児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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衛生マスク転売規制について、「物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合」(国民生活安定緊急措置法26条1項)か?


 「先に述べたように最近の石油危機を契機として制定されたものではあるが、本法の目的は、これに限らず、一般的に「物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処する」こととされている。」「本法での「物価の高騰」とは、卸売物価、消費者物価等を総合した一般物価水準が、過去のすう勢や目標値を大幅に上回って上昇し又は上昇するおそれがある場合をいう。」という記載を見ると、マスクの価格が上がっただけでは、「物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合」には当たらないと思います。

国民生活安定緊急措置法の解説s49
第一章
目的及び運用方針
本法第一条及び第二条は、この法律の目的及び運用方針を定めたいわゆる総則規定である。
(目的)
第一条
この法律は、物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処するため、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とする

要旨
本法制定の趣旨、目的を明らかにした規定であり、生活関連物資等の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、もって国民生活の安定と国民経済の円消な運営の確保を図らんとするものである。
解説
本法は、先に述べたように最近の石油危機を契機として制定されたものではあるが、本法の目的は、これに限らず、一般的に「物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処する」こととされている。
本条で「物価の高騰」といい、後の具体的な条項でも「物価が高騰し又は高騰するおそれがある」場合等に発動されることとなっているが、本法での「物価の高騰」とは、卸売物価、消費者物価等を総合した一般物価水準が、過去のすう勢や目標値を大幅に上回って上昇し又は上昇するおそれがある場合をいう。勿論、その水準を具体的な計数で示すことは難しく、その時々における経済情勢等を勘案して判断することになると思われる。
「異常な事態」とは、本法の各条に規定する発動要件を充足するような事態をいい、例えば、割当・配給等の規定が発動される「物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合で、生活関連物資等の供給が著しく不足し、かつ、その需給の均衡を回復することが相当の期間極めて困難であることにより、国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じ又は生ずるおそれがある」(第二十六条)ような場合だけではなく、「物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合で、生活関連物資等の価格が著しく上昇し又は上昇するおそれがある」(第三十条)ときや、更には、全国的には必ずしも「異常」とほ言えないが、「特定の地域」において、不足することにより、その地域の住民の生活の安定又は地域経済の円滑な運営が著しく阻害され又は阻害されるおそれがある」(第二十二条)ような場合も含まれる。

本法は右に述べたような事態に対処するための「国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め」ている。

日本法の対象となる物資ほ、「国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資」である。なお、生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律(いわゆる「買占め等防止法」)活との関連性が高い物資のみを対象としていたが、今次国民生活安定緊急措置法の制定に伴ない、本法と合わせて、その対象を「国民経済上重要な物資」をも含めることとされた。

これは、必ずしも生活関連物資とはいえない物資であっても、国民経済上重要な物資の価格の上昇需給の不均衡等は、国民経済の円滑な運営を阻害しひいては、国民生活の安定を害うことにもかんがみ、生活関連物資のほか、国民経済上重要な物資をも本法の対象としたものである。「国民生活との関連性が高い物資」とは生活必需物資等国民の消費生活に必要な物資その他国民生活に関連性の高い物資をいう。
「国民経済上重要な物資」とは、基礎資材等国民経済におけるウエイト、重要度等を勘案した重要な物資をいい、例えば、量的金額的には必ずしも大きくなくとも、生産活動等に不可欠な物資は、国民経済上重要な物資に含まれる。

本法は、生活関連物資等の「価格及び需給の調整等に関する緊急措置」を定めている

具体的には、第三条乃至第十三条の価格の調整に関する措置及び第十四条乃至第二十六条の需給調整に関する措置がこれである。なお、調整「等」としたのは、第二十三条乃至第二十五条の設備投資に関する指示等の規定は総需要抑制策の一環としてとられるものであって、生活関連物資等の需給調整を端的な狙いとしたものではないからである。

本法は、期限の定めのないという意味で恒久法である。しかし、本法の具体的適用は、本法各本条に規定するよな事態が生じた場合に限って政令で「物資」又は「期間」を指定した後、り、各本条に定める事態が解消すれば、右の指定を解除することとしており、内容的には限時法的性格の強いものであるといえる。
(法第二十二条の地域的な需給不均衡に関する規定は、例外的に政令による物資の指定は要件とされていない。)。
・・・・・・
(割当て又は配絵等)
第二十六条
1物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合において、生活関連物資等の供給が著しく不足し、かつ、その需給の均衡を回復することが相当の期間極めて困難であることにより、国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じ又は生ずるおそれがあると認められるときは、別に法律の定めがある場合を除き、当該生活関連物資等を政令で指定し、政令で、当該生活関連物資等の割当て若しくは配給又は当該生活関連物資等の使用若しくは譲渡若しくは譲受の制限若しくは禁止に関し必要な事項を定めることができる。
2前項の政令で定める事項は、同項に規定する事態を克服するため必要な限度を超えるものであってはならない。
(要 旨)
第二十六条においては、生活関連物資等の割当て若しくは配給又は当該生活関連物資等の使用若しくは譲渡若しくは誤受の制限若しくは禁止に関し必要な事項を定めることとなっている。
本来、物資について自由市場にゆだねることにより、その最適配分がなされるべきであるが、長期的かつ著しい物資の供給の不足が生じる事態においては、自由市場にゆだねておいては、経済的強者により物資の買占め等により、経済的弱者に対する物資供給が十分になされなくなり国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じることとなる。ここでは、経済的自由よりも公平な分配が維持されなければならない。また、そのような供給不足物資の使用は国民経済的にみて有用な使途に限定されなければならない。次に、有用な用途に用うべきものとして割当て又は配給された物資を他の者に自由に譲渡することを放置しておくことは割当て配給制度を採用した本旨に反するものとして制限又は禁止する必要が生じる。以上のような趣旨から本条は設けられたがその詳細は政令に委ねられた。
〔解説〕
1 発動要件
本条の発動要件は、
①物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合において、
②生活関連物資等の供給が著しく不足し、かつ、
③その需給の均衡を回復することが相当の期問極めて困難であることにより、
④国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じ又は生ずるおそれがあると認められるときである。
まず①の要件は本法案における他の条文の発動要件よりも加重されているが、これは必ずしも標準価格等を前置しなければ本条を発動し得ない趣旨ではない。もっとも、価格を定めない配給制度というものは目的的に考えると実際問題として機能し得ないのではないかとも考えられる。
②の要件も、生産及び輸入に関する規定の発動要件よりは加童されているが、これらの発動を前置しなければ本条が発動されない訳ではない。急速に著しい供給力低下が起った場合などは、直接本条が発動されることも考えられる。供給不足の状況については第十四条の解説を参照のこと。
③の要件により、単なる供給不足の事態ではなく、長期的な供給不足により、国民生活に重大な支障を生じるような事態でなければ本条は発動し得ない。

2政令委任の関係
本条について詳細な事項は政令にゆだねられている。まず対象物資は、生活関連物資等を政令で指定することとしている。規制に関する必要な事項は、本条の規定する事態を克服するため必要な限度を
超えない範囲内で政令で定めることとされている。
 具体的に政令で定める事項は、その時の経済情勢、物資の流通経路の具体的状況に即して定める予定であるが例として次のようなものが考えられる。
①政府としての割当て、配給等の基本的方針
②割当て、配給等の証書の交付
③特定物資のしゃし的目的等への使用制限、禁止
④一定の手続(配給証書)によらない譲渡、誤受の制限等
 なお本条に基づく政令には、その政令若しくはこれに基づく政令の規定又はこれらに基づく処分に違反した者に対し五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処する等の規定を設け得るようになっている。(第三十七条参照)したがって、本条の場合、構成要件が政令に委ねられることとなっている。
別に法律の定めがある場合石油需給適正化法・食糧管理法等など割当配給について既に個別法がある場合ほ、この法律によらず、それらの個別法による趣旨である。
・・・・
第八章 罰則
本章は、第三十四条から第三十七条までの規定より成るが、これらの規定は、いずれも本法の実施を担保するために設けられたものである。

罰則
第三十四条
次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

ー 第二十九条の規定に違反して同条に規定する事項の記載をせず、虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかった者

二 第三十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
三 第三十条第二項若しくは第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同条第二項若しくは第三項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

第三十五条
 第十五条第一項、第二十四条第一項又は第二十五条第一項の規定による届出をしなかった者は、二十万円以下の罰金に処する。

第三十六条
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金を科する


第三十七条
第二十六条第一項の規定に基づく政令には、その政令若しくはこれに基づく命令の規定又はこれらに基づく処分に違反した者を五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨の規定及び法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して当該違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する旨の規定を設けることができる。

要旨
帳簿記載、立入検査等に関する規定に対する違反行為に対する罰則、届出義務に対する違反行為に対する罰則、これらについての両罰規定、割当配給等に関する違反行為に対する罰則を定めている。
〔解説〕
第三十四条は、帳簿記載義務違反等、立入検査等の受忍義務違反等について、また、第三十五条は生産計画、投資の届出義務違反について、それぞれ他法令とのバランスを考慮しつつ規定を設けている。なお、標準価格等を遵守しない場合、標準価格等を表示していない場合、生産、輸入、保管、売渡し、等、設備投資の抑制等に関する指示については、指示に従わなかったときは、罰則によらず、公表という措置によることとしているが、これは、公表による社会的制裁がこのような場合には効果的、かつ、機動的手段と考えられるからである。
第三十六条は、前二条の違反行為があったときは、その行為者本人のほか、その行為者と一定の関係にある法人または人に対しても罰金刑を科する旨の規定、いわゆる両罰規定である。本法のような主として企業の事業活動を対象とする法律にあってほ、実際の行為者のみを罰するのでは、目的を十分に逹することができないので、監督責任のある法人または人にも罰金刑を課すこととしているものである。
第三十七条は、第二十六条第一項(割当て又は配給等)の規定に基づく政令において、同政令等の違反者に対し、懲役、罰金等を課しうる旨の規定および両罰規定を設けることができることを定めたものである。割当配給等に関しては、その実質的内容を多く政令に委任しているため、罰則についても、具体的に規定しえないので、その限度を示し、その限度内において罰則を政令で定めることとしている。

政令

https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200310002/20200310002-3.pdf
令和2年政令第 号
国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令
内閣は、国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)第二十六条第一項及び第三十七条の規定に基づき、この政令を制定する。
第一条第一項中「国民生活安定緊急措置法(以下「法第四条を第六条とし、第三条を第五条とし、第二条を第四条とする。国民生活安定緊急措置法施行令(昭和四十九年政令第四号)の一部を次のように改正する。」という。)」を「法」に改め、同条を第三条とし、同条の前に次の二条を加える。
(法第二十六条第一項の政令で指定する生活関連物資等)
第一条
国民生活安定緊急措置法(以下「法」という。)第二十六条第一項の政令で指定する生活関連物資等は、衛生マスクとする。
(衛生マスクの転売の禁止)
第二条
衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者から衛生マスクの購入をした者は、当該購入をした衛生マスクの譲渡(不特定又は多数の者に対し、当該衛生マスクの売買契約の締結の申込み又は誘引をして行うものであつて、当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)をしてはならない。

本則に次の一条を加える
第七条
1 第二条の規定に違反した場合には、当該違反行為をした者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の罰金刑を科する。
附則
(施行期日)
1この政令は、公布の日から起算して四日を経過した日から施行する。
(経過措置)
2改正後の第二条の規定は、同条に規定する譲渡のうちこの政令の施行の日前に締結された売買契約によるものについては、適用しない。
3 別表第一国民生活安定緊急措置法施行令(昭和四十九年政令第四号)の項中「第四条第一項」を「第六地方自治法施行令(昭和二十二年政令第十六号)の一部を次のように改正する。条第一項」に改める