児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強盗の機会に被害者に恥ずかしい思いをさせれば,羞恥心から警察への通報等を思い止まるだろう等と考えその衣服を脱がせて同人の左乳首をなめた行為を強制わいせつ罪とした事例(松江地裁r02.5.30)

強盗の機会に被害者に恥ずかしい思いをさせれば,羞恥心から警察への通報等を思い止まるだろう等と考えその衣服を脱がせて同人の左乳首をなめた行為を強制わいせつ罪とした事例(松江地裁r02.5.30)
 被害者に恥ずかしい思いをさせれば,羞恥心から警察への通報等を思い止まるだろう等と考えたという弁解は通った

松江地裁令和元年 5月30日 
住居侵入、強盗、強制わいせつ被告事件
【罪となるべき事実】
 被告人は,現金を強取しようと考え,平成31年3月9日午後7時39分頃から同日午後8時21分頃までの間,松江市内の被害者方に,無施錠の玄関ドアから侵入し
 1 その頃,同所において,被害者(当時21歳)に対し,床に倒した上,その口を手でふさぎ,持っていたカッターナイフを同人の顔面付近に示すなどし,「黙れよ。」,「お金出せ。」などと言う暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧して,同人所有の現金1万2000円を強取し
 2 前記暴行・脅迫により同人が反抗を抑圧されていたのに乗じて同人に強いてわいせつな行為をしようと考え,前記日時場所において,同人に対し,その衣服を脱がせて同人の左乳首をなめ,もって強いてわいせつな行為をした。
【量刑の理由】
 被告人は帰宅途中の被害者を認め,同人から金品を奪おうと考えて同人を尾行し,そのまま被害者の自室に押し入って判示第1の強盗行為を行って現金を奪い,引き続き,被害者に恥ずかしい思いをさせれば,羞恥心から警察への通報等を思い止まるだろう等と考え,被害者がおびえているのに乗じ,判示第2の強制わいせつ行為に及んだものである。
 このうち,強盗行為は,カッターナイフを被害者の顔近くに示すという暴行を伴っており,被害者が,殺されるかもしれないと強い危機感を抱いたのは当然である。被害者を追尾した上で犯行に及んでいる点は,強盗に向けた強固な意思の表れとして強く非難される。また,強制わいせつ行為は,被告人に性的意図がなかったとはいえ,いわば口封じの目的で行ったこと自体卑劣なことであるし,そのような被告人の内心は被害者の与り知らぬところであって,衣服を脱がされ乳首を舐められるという,明らかに性的意味合いを持つわいせつ行為を受けた被害者が,レイプされるかもしれないという強い恐怖と屈辱を感じたのももっともである。最も安心できるはずの自宅で,このような強盗被害や性的被害に遭うという肉体的,精神的被害を受け,被害者は事件後も恐怖心が癒えず,社会日常生活の上でも重大な不利益を被っている。
 以上によれば,住居侵入を伴う強盗,強制わいせつの事案の中において,暴行・脅迫の程度やわいせつの程度が重い部類に属するとまでは言えないが,被告人の刑事責任を軽く見ることもできず,被告人が反省の態度を示し,家族の協力を受け,一定の被害弁償の準備をし,慰謝に努めていく意向を示すことやしょく罪寄付をしたこと,異種罰金前科のほか前科がないことを考慮しても,酌量減軽すべきほどの情状はなく,主文程度の刑が相当であると判断した。
 以上
 (裁判官 本村曉宏)