児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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13歳未満との児童買春罪について(メモ)

こういう事案の児童買春罪の成否。
小学6年女子児童を買春した疑い 31歳の男を逮捕 SNSで知り合ったか(MBSニュース) - Yahoo!ニュース


https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/20170309/1488703107
https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2022/02/15/174233


 最近の刑法改正では児童側の性的同意能力が分析的に検討されているので、児童買春罪にも影響ありそうです。「13歳未満の者は、思春期前の年代の未熟な子供であり、一般に、性的な知識は乏しく、意味認識能力が備わっていないと考えられ、したがって、性的理解・対処能力も備わっていないと考えられることから、13歳未満の者は、有効に自由意思決定をすることが困難であり、性的行為が行われることによって、性的自由・性的自己決定権の侵害が生じると考えられる。」というのであれば、対償供与約束能力もないのではないか。

法務省逐条説明
各条の第3項
(1)総説
自由意思決定を有効にすることができるための能力の内実は、

○行為の性的な意味を認識する能力(以下「意味認識能力」という。)
○相手方からの影響にかかわらず、性的行為をすることによる自己の心身への影響について理解した上で、状況に応じて自律的に判断して対処する能力(以下「性的理解・対処能力」という。)
と整理することができる。
その上で、これらの能力は、年齢とともに心身が成長し、社会的な経験を積み重ねることによって向上していくものと考えられるところ、子供の発達段階に関する調査・研究や若年者を対象とした意識調査の結果等を踏まえると、これらの能力が十分に備わるとみることができる年齢は、早くとも16歳であると考えられる。
すなわち、16歳未満の者は、これらの能力の全部又は一部が十分でなく、有効に自由意思決定をする能力が十分に備わっているとはいえないため、有効に自由意思決定をすることが困難な場合があり、そのような場合には、性的行為が行われることによって、性的自由・性的自己決定権の侵害が生じ得ると考えられる。
第3項は、そのような場合における性的行為を処罰することとするものである。
(2) 13歳未満の者について
13歳未満の者は、思春期前の年代の未熟な子供であり、一般に、性的な知識は乏しく、意味認識能力が備わっていないと考えられ、したがって、性的理解・対処能力も備わっていないと考えられることから、13歳未満の者は、有効に自由意思決定をすることが困難であり、性的行為が行われることによって、性的自由・性的自己決定権の侵害が生じると考えられる。
そこで、13歳未満の者に対して性的行為をした場合には、現行の刑法第176条後段及び第177条後段と同様、一律に処罰の対象としている。
(3) 13歳以上16歳未満の者について
13歳以上16歳未満の者は、
○思春期に入った年代であり、性的な知識は備わりつつあると考えられることから、意味認識能力が備わっていないものとして取り扱うことは相当でない
と考えられる一方、性的理解・対処能力に関しては、
○自らを客観視したり将来のことを予測する能力が十分に備わっておらず、
また、他者からの承認を求めたり、他者に依存しやすいなど精神的に未成熟である上、身体的にも未熟であることから、相手方の言動の意味を表面的に捉えて軽信し、自己の心身への影響を見誤ったり、萎縮してどのような行動を取るべきかの選択肢が浮かばなくなったりするなど、相手方がいかなる者であっても、相手方からの影響にかかわらず、その相手方と性的行為をすることによる自己の心身への様々な影響について理解し、自律的に判断して対処することができるには至っていない
と考えられる。
そのため、性的行為をするかどうかの意思決定の過程において、相手方がそれに与える影響の大きい者である場合には、その相手方と性的行為をすることによる自己の心身への影響について自律的に考えて理解した上で、状況に応じて自律的に判断して対処することは困難になると考えられる。
そして、一般に、性的行為の相手方が5歳以上年長の者である場合には、年齢差ゆえの能力や経験の格差があるため、本年齢層の者にとって、相手方と性的行為をすることによる自己の心身への影響について理解した上で、状況に応じて自律的に判断して対処することは困難となるほどに相手方が有する影響力が大きいといえる。
したがって、そのような場合には、13歳以上16歳未満の者は、有効に自由意思決定をすることが困難であり、性的行為が行われることによって、性的自由・性的自己決定権の侵害が生じると考えられる。
そこで、13歳以上16歳未満の者に対して、その者より5歳以上年長の者が性的行為をした場合を処罰の対象としている(注8)。
(注8)以上のような考え方を前提とした場合、13歳以上16歳未満の者にとって、相手方が5歳以上年長の場合には、
○13歳以上16歳未満の者において、5歳以上年長の者を脅迫するなどし、同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態にさせて性的行為を強いた場合
を除いては、有効に自由意思決定をすることができないということができる。
そして、そのような場合における5歳以上年長の者の行為については、正当防衛(刑法第36条第1項)などとして違法性が阻却されると考えられることから、そのような場合を処罰対象から除外するための実質的要件を設けることとはしていない。

捜査研究876号
第5 刑法176条3項の構成要件
ここでは、性交同意年齢の問題を取り上げている。性交同意年齢とは、対象者の年齢だけを基準として性的同意を無効とする制度83)である。
従来の刑法176条後段は、13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。と規定し、13歳未満、つまり、12歳以下の者(おおむね小学生)であれば、有効な性的同意をすることはあり得ないという前提から、男性、女性を問わず、暴行等の手段を用いず、単に、わいせつな行為をしただけで、強制わいせつ罪が成立するとしていた。
したがって、12歳と13歳という年齢について、前者であれば無条件に強制わいせつ罪が成立したのに対し、後者であれば、暴行等により反抗が著しく困難になっていたかということが構成要件上求められるという大きな違いが生じていたのに対し、今回の改正で、その年齢を引き上げることにしたものである。具体的には、たとえ13歳以上であっても、16歳未満であれば、有効な性的合意がなされ得るとは考えられないとし、そのため、改正法では、16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。) も、第1項と同様とする。と規定している。
これは、先の13歳未満が16歳未満とされ、3歳分年齢が引き上げられたということである。その理由としては、「判断能力の未熟な青少年を法的に保護するとか、青少年の健全な育成を図るとか、年少者は年上の者に服従してしまいがちだとか、判断能力の浅薄さに付け込まれやすいということがあると思います。それから、何といっても、児童虐待の防止ということがあると思います。」84)などの事由が挙げられている。また、「性的行為をするかどうかに関する自由な意思決定をするために必要な能力の不足という観点から説明する」85)という見解も示されている。

83) つまり、「性交同意年齢というのは、実質的未熟さとか、そういうものを個別具体的に問う必要がない、問わないという前提で出来上がっている」(第9回議事録25頁(小島委員発言)) ものである。
84) 第6回議事録20頁 (小島委員発言)
85) 第8回議事録38頁(佐藤琢磨幹事発言)

83) つまり、「性交同意年齢というのは、実質的未熟さとか、そういうものを個別具体的に問う必要がない、問わないという前提で出来上がっている」(第9回議事録25頁(小島委員発言)) ものである。
84) 第6回議事録20頁 (小島委員発言)
○小島委員 私は、13歳未満とする現行法を16歳未満まで引き上げるという案に賛成いたします。その根拠と、処罰から除外する根拠について申し上げます。
B案というのは、16歳未満の者に対する性交は当罰性があるということを前提にして、政策的配慮をして、13歳以上16歳未満を一定の場合に処罰から解放するという案だと思います。16歳未満に引き上げる根拠について、判断能力の未熟な青少年を法的に保護するとか、青少年の健全な育成を図るとか、年少者は年上の者に服従してしまいがちだとか、判断能力の浅薄さに付け込まれやすいということがあると思います。それから、何といっても、児童虐待の防止ということがあると思います。児童の性的保護を社会の共有ルールにするのだということで、そういう意味では強いメッセージ性があるものだと思います。児童に対する性的搾取、児童に対する性的道具化の防止ということがあると思います。
基本構造ですが、13歳未満について一律処罰するというルールと、16歳未満について一律処罰するという基本構造は全く同じで、これまでの13歳未満についての一律処罰ルールを16歳未満まで引き上げるということだと考えております。いずれも、児童保護のため、対象者の個々の判断能力には立ち入らないというルールを基本にしております。13歳以上16歳未満は、では何で処罰から除外するのだということですけれども、年齢の近い者同士で、健全育成についてその危険があるとはいえないということ、強制の生じやすさというのが年齢差から起きるということ、判断能力の低さの不当利用も年齢が近いと起きにくいということだと思います。16歳未満で除外規定を設けないと、行為者もその相手方も、14歳以上であれば犯罪が成立してしまいます。
子供たちにNPOの関係で性教育をしている方に聴いたのですけれども、家庭に問題のある子供も、それであればこそ、相手を真剣に求めるということはあるとのことです。中学生同士については除外するべきである、そういう子供たちを両方犯罪にするというのはいかがかと思います。例えば、「僕たちは犯罪になるのか」と聞かれたときに、この線までは犯罪になるけれども、この線は犯罪ではないというような形で明確なルールが必要だと思うので、限定・除外要件については、行為者の年齢要件というのが明確ではないかと思います。年齢差要件だと、先ほど山本委員がおっしゃったように、設定するのが難しく、行為者の年齢要件を挙げるのが明確だと思います。ただし、16歳未満とした場合、初回の年齢が16歳未満なら処罰しないとしておかないと、15歳で付き合っていて、片方が16歳になった途端に駄目というのは妥当ではないので、初回の年齢要件というのも、入れた方がよいと思います。中学生同士は当然、除外するとして、中高生同士をどうするかというのは決断の問題で、私としては、今のところ、除外するのは中学生同士という感じを持っております。
刑法177条前段の強制性交等罪との関係なのですけれども、例えば、13歳の被害者に15歳の加害者が暴行を用いて性交をしたような場合は、刑法177条、178条の新規立法で個別対応するということになります。この点が分からないではないかということであれば、確認規定を入れて、「ただし、他の性犯罪の成立は妨げない」としておけばいいのではないかと思います

85) 第8回議事録38頁(佐藤琢磨幹事発言)
○佐藤(拓)幹事
対象年齢を引き上げる理論的根拠については、これまでの議論において、現行法上、13歳未満の者に対して性交等をすれば強制性交等罪を構成するとされているという根拠を、配布資料22に記載されているとおり、「性的行為をするかどうかに関する能力を欠くため、性的自由・性的自己決定権を侵害する」ことに求めた上で、その能力の内実を整理し直し、それを踏まえて検討するという視点が示されたと理解しております。そして、その能力の内実として、配布資料22に記載されている「①」から「③」までの三つの能力が検討対象となっていると考えております。このような検討の方向性は、現行法との関係でも、整合的な説明が可能ではないかと考えられます。能力の捉え方についても、これまでの議論において、異論はなかったように思われます。
そこで、このような考え方に沿って検討してみますと、13歳未満の者は、おおむね小学生の年次に当たり、一般的に性的な知識は乏しいと考えられますことから、「①」の能力を欠いていると見ることができる一方で、13歳になると、中学生の年次に入ることから、恐らく「①」の能力を一律に欠くと評価することは困難ではないかと思われます。これに対して、「②」及び「③」の能力は、「①」の能力が備わったからといって直ちに備わるものではないと考えられ、これらを含めて三つの能力が全て十分に備わる年齢は、13歳よりは上だということができるのではないかと思われます。仮にこのような考え方が、実態としても裏付けられるのであれば、それを根拠として対象年齢を引き上げることは、理論的にあり得るように思われます。
これに対して、若年者の「健全な育成を害する」ことを根拠として対象年齢を引き上げることについては、更に検討すべき課題があるように思われます。すなわち、仮に、現行法上13歳未満の者に対して性交等をすれば強制性交等罪を構成するとされている根拠として、「健全な育成を害する」ことが含まれていると考える場合には、現在でも、これを考慮した上で、13歳未満が対象年齢として定められていることとなりますが、「健全な育成を害する」ことがなぜ対象年齢を引き上げる根拠になるのかを説明する必要が出てくるように思われます。他方、仮に、現行法上、「健全な育成を害する」ことは考慮されていないと考える場合には、なぜ新たにこれを加えることとするのかについて、その根拠とともに説明をする必要が生じてくるように思われます。
もっとも、いずれにしても、「健全な育成を害する」ことのみを根拠として5年以上の懲役という重い違法性を根拠付けることは困難であり、配布資料22は正にそのとおりの形になっていますけれども、対象年齢を引き上げる場合には、性的行為をするかどうかに関する自由な意思決定をするために必要な能力の不足という観点から説明するほかないのではないかと考えております。

法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会
第8回会議配布資料22
補足的検討課題②
(第1-2 刑法第176条後段及び第177条後段に規定する年齢を引き上げること)
〔補足的検討課題〕
1 客体となる者の年齢(以下「対象年齢」という)を引き上げる理論的根拠。
○現行法上、対象年齢の者に対して性交等をすれば、強制性交等罪を構成して処罰するとされている理由をどのように考えるか。
・性的行為をするかどうかに関する能力を欠くため、性的自由・性的自己決定権を侵害する
・健全な育成を害する
○現行法上の処罰理由を踏まえ、対象年齢を引き上げる理論的根拠は何か。
・性的行為をするかどうかに関する能力として、
①行為の性的な意味を認識する能力
②行為が自己に及ぼす影響を理解する能力
③性的行為に向けた相手方からの働きかけに的確に対処する能力を要し、これらの能力を一律に欠く年齢を対象年齢とする
・健全な育成を害する年齢を対象年齢とする

法務省刑事局付梶美紗「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」の概要(1)捜査研究877号
イいわゆる性交同意年齢の引上げ
改正前の刑法第176条後段・第177条後段においては、13歳未満の者に対して性的行為をすること自体が処罰対象とされていた。
これは、強制わいせつ罪・強制性交等罪が、性的自由・性的自己決定権を保護法益としており、性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力がない場合には、暴行を受けるなどの意思決定に影響を及ぼすような状況がなかったとしても、性的行為をすること自体によって保護法益が侵害されると考えられるところ、13歳未満の者は、行為の性的な意味を認識する能力が欠け、性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力がないとされたためであると考えられる。
もっとも、性的行為に関して有効に自由な意思決定をするための能力の内実としては、
○行為の性的な意味を認識する能力だけでなく、
○行為の相手方との関係において、行為が自己に及ぼす影響について自律的に考えて理解したり、その結果に基づいて相手方に対処する能力が必要であると考えられる。
その上で、これらの能力は、年齢とともに心身が成長し、社会的な経験を積み重ねることによって向上していくものと考えられ、心理学的・精神医学的知見を踏まえると、これらの能力が十分に備わるとみることができる年齢は、早くとも16歳であると考えられる。
すなわち、
○13歳未満の者については、前者の能力が備わっておらず、有効に自由な意思決定をする前提となる能力が一律に欠ける
○13歳以上16歳未満の者については、前者の能力が一律に欠けるわけではないものの、後者の能力が十分でなく、相手方との関係が対等でなければ、有効に自由な意思決定ができる前提となる能力に欠けると考えられる。
そこで、改正法においては、
○16歳未満の者については、性的行為について有効に自由な意思決定をする前提となる能力が十分備わっているとはいえないことから、その者に対して性的行為をすること自体で処罰されることとなる年齢を「13歳未満」から「16歳未満」に引き上げつつ、
○13歳以上16歳未満の者に対する性的行為については、相手方との間に対等な関係がおよそあり得ず、有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠ける場合に限って処罰する観点から、当該13歳以上16歳未満の者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者を処罰対象とすることとされた(改正後の刑法第176条第3項及び第177条第3項)。