児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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 年齢知情の特則における「過失のないとき」の意義~福祉犯罪捜査質疑回答集s63 - (著)警視庁防犯部

 年齢知情の特則における「過失のないとき」の意義~福祉犯罪捜査質疑回答集s63 - (著)警視庁防犯部
警察の見解としては、青少年条例違反についても、「本人の言うところ等に多少でも疑問があれば、右のような方法の外、進んで戸籍の照会を行う等客観的に通常可能な方法をとって事実の有無を確かめ、その年齢を確認すべき法的な注意義務を有するものと解する」ということになります。

5 年齢知情の特則における「過失のないとき」の意義
問 児童福祉法60条3項及び風営適正化法49条4項の但し書において、「過失のないときは、この限りでない」と児童の年齢の不知については、過失がなければ処罰し得ないこととしているが、この場合の「過失がない」といえるには、どの程度の調査をすれば足りるのか。

答「過失がない」というためには、単に本人又は周旋人らの供述、本人の身体の外観的発育状況、同種業に従事した前歴の有無等のみによって、18歳以上(禁止行為の種類によっては15歳以上)であると信じただけでは足りず、戸籍等の客観的資料を調べ、あるいは、父兄に直接に問い合わせる等の確実な調査方法を講ずべき注意義務が課せられている。
その注意義務の程度は、形式的、画一的に決することなく、あくまで具体的事情に即して考えなければならない。
判例によると、最高裁判所は「児童及びその両親が児童本人の氏名を偽り、他人の戸籍抄本をあたかも本人のご、とく装って提出した場合、他人の戸籍抄本をあたかも児童本人のものであるかのように使用することも職業の特殊性から当然あり得ることが容易に想像できるから、一方的な陳述だけでたやすく軽信することなく、他の信頼すべき客観的資料に基づいて調査をなすべきである。
この調査を怠っている場合、児童福祉法第60条3項但し書にいう年齢を知らないことにつき過失がない場合に該当しない。」(最高判昭34.5.11)と身上の確認、調査義務と過失の関係についての判断をしている。
また、その具体的確認義務の例として、東京家庭裁判所は「風俗営業者はすべての場合に戸籍謄本等を提出させたり、戸籍の照会をなすべき義務まで負うものではないが、応募者全員に対し住民票その他氏名、年齢等を通常明らかにし得る資料の提出を求めるとか、すべての場合に、単にその氏名、年齢等を述べさせ若しくは記載させ、又はその容姿を観察するだけでなく、進んでその出生地、いわゆる「えと」年、その他、親兄弟や学校関係等について適宜の質問を発して事実の有無を確かめるとかの方法を講ずべきものであり、すくなくとも本人の言うところ等に多少でも疑問があれば、右のような方法の外、進んで戸籍の照会を行う等客観的に通常可能な方法をとって事実の有無を確かめ、その年齢を確認すべき法的な注意義務を有するものと解する」(東京家判昭38.4.13) と身上の確認に万全を期したものと認められない限り、過失がないということはできないとしている。
結局、注意義務を尽くし「過失がないとき」といえるかどうかは、これら判例の立場を参考に具体的事案ごとに、関係者の申立、提出された客観的資料の種類、提出の際の状況及び確認の有無並びに確認方法の難易度等を総合的に検討して、社会通念に照らし、営業者、使用者として通常可能最大限の調査が適切に尽くされているといえるか否かによって判断しなければならない。
ただ、今までの裁判例をみると、総じて無過失の認定には厳しい姿勢がうかがえるといえよう。
なお、東京都青少年の健全な育成に関する条例28条にも年齢知情の特則が定められているが、その内容は上記児童福祉法及び風営適正化法の場合と同様に解してよい。