その差が際立って広がってしまうということで問題があるのではないかということであります。
  また,104の罪の中の一つである加重収賄の罪について見てみますと,公務員犯罪を厳しく処罰していくということに一般的に私どもは反対しているわけではないのですが,今回の改正が総じて凶悪・重大と言われる犯罪に係る改正ということになっているわけでありますが,そういう中で加重収賄の現実の状況等を検討することなく,一緒に上げるという形で結局は引き上げられてしまうわけですが,そういうことでよろしいかという問題点であります。これが二つ目。
  三つ目は,有期自由刑の在り方について議論する場合には,死刑,無期刑とのかかわりで議論されるべきではないかということであります。死刑,無期刑,有期刑はそれぞれ相関連してその機能を果たしているわけでありますので,死刑の存廃や無期刑の在り方,有期刑の期間というものをそれぞれ別個に議論するのではなくて,関連性を持ったものとして議論をしながら,有期刑はどの程度でどうすべきかというのが結論づけられるというふうに考えておりますので,その点の議論が必ずしも十分でなかったというふうに考えております。
  その次には,やはり長期受刑者の社会復帰に及ぼす影響について,現実にこれは長期受刑者であっても社会復帰しているという御意見も出ていたわけでありますが,この点については必ずしも十分な実証的検討がなされたわけではありません。やはり現在,行刑上問題になっております過剰収容,あるいは行刑の中で精神的に障害を受ける等の問題点も幾つか指摘されているわけでありますので,長期受刑という状況が生じた場合に,この人たちの社会復帰といかなる関連があるかということをもう少し検討すべきだというふうに考えております。
  五つ目には,無期刑に処する場合と有期刑に処する場合との実質的格差の縮小論への疑問であります。これは,私どもも無期刑を減らして有期刑にという考え方はそれなりに理解できるわけでありますが,現実の判決で有期刑か無期刑かを裁判官が悩んだ事案が今まであったということでありますが,それが今後どの程度無期刑だったものが有期刑になっていくかという,この点は必ずしも議論が煮詰められていないというふうに考えておりますし,無期刑よりも有期刑を選択するということも今回の改正にもしあるとすると,無期刑が規定されていない罪について,この議論は該当しないわけでありますから,その点にやはり問題があるのではないかというふうに考えております。
  その次には,体感治安ということが指摘されているわけであります。これは新聞等の世論調査等も引用されているわけでありますが,確かに体感治安というものが国民の間に広まっているということは強く指摘されているわけでありますが,これを重罰化という形での刑法規範として,国民に規範意識として形成されてきたかどうかということについては,必ずしもそう短絡的に移行しているのではないのではないかということを指摘したいと考えております。
  七つ目には,平均寿命論でありまして,この平均寿命論についてはこの部会でもいろいろ議論はされたわけでありますが,やはりこの世の中の激しい変化というのは,ある意味でいいますと寿命が延びたこととは逆に,1年1年が非常に重要な変化をする年月になってきてしまっている,そういう中で人一人一人にとって1年というものが極めて内容の濃いものになってくるということを考えますと,15年を20年,20年を30年というふうに刑の期間を延ばすということが,こういった時代の流れとどのような関係を持つかということは無視できないというふうに私どもでは考えております。
  八つ目は,死刑と制度的終身拘禁刑である無期刑が存続しているもとで,有期懲役刑の上限を30年にするということは,量刑に影響を与えるのではないかということであります。裁判官委員の中からは,このことだけですぐ量刑に影響はないというふうにお答えがあったわけでありますが,私どももすぐさま変わるというふうには考えておりませんが,やはり有期刑が長期に法定されるということは,いずれ量刑にもそれが影響してくるだろうというふうに考えております。
  こういった点を総合的に考えて,第一の点について,私どもとしては賛成しかねるということであります。
  第二の要綱の点で,「強制わいせつ,強姦及び強姦致死傷の各罪等の法定刑の改正等」については,ここに書いてありますように,やはり今フランス,ドイツ,カナダ,アメリカなどで性的自由の侵害に係る罪については男女の差を設けない構成要件を新たに検討しながら,それに見合う刑を規定するというふうにしているようですので,そういう世界的趨勢を見ながら,それにかんがみた形での日本の罪の在り方,それに見合う刑というものを検討すべきだったのではないか,それと同時に,日本における検討の場合には,強盗罪等の法定刑の適正化とのかかわりで決めるべきであろうということであります。
  その理由の第1としましては,今申し述べたように世界的趨勢であるということが一つであります。やはりそういう中で,強制わいせつの法定刑の上限を10年,強姦罪の法定刑の下限を3年に引き上げるということだけで,今回の改正という形にすることには疑問があるということであります。
  二つ目には,性的自由の侵害の罪を検討するに当たっては,やはり現行刑法の強盗罪等の刑との比較が不可欠であるということであります。強姦罪の下限の引上げは絶対的なものだという御意見がいろいろ出されたわけでありますが,やはり私どもとしては絶対的ということは言えないのではないかというふうに考えております。フランス,ドイツ等の強姦罪の刑と比較いたしましても,日本の強姦罪等の刑が不当に低いというふうに言えるものではないだろうと,やはり日本の強盗罪の下限が5年ということになっているということで,強姦の罪の刑が低きに過ぎるというふうに見えているのではないかというふうに考えておりますので,その強盗を含む財産犯の刑の在り方の再検討抜きに,強姦罪等性的自由侵害の罪の刑だけを引き上げていくということには賛成できないということであります。
  第三の「殺人の罪等の法定刑の改正」については,これについても殺人罪の性質からして下限引上げの理由がないというふうに考えております。やはり殺人にはその責任の在り方に種々のものがありまして,すなわち殺人の罪の性質からして,類型的に執行猶予を付すことができる3年の刑に相当すべき事案があるというふうに考えております。現在の日本社会の実情からしても,執行猶予を付すべき事案は類型的に生じ得るということであります。このことから,私どもとしてはこの殺人の罪の下限を3年以上に引き上げるということを含んだことには疑問があるということであります。
  それから,発生率を見た場合でも,日本における殺人の発生率は世界で一,二を争うほど低いものになっております。長期の統計を見ても,戦前・戦後の時期から近年に至るまで急激に低下しております。近年の発生率で見ると,1944年か45年,正に日本が戦争末期というときとほぼ同じぐらいの殺人率でありまして,それ以前の戦前ですとか,それ以後の戦後と比べても極端にと言っていいほど低い状況にあります。ある学者が--刑法学者ではありませんが--分析した本には,マスコミ報道から受ける印象とは逆に,現代日本はこと殺人に関する限りどんどん安全になっているというような本も出されているわけでありまして,そういったことから見ても今回の改正については疑問があるということであります。
  それから,メッセージ性なるものは引上げの理由にならないということであります。命の大切さを訴えるメッセージ,罪を犯してはならないメッセージということで刑の下限の引き上げを認める御意見もありました。そもそもメッセージ性とは何かということ,これがどうもあいまいな概念で理性的議論になじむ概念かどうかということは私ども疑問があるのでありますが,命の大切さとか犯罪を犯してはならないということは社会的な触れ合いだとか学校教育とか家庭における養育等によって伝えていくということが本筋であろうというふうに考えております。そういう中で,殺人の罪の刑を考えるべきでありまして,それを引き上げることによって命の大切さ等を訴えるというのは,どうも私どもとしてはこれにくみすることはできないという考えであります。
  百歩譲って,こういうことがメッセージ性があるというふうに言われたとしても,やはりそれは殺人が現行刑法の最も重い刑になるということが本当の意味のメッセージ性になるのではないかというふうにも考えております。
  それから,次の第四の「傷害及び傷害致死の各罪等の法定刑の改正」についてでありますが,この点も傷害の罪の法定刑を国際的に見ましても決して我が国のものが低いわけではありません。これは事務当局からいただいた資料によって,ここに引用したとおりでありますが,必ずしも低いというふうに言うことはできないだろうと。
  それから,医療技術の進歩等によって,あるいは科刑状況から見ても,すぐさま引き上げるということにはなっていないのではないかどうかということであります。
  それと,有期刑の上限が20年に引き上げられるということが前提になっているということもありますが,それになりますと私どもとしては有期刑の上限が20年に引き上げられるということに賛意を示していないわけでありますので,そこの意見にもくみし得ないということであります。
  次に,傷害致死罪の法定刑の引上げについては,やはり判例上,結果について過失なり予見可能性がなくてもよいというふうになっている現状からすると,やはりこの点については疑問があるということであります。それとともに,傷害の罪と比較して重い刑によって処断すると規定されたものが刑法典に12ございますが,こういう規定もそれぞれの構成要件の検討なしに,傷害が引き上げられるということで一律に引き上げられることについては疑問があります。やはり引上げの程度について,個別に議論する必要があるのではないかということであります。
  続いて,「公訴時効期間の改正」についてでありますが,これについては被告人,弁護人の防御権と時効制度の問題が私どもの態度の一つであります。これについては,やはり長期間経過しているというもとで,検察官に主張立証責任がございますので,長期間経過するということは検察官に不利益になるという御意見もあったわけですが,実際の場面において考えてみますと,被告人,弁護人がアリバイ立証などの立証に困難をきたしかねないということが生じるであろうということ,また証人等の記憶の薄れだとか死亡等によって,刑事訴訟法321条1項2号,3号書面が証拠能力だけでなく,その証明力も高められるという可能性があるというふうに私どもは考えておりますので,被告人の防御権上重大な問題が出てくるということ。
  二つ目には,被疑者の事実上の継続した社会関係に問題が生ずるということであります。例えば,25年も隠れて社会で生活していたということになりますと,その被疑者と言われる人には,事実上の社会関係が成立していたわけでありまして,そういう成立した社会関係を壊してまで,あえて訴追するということが認められるのかということがあるというふうに考えております。この点は,やはり長期裁判ということでいろいろ問題になるときに,免訴にするということもあるわけでありますが,そういったこととの関連から考えてみても一つ重要な点だというふうに考えております。更には,民事の除斥期間20年を超えてまで公訴権を維持しなければならないということはないのではないかということも,ここで付け加えております。
  三つ目には,警察等の捜査資源の配分と被害者ということでありまして,今の警察の捜査資源からして,捜査本部なり捜査員配置をすべての事件にするということは非常に困難,無理だと。公訴時効の大幅な延長は,警察に相当の負担とならざるを得ないわけでありますので,そうなってきますとこの捜査資源をどう配分するかということが問題になってくるだろうと。一方,被害者や遺族にとってはすべての事件が大切なのでありまして--それぞれの事件ですね,総体として見た場合の重点の置かれるべき事件というのと異なって,被害者から見ればすべての事件が重要だと。そういった観点から見ますと,この捜査資源の振り分けというものは,被害者や遺族にとっては非常に不平等なものと映らざるを得なくなりかねない。そういうことも含めて,私どもとしてはこの点やはり問題があるのではないかと。
  それから,時効期間を25年を相当とするという,最長期の,死刑に当たる罪の場合ですね,これがなぜ25年なのか,16年から24年の間のどこかの時点ではなぜいけないのかという議論が不足しているというふうに考えております。
  それから,続いて四番目でありますが,「被害者・遺族への対応は総合的に厚く」というふうに書きましたのは,被害者・遺族の感情はそうそう消えるものではありませんので,これは昔も今も変わらないというふうに考えております。ですから,時効を延ばすからとか,ある程度で切るといっても消えるものではない。そういうふうな場合に,被害者・遺族の傷ついた心の治癒というのは,社会的,精神的など様々な援助によって初めてなされるものであります。そうした対策との総合的な検討を十分することなく,時効期間の延長をすることだけで被害者・遺族の援助になるというふうには私どもは考えておりません。被害者・遺族の気持ちを大切にするというのであれば,時効期間の延長というよりは,より適切なケアですとか援助ができるようなシステムをどう構築していくか,そういうものがあって初めて時効をどういうふうに考えていくかということが議論されるというふうに思っておりますので,この点についても私どもとしては賛成しかねるということであります。
附帯決議の提案もありましたので,その点についても触れさせていただきます。
  私どもは,この刑事法部会で附帯決議として次のものを挙げていただきたいというふうに考えております。
  1番目は,下限を懲役5年以上とする強盗罪,同じく7年以上とする強盗致傷罪の法定刑を,それぞれ下限3年以上,6年以上に引き下げるべきであるということであります。
  2番目は,窃盗,詐欺等の財産犯の一部の罪に罰金刑を選択刑として新設すべきであるということであります。これは,もう既にこの部会で私どもが何回も申し上げてきたわけでありますが,一つは強盗致傷の類型には様々な形態ものがありまして,執行猶予を付するのが相当の事案も少なくありません。しかるに,強盗致傷の罪は酌量減軽しても執行猶予を付すことができず,その刑の定めは極めて不合理であるという,これは皆さんの中からも出た御意見でありますが,そういうことが一つ。二つ目には,強盗の罪,とりわけ事後強盗の罪には具体的事案において軽微なものがないわけではないということであります。これは,私どもが実務の感覚的な経験の中で感じていることであります。三つ目は,強盗の罪5年以上という刑は,欧米諸国に比すると極めて異様なほど重いものになっているということであります。四つ目は,窃盗等の財産犯の一部には罰金刑になじむものがあるということであります。これは,かねてから日弁連が主張し,法制審議会の中でも罰金刑を議論するときに議論されたことがございます。五つ目は,その当時でありますが,平成3年4月9日の参議院の法務委員会の附帯決議を引用しておきました。これはこう言っております。
  「罰金を含む財産刑については,法定刑の定め方,刑の量定の方法,執行の合理化等各般にわたり,更に検討を加える必要があるが,政府は特に,次の諸点について格段の努力をすべきである。」として,その3項で,「罰金が選択刑として定められていない財産犯及び公務執行妨害罪等の犯罪につき,罰金刑を選択刑として導入することを検討すること」という附帯決議であります。
  これは,立法府の意向を示したものでありますので,平成3年というときに出されているものでありますので,これほど長い期間放置しておくのは問題だろうということから,附帯決議として今回出したらどうかということを御提案したいというふうに考えております。以上であります。
● ただいまの意見書につきまして,御質問などがあろうかと思いますけれども,その中の附帯決議の部分につきましては,事務当局作成の附帯決議案がございます。これと関係する部分もあると思いますので,先ほど申しましたように引き続き事務当局作成の附帯決議案につきまして事務当局から説明をしていただきまして,それから先ほどの意見の附帯決議案と併せまして審議をさせていただきたいと存じます。
  それでは,事務当局,よろしくお願いいたします。
● それでは,御説明をいたします。
  前回までの部会における強盗関係についての御審議の結果,おおむね御意見が一致したと思われますところをもとに,事務当局におきまして附帯決議の案を作成させていただきました。席上にございますので,朗読につきましては時間の関係もあり省略させていただきます。
  附帯決議案の1点目は,現在の刑法第240条前段では,強盗致傷罪の法定刑は無期又は7年以上の懲役とされておりますが,この法定刑の下限を7年から6年に引き下げるべきであるというものであり,要綱(骨子)の内容とともに,そのような内容の立法に向けての措置をとるべきであるとの具体的な提案になっています。
  これは,前回までの部会での御意見として,強盗致傷罪につきましては,事後強盗の事案等においては相当に軽微なものがあるわけでありますが,およそ強盗致傷罪が成立するというだけで,酌量減軽しても執行猶予に付し得ないというのは実務的には大きな問題であって,酌量減軽すれば執行猶予を付すことが可能になる程度に,その法定刑の下限を引き下げるべきではないかとの御意見が大勢を占めたように思われましたことから,このような案を作成いたしたものであります。 この,酌量減軽すれば執行猶予に付し得るような法定刑の下限の在り方という考え方は,集団的な強姦による致死傷の罪に関します要綱(骨子)第二の四や,組織的な殺人の罪に関します要綱(骨子)第三の二の考え方とも共通するように思われます。
  なお,前回までの部会における強盗関係での御審議では,強盗罪につきましてもその法定刑の下限を引き下げるべきではないかとの御意見もございましたが,これに対しましては,近年における強盗事犯の動向には極めて憂慮すべきものがあり,その中で法定刑の下限を引き下げることが国民にどのようなメッセージをもたらすのかについて,なお慎重に検討すべきであると思われるのに加え,強盗罪の場合には,酌量減軽しても執行猶予に付すことができないという強盗致傷罪特有の問題はないとの御意見も少なからずありましたように思われますことから,事務当局作成の附帯決議案には盛り込まないこととしたものであります。
  もっとも,この慎重論の御意見でも,近年の犯罪情勢を踏まえつつ,軽かるべきものは軽く,逆に重かるべきものは重くという基本的な考え方に従って,今後,強盗関係の法定刑を更に検討すべきであるという考え方そのものは否定されていないように思われます。そのような検討をするものといたしました場合,強盗は窃盗と境を接する犯罪でありますことから,これら盗犯を一体として考える必要があるものと思われますし,そのような検討につきましては,以前に法制審議会刑事法部会財産刑検討小委員会でも検討されました罰金刑の活用の余地など,更に盗犯の枠を超えて財産犯一般をも視野に入れた法定刑の在り方についての考慮が必要になるのではないかと思われます。
  そこで,附帯決議案の2点目といたしましては,そのようなより広い観点からの検討を行うべきであるとの内容を盛り込みました。この内容は,1点目とは異なり,具体的な内容の立法に向けての措置を速やかにとるべきであるという性質のものではありませんが,必要に応じて,再度法制審議会への諮問を行うことも含めて,今後,立法に向けての措置の要否及びその内容についての検討を法務当局に求めるということを意味するものになっております。
  御説明は以上でございます。
● 前回,お願いいたしたわけでございますけれども,事前に御連絡いただきました附帯決議案その他の御意見は以上でございます。
  その他に要綱(骨子)の修文や附帯決議につきましての御提案がございましたら,お願いいたします。
  要綱(骨子)の当否や,これまで説明がありました附帯決議案につきましての賛否等にわたりますものにつきましては,後ほど意見をいただくといたしまして,まずは新規の修文案,あるいは附帯決議案につきまして御意見がございましたら御発言をお願いいたします。
  特にございませんようでしたら,要綱(骨子)の当否や附帯決議案につきまして審議を進めたいと思います。
  まず,要綱(骨子)の当否につきましては,これまでの部会でも議論が重ねられました。先ほど○○委員からも意見書の内容についての御説明があったわけでございますが,まずこの意見書の内容のうち,附帯決議案以外の部分につきまして御質問あるいは御意見がありましたら,どうぞどなたでも結構でございますのでお願いをいたします。
● ○○委員,○○委員,○○幹事の意見書についてでございますけれども,この中の4ページ目,Ⅱの「『第2 強制わいせつ,強姦及び強姦致死傷の各罪等の法定刑の改正等』」について」というこの部分でございますけれども,これを見させていただきますと,特に具体的な要綱(骨子)といったような立法内容の御提案ということでもないように見受けられるのでございますが,そうなりますとその後の理由の部分と同様に,要綱(骨子)第二の当否につきましての○○委員初めお三方の御主張と,こういう理解でよろしゅうございますでしょうか。
● 具体性がないのはそのとおりで,これはある意味でいうと具体的な案をこれから作ろうという一つの意見というか,そういうふうになりますので,これ自体が例えば今日ここで採決するになじんでいるかというとなじんでないかなという感じもいたします。その辺は,部会長の方で御判断いただければ……。
● それでは,新規の提案ということではなくて,御意見ということで扱わせていただきたいと存じます。
  そのほかにこの意見書の附帯決議案以外の部分につきまして,御質問や御意見があればよろしくお願いいたします。
● 前回欠席しましたので,要綱(骨子)全体についての意見をごく簡単に述べさせていただきたいと思います。
  結論から申しますと,私は今回の要綱(骨子)に基本的に賛成であります。とりわけ,要綱(骨子)第二の性犯罪に対する法定刑の引上げには,賛成であります。ただ,以前にも申しましたが,要綱第三の一の刑法199条の殺人罪の法定刑の下限を3年から5年に引き上げることについては,まだ十分説得された状態ではありません。
  確かに,生命は最も重要な法益であり,その侵害について今回懲役刑の短期を引き上げるというのは一つの考えではありますが,他方,殺人罪は,うまく表現できないのですけれども,その性質上人間のさがというようなものが色濃く反映する犯罪類型であります。しかも,あらゆる殺人の類型を刑法199条の1条のみで対応する形になっておりますので,殺人の中には現在の下限に近いと評価すべきものも依然存在すると考えるべきであります。生命は最も重要な保護法益だから,下限を引き上げていいのだとか,あるいは下限を引き上げても酌量減軽をすることによって執行猶予も付けられるのだからいいというように割り切って考えてしまうことには,私はやはり若干の違和感を感じるものであります。
  なお,私は第三の二についてはこの引上げに賛成であります。
● 御意見として承っておきたいと存じます。
  そのほかに,何か御質問,御意見はございませんでしょうか。
  ないようでしたら,附帯決議の方に移りたいと存じます。
  事務当局からは,強盗致傷罪の法定刑の下限を懲役7年から6年に引き下げるという具体的な立法の提案と,そのほか強盗につきましては,窃盗も含めた盗犯,更には財産犯全体をも視野に入れて,近年の犯罪情勢に応じた罰則の在り方を検討すべきであるという提案がございました。これは,今後の立法提案に向けた法務当局への検討の要望になるかと思いますが,そのような二本立ての附帯決議ではいかがかという提案でございました。
  一方,○○委員などの弁護士の皆さんからは,強盗致傷罪につきまして事務当局作成の案と実質的に同一の内容の附帯決議の提案がありました。そのほかに,強盗罪につきましてもその法定刑の下限を懲役5年から3年に引き下げるという具体的な立法の御提案と,財産犯の一部について罰金刑を選択刑として新設すべきであるという,事務当局の案よりはやや具体的な提案がございました。いずれも今後の立法提案に向けた法務当局への検討の要望に属するものと思われます。
  それぞれの御説明につきまして,どなたからでも結構でございますので,御質問や御意見がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
● ○○委員に御質問ということになるわけでございますけれども,先ほど○○幹事の方から提示のありました附帯決議と,○○委員の方で御提案になったものを見比べますと,今,部会長の方からも指摘がございましたけれども,強盗致傷罪の部分については共通しておると。ただ,それ以外の部分につきましては,○○委員ほかの御提案に係ります附帯決議案の方が,今後の立法に向けましてより具体的な方向性をお示しになっているというふうには見えるわけでございます。ただこの御提案といいますのが,そのような方向性についてまでこの部会において,財産犯,窃盗などの罰金刑も含めまして議論され,今の時点でコンセンサス的なものが成立しているとの御認識に基づくものでございましょうか。
  その辺,○○委員に,この御提案,非常に具体的なんでございますけれども,その方向性につきまして,この部会において議論され,コンセンサスのようなものが成立しているというふうな御認識に基づいて御提案になっておられるのかどうか,ちょっと確認させていただけたらと思いまして。
● いかがでしょう。
● 難しい御意見なので……。
  コンセンサスがあるかないかと私に聞かれても,私としてはあるのではないかというふうに思って附帯決議にしたらというふうにお出ししているのですが。
  ただ,私どもが考えているような形で部会委員の皆さんが一致しているかというふうに聞かれると,一致していますというふうに私が断言できる状況にないことは間違いないとは思うのです。ですから,先ほど○○幹事から御提案があったものと比べていかがかと聞かれると,いろいろ私どももこの附帯決議案の2項を提案するときに悩んだのですが,○○幹事が説明されたこの附帯決議案の2項の中に,私どもの言っている財産犯の一部の罪に罰金刑を選択刑として新設すべきだという趣旨が入っているか入っていないかという,その辺もちょっといろいろありまして,私どもとしての決議を考えたのですが。
  その辺の議論,議論かあるいは部会長なりのお考えがあれば聞かせていただければ,私どもももう少し態度が表明できると思いますが。
● コンセンサスが成立していたかどうかは別といたしまして,確かにこの強盗罪についても法定刑の下限を引き下げてはどうかという議論はあったように記憶しております。その引下げの程度につきまして,懲役3年という御意見も○○委員からあったように記憶しています。
  ただ,財産犯について選択刑としての罰金刑の新設というところまで,具体的にこの部会で議論が及んだというような印象は,私は持っておりません。
  そうだとしますと,そのような具体的な内容につきまして,附帯決議としてこの部会から提案いたしますと,どのような議論を踏まえてそのような提案をしたのかというようなことになるかと思います。逆に,今回これを採決いたしますと罰金刑を選択刑として新設するという案を現時点で採決して,仮に否定してしまうということになりますと,十分な議論なしに今後における検討の余地を封じてしまうことになるのではないかと思います。
  事務当局提出の附帯決議案の第2項につきましては,先ほど事務当局からの説明でも,財産犯について罰金刑の活用の余地なども考慮するという内容があったことでもありますので,この○○委員ほか弁護士先生方の御提案の附帯決議の第2項につきましては,事務当局提出の附帯決議(案)第2項に入れていただく,あるいはそれに吸収させていただくというように部会としては取りまとめさせていただければ有り難いと思います。いかがでしょうか。
● 先ほどの○○幹事からの御説明,それから今の部会長からのお考え,そういう意味では事務局提案の第2項の中にそういう罰金刑を選択刑として取り入れることを考えると,そういう趣旨ということであれば,私としてはそこに吸収という形で処理していただいてもいいのではないかというふうに思いますが。
● それでよろしゅうございましょうか。ありがとうございます。
  それでは,採決の際には,事務当局提出の附帯決議案第2項につきましての賛否を問うということにさせていただきたいと存じます。
  そのほかに,附帯決議案につきまして御質問,御意見があればよろしくお願いいたします。
  それでは,御意見などもないようでございますので,議論につきましてはこれで終結をさせていただきまして,部会としての意見の取りまとめに移らせていただきたいと思います。
  そこで,その採決方法でございますが,これまでの議論を踏まえまして,私の方で次のようなやり方ではいかがなものかと考えておりますので,御紹介をいたしたいと思います。
  まず,要綱(骨子)につきましての修文案はないようですので,順次その採決をしていきたいと思います。お手元に採決手順のメモを配布しておりますので,御覧いただきながら説明をお聞きいただきたいと思います。
  まず,要綱(骨子)の第一につきましては,これは一体のものとして議論が進められてきたように思いますので,第一の一から三までを一括して採決に付したいと思います。
  次に,要綱(骨子)第二につきましても同様に,第二の一から四までを一括して採決に付したいと思います。
  要綱(骨子)第三につきましては,その一であります刑法の殺人の罪と,その二であります組織的な殺人の罪との間では議論の状況にやや異なったものがあるように思われますので,第三の一と二とは別個に採決に付したいと思います。
  要綱(骨子)第四につきましては,○○委員ほかの先生方の意見書でも,第四の一のうち刑法の傷害の罪の法定刑について,罰金刑の多額を引き上げて科料を削除するという部分と,その他の部分とで賛否が異なっているようでございますけれども,この点と,懲役刑の長期の引上げに関する部分とは賛否を判断する上で必ずしも連動しないと思われます。そこで,要綱(骨子)第四につきましては,まず第四の一のうち,罰金刑の多額を引き上げて科料を削除するとの部分について採決を行い,次に懲役刑の長期の引上げという点で共通しますので,第四の一のうち,懲役刑に関する部分と第四の三及び四とを一括して採決します。そして最後に,懲役刑の短期の引上げという別の論点に関しますので,第四の二の傷害致死罪について採決に付したいと思います。
  要綱(骨子)の最後の第五につきましては,それ自体一体としての内容でございますので,一括して採決に付したいと存じます。
  次に,附帯決議でございますけれども,強盗致傷罪の法定刑の短期を6年に引き下げるということでは二つの御提案が共通していますので,これらを併せましたものとして事務当局提示の案の第1項について採決したいと思います。その他の部分につきましては,この二つの御提案に共通するものがあるわけでございますが,部会として,この時点で,より具体的な方向性を示すのが妥当かということが先決問題のように思われますので,先に○○委員ほかの提案のうち,強盗致傷罪に関する部分以外の部分,つまり強盗罪の法定刑の短期を3年に引き下げるとする部分を採決し,最後に事務当局提示の 第2項の部分について一括して採決に付したいと存じます。そのような手順でよろしいでしょうか。
● 附帯決議の関係ですが,私どもの提案のうち強盗致傷と強盗を切り離されて,強盗だけの採決というふうになって,これが否定された場合,今度事務当局提出の第2の附帯決議の将来的な議論がございますね。
  強盗の下限3年というのが否決された上で,将来的となると,これも少し将来に影響しないかなという感じがするので,その辺の整理をちょっとしておいていただければ,第2だけで採択していただいても結構なんですが,この部会で否定したとしても,将来に強盗罪の引下げがあり得ないということをこの部会で決めたわけではないのだというふうになるのかならないのかというあたりの……。
  簡単に言うと,強盗についての将来の議論に,本日の決定が枠をはめるものではないというのがありませんと,提案した趣旨が必ずしも将来検討されては困るということではないものですから,その辺どうなっているか,ちょっと……。
● 財産犯,強盗を含めましていろいろな法定刑等の在り方,先ほど窃盗などについての罰金ということもございましたけれども,それ以外の法定刑もあり得るわけでございまして,当然強盗につきましても法定刑の在り方というものが事務当局提案の第2には入っておるわけでございまして,その意味では○○委員ほかの方からの御提案の問題も,一つの検討課題ということで,すべて事務当局の第2の方に含まれておるという理解が十分できるわけでございます。したがいまして,この時点で強盗についてだけ切り離して下限の議論・採決をすべきであるかということでございますが。
● ちょっとお時間いただいていいですか。3名の意見なものですから,私一人で決めることもできないので。済みませんが今の御提案をどう扱うかというの,ちょっと……。
● それでは,どうぞ御相談ください。
  しばらくお待ちいただきたいと思います。
            (○○委員・○○委員・○○幹事中座)
● では,お願いいたします。
● では,私どもが提案しました附帯決議の1項の強盗の部分については,事務当局提案の2項の部分に含まれているということで,先ほど部会長のお話にあった採決手順の2番目については,採決しないということで扱っていただきたいと思います。
● 了解いたしました。
  それでは,これから採決に移ります。
  まず,要綱(骨子)第一について,一括して採決を行います。
  賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (賛 成 者 挙 手)
● 反対の委員の方の挙手をお願いいたします。
            (反 対 者 挙 手)
● ただいまの採決の結果を御報告いたします。
  要綱(骨子)第一につきましてですが,賛成の委員の方は14名,反対の委員の方は2名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。
● 要綱(骨子)第一につきましては,ただいまのように賛成多数で可決されました。
  要綱(骨子)第二についての採決に移らせていただきます。これも一括して採決を行います。
  賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (賛 成 者 挙 手)
● 要綱(骨子)第二について反対の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (反 対 者 挙 手)
● 要綱(骨子)第二についての採決の結果を御報告いたします。
  賛成の委員の方は14名,反対委員の方は0名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。
● 要綱(骨子)第二につきましては,挙手されました全員賛成で可決と認めます。
  次に,要綱(骨子)第三の一につきまして採決を行います。
  賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (賛 成 者 挙 手)
● 反対の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (反 対 者 挙 手)
● 要綱(骨子)第三の一についての採決の結果を御報告いたします。
  賛成の委員の方13名,反対の委員の方2名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。
● 要綱(骨子)第三の一につきましては,賛成多数で可決と認めます。
  次に,要綱(骨子)第三の二につきまして採決を行います。
  賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (賛 成 者 挙 手)
● 反対の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (反 対 者 挙 手)
● 要綱(骨子)第三の二についての採決の結果を御報告いたします。
  賛成の委員の方14名,反対の委員の方2名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。
● 要綱(骨子)第三の二につきましては,賛成多数で可決と認めます。
  次に,要綱(骨子)第四の一のうち,罰金の多額の引上げ及び科料の削除に関する部分について採決を行います。
  賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (賛 成 者 挙 手)
● 反対の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (反 対 者 挙 手)
● 要綱(骨子)第四の一のうち,罰金の多額の引上げ及び科料の削除に関する部分についての採決の結果を御報告いたします。
  賛成の委員の方は16名,反対委員の方は0名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。
● 要綱(骨子)第四の一のうち,罰金の多額の引上げ及び科料の削除に関する部分につきましては,挙手されました委員の全員賛成で可決と認めます。
  次に,要綱(骨子)第四の一のうち,懲役刑の長期の引上げに関する部分,並びに第四の三及び四について,これを一括して採決を行います。
  賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (賛 成 者 挙 手)
● 反対の委員の方,挙手をお願いいたします。
            (反 対 者 挙 手)
● 要綱(骨子)第四の一のうち,懲役刑の長期の引上げに関する部分,並びに第四の三及び四についての採決の結果を御報告いたします。
  賛成の委員の方14名,反対の委員の方2名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。
● 要綱(骨子)第四の一のうち,懲役刑の長期の引上げに関する部分,並びに第四の三及び四につきましては,賛成多数で可決と認めます。
  それでは次に,要綱(骨子)第四の二につきまして採決を行います。
  賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (賛 成 者 挙 手)
● 反対の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (反 対 者 挙 手)
● 要綱(骨子)第四の二についての採決の結果を御報告いたします。
  賛成の委員の方14名,反対の委員の方2名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。
● 要綱(骨子)第四の二につきましては,賛成多数で可決と認めます。
  次に,要綱(骨子)第五につきまして一括して採決を行います。
  賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。
          (賛 成 者 挙 手)
● 反対の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (反 対 者 挙 手)
● 要綱(骨子)第五についての採決の結果を御報告いたします。
  賛成の委員の方14名,反対の委員の方2名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。
● 要綱(骨子)第五につきましては,賛成多数で可決と認めます。
  次に,附帯決議案につきまして採決に移ります。
  附帯決議案のうち,事務当局案の第1項,これは○○委員ほか御提出の案の第1項の一部と同旨でございますが,強盗致傷罪の法定刑の下限を懲役6年に引き下げるべきであるという点につきまして採決を行います。
  賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (賛 成 者 挙 手)
● 反対の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (反 対 者 挙 手)
● 事務当局より提示いたしました附帯決議(案)第1項についての採決の結果を御報告いたします。
  賛成の委員の方16名,反対の委員の方0名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。
● 事務当局提示の附帯決議案第1項につきましては,挙手されました委員の全員賛成で可決と認めます。
  最後に事務当局案の第2項につきまして採決を行います。
  賛成の委員の方は挙手をお願いいたします。
            (賛 成 者 挙 手)
● 反対の委員の方の挙手をお願いいたします。
            (反 対 者 挙 手)
● 事務当局から提出いたしました附帯決議案第2項についての採決の結果を御報告いたします。
  賛成の委員の方16名,反対の委員の方0名でした。出席委員総数は,部会長を除きまして16名でした。
● 事務当局提示の附帯決議案第2項につきましては,挙手されました委員の全員賛成で可決と認めます。
  採決は以上で終了いたしました。
  その結果,諮問第69号につきましては,要綱(骨子)の原案を,それからその他に附帯決議案についても事務当局作成のもの,これを部会の意見として総会に報告することに決まりました。この決定は,部会長から総会に報告いたしますけれども,部会長報告につきましては,慣例といたしまして部会長に御一任願うということにしていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは,若干時間を超過しましたけれども,本日予定した議事はすべて終了いたしました。この際,審議の在り方などにつきまして,何かお気づきの点がございましたら是非御発言を賜りたいと思います。
● 既に時間が超過しているのに申し訳ありませんけれども,私,この部会の審議の在り方というのがもう一つよく分からないところがありまして,感想的なことを含めて意見を言わせていただきたいのですけれども。
  私ども弁護士委員の意見というのをまとめるに当たって,いろいろ検討してみますと,結局いろいろな問題点がたくさんある。今回の諮問についても,第一から第五までそれぞれがかなり大きな問題であり,問題点もたくさんあるように思われますが,それを実際の議論は4回ということで来ている。その過程で,どうも私自身はこの中身が十分深められたという印象は全然持てない気がするのです。これ,従前のいろいろなそういう改正等の経過などを,私は文書でしか知りませんけれども,かなり時間をかけ,あるいは小委員会を設けるなどして随分議論してこられていたみたいなので,やはりこういうような問題についてはもう少しそういう十分議論を深める,そして更に個々の問題についてもその方面の専門家の意見を聞くなり何なりという機会を持ったりして深めるような運営はできないものだろうかという点が一つでございます。
  もう一つは,毎回議事録をいただくのですけれども,黒丸だけでずっときていて,この流れというのは,我々はここに出ていますからある程度だれの発言で流れが分かりますけれども,これが公開されているにもかかわらずこういう状態だと,これを読んだ一般の人には流れがよく分からないのではないかと思いますので,これは第1回のときに○○委員からもお願いしたことではありますけれども,やはり顕名の議事録を公開するというふうに改めていただくように御尽力願いたいと思います。
● 貴重な御意見,参考にさせていただきます。どうもありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。
● 事務当局を代表しまして,一言ごあいさつ申し上げます。
  委員・幹事の皆様方には,御多忙のところにもかかわらず,今回の諮問につきまして極めて積極的な御審議を賜りましたことに,厚く御礼を申し上げます。また,部会長には,議事の進行,意見の取りまとめに格段の御尽力を賜り,誠にありがとうございました。
  本部会の冒頭でも,前任者から申し上げましたけれども,我が国の治安水準や国民の体感治安が悪化しているとの指摘がなされる中で,その大きな要因の一つともなっています人の生命や身体等に重大な危害を及ぼす凶悪犯罪その他の重大犯罪に対しましては,より的確で毅然とした対応が必要であると考えております。
  もとより,犯罪に強い社会の実現のためには,国民が自らの安全を確保するための活動の支援等の基本的な視点の下で,政府全体として各種の施策に取り組む必要があるところでございますけれども,刑事法の分野においても国民の正義観念にも合致した法整備を進めていくべきものと思われます。
  そこで,今後のスケジュールでございますが,本日の部会における諮問第69号に関する御決定及び附帯決議は,9月8日に開催が予定されています法制審議会の総会に部会長から御報告をいただき,速やかに答申等をちょうだいいたしました上,法案の立案作業を進め,できる限り早期に関連の法律案を国会に提出いたしたいと考えておりますので,委員・幹事の皆様方には今後とも相変わらずの御支援,御協力のほど,よろしくお願い申し上げます。
  今まで積極的に御審議いただき,本当にありがとうございました。
● 一言御礼のごあいさつを申し上げます。
  5回にわたる審議,ただいま○○委員から御指摘がありましたように,私の不手際から議論が余り深まらなかったかもしれませんけれども,しかし私としては,精一杯御議論いただいたように思います。こうして予定どおり答申案がまとまりましたことにつきまして,皆様に心から厚く御礼を申し上げる次第でございます。
  答申案ができました以上は,9月8日の法制審議会で報告させていただき,その上で速やかに法案化されて,法律になりますよう期待いたしまして,私のごあいさつとさせていただきます。
  それでは,これで閉会いたします。どうもありがとうございました。

「マッサージしていたが,右手を原告の背に当てた状態で,原告のシャツの胸元から左手を差し込み,ブラジャーの中に左手を入れ,原告の右乳房を直接触った。」という市職員のわいせつ行為により33万円が認容された事例(津地裁H29.8.10) 訴額は多分220万円

 訴額と認容額が記事によってまちまちです。
 判決取り寄せたところでは、訴額220万円 認容額33万円でした。
 弁護士費用はまかなえるのか

判決書
平成29年8月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成29年5月29日
裁判所の判断
オ被告は,原告の左後ろに立ち,右手で原告の肩付近をマッサージしていたが,右手を原告の背に当てた状態で,原告のシャツの胸元から左手を差し込み,ブラジャーの中に左手を入れ,原告の右乳房を直接触った。これに対し,原告は,すぐに両手でシャツの胸元を閉じ,被告の手を拒むために前屈みの姿勢になった。
しかし,被告が,そのままマッサージを続け,再度原告のシャツの中に手を強引に入れようとしたため,原告はこれを拒むために前屈みの姿勢になり, 「そこはだめです。」と拒絶し,抵抗した。被告が,なおも原告のシャツに手を入れようとしてきたため,原告はさらにかがみこんで抵抗し, 「もう戻ります。」と述べて,喫煙室から立ち去った。(甲2ないし4,原告本人)
・・・・
6争点
(4) 損害について
既に検討したとおり,原告は職場において被告から強制わいせつ行為を受け,精神的苦痛を被ったといえるが,他方,被告が原告に対する強制わいせつ行為にまで及んだのは,本件わいせつ行為のみで,一回的な行為といえ,長期間に亘るものとはいえないこと,被告による本件わいせつ行為の態様は,シャツの中に手を入れ,乳房を触り,原告が拒絶したにもかかわらず,再度シャツに手を入れようとするなど悪質であり,原告の人格を無視するものであること,被告が本件わいせつ行為の直後には示談を申し入れ,原告の精神的苦痛の回復に努める意向を示していたこと,その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると,被告の本件わいせつ行為により原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は, 30万円を相当と認め,弁護士費用については,認容額その他の事情を考慮すると3万円とするのが相当である。

市職員のセクハラを認定 /三重県
2017.08.11 朝日新聞
 勤務先の廃棄物処理施設で、業務の委託元である津市の男性職員(55)からわいせつ行為をされたとして、県内の40代女性が市などを相手取り、損害賠償計440万円を求めた訴訟の判決が10日、津地裁であった。岡田治裁判長はセクハラ行為を認定し、市に33万円の支払いを命じた。

 判決によると、職員は2015年7月、施設内で女性を座らせてマッサージし、胸を触った。市は「職員は従業員に対し何の権限もない」と主張したが、判決は「従業員に指示し、声をかけることは職員の職務そのもの。わいせつ行為と職務との関連性を否定できない」と認定した。

 市は「職員本人や弁護士の見解を求め、対応を検討してまいります」とコメントした。
・・・・・・・・
職員の強制わいせつ 津市に30万賠償命令=三重
2017.08.11 読売新聞社
 津市の廃棄物処理施設で勤務していた女性事務員が、同市環境施設課の男性主幹(55)から胸を触られる強制わいせつ行為を受けたとして、市と男性を相手取り、慰謝料など220万円の支払いを求めた訴訟の判決が10日、津地裁であった。岡田治裁判長は「わいせつ行為は職務行為と関連しており、市は賠償すべき義務がある」として、国家賠償法に基づき、津市が女性に慰謝料約30万円を支払うよう命じた。同法により、男性への請求は退けた。

提訴報道がありました

「胸を触られた」 津市などを提訴 伊賀の女性
2016.01.13 中日新聞社
 【三重県】津市森町のごみ焼却施設「クリーンセンターおおたか」で、市の男性職員から胸を触られるなどわいせつな行為をされたとして、センターで勤務していた伊賀市の女性が、市と男性職員に対し慰謝料など二百二十万円の損害賠償を求め、津地裁に提訴した。

 訴状などによると、女性は市からセンターの業務委託を受けた施設管理会社の従業員。昨年七月にセンター内の喫煙所で、市環境施設課の男性職員からマッサージと称して無理やり胸などを触られたと訴えている。

 市環境施設課は取材に「市として調査はしているが、内容についてはこれから争っていくのでコメントできない」としている。

監護者が被監護者(7歳)にわいせつ行為をした場合の罪名・・・監護者わいせつ罪で逮捕(静岡県警)→強制わいせつ罪(176条後段)で起訴(沼津支部)

 従前通り、強制わいせつ罪(176条後段)だと思います。立証も容易ですし。
 逆に、今回の改正で性的虐待事案に特化した罰則を設けたという点を強調すれば、監護者わいせつ罪になる可能性もありますが、監護者・乗じての立証が面倒です。

法務省大臣官房審議官加藤俊治「性犯罪に対処するための刑法改正の概要」ひろばH29.8
(4)本罪と他罪との罪数関係については、法制審議会あるいは国会における審議の過程において必ずしも詳細な議論がなされていないところであるが、私見においては、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪は、準強制わいせつ罪及び準強制性交等罪が存在することを前提に、既存の罰則では処罰できない事案に対応するために設けられたものであるから、準強制わいせつ罪又は準強制性交等罪が成立する場合には、重ねて監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪は成立しない(いわゆる補充関係にある)ものと考えている。

法務省刑事局長「刑法の一部を改正する法律」の施行について(依命通達)h29.6.26
2 監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪(刑法第179条)
(1)概要
実親,養親等の監護者が18歳未満の者に対して性交等やわいせつな行為(以下,両者を合わせて「性的行為」という。)を継続的に繰り返し,監護者と18歳未満の者との性的行為が常態化している事案等においては,日時,場所等が特定できる性的行為の場面だけを見ると,暴行,脅迫が認められず,また,抗拒不能にも当たらないため,刑法上の性犯罪として訴追することが困難なものが存在していた。
このような事案の実態に即した対処を可能とするため,刑法第176条から第178条までの罪(強制わいせつ,強制性交等,準強制わいせつ,準強制性交等)とは別に,18歳未満の者を現に監護する者がその影響力があることに乗じて性的行為をした場合について,新たな犯罪類 型として,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を設けることとされた。
(2) 趣旨
18歳未満の者は,一般に,精神的に未熟である上,生活全般にわたって自己を監督し保護している監護者に経済的にも精神的にも依存しているところ,監護者が,そのような依存・被依存ないし保護・被保護の関係により生ずる監護者であることによる影響力があることに乗じて18歳未満の者と性的行為をすることは,、強制わいせつ又は強制性交等と同様に,これらの者の性的自由ないし性的自己決定権を侵害するものであるといえる。
そこで,このような行為類型については,強制わいせつ又は強制性交等と同等の悪質性・当罰性が認められると考えられることから,罰貝llを新設し,強制わいせつ罪又は強制性交等罪と同様に処罰しようとするものである。
(3) 要件
ア「監護する」とは,民法第820条に親権の効力として定められているところと同様,監督し,保護することをいい,18歳未満の者を「現に監護する者」とは,18歳未満の者を現に監督し,保護している者をいう。
本罪は,監護者の影響力がある状態下で性的行為が行われた場合,18歳未満の者の意思決定は,そもそも精神的に未熟で判断能力に乏しい者に対して監護者の影響力が作用してなされたものであり,自由な意思決定に基づくものということはできないことに着目して設けるものであるから,「現に監護する者」に当たるといえるためには,法律上の監護権の有無を問わず,現にその者の生活全般にわたって,衣食住などの経済的な観点や,生活上の指導監督などの精神的な観点から,依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められ,かつ,その関係に継続性が認められることが必要であると考えられる。
イ「現に監護する者であることによる影響力」とは,現にその者の生活全般にわたって,衣食住などの経済的な観点や,生活上の指導監督などの精神的な観点から,現に18歳未満の者を監督し,保護することにより生ずる影響力をいう。
したがって,「現に監護する者であることによる影響力」には,ある特定の性的行為を行おうとする場面における,その諾否等の意思決定に直接影響を与えるものだけではなく,被監護者が性的行為に関する意思決定を行う前提となる人格,倫理観,価値観等の形成過程を含め,一般的かつ継続的に被監護者の意思決定に作用を及ぼし得る力が含まれるものである。
ウ「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」とは,18歳未満の者に対する「現に監護する者であることによる影響力」が一般的に存在し,当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で,性的行為をすることをいう。
その上で,被監護者である18歳未満の者を現に監護している者は,通常,当該18歳未満の者に対し,このような影響力を及ぼしている状態にあるといえるので,一般的には,「現に監護する者」であることが立証されれば,当該性的行為の行為時においても,「現に監護する者であることによる影響力」を及ぼしていたこと,すなわち,「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」いたことが認定できることとなる。
したがって,「乗じて」といえるためには,通常は,性的行為に及ぶ特定の場面において,影響力を利用するための具体的行為は必要ない。
エ本罪の趣旨に照らし,本罪の成否を論ずるに当たり,18歳未満の者の性的行為に対する同意の有無は問題とならない。
(4)法定刑等
監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の法定刑については,それぞれ,刑法第176条及び第177条の「例による」とされていることから,強制わいせつ罪及び強制性交等罪と同じになる。
また,死傷の結果を生じた場合には,同法第181条が適用される。
(5)他罪との関係
監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪に当たる行為が,同時に,児童福祉法上の児童に淫行をさせる罪(同法第60条第1項,第34条第1項第6号)にも該当する場合には,両罪が成立し,観念的競合となるものと考えられる。

 改正前の量刑としてはこういう感じです。家庭内事例は件数が多かったり常習性が認定されたりで重くなる傾向です。

懲役2年06月実刑08才親族
懲役2年執行猶予5年09才知人の子
懲役1年06月実刑07才親族
懲役3年06月実刑08才家族同様
懲役2年06月10才家族同様
懲役2年06月実刑強制わいせつ05才養女
懲役2年実刑未決010日算入12才連れ子
懲役1年06月執行猶予3年12才家族同様
懲役3年実刑未決080日算入08才家族同様
懲役1年06月実刑10才家族同様
懲役2年実刑未決010日算入12才親族
懲役2年02月実刑未決050日算入11才親族
懲役2年04月実刑11才家族同様
懲役1年執行猶予3年12才連れ子
懲役2年実刑未決090日算入12才養女
懲役2年06月実刑未決120日算入06才家族同様
懲役3年06月実刑未決040日算入07才親族
懲役2年実刑未決010日算入07才連れ子
懲役2年執行猶予4年未決050日算入08才家族同様
懲役2年06月実刑未決010日算入12才養女
懲役3年実刑未決080日算入12才連れ子
懲役3年10月実刑未決010日算入09才親族
懲役1年06月執行猶予3年未決160日算入保護観察07才家族同様
懲役2年06月実刑未決030日算入09才養女
懲役3年06月実刑未決030日算入11才親族
懲役2年06月実刑未決010日算入10才知人
懲役2年実刑未決070日算入07才親族
懲役1年03月実刑未決070日算入12才親戚
懲役4年06月実刑未決130日算入CDRW104才実子
懲役2年実刑未決020日算入12才連れ子
懲役4年06月実刑未決070日算入11才親族
懲役2年06月執行猶予5年11才交際相手の娘
懲役2年実刑未決020日算入08才連れ子
懲役1年04月実刑未決030日算入08才家族同様
懲役3年執行猶予5年未決050日算入保護観察10才連れ子
懲役5年06月実刑未決050日算入HDD1没収09才連れ子
懲役2年06月執行猶予5年10才養女
懲役4年06月実刑未決080日算入10才弟の孫
懲役2年実刑未決050日算入11才連れ子
懲役2年実刑未決010日算入10才交際相手の妹
懲役3年実刑未決060日算入10才実子
懲役2年06月執行猶予5年12才養女
懲役3年執行猶予5年保護観察09才実子
懲役5年06月実刑未決080日算入08才知人
懲役2年06月執行猶予4年12才内妻の連れ子
懲役3年06月実刑当審9012才親族
懲役2年06月実刑未決120日算入04才親族 孫
懲役1年06月執行猶予4年10才親族
懲役4年06月実刑2012才親族
懲役2年04月実刑未決040日算入11才親族
懲役2年06月実刑未決110日算入12才親族
懲役6年実刑未決070日算入04才親族
懲役2年06月執行猶予5年未決030日算入08才親族
懲役2年実刑未決050日算入10才知人の娘
懲役6年実刑sd111才内妻の子
懲役2年04月実刑未決060日算入05才養女
懲役12年実刑未決200日算入10才養育
懲役3年実刑未決040日算入04才親族
懲役9年実刑未決110日算入12才親族
懲役2年執行猶予4年11才養女
懲役3年実刑未決040日算入04才監護
懲役2年02月実刑未決020日算入12才交際相手の娘
懲役1年06月実刑未決100日算入11才親族
懲役3年06月実刑未決020日算入06才親族
懲役2年実刑未決020日算入06才親族
懲役3年執行猶予5年11才親族
懲役2年執行猶予4年10才知人の娘
懲役3年執行猶予4年保護観察12才親族



http://digital.asahi.com/articles/ASK8C5G7DK8CUTPB00R.html
7歳娘にわいせつ容疑、父親を逮捕 静岡
2017年8月11日17時36分
 7歳の娘にわいせつな行為をしたとして、静岡県警大仁署は11日、父親で県東部に住む店員の男(27)を監護者わいせつの疑いで逮捕し、発表した。容疑を認めているという。

 署によると、男は今月上旬、自宅で小学生の娘に対し、わいせつな行為をした疑いがある。同居している妻が、同署に被害届を出した。

 監護者わいせつ罪は7月13日に施行された改正刑法で新設された。親など生活を支える者がその影響力を利用し、18歳未満の子どもにわいせつ行為をした場合、暴行や脅迫がなくても処罰できる。

 署によると、監護者わいせつ容疑が適用されるのは静岡県内では初めて。


追記2017/09/03
 予想通り強制わいせつ罪(176条後段)の起訴になりました

強制わいせつ罪、27歳父親を起訴 /静岡県
2017.09.01 朝日新聞社
 地検沼津支部は31日、県内に住む男(27)を強制わいせつの罪で静岡地裁沼津支部に起訴し、発表した。男は、7歳の自分の娘にわいせつな行為をしたとして監護者わいせつ容疑で大仁署に逮捕され、送検されていた。監護者わいせつ罪は7月13日に施行された改正刑法で新設された。親など生活を支える者がその影響力を利用し、18歳未満の子どもにわいせつ行為をした場合に、暴行や脅迫がなくても処罰できる。一方で地検支部は、男は娘が13歳未満であることを知っていたとし、13歳未満の者に対してはわいせつ行為をしただけで成立する強制わいせつ罪を適用し、起訴した。

刑法(H29改正後)の性犯罪規定(強制性交等罪・監護者性交等罪・監護者わいせつ罪)

 e-govの修正が遅いので、自分で作っておく。

刑法(H29改正)
第二二章 わいせつ、強制性交等及び重婚の罪
(公然わいせつ)
第一七四条
公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
(わいせつ物頒布等)
第一七五条
1わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
(強制わいせつ)
第一七六条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
(強制性交等)
第一七七条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。一三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
(準強制わいせつ及び準強制性交等)
第一七八条
1人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
(監護者わいせつ及び監護者性交等)
第一七九条
1十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2一八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。
(未遂罪)
第一八○条
第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。
(強制わいせつ等致死傷)
第一八一条第
1百七十六条、第百七卜八条第一項若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
(淫行勧誘)
第一八二条
営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して裁淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第一八三条削除
(重婚)
第一八四条
配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。

「常習として、F(当時17歳)に対し、同人のスカート内の下着等を撮影する目的で、その後方から所携の撮影機能付き携帯電話機を同人のスカートの下に差し入れ、もって公共の場所において、人を著しく羞恥させ、かつ、人に不安を覚えさせるような行為をした。」という迷惑条例違反事件の否認事件の事実認定(仙台地裁H29.6.16)

仙台地方裁判所
平成29年06月16日
 上記の者に対する迷惑行為防止条例違反被告事件について、当裁判所は、検察官矢部良二及び弁護人滝沢圭(国選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、常習として、平成29年月日午後2時12分頃、(住所略)C鉄道株式会社D線E駅2番ホームにおいて、F(当時17歳)に対し、同人のスカート内の下着等を撮影する目的で、その後方から所携の撮影機能付き携帯電話機を同人のスカートの下に差し入れ、もって公共の場所において、人を著しく羞恥させ、かつ、人に不安を覚えさせるような行為をした。
(証拠の標目)
(補足説明)
1 弁護人の主張等
  弁護人は、被告人は、判示の日時頃、判示のE駅2番ホームにおいて、電車待ちのため立っていた際に自己の携帯電話機(以下「黒色スマートフォン」という。)を手に持っていたが、黒色スマートフォンを被害者(証人F。以下「A」という。)のスカートの下に差し入れておらず、下着等を撮影する目的もなかった上、被告人には盗撮行為の常習性もなく、被告人は無罪である旨主張し、被告人もこれに沿う供述をする。
2 前提事実
  証拠によれば、以下の前提事実が認められ、当事者間にも特に争いがない。なお、日付はいずれも平成29年1月20日である。
 (1) 被告人は、午後2時5分頃、E駅の1、2番ホームにおいて、階段近くにあるベンチに座っていた。
 (2) A及びAの友人(証人G。以下「B」という。)は、午後2時6分、駅の階段から1、2番ホームに降りてきて、午後2時7分に2番ホームのエレベーター付近(以下「本件現場」という。)に立ち止まった。AとBは、本件現場において、向かい合った状態で、話をしながら電車を待っていた。
 (3) 被告人は、午後2時7分、ベンチから立ち上がって1、2番ホームを歩いた上、AとBがいる本件現場の方向に歩いて行き、午後2時9分に一旦AとBの前を通り過ぎ、その際、振り向きながらAの顔を見た。被告人は、再び本件現場に戻ってきて、AとBの前を通り過ぎ、Aの背後に立ち止まった。
 (4) 被告人は、午後2時11分、黒色スマートフォンを手に持った状態で、その場を立ち去ろうとし、AとBが被告人をすぐ追いかけた。被告人とAは、午後2時12分、1番ホーム側で揉み合いになった(甲12の写真30)。
3 防犯カメラ映像について
 (1) 本件においては、1、2番ホームを撮影した防犯カメラ映像(甲20、26。以下「本件映像」という。)があり、本件映像には、本件現場の状況は直接映っていないが、2番ホームの線路を挟んだ対面の壁に設置されていた広告看板のスクリーンに、本件現場にいる被告人及びAらの様子が反射して映り込んでいた。
  本件映像について、検察官は、被告人は、午後2時11分35秒(補正後の時刻である。以下同様)から、Aの背後に体を向けながら、小刻みに繰り返し前かがみになった上、午後2時11分39秒以降、大きく前かがみになり、その後、ライトが点いたままの黒色スマートフォンがホーム上に落ち、午後2時11分45秒以降、被告人はその場から立ち去ろうとしたが、AとBが被告人を追いかけたと評価、主張している。
  これに対し、弁護人は、被告人は、午後2時9分21秒から同分56秒までの間、本件現場で直立していたが、同分58秒前後に前かがみになり、2番ホームに付くくらい腕を真っすぐ下に伸ばして、落とした黒色スマートフォンを拾い上げ(弁6の写真〈19〉)、約5秒で再び直立姿勢に戻っており、その後に少し前かがみになる動作や、首を上下に振り、体を左右に振らす動作を行い(ただし、いずれも被告人は腰を落としていない。)、午後2時11分39秒から同分47秒までの間、被告人とAがもめていたと評価し、これを前提に、被告人は、黒色スマートフォンを落とすまでの間は直立したままほとんど動いておらず、Aのスカートの下に黒色スマートフォンを差し入れていないのであって、その後に被告人が少し前かがみになったり、首を上下に振ったりしたのは、Aに腕をつかまれるなどされたためであると主張している。
 (2) このように、双方の主張は、被告人が黒色スマートフォンを落とした時点に関する本件映像の見方が異なり、その評価が大きく対立している。
  この点、本件映像は、飽くまで2番ホームの線路を挟んだ対面の壁に設置されていた広告看板のスクリーンに被告人及びAらの人影が反射した様子を捉えたものであって、被告人及びAらの様子を直接かつ鮮明に映し出したものではないから、本件映像のみをもって確定的に当時の状況を認定するのは相当ではない。
  もっとも、本件映像は、上記の留保付きではあるが、本件現場における当時の状況を認定する上で重要な手掛かりになると考えられるし、他の証拠とも相まって、相応の証拠価値を有するものと解される。
 (3) このような前提で本件映像をみると、弁護人が主張する午後2時9分58秒(本件映像の表示時刻は午後2時10分32秒)前後の映像は、確かに被告人の姿勢がやや左側に前かがみになり、頭の位置を下げながら、腕を下方向に伸ばすような体勢をとったように見えるものの、ホームに落とした物を拾ったにしては、体を起こすタイミングがかなり早いように思われ、物を拾い上げるほどに被告人の体勢が十分下がっていたようには見えにくい。一方で、検察官が主張する午後2時11分39秒(本件映像の表示時刻は午後2時12分13秒)以降の映像は、それまで被告人の頭部が小刻みに何度も動き、やや前かがみになるなどしていたところ、急に光が回るように流れた後に、光が丸くなって消え、その直後に被告人の体勢がぐっと下がって、何かを拾い上げるような動作をしながらそのまま階段方向に速足で歩き出し、その後方をAがすぐに追いかける様子が映っているように見える。
  そうすると、本件映像のみから確定的とまではいえないものの、被告人が黒色スマートフォンを落としたタイミングは、検察官が主張する午後2時11分39秒以降とみるのが自然と考えられる。
 (4) 以上の検討を踏まえ、A供述及び被告人供述の信用性について、それぞれ検討する。
4 A供述の信用性
 (1) Aは、公判において、概要、次のとおり供述する。
  Aは、本件現場において、電車を待ちながらBと向かい合って話をしたり、自己のスマートフォンを操作したりしていた。
  すると、Aは、左足の膝裏辺りに人肌が近付くような温かさを感じた上、スカートの後ろがゆさゆさと動く感じがしたので、後ろを振り返ると、被告人が腰を落として前かがみになり、左手に黒色スマートフォンを持った状態で、スカートの裾の下付近に向けて手を伸ばしていた。黒色スマートフォンは、液晶画面ではない裏面が上を向き、ライトが点いていた。
  そこで、Aが振り向いて「すいません。」と声を掛けたところ、被告人は、後ずさりして黒色スマートフォンを一旦ホームに落とし、すぐに左手で拾い上げながら、ホームの階段方向に足早に移動したので、Aは被告人の右腕をつかんで追いかけた。
 (2) 上記のAの供述内容は、取り分け、本件映像の午後2時11分39秒以降の内容とよく整合している。すなわち、本件映像では、被告人がAの近くで小刻みに何度も動き、やや前かがみになるなどした後に、急に光が流れて光が丸くなって消え、その直後に被告人の体勢がぐっと下がり、何かを拾い上げるような動作をしながらそのまま階段方向に歩き出し、すぐにAが被告人を追いかける姿が映っているように見え、Aの上記供述は、本件映像の内容に沿うものである。また、Aの上記供述を前提とすると、本件映像の様子も合理的に説明が付くのであって、Aの供述は、被告人及びAらの当時の様子を直接かつ鮮明に映したわけではない本件映像についての評価を支えるものといえる。そうすると、Aの上記供述は、本件映像と相まって、相互に信用性を支え合い、当時の状況を認定する証拠になると考えられる。
  また、Aの供述の信用性を更に検討すると、Aの上記供述は、Bの供述とも核心部分で符合している。すなわち、Bは、公判において、被告人がAのすぐ後ろに立っていたため、怪しいと思ったこと、Aの両膝下の間から明るい光が見え、その直後にAが後ろを振り返り、被告人に「すいません。」と声を掛けたこと、その際、被告人は前かがみの状態で手を前に伸ばしていたが、Aに声を掛けられて黒色スマートフォンを落としたことなどを供述しており、このBの供述はAの供述内容と一致している。よって、Aの供述は、Bの供述とも整合し、その信用性を補完していると考えられる。
  さらに、黒色スマートフォンは、動画撮影モードにしてLEDライトの設定をオンにするとライトが点灯したままの状態になるところ、黒色スマートフォンのライトが点いていたという点は、こうした作動状況を前提とすれば、合理的な説明が可能である。加えて、Aは、敢えて虚偽の供述をする理由はなく、当時の状況を勘違いしている様子も見受けられない上、当時の心情等も含めて、一連の流れを具体的に供述している。
  以上によれば、Aの上記供述は、十分に信用できる。
 (3) これに対し、弁護人は、〈1〉Aの供述は、本件映像の内容と矛盾すること、〈2〉黒色スマートフォンや被告人のマイクロSDカードにAのスカート内を撮影した動画ファイルが残っていないこと(甲17、21)ともAの供述は整合しないこと、〈3〉Bの供述は、重要な事項で供述内容が変遷しており信用できず、これと同様の供述をするAの供述にも疑問が生じることなどを指摘し、以上から、Aの供述は信用できない旨主張する。
  しかし、〈1〉については、上記(2)のとおり、Aの供述内容は、本件映像について、午後2時11分39秒以降に被告人が黒色スマートフォンを落としたと捉えると、本件映像とよく整合しており、むしろAの供述内容は、本件映像と相まって、その信用性が支えられていると認められる。〈2〉については、A及びBの供述によれば、被告人は、AとBから追いかけられていた際に、黒色スマートフォンの画面を頻繁に操作するなどしており、この供述を前提とすると、そのときに動画ファイルが消去されたと考えられ、動画ファイルが存在しないことがA及びBの供述の信用性を減殺する事情とは解されない(弁護人は、被告人のマイクロSDカードから他の動画が復元されたのに、Aのスカート内を撮影した動画が復元されていない旨も指摘するが、復元されなかったことから直ちにそのような動画がなかったとはいえない。)。〈3〉については、確かに、Bは、捜査段階において、Aの両膝下の間から光を見たときに、写真撮影時のシャッター音のような音を聞いた旨述べており、公判供述とは異なる供述をしている。この点、Bは、もともとシャッター音については記憶が曖昧であるとしつつ、被告人が黒色スマートフォンを落とした際に「ガシャッ」という音がしたことと、「カシャ」というシャッター音を混同したと思う旨供述するが、通常、両者の音を混同することは考えにくいと思われる。もっとも、Bは、本件当時、Aの両膝下の間からスマートフォンのライトが光るのを一瞬見て、Aが被告人からスカート内を盗撮されたと考えていたのであって、そのように当時の事態を受け止めていたBが、記憶が曖昧ながらも、その際にシャッターが押されてシャッター音がしたと思い込んだとしても、特段不自然とまではいい難いと解される。よって、この点の供述の変遷が、Bの供述全体の信用性に疑念を抱かせるとはいえない。
5 被告人の供述の信用性
 (1) 被告人は、公判において、概要、次のとおり供述する。
  被告人は、駅ホームのベンチで座った後、H駅方面がどちら側のホームかを知ろうとして、1、2番ホームを歩いた。すると、本件現場にいるAを見付け、自分の好みの女の子かもしれないと思い、Aのそばを通り過ぎながらAの顔を見たが、余り好みのタイプではなかった。
  その後、被告人は、本件現場に戻ってAのすぐ後ろに立ち、バイトのシフトに関するメールをしようと思い立ち、黒色スマートフォンを持った左手をホームの床方向に真っすぐ下げた状態で、メールの文面を考えていたところ、Aがいきなり被告人の方を振り向いて、被告人の左腕をつかんできたため、被告人は黒色スマートフォンを落とした。
 (2) しかし、上記の被告人の供述内容は、本件映像の午後2時11分39秒以降に、被告人の手元付近から光が流れた後に光が丸くなって消えたことや、その直後に被告人の体勢がぐっと下がり、何かを拾い上げるような動作をしながら階段方向に歩き出したことなどを合理的に説明していない。また、被告人は、AとBの前を通り過ぎた際に、Aが自分の好みの女の子かどうかを確認しようとしてAの顔を見たが、自分の好みの女の子ではないと判断し、盗撮するつもりもなかったというのに、わざわざ再び本件現場の方に戻って来て、Aのすぐ背後に立っていたというのも不自然である。
 (3) 以上によれば、被告人が一貫して事実を否認しているなどの弁護人の主張を踏まえても、被告人の上記供述は信用し難い。
6 結論
  以上によれば、被告人は、黒色スマートフォンをAのスカートの下に差し入れた事実(写真機等を向けた行為と評価できる。)が認められる。また、そのような行為態様等からすると、当時、被告人がAの下着等を盗撮する目的を有していたことも認められる。
  さらに、被告人が本件と同種の盗撮事犯4件を含む前科2犯を有することを考慮すれば、弁護人の主張を踏まえても、被告人には盗撮行為の常習性が認められることは明らかである。
  よって、判示の犯罪事実が優に認定でき、弁護人の上記主張は採用できない。
(累犯前科)
(法令の適用)
1 罰条 迷惑行為防止条例(昭和42年宮城県条例第29号)17条2項・1項1号、3条の2第1項3号
2 刑種の選択 懲役刑を選択
3 累犯加重 刑法59条、56条1項、57条(3犯の加重)
4 訴訟費用 刑訴法181条1項ただし書(不負担)
(量刑の理由)
第2刑事部
 (裁判官 内田曉)

監護者性交等罪につき「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてと言えない場合」法務省大臣官房審議官加藤俊治「性犯罪に対処するための刑法改正の概要」ひろばH29.8

 監護者性交等罪が成立しない場合として「18歳未満の者においてわいせつ行為又は性交等の相手方を監護者であると認識できていないときや、18歳未満の者が暴行又は脅迫を用いて監護者に迫った結果としてわいせつ行為又は性交等が行われたときなど、そのわいせつ行為又は性交等が監護者の意思に反するものであるときには、監護者であることによる影響力があることに乗じたものとはいえない場合も考えられよう。」とされています。
 「乗じて」が争われる場合も出てくると思います。
 「被監護者である18歳未満の者を現に監護している者は、通常、当該18歳未満の者に対し、このような影響力を及ぼしている状態にあるといえるので、通常、「現に監護する者」であることが立証されれば、当該わいせつ行為又は性交等の行為時においても、「現に監護する者であることによる影響力」を及ぼしていたこと、すなわち、「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」いたことが認定できることとなる。したがって、「乗じて」といえるために、性的行為に及ぶ特定の場面において、影響力を利用するための具体的行為を認定する必要はないと考えられる。」というのは、「影響力があることに乗じて」という文言を無視して、監護者がやれば成立するという身分犯的な理解です。

法務省大臣官房審議官加藤俊治「性犯罪に対処するための刑法改正の概要」ひろばH29.8
4監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設すること
(1)本法においては、18歳未満の者を現に監護する者がその影響力があることに乗じてわいせつな行為又は性交等をした場合について罰則を新設し(刑法179条、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪)、強制わいせつ罪又は強制性交等罪と同様に処罰することとしている。
実親、養親等の監護者が略歳未満の者に対してわいせつな行為や性交等を継続的に繰り返し、監護者と18歳未満の者との性的行為が常態化している事案等においては、日時、場所等が特定できる性的行為の場面だけを見ると、暴行、脅迫が認められず、また、抗拒不能にも当たらないため、刑法上の性犯罪として訴追することが困難なものが存在していた。
しかし、18歳未満の者は、一般に、精神的に未熟である上、生活全般にわたって自己を監督し保護している監護者に経済的にも精神的にも依存しているところ、監護者が、そのような依存・被依存ないし保護・被保護の関係により生ずる監護者であることによる影響力があることに乗じて肥歳未満の者とわいせつな行為や性交等をすることは、強制わいせつ罪や強制性交等罪などと同様に、これらの者の性的自由ないし性的自己決定権を侵すものであるといえる。
このような事案の実態に即した対処を可能とするため、刑法176条から178条までの罪とは別に、18歳未満の者を現に監護する者がその影響力があることに乗じてわいせつな行為又は性交等をした場合について罰則を新設することとされたものである。
(2)刑法179条の「監護する」とは、民法820条に親権の効力として定められているところと同様、監督し、保護することをいい、「18歳未満の者を現に監護する者」とは、18歳未満の者を現に監督し、保護している者をいう。
「現に監護する者」に当たるためには、法律上の監護権の有無を問わないが、現にその者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点のほか、生活上の指導監督などの精神的な観点も含めて、依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められることが必要であると考えられる。
「現に監護する者であることによる影響力」とは、現にその者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点のほか、生活上の指導監督などの精神的な観点も含めて、被監護者を監督し、保護することにより生ずる影響力をいう。
したがって、「現に監護する者であることによる影響力」には、ある特定のわいせつ行為や性交等を行おうとする場面における、その諾否等の意思決定に直接影響を与えるものに限られず、被監護者が性的行為等に関する意思決定を行う前提となる人格、倫理観、価値観等の形成過程を含め、一般的かつ継続的に被監護者の意思決定に作用を及ぼし得る力が含まれるものである。
「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」とは、18歳未満の者に対する「現に監護する者であることによる影響力」が一般的に存在し、当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で、わいせつ行為又は性交等をすることをいう。
その上で、被監護者である18歳未満の者を現に監護している者は、通常、当該18歳未満の者に対し、このような影響力を及ぼしている状態にあるといえるので、通常、「現に監護する者」であることが立証されれば、当該わいせつ行為又は性交等の行為時においても、「現に監護する者であることによる影響力」を及ぼしていたこと、すなわち、「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」いたことが認定できることとなる。
したがって、「乗じて」といえるために、性的行為に及ぶ特定の場面において、影響力を利用するための具体的行為を認定する必要はないと考えられる。
もっとも、18歳未満の者においてわいせつ行為又は性交等の相手方を監護者であると認識できていないときや、18歳未満の者が暴行又は脅迫を用いて監護者に迫った結果としてわいせつ行為又は性交等が行われたときなど、そのわいせつ行為又は性交等が監護者の意思に反するものであるときには、監護者であることによる影響力があることに乗じたものとはいえない場合も考えられよう。
また、本罪の趣旨に照らし、本罪の成否を論ずるに当たり18歳未満の者の同意の有無は問題とならず、18歳未満の者がわいせつ行為又は性交等に同意していたと見られるような事情があるとしても、本罪の成立は妨げられないと考えられる。
(3)監護者わいせつ罪及び監護者性交等む罪の法定刑については、それぞれ、刑法176条及び177条の「例による」とされていることから、強制わいせつ罪及び強制性交等罪と同じになる。
また、死傷の結果を生じた場合には、同法181条が適用される。
(4)本罪と他罪との罪数関係については、法制審議会あるいは国会における審議の過程において必ずしも詳細な議論がなされていないところであるが、私見においては、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪は、準強制わいせつ罪及び準強制性交等罪が存在することを前提に、既存の罰則では処罰できない事案に対応するために設けられたものであるから、準強制わいせつ罪又は準強制性交等罪が成立する場合には、重ねて監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪は成立しない(いわゆる補充関係にある)ものと考えている。
また、監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪に当たる行為が、同時に、児童福祉法上の児童に淫行をさせる罪(同法帥条1項、弘条1項6号)にも該当する場合には、両罪の保護法益が異なることなどに照らし、観念的競合となるものと考えているの

師弟関係の児童淫行罪の行為否認事例(広島地裁H29.4.13)

 製造罪については「本件各静止画はAに見せた後すぐに削除するつもりであり,実際にも2月末日までに削除しているから,「製造」には当たらない」「弁護人は,被告人が本件各静止画を撮影したのは,本件各静止画をAとのコミュニケーションに利用しようとしたものにすぎず,すぐに削除するつもりであったし,実際にも短期間で削除したから,児童に対する性的搾取や性的虐待につながることはあり得ず,可罰的違法性がない」という主張が排斥されています。
 児童淫行罪については、画像+被害児童の供述で固められています。

広島地裁平成29年 4月13日 
事件名 児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
 上記の者に対する児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官岩本直人,私選弁護人佐々木和宏(主任)及び同我妻正規各出席の上審理し,次のとおり判決する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,a高校の教頭として勤務し,同校の生徒であるA(各犯行当時16歳)から相談を受けるなどしていたものであるが,同児童が満18歳に満たない児童であることを知りながら
 第1 平成28年2月13日午前4時12分頃,広島県呉市〈以下省略〉ホテル「b」107号室において,ひそかに,就寝中のAの胸部及び陰部等が露出した姿態を自己の使用するタブレット型端末機のカメラ機能で静止画として撮影し,その静止画データ1点を同タブレット型端末機本体の内蔵記録装置又は同タブレット型端末機に装着されたマイクロSDカードに記録させて保存し,もってひそかに衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
 第2 同月21日午前7時14分頃,同市〈以下省略〉「cホテル」117号室において,ひそかに,就寝中のAの胸部が露出した姿態を自己の使用するタブレット型端末機のカメラ機能で静止画として撮影し,その静止画データ1点を同タブレット型端末機本体の内蔵記録装置又は同タブレット型端末機に装着されたマイクロSDカードに記録させて保存し,もってひそかに衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
 第3 同日午前1時10分頃から同日午前10時19分頃までの間,前記「cホテル」117号室において,Aに,被告人を相手に性交させ,もって児童に淫行をさせる行為をした。
 (証拠の標目)
第1 争点
 判示第1の犯行について,被告人は,判示第1の日時場所において,就寝中のAの胸部及び陰部等が露出した姿態を自己の使用するタブレット型端末機のカメラ機能で静止画として撮影し,その静止画データ1点を記録して保存したという外形的事実は認めており,弁護人もこれを争っていない。
 また,判示第2及び第3の各犯行について,被告人は,平成28年(以下,月日は特に断らない限り平成28年のことを指す。)2月21日午前1時10分頃から同日午前10時19分頃までの間,Aとともに前記「cホテル」117号室に滞在しており,その間の同日午前7時14分頃,同所において,就寝中のAの胸部が露出した姿態を自己の使用するタブレット型端末機のカメラ機能で静止画として撮影し,その静止画データ1点を記録して保存したという外形的事実は認めており,弁護人もこれを争っていない。
 もっとも,被告人は,判示第3の犯行について,Aとの性交はなかったと供述し,弁護人は,判示第3の犯行について被告人の供述に沿う主張をするほか,判示第1及び第2の各犯行について,当該各静止画データ(以下これらを合わせて「本件各静止画」という。)はいずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」ともいう。)2条3項3号の「児童ポルノ」に該当せず,仮に該当するとしても「製造」(児童ポルノ法7条5項)したものとはいえず,仮に「製造」したものだとしても,可罰的違法性がないと主張し,いずれの犯行についても被告人は無罪であると主張する。
第2 前提となる事実
 関係証拠によれば以下のような事実経過等を認めることができ,これらについては被告人も特段争っていない。
 1 Aは,平成27年4月,被告人が教頭として勤務するa高校定時制に入学した。(A及び被告人の各公判供述)
 2 Aは,a高校において,授業にきちんと出席することなく,職員室で過ごしたり,校外に遊びに出たりしており,被告人や他の教員から繰り返し注意を受けていた。そのような中,Aは,自身が抱える人間関係のトラブル等について相談にのってくれた被告人に好意を抱くようになり,学校内での言動や被告人に宛てた手紙の中で好意を示していたほか,同年12月10日午前1時過ぎ頃にa高校に電話を掛けて自殺をほのめかした際に,被告人から携帯電話の番号を教わって以降は,深夜早朝を問わず被告人に繰り返し電話を掛けるなどして,電話口で長時間話をしたり,直接話をするために被告人に車で迎えに来てもらったりするようになった。また,被告人は,Aとa高校の外で会うようになってから,Aと2人で外食やカラオケに行ったり,Aに対して化粧品や服を買い与えたりしており,Aが入院した際には,Aに携帯音楽プレーヤーを買い与えた。(A及び被告人の各公判供述,弁1ないし4)
 3 被告人とAは,1月10日から2月21日にかけて,被告人の運転する車で,判示第2及び第3のホテル(以下「cホテル」という。)に5回,判示第1のホテル(以下「bホテル」という。)に1回行き,それぞれ次の(1)ないし(6)のとおり滞在した。(甲9ないし11,18,19)
  (1) 1月10日午前4時40分から同日午後5時49分までの間,cホテル121号室に滞在
  (2) 1月16日午前2時55分から同日午後5時20分までの間,cホテル121号室に滞在
  (3) 2月6日午後9時16分から翌7日午前7時19分までの間,cホテル117号室に滞在
  (4) 2月12日午後11時54分から翌13日午前7時32分までの間,bホテル107号室に滞在
  (5) 2月13日午後9時39分から翌14日午前9時59分までの間,cホテル117号室に滞在
  (6) 2月21日午前1時10分から同日午前10時19分までの間,cホテル117号室に滞在
 また,被告人とAは,1月30日午前1時過ぎ頃から翌31日にかけて,被告人の運転する車で山口県内に出かけた際,同月30日早朝から昼前までの間,同県内のホテル「d」に滞在し,同日深夜から翌31日にかけて,同県内のビジネスホテルに滞在した。(A及び被告人の各公判供述)
 なお,Aは,1月22日から3月19日までの間,過呼吸等の発作を改善するなどの目的で,精神科の病院に入院しており,前記(3)ないし(6)及び山口県内での滞在は,いずれも病院から外出した際のことであった。(弁5,6)
 4 cホテル,bホテル及びホテル「d」はいずれも,いわゆるラブホテルであって,部屋にベッドが1つしかなく,被告人とAは同じベッドで一緒に寝ていた。また,bホテルの部屋には,ローターやローション等の性玩具を販売する自動販売機が備え付けられており,被告人は,前記3(4)の滞在中,同自動販売機で1000円のローションを購入した。(被告人の公判供述,甲7,19,20)
 さらに,被告人とAは,山口県内のビジネスホテルでも,被告人が予約していた,ベッドが1つしかない1つの部屋に共に滞在し,同じベッドで一緒に寝ていた。(被告人の公判供述)
 5 被告人は,前記3(3)の滞在の際,自己の使用するタブレット型端末機のカメラ機能で,Aの露出した乳房と指で左右に広げた状態の陰部の静止画等を撮影し,その後,前記3(4)の滞在の際に判示第1の静止画を,前記3(6)の滞在の際に判示第2の静止画を,それぞれ撮影した。(被告人の公判供述,甲12の同意部分,13ないし16)
 判示第1の静止画は,Aが,下着を身に着けず,ホテルに備え付けのガウンに袖だけを通したほぼ全裸の状態で,ベッドに仰向けになって寝ており,両乳房を露出させ,少し開いた両脚の間に陰部も露出させている姿を,Aの下半身側から上半身側に向けた角度で,膝の上から頭まで写るように撮影したものであり,静止画の中央に露出した陰部が位置している。
 判示第2の静止画は,Aが,ホテルに備え付けのガウンに袖を通しており,腹部には布団が掛けられているが,ガウンの胸部が開かれて両乳房が露出した状態で,仰向けからやや左側に上半身を傾けて寝ている姿を,Aの体のほぼ正面から,上半身のみ写るように撮影したものであり,静止画の中央のやや左寄りに露出した両乳房が位置している。
 6 cホテルは,Aの自宅がある地域よりも南東に,bホテルは,cホテルよりも更に東にあり,いずれも市街地から離れたところにある。また,広島市内から各ホテルに行くには,Aの自宅がある地域を通り過ぎて行くことになる。(A及び被告人の各公判供述)
 7 Aは,2月中旬頃,被告人との電話での会話の中で,被告人に対し,子どもが欲しい,今度はゴム着けんでねなどと言っており,これを偶々近くで聞いたAの母は,Aと被告人との関係を心配して,探偵にAと被告人の素行調査を依頼した。その調査の結果,被告人とAが,2月20日の夜から翌21日にかけて,広島市内に行って食事,買い物及びカラオケを済ませた後,前記3(6)のとおりcホテルに行って滞在したことが判明した。(A及びAの母の各公判供述,甲11)
 8 Aの母は,前記調査結果を踏まえて,被告人のことを警察に相談するとともに,3月4日,Aの担当医師に対し,前記調査結果及びそれまでの経緯を伝えて,Aと被告人を接触させないよう依頼した。(Aの母の公判供述,弁5)
 3月5日,同医師がAの母からの話をAに伝えたところ,Aは,被告人とはホテルに入ったが寝てはいない,ホテルに行こうと言ったのはAである,妊娠するような行為はしていないなどと言った。しかし,Aの母が同日Aに問い質したところ,Aは,2月21日にcホテルで被告人と性交したことなどを話した。(A及びAの母の各公判供述,弁5)
第3 判示第1及び第2の各事実について
 1 弁護人は,本件各静止画は,児童の性的な部位が殊更に露出され又は強調されているものではないと主張する。しかし,本件各静止画の内容は前記第2の5のとおりであって,Aの露出した陰部や乳房が目立つように意図的に撮影したとしか思えない内容となっており,殊更に児童の性的な部位が露出され,強調もされているものであることは明らかである。したがって,弁護人の同主張は失当であり,本件各静止画は児童ポルノ法2条3項3号の「児童ポルノ」に該当する。
 2 また,弁護人は,本件各静止画はAに見せた後すぐに削除するつもりであり,実際にも2月末日までに削除しているから,「製造」には当たらないと主張する。しかし,被告人が,判示第1及び第2の各日時に,本件各静止画を撮影し,そのデータを記録して保存した行為は,まさに児童ポルノ法7条5項の「製造」に該当し,後に削除する意思の存在及び事後的な削除の事実の存在は「製造」の有無を左右しないから,弁護人の同主張も失当である。
 3 さらに,弁護人は,被告人が本件各静止画を撮影したのは,本件各静止画をAとのコミュニケーションに利用しようとしたものにすぎず,すぐに削除するつもりであったし,実際にも短期間で削除したから,児童に対する性的搾取や性的虐待につながることはあり得ず,可罰的違法性がないと主張する。しかし,前記第2の5のような内容の児童ポルノを製造すること自体,児童の尊厳を害する行為であって,児童ポルノ法7条5項,2項,2条3項3号に該当するのはもちろん,可罰的違法性があることも明らかであるから,弁護人の同主張も失当である。
 4 以上に見たとおり,被告人が本件各静止画を撮影し,これらのデータを記録して保存した行為は,いずれも児童ポルノ法7条5項,2項,2条3項3号に該当し,本件各静止画を撮影した動機に関する弁護人の前記主張について検討するまでもなく,被告人は判示第1及び第2の各事実について有罪である。
 5(1) もっとも,被告人が本件各静止画を撮影した動機については,量刑を定める上で重要な情状事実となるため,この点についても検討すると,そもそも,本件各静止画は,既に見たとおり,Aの露出した陰部や乳房が目立つように意図的に撮影したとしか思えない内容のものであって,このような静止画を撮影したこと自体から,被告人が,自己の性欲を興奮させる意図を有していたことが強く推認され,そのような意図がなかったという合理的な疑いを差し挟むことは相当に困難である。
  (2) 加えて,本件各静止画が撮影された状況について見ると,本件各静止画はいずれも,被告人とAが,ラブホテルという,性交が行われることが通常予定されている場所での滞在中に撮影されたものであり,判示第1のbホテルでの滞在中には,被告人は,ローターなどの性玩具を販売する自動販売機を目にした上でローションの購入までしている。また,判示第2のcホテルには,広島市内から,Aの自宅のある地域を通り過ぎてわざわざ来たものであるし,Aの自宅から更に遠方にある判示第1のbホテルに至っては,被告人によれば,cホテルが満室であったため代わりに利用したというのであって,滞在先をラブホテルとすることへのこだわりが見られる。これらの事実からすれば,本件各静止画の撮影時,被告人において,Aを自己の性欲を満たすための相手として意識しないはずがない状況にあったと認められるし,被告人が積極的に自らをそのような状況に置いたことも認められるから,これらの事実によって前記(1)の推認は補強される。
  (3) また,本件各静止画の撮影に至る経緯を更に遡って見ると,被告人は,前記第2の2のとおり,Aが,被告人に対して,好意を示すのみならず,繰り返し電話を掛けて対応を求めるなど依存を強めている状態にあることを知りながら,教師としてAとの間に適切な距離を保つのではなく,かえって,相当の時間と金銭を費やして,Aと一緒に外食等に行ったり,Aに化粧品や服等を買い与えたりするなど,恋人のような特別扱いをするという,Aの依存を助長する不健全な行動に及び,更には,1月10日以降Aと複数回ラブホテルに行き,ビジネスホテルを使う際にもベッドが1つしかない1つの部屋を予約して宿泊するなどという,当時16歳の女子高校生に対する健全な教育的指導としてあり得ない行動をとっている。このような被告人の行動からすれば,被告人が当時,長年の教師生活の中で培ってきたはずの分別を働かせることができないほど,Aとの関係にのめり込んでいたことが明らかであり,本来教師として生徒に抱くべきでない性的関心をAに抱いていたとしても不自然ではなく,ラブホテル等の利用に至っては,むしろ性的関心を抱いていなかったと見る方が困難である。したがって,被告人のこのような行動によっても前記(1)の推認は補強される。
  (4) これに対して,被告人は,前記第2の3(3)の滞在の際,Aから,自分の見えないところや寝相を見たいので写真を撮ってほしいと言われており,本件各静止画もAに見せて会話の材料にするために撮影したものであって,性的な意図はなかった旨供述し,弁護人もこれに沿う主張をする。しかし,被告人の同供述は,既に見たとおりの本件各静止画の内容,撮影状況及び撮影に至る経緯に照らして不合理極まりなく,前記(2)及び(3)で見た事情により補強される前記(1)の推認を妨げるような証拠価値を有しない。
 以上によれば,被告人は,自己の性欲を興奮させる意図で本件各静止画を撮影したものと認められる。
第4 判示第3の事実について
 1 既に見たとおり,被告人は,2月21日午前1時10分頃,ラブホテルであるcホテルにAと行って,約9時間滞在し,その滞在中である同日午前7時14分頃に,自己の性欲を興奮させる意図で判示第2の静止画を撮影しており,同静止画によれば,Aが,その頃までに,もともと着用していた衣服を脱いでおり,被告人の面前で両乳房を露出させることに抵抗がない状態にあったことが認められる。
 2 前記1の事実だけからしても,被告人が,判示第3のcホテルでの滞在時に,Aと性交していたと推認するのが自然であるといえるが,加えて,既に見たとおり,判示第3の滞在に至るまでの経緯として,Aが被告人に対する好意と依存を示していたのに対して,被告人もAとの関係にのめり込み,繰り返しAとラブホテルに行くなどして1つのベッドを共に使う中で,Aの露出した乳房や陰部の静止画を撮影したり,性玩具の自動販売機を目にしてこれを利用したりするという,性欲の興奮に向けられた行動をとっていたという事実があり,2月中旬頃には,Aが被告人に対して,子どもが欲しい,今度はゴム着けんでねなどという,被告人との性交があることを前提とする内容の発言をしていたという事実もある。これらの事実を前記1の事実と併せて見ると,被告人が性的に不能であったために性交したくてもできなかったというような特段の事情がない限り,被告人とAが繰り返しラブホテルに行く中での1回である判示第3の滞在の際に,被告人とAとの間で性交があったと強く推認されるというべきである。判示第3の滞在の際に被告人と性交した旨のAの供述は,この推認に合致するものであり,それだけでも同供述の信用性の高さが担保されている。また,判示第3の滞在の後である3月5日のAの行動について見ても,Aは,当初被告人をかばう発言をしていたものの,その後母に判示第3の性交の事実を話すに至っており,この事実も判示第3の性交があったことと整合する。
 3 弁護人は,①ラブホテル内での行動に関するAの供述が具体性を欠く,②Aの記憶が薄弱である,③Aの供述は,被告人とAが最初にcホテルに行ったのが1月10日であるにもかかわらず,平成27年12月にもcホテルに行った旨述べるなど,客観的証拠と矛盾し,内容自体にも不合理な点がある,④恐れている大人に迎合する性格のAが,3月5日に母から長時間問い詰められた結果,被告人との性交を認める作り話をせざるを得なくなり,引き返せなくなっていると考えられるといった理由から,Aの供述は信用できない旨主張する。
 確かに,Aの供述には,記憶があいまいである若しくは欠落している旨述べている部分が多くあり,ラブホテル内での具体的な行動についての詳細は語れておらず,本件各犯行よりも前の経緯及び被告人に対する当時の心情に関しては,cホテルの利用履歴やAが被告人宛てに書いた手紙の内容に整合しない供述となっている。また,証拠(A及びAの母の各公判供述等)によれば,Aは,本件各犯行当時解離性障害にり患して,精神的に不安定な状態にあったが,3月5日に被告人との性交について母に話した後は,母との関係が改善し,被告人に対する依存が解消されたことが認められるのであり,現時点において,未だ若年であるAが,被告人に依存していた頃の自身の不安定な心情や当時の行動の詳細といった,自身にとって嫌な思い出に当たると思われる事実について,冷静に振り返った上で時系列を整理して正確に供述することがどの程度できるのか疑問がある。そのため,本件各犯行よりも前の経緯及び被告人に対する当時の心情に関しては,Aの供述を全面的には信用することができない。しかし,判示第3の滞在の際に被告人と性交したという,Aの供述の核心部分については,既に見たとおり,性交の事実を強く推認させる他の証拠によって裏付けられており,弁護人の前記各主張によっても,このような核心部分の信用性は動揺しない。その他,弁護人が,Aの供述の信用性に関して弁論で主張するいずれの内容も,Aの供述の核心部分の信用性を動揺させるものではない。
 4 被告人は,Aと繰り返しラブホテルに行っていたのは,人目につかないところでAの精神を安定させて話をするか仮眠を取るかするためであり,Aに対する性欲はなく,疲れていて体力もなかったので,Aと性交したことは一度もない旨供述する。
 しかし,教師である被告人が,話をしたり仮眠を取ったりするだけの目的で,女子高校生に対する教育上明らかに不適切な場所であるラブホテルに,一度ならず何度も行くというのは不自然極まりないし,既に認定したとおり,被告人は,判示第3のcホテルでの滞在の際,自己の性欲を興奮させる意図で判示第2の静止画を撮影しており,Aに対する性欲があったことが明らかである。加えて,判示第3の日にcホテルに行く直前までの被告人とAの行動及びその際の被告人の様子について,興信所作成の調査報告書(甲11に添付のもの)を見ても,被告人が,短時間の性交すらできないほど疲弊している様子はうかがわれない。以上によれば,Aと性交していないこと及びその理由についての被告人の供述は信用できず,判示第3の滞在の際に被告人と性交した旨のAの供述の信用性を動揺させるような証拠価値を有しない。
 5 そして,本件全証拠を見ても,被告人が性的に不能であったことを疑わせる事実はなく,Aに対する性欲があってラブホテルにまで行っていながら,判示第3の日に限ってAと性交できなかった特別の事情が存在したことを疑わせる事実も見当たらない。
 6 以上によれば,Aの供述及びその核心部分の信用性を支える他の証拠によって,判示第3の滞在の際に被告人がAと性交した事実が認められる。
 なお,Aは,被告人と性交したくなかった旨述べるが,既に見たとおり,被告人に対する当時の心情に関しては,Aの供述を全面的には信用できないのであり,Aが被告人宛てに書いていた手紙の内容や,前記第2の7のとおり,Aが被告人に対して,子どもが欲しい,今度はゴム着けんでねなどと言っていたことに照らすと,判示第3の性交の当時,Aにおいても被告人との性交を望んでいた可能性は排斥できない。しかし,他方で被告人は,妻子がありながらAと性交し,その事実を妻子やAの母などの周囲の者に一切明らかにせず,ラブホテルでの滞在履歴や本件各静止画等の証拠を目の当たりにしてもなお,不自然不合理な弁解を続けて,性交の事実のみならずAに対する性欲があったことすら頑なに否認しており,このような被告人においては,Aを真剣な交際の相手としてではなく,単に自己の性欲を満足させるための対象として扱っていたと見るほかない。その上,被告人はa高校の教頭として,同校の生徒であるAを指導する立場にあり,被告人及びAの供述によれば,被告人は,Aとその母から信頼を寄せられる中で,Aの複雑な生育環境や,Aの母が生活保護費を受給しながら自動車を運転していることなど,公にされると困るとAが思うような個人情報も掌握し,Aもそういった情報が掌握されていることを知っており,そのような状況の中で,被告人とAは,被告人が運転する車でラブホテルに行き,判示第3の性交に及んだことが認められる。このような事実関係の下では,被告人は,単にAの淫行の相手方となったにとどまらず,Aに対して事実上の影響力を及ぼして,Aが淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められ,被告人の行為は,児童福祉法34条1項6号の「児童に淫行をさせる行為」に当たる。
 (法令の適用)
 ・罰条
 判示第1及び第2の各所為
 いずれも,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項,2項,2条3項3号
 判示第3の所為 児童福祉法60条1項,34条1項6号
 ・刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
 ・併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条
 (最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重)
 ・未決勾留日数の算入 刑法21条
 ・刑の執行猶予 刑法25条1項
 (量刑の理由)
 (求刑 懲役2年6月)
 平成29年4月21日
 広島地方裁判所刑事第1部
 (裁判官 武林仁美)

客観的に性的自由を侵害する行為は、強制わいせつ罪になるのか?(自己の特異な性的欲求を満足させるため,その口腔内に中指を押し込んで同人に嘔吐させる行為 青森地裁H18.3.16)

 嘔吐させて性欲みたすための誘拐はわいせつ誘拐としながら、嘔吐させる行為とは併合罪としている点がおかしい。牽連犯ですよね。

青森地方裁判所平成18年3月16日
(罪となるべき事実)
被告人は
第1 女子高校生にわいせつの行為をする目的で,就職先の面接をすると偽って同女らを誘拐しようと企て,青森市a番地b青森県立甲高等学校に勤務する教諭Aに対し,真実は自己が株式会社乙に勤務しておらず,同社の新卒者採用面接及び研修の担当者でもないのに,自己が同社の新卒者採用面接及び研修の担当者であって,同校の就職希望者の紹介を求めるかのように装ってその旨上記教諭を誤信させた上
1 平成17年11月5日午前10時ころ,前記青森県立甲高等学校において,前記教諭の紹介により被告人を株式会社乙の採用面接及び研修の担当者であると誤信したB(当時18歳)に対し,「助手席に乗って」などと申し向け,あたかも移動先において同社の面接が行われるかのように振る舞い,その旨同人を誤信させ,同人を被告人運転の軽四輪乗用自動車助手席に同乗させて同所から発進させ,同日午後6時25分ころ,同市c番地丙株式会社丁支社戊駅前路上で解放するまでの間,同人を同市d丁目e番f号亥g号被告人方に連れ込み,上記車両に同乗させるなどして自己の支配下に置き
2 同月6日午前9時50分ころ,前記戊駅前において,被告人を株式会社乙の採用面接及び研修の担当者であると誤信した前記Bに対し,あたかも移動先において同社の研修が行われるかのように振る舞い,その旨同人を誤信させ,同人を被告人運転の前記車両助手席に同乗させて同所から発進させ,同日午後1時45分ころ,同市h番地i先路上で解放するまでの間,同人を前記被告人方に連れ込み,上記車両に同乗させるなどして自己の支配下に置き
3 同月11日午前10時ころ,同市j丁目l番m号株式会社乙前路上において,前記教諭及びBの紹介により被告人を同社の採用面接及び研修の担当者であると誤信したC(当時17歳)に対し,「Cさんですか。車に乗って。これから面接の場所に行きます。」などと嘘を言い,あたかも移動先において同社の面接が行われるかのように振る舞い,その旨同人を誤信させ,同人を被告人運転の前記車両助手席に同乗させて同所から発進させ,同日午後2時35分ころ,同市n番地o先路上で解放するまでの間,同人を前記被告人方に連れ込み,上記車両に同乗させるなどして自己の支配下に置きもってそれぞれわいせつの目的で誘拐した
第2 同日午後1時25分ころ,前記被告人方において,Cに対し,5回にわたり,その口腔内に自己の右手の中指を舌の付け根辺りまで押し込んで嘔吐させる暴行を加えたものである。
(量刑の理由)
本件は,被告人が,自己の性的満足を得ることを目的として,高校時代の恩師に高校新卒者の就職採用面接をしたい旨申し向けて欺き,同教師から紹介を受けた女子高校生2人を,就職採用面接や研修をすると偽って誘い,自己の運転する車両に同乗させ,自宅に連れ込むなどして誘拐し(判示第1の1ないし3),うち1人に対し,自己の特異な性的欲求を満足させるため,その口腔内に中指を押し込んで同人に嘔吐させる暴行を加えた(判示第2)事案である。
被告人は,かねてから,女子高生に性的興味を抱いていたが,かつて,口淫した女性がその後嘔吐したアダルトビデオを観て性的興奮を覚えたことから,女子高生と性交したり,口淫させて嘔吐させたいと考え,本件犯行を思い立ったものであり,その動機は極めて欲求本位かつ自己中心的である。その犯行態様を見るに,被告人は,手紙で上記のとおり恩師を欺いて就職希望者の紹介を求め,信用を得るため,以前自己がアルバイトをしていた会社の募集要項,同社の従業員である旨の名刺,被害者らへの説明用として,同社の業績に関する資料等を自ら作成し,嘔吐させる際に用いるバケツ,手袋,睡眠導入剤を用意するなど周到な準備を行った上で,計画的に本件各犯行を行ったものである。その上で,被告人は,就職採用面接及び研修担当者と偽って被害者らを自己の運転する車両に同乗させ,被害者らを連れ込んだ被告人宅において,もっともらしく当該会社の業績や仕事内容等を説明した上で,採用を内定する旨告げるなどして安心させ,所期の目的を達成しようとしたもので,高校生の就職難が問題視されている昨今の情勢下,就職を希望する被害者らの心理につけ込んだ卑劣な犯行であり,自己の支配下に置いていた時間もそれぞれ約8時間,約4時間及び約4時間半といずれも長時間と言える。さらに,被告人は,被害者が嘔吐する姿を見るため,被害者の1人に対しては酔い止めと称して睡眠導入剤を飲ませ,別の被害者に対しては嫌がる同人を説得して,実際に同人の口腔内に自己の指を押し入れ,目の前で嘔吐させて,被告人なりに最低限の目的を達成したのであって悪質である。被害者らには落ち度はなく,信頼を裏切られた被害者らの精神的苦痛は大きく,同人らの処罰感情が強いのももっともである。被告人が,本件の約7か月前にも女性と知り合いになるため警察官の身分を偽ったとして科料に処せられていることをも併せ考慮すれば,被告人の本件各犯行は厳しく非難されるべきである。
しかしながら,被告人は,わいせつ行為には及んでいないこと,被害者らを自己の支配下に置いている間,被害者らを引き留めるため暴行等を加えたこともないこと,被告人は,被害者らに対して反省文を送付し,今後も慰謝の措置をとる旨述べるなど反省の情を示し,今後は自己中心的な考え方を改める旨述べていること,被告人が公判請求されたのは今回が初めてであること,被告人の父親が今後の監督を誓約していることなどの被告人にとって有利な事情も認められる。そこで,これらの諸事情を総合考慮した上で,主文掲記のとおりの刑を科し,被告人の社会内における更生に期待して今回はその刑を猶予するのが相当であると判断した。
(求刑懲役4年)
    青森地方裁判所刑事部
        裁判長裁判官  高原 章
           裁判官  室橋雅仁