児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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「膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの」

「膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの」
 「法制審議会の発言」というのは法案・法律にどう影響してるのかわかりにくいですよね。

法務省逐条説明
(3) 膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入する行為であってわいせつなものを強制性交等罪として処罰する趣旨(第177条第1項)
膣又は肛門に陰茎以外の身体の一部又は物(以下、まとめて「異物」という。)を挿入する行為は、現行法上、強制わいせつ罪(刑法第176条)による処罰の対象とされているが、そのような行為については、近時の心理学的・精神医学的知見等を踏まえると、
○一般的に他人にその内側に入り込まれたくない身体的部位の内側に入り込む行為であって、性的な意味合いが強いものであり、これを強制されると、被害者は、性交、肛門性交及び口腔性交を強制された場合と同様の重大な精神的ダメージを負うものであって、性交、肛門性交及び口腔性交に匹敵する当罰性を有する行為であると考えられることから、これを性交等と同等に取り扱い、刑法第177条の罪として処罰することとするものである。
その上で、膣又は肛門に異物を挿入する行為であっても、例えば、医療行為のように、行為の状況等も考慮すると性的性質がなく、わいせつな行為とはいえないものが含まれ得ることから、そのような例外的な場合を除く趣旨で、「わいせつなもの」に限定することとしている。

捜査研究No.877
性犯罪規定の大転換~令和5年における刑法および刑事訴訟法の改正の解説~(後)
城祐一
2陰茎以外の挿入についての犯罪の成否。
ここでは、従来の性交等に加えて、「膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの」を新たに加えたことから、膣や肛門に陰茎ではなくて、指などの身体の一部又は性的な玩具等の物を挿入する行為をも対象にしている。
この点は、平成29年の改正の際には除外されていたのであるが、今回新たに加えられることとなったものである。。
この点について、「被害者からすれば、自分の体に挿入されたことが被害です。挿入されたものが性器でも物でも、同意なく身体に性的侵襲がされることに苦痛があります。男性器に限らず、舌や手指などの身体の一部、性具やその他の物を、膣・肛門に入れたら、強制性交等罪とすることを望みます。」")との意見が出され、また、「侵襲の大きさとしては、物が挿入された場合であっても、陰茎が挿入された場合と異ならないと私は考えています。
実際の事件において、暗いところでの被害、目隠しをされての被害、それから、何が挿入されているのか分からない被害というのはあって、物と陰茎のどちらが挿入されたかが、被害後に本人に明らかとなったからといって、それによって侵襲の程度が大きく異なるのかというところがあります」91)などの意見、さらには、「私は、膣とか肛門の中に身体の一部や物を入れる行為は、強制性交等罪と同じように考えていいのではないかと思います。膣とか肛門に身体の一部や物を挿入されるということは、強制性交等罪と同じような身体への侵襲性があると思っており、被害が大きいと思うので、強制性交等罪と同様に処罰していいと思います。」92)などの意見に応じたものである。
そのため、例えば、被害者の膣や肛門を舐める行為は、「挿入」ではないため、強制わいせつ罪になり、舌を挿入した場合には、本条の不同意性交罪が成立することになる。
ちなみに、ここでは、「身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物」とされていることから、その形状や性質による限定はなされていないことに留意しておく必要がある。
そのため、後に溶けることになる坐薬などを挿入した場合であっても、本件犯行が成立することになるまた、挿入する対象部位は、膣と肛門と限定されていることから、口に身体の一部や物を挿入する行為は本罪の対象とされていない93)。
さらに、ここでは、「挿入する行為であってわいせつなもの」という限定が付せられているが、これは「医療行為や介護の際に、他人の性器・肛門に指を入れるようなことがあり得ますので、性的性質に欠ける行為が構成要件の中に紛れ込まないように、挿入行為の中でもわいせつなものといった形で限定を掛けておくことが必要であると思います。」94)との意見に基づくものである。

(90)第4回議事録2頁(山本委員発言)。

○山本委員 意見としては、被害者側からまず申し述べたいと思います。
被害者からすれば、まず、自分の体に挿入されたことが被害です。
挿入されたものが性器でも物でも、同意なく身体に性的侵襲がされることに苦痛があります。
男性器に限らず、舌や手指などの身体の一部、性具やその他の物を、膣・肛門に入れたら、強制性交等罪とすることを望みます。
例えば、電車内の痴漢被害において、指1本で法定刑の下限が懲役5年の強制性交等罪になるのかと言われますけれども、自分が電車に乗って通勤・通学の途中で、ほかにもたくさんの人がいる中で、見知らぬ人から下着に手を突っ込まれたらどういう気持ちになるのかを想像してみてほしいと思います。
驚きや不快感で凍り付きますし、ましてや、どこの誰とも知らない、その前に何を触っているかも分からない加害者の指が、自分の膣や肛門に入れられることは、被害者にとってあり得ないことです。
挿入されたものが何であっても、強制性交等罪として扱ってほしいと思います。
また、身体の一部を挿入させられる被害についてですが、加害者の口腔・膣・肛門に被害者の男性器を挿入させた場合は、現在でも強制性交等罪です。
これは、加害者の身体に包み込まれる、覆われるという形での性的侵襲と理解されていたと思います。
覆われるものについて表現するに際してお願いしたいのは、男性器に限られることのない表現にしてほしいと思います。
膣に舌を挿入させる被害において、舌が覆われたという意味で性的侵襲として扱ってほしいと思うからです。
また、性同一性障害の方の性別適合手術の中には、ホルモン療法や手術療法を行い、陰茎を形成する手術もあります。
形状によっては、男性器として認められないとも言われていて、苦痛であるとおっしゃっていました。
今回、Broken Rainbow-japanから、性別や性的指向、性の在り方に捉われない法的評価への要望が出ております。
多様な性の在り方を踏まえた御議論をお願いします。
物を挿入させられる場合についてですが、物を手に、あるいは肘とか足の間に持たされたりして、挿入させられる行為もあります。
同意のない性的行為をさせられている意味では性暴力ですが、被害者の身体の一部に挿入される、又は被害者の身体の一部が加害者の身体に覆われるといった被害ではないので、強制性交等罪には当たらないのではないかと理解しています。
このように議論を進める中で、性犯罪に関する刑事法検討会では、男性器を膣・肛門に挿入し、又は挿入させる以外の被害については、強制性交等罪と強制わいせつ罪との間に中間類型を設けるべきだという議論もありました。
しかし、先ほどから申し上げているとおり、性具や手指などを用いたセックスが、その人たちにとって自然な性の在り方である方たちもいます。
中間類型とすることで、男性器を挿入することだけが性交であり、レイプであるということになり、それは差別ではないかと思うので、反対します。
同列に扱ってほしいと思います。
また、中間類型とした場合、捜査機関では必ず何を挿入されたのか、それが男性器であることがどうして分かったのかを聞かれることになると思います。
自分の身体に挿入されたことまでは分かっても、何が挿入されたかまでは、身体下部のことであり、見ることも怖いし、具体的には分からないということもあります。
医療機関での被害者診察においても、何かが膣や肛門に挿入されたとは言えても、その特定までは難しいこともあります。
侵襲されたことに変わりはないのに、それが何かによって罪が変わるのは、被害者にとっては理不尽で承服し難いことですので、中間類型を設けることには反対したいと思います。

(91)第4回議事録9頁(長谷川委員発言)。

○長谷川幹事 医療行為などを適切に処罰から除けるようにすべきという趣旨であるとすれば、正当行為でも除けるのではないかというのが、今の感覚的な考えです。
この点については、改めて詰めて考えたいと思います。
それから、物について、性具とか座薬とか、いろいろな物の性質の話が出たのですけれども、被害者側、すなわち、挿入される側からして、今言ったような種別がそれほど大きな意味を持つのかということについては、私も疑問に思っているということを、一言申し上げたいと思います。
宮田委員は、強制性交等罪と強制わいせつ罪の二つを一つの罪にして、その中で、挿入行為があるものも、そうでないものも対処したらどうか、そのような考え方もあるのではないかという御意見だったと思うのですが、構成要件とそれに対する法定刑というのは、その行為の重さ、違法性の強さを示すという意味もありますので、法定刑の幅を広くして、その中で全部対処できるからいいということにはならないと思っています。
挿入を伴う行為と、そうではないわいせつな行為とでは、小西委員がおっしゃられているように、被害者に与える精神的苦痛に違いがあるということですので、やはり、これは分けるべきではないかと思います。
そして、侵襲の大きさとしては、物が挿入された場合であっても、陰茎が挿入された場合と異ならないと私は考えています。
実際の事件において、暗いところでの被害、目隠しをされての被害、それから、何が挿入されているのか分からない被害というのはあって、物と陰茎のどちらが挿入されたかが、被害後に本人に明らかとなったからといって、それによって侵襲の程度が大きく異なるのかというところがありますので、やはり、物が挿入された場合についても、陰茎が挿入された場合と同程度の侵襲性があると見て、現行の強制性交等罪の対象とすべきではないかと考えています。

(93)第4回議事録11頁(小島委員発言)。

○小島委員 電車の中の痴漢行為について、金杉幹事がおっしゃった件について確認なのですけれども、一般的に、痴漢というのは、言葉のイメージとしては、着衣の上から触ったりするというイメージなのですが、金杉幹事がお出しになった事例というのは、電車の中で、例えば、膣とか肛門に指を入れられた場合という例なのでしょうか。
○金杉幹事 はい、おっしゃるとおりです。
○小島委員 そうすると、電車の中で、膣とか肛門にいきなり指を入れられた場合について、今の強制性交等罪と同様の被害とは言えないという御主張ですね。
私は、膣とか肛門の中に身体の一部や物を入れる行為は、強制性交等罪と同じように考えていいのではないかと思います。
膣とか肛門に身体の一部や物を挿入されるということは、強制性交等罪と同じような身体への侵襲性があると思っており、被害が大きいと思うので、強制性交等罪と同様に処罰していいと思います。
電車の中で、皆の面前で被害に遭った場合は、苦痛が大きいと思います。


○齋藤委員 男性器を挿入された方にとって、指を挿入された被害と同じだと言われることは苦痛だという御意見もあったかと思うのですけれども、私が言っているのは、性暴力に関して、社会の捉え方自体が今までとても軽くて、性交という言葉を使っていたからかどうかは分かりませんけれども、異物の挿入であるとか、体の一部の挿入というのが大変軽視されてきたと思いますし、今のいろいろな委員・幹事の御発言を聞いていても、やはりすごく軽視されているのだという感覚を抱いております。


そうではなくて、それがすごく苦痛を与える行為なのだ、そもそも大変苦痛を与える行為だったのだということの認識を持っていただきたいと思っていますし、行為規範に関して、小西委員もおっしゃっていましたが、そもそも電車の中で膣に指を入れる行為は少なくないのですけれども、それが行為規範として軽いと思われていること自体がすごく問題ではないかと考えております。
○山本委員 一つは、医療者が医療行為と偽って性加害をするという状況を、きちんと捉えてほしいということがあります。
もちろん、正当な業務として行っている人がほとんどですけれども、そうでない場合に、なかなか訴えづらく、司法の中で適切に取り扱ってもらっていないという現状があります。
あと、私の理解であるので、少し解釈と合わないのかもしれないのですけれども、わいせつと言われることに関しては違和感があります。
それも、先ほどから齋藤委員が言われているように、性交というイメージにも引きずられているのかとも思うのですけれども、被害者にとっては、性的暴行という侵襲であって、性的な暴力であり、そういうわいせつな行為ということとは、余り関係がないような気がするのですね。
身体の一部又は物を挿入する行為を更に限定すべきというお話も出ましたけれども、それも、性交というイメージに引きずられていて、被害者にとって被害の本質は侵襲であり、セックスではないということを、余り理解していただけていないのかなとも思っています。
また、繰り返し、法定刑の下限が5年の懲役であることは重いと言われていますけれども、強盗罪の法定刑の下限が5年の懲役で、強制性交等罪の法定刑の下限が5年で、物や男性器以外の指や身体とかの挿入とかを強制性交等罪の対象とすると法定刑の下限が変わってくるとか変わってこないといった議論がされていますけれども、私たちにとっては、性的な侵襲であるということ自体で同じ被害と捉えますので、法定刑の下限が5年の懲役であることが重いということは全くないと思っています。
○小島委員 性交という言葉を使っていることが、やはり問題なのではないかと思います。
性交ではなくて、性的挿入とか、議題にありましたわいせつな挿入行為とか、そういうもっとぴったりな文言を、強制性交等罪の実態に合わせて考えていくことが必要ではないかと思います。

93) 第4回議事録3頁(小島委員発言)では、「膣・肛門への挿入は、身体の一部やいわゆる性具などの物の挿入も、強制性交等罪として処罰するということでよいのではないかと考えております。他方、口については、性器とは言えないので、口腔に挿入するものは性器に限るということで考えております。ですから、指や性具などの口腔への挿入は、強制性交等罪には当たらないと考えております。」と述べられている。同議事録6頁(佐藤陽子幹事発言)も同旨。

○小島委員
強制わいせつ罪の対象とされている行為の一部を、強制性交等罪の対象となる行為に格上げするということにつきましては、挿入される場所が、膣なのか、肛門なのか、口なのか、それから、挿入するものが、陰茎なのか、身体の一部なのか、性具などの物なのか、この3掛ける3の組合せがございます。現行法は、陰茎を膣・肛門・口腔に挿入する行為を強制性交等罪の対象となる行為としていますが、これと同等の当罰性があり、強制わいせつ罪から格上げする行為は何かということが、本件で問題になっております。
私は、挿入するものと挿入される場所のいずれか一方がいわゆる性器である場合について、強制性交等罪として処罰したらどうかと思います。身体への侵襲性という意味で、同等だと考えるべきだと思います。2017年改正では、口腔への挿入について問題になりましたが、陰茎、すなわち、性器の挿入であることから、強制性交等罪の対象とされました。そして、LGBTの方の性交を考えると、肛門については性器と言い得るのではないかと考えており、そうすると、膣・肛門への挿入は、身体の一部やいわゆる性具などの物の挿入も、強制性交等罪として処罰するということでよいのではないかと考えております。他方、口については、性器とは言えないので、口腔に挿入するものは性器に限るということで考えております。ですから、指や性具などの口腔への挿入は、強制性交等罪には当たらないと考えております。
法定刑は、いずれも強制性交等罪と同様に5年以上の懲役とすることを前提としており、先ほど山本委員が言われたように、中間的な類型を設けることについては反対いたします。
一方で、挿入させる行為については、挿入する行為とは身体の侵襲性に違いがあると考えると、現行法で処罰している性器を膣・肛門・口腔に挿入させる行為に加えて、膣・肛門に舌を入れさせる行為についてのみ、強制性交等罪に格上げしたらどうかと思います。舌を挿入させる行為というのは、指等の他の身体の一部を挿入させる行為と異なって、粘膜が接触するという意味で、身体の侵襲性が大きいからです。舌を挿入させる行為の法定刑は、挿入する行為と同様に、5年以上の懲役とすることを前提とします。この点は、感覚的な違いもあるのではないかと思っています。
膣・肛門に指を挿入させる行為は、限界事例かと思っております。

○佐藤(陽)幹事
性犯罪に関する刑事法検討会の議論と本日の委員の先生方の御意見を踏まえますと、仮に条文を新設するであれば、気を付けておかなければならないことが幾つかあると思いましたので、実際に条文を作る場合に、どのようなものが考えられるかといった形でまとめさせていただきたいと思います。
一点目は、性犯罪に関する刑事法検討会の議論で出ていたものなのですが、医療行為や介護の際に、他人の性器・肛門に指を入れるようなことがあり得ますので、性的性質に欠ける行為が構成要件の中に紛れ込まないように、挿入行為の中でもわいせつなものといった形で限定を掛けておくことが必要であると思います。
二点目として、行為者が被害者に挿入する行為と被害者に挿入させる行為とは、分けて規定することが必要であろうかと思います。つまり、先ほど、山本委員がおっしゃっていたことですけれども、例えば、行為者が被害者を脅迫して、自己の性器に性具を挿入させる行為は、被害者の性器に性具を挿入する行為と比較した場合、性的接触を強いられる侵害の程度が原則的に軽いと考えられることに留意しておかなければならないと思います。
小島委員がおっしゃっていた、舌を挿入させる行為をどうするかについては、別途検討する必要があると思っていますが、性器をなめる行為はどうするのかとか、なめさせる行為はどうするのかといった形で、たくさんの問題に派生してしまうようであれば、少なくとも今回の改正においては、挿入する行為だけに限るといった選択もあろうかと思うところでございます。
三点目として、挿入する行為の中でも、性器・肛門に身体の一部や物を挿入する行為には、性交等と同じぐらいの侵害性があるという点は、性犯罪に関する刑事法検討会においても、また、本日の議論においても、ある程度のコンセンサスの得られた御意見だと思われるのですが、口腔に身体の一部や物を挿入する行為については、なおそこまでのコンセンサスは得られていないと思っておりまして、その点に留意して条文を作っていく必要があろうかと思います。
私も、性犯罪に関する刑事法検討会では、口腔への物等の挿入も強制性交等と同じぐらい重いものがあると言いましたけれども、逆に言うと、そうではないものが多くあることも認識しておりまして、少なくとも口腔への物等の挿入については、強制性交等と全く同じ法定刑で規定するというのは、少し難しいと思っているところです。
以上の三点が留意点だと思っていまして、これらを前提にしますと、性交等を強いられたときに匹敵するような侵害を生じさせる行為としては、基本的に性器又は肛門に身体の一部又は物を挿入する行為であって、かつ、わいせつなものというようなことになろうかと思います。
ただ、身体の一部又は物を挿入する行為の中にも、重大なものから軽微なものまであるということは、多々指摘されているところでして、そのような反対の御意見を全く無視するわけにはいかないとも思っています。取り分け、物には様々な形状・性質のものがありますので、仮に身体の一部又は物を挿入する行為を性交等と同じ法定刑で規定しようと思った場合には、例えば、わいせつ目的で座薬を入れたとか、そういう場合が入らないように、何か更に絞る文言、思い付きですけれども、例えば、挿入する対象を手指といった身体の一部又は性具やそれに類似する物に限るなどして、ある程度の限定を付するか、あるいは対象となるものは絞らずに、法定刑の下限を下げる形で対応するという方法もあろうかと思います。法定刑の下限を下げる場合も、法定刑の上限は強制性交等罪と同じですので、重い類型は重く処罰ができ、場合によっては紛れ込む可能性のある軽い類型については軽く処罰ができるといった形になろうかと思います。
先ほど、齋藤委員が、心理的な傷に区別をつけることはできない、負担に区別をつけることはできないとおっしゃっており、それはそのとおりだと思うのですけれども、法定刑を定めるときは、行為態様も併せて考慮するというのが一般的かと思われますので、やはり行為態様の違いといったものも考慮に入れておく必要があろうかと思います。特に、前回の改正で、口腔性交や肛門性交が性交と並んで処罰されるようになったときに、量刑水準も同水準になったという研究がございます。今回の改正の際にも、仮に身体の一部又は物を挿入する行為を性交等と同じ法定刑で規定しようと考える場合には、それらの行為の量刑も、性交等と同水準になる可能性があることを考慮に入れて、どうすべきかというのを判断すべきと思っているところでございます。

(94) 第4回議事録6頁(佐藤陽子幹事発言)、第10回議事録35頁(浅沼幹事発言

○浅沼幹事 「試案」の趣旨として御説明いたしますけれども、処罰対象となる膣又は肛門に陰茎以外の身体の一部又は物を挿入する行為は、現行法において強制わいせつ罪の「わいせつな行為」に該当するものであることが前提でありますが、膣又は肛門に陰茎以外の身体の一部又は物を挿入する行為であっても、例えば、医療行為のように、行為の状況等も考慮すると性的性質がなく、わいせつな行為とはいえないものが含まれ得るため、そのような例外的な場合を構成要件の段階で処罰対象から除外するという趣旨で、この「わいせつなもの」ということを記載しております。