地裁の支部の事件で、主張書面で青少年条例違反が包括一罪になるという判例を引用したら、裁判官が「立証してください」というんだ。
裁判所がそういうので、金沢支部の判例は保管検察官に謄写拒否されて摘録のメモを報告書にして、福岡高裁の判例も、地裁判決→控訴理由→高裁判決をまとめた報告書にしたんだが、上告審でも「裁判所名、事件番号、裁判年月日、掲載文書名、掲載箇所等を指示して、その判例を具体的に示せば」判例は立証の要なしとされているんだから、下級審でもそれでいいだろう。結局、全部引用しておけばいいんじゃないか。
条解刑事訴訟法
1) 判例違反の主張方法
判例違反の主張は,上告趣意書にその判例を具体的に示す必要がある〈規253)。具体的に示すとは,事件番号,裁判年月日,出典等を明らかにすることであって,事例を具体的に示さないものは不適法として上告を棄却される(最判昭25・5-11集4-5ー765等〉。
また,原判決の判断がどの点で判例違反となるのか具体的に示す必要がある(最決昭26・3・3O架5-4-742)。これを欠く場合も不適法とされる。
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規則第二五三条(判例の摘示)
判例と相反する判断をしたことを理由として上告の申立をした場合には、上告趣意書にその判例を具体的に示さなければならない。
恐喝、同未遂被告事件
最高裁判所第2小法廷決定昭和45年2月4日
最高裁判所裁判集刑事175号73頁
判例タイムズ246号269頁
判例時報588号95頁
弁護人荒木孝壬の上告趣意第一点の一、二は、判例違反をいうが、判例の具体的な摘示がなく(上告理由として判例違反を主張する場合には、裁判所名、事件番号、裁判年月日、掲載文書名、掲載箇所等を指示して、その判例を具体的に示すべきであるが、本件上告趣意書には、単に裁判所名と判決要旨の記載があるのみである。)、その余は事実誤認の主張であり、同三は、単なる法令違反の主張、同第二点は、量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。また、記録を調べても、同法四一一条を適用すべきものとは認められない。
【出 典】 判例タイムズ246号269頁
被告人は恐喝の共謀共同正犯である旨を原判決が判示したのに対し、弁護人は、上告趣意において、共謀共同正犯の成立要件に関する最高裁および大審院判例の要旨のみを引用し(事件番号、裁判年月日、掲載文書名、掲載箇所等の記載はまつたくない。)、原判決は判例違反であると主張した事案である。
本件に類似する先例としては、事件番号、宣告年月日を指示せず、単に事案を説明して大審院判例集12巻207丁以下参照としているが、その箇所に当該判例を発見できない事例につき、判例の具体的摘示がないとした最高裁第2小法廷昭39・7・17決定(裁判集152号325頁)がある。
上告理由として判例違反を主張する場合に、上告趣意書にその判例を具体的に示さなければならないことは、刑訴規則253条の明定しているところである(なお、判例として、最1小判昭25・5・11刑集4・5・765、同2小決25・5・12刑集4・5・797、同2小決26・3・30刑集5・4・742参照)。
問題は、どのように記載した場合判例の具体的な摘示があつたといえるかということであるが、本決定の要求している程度の記載は、すでに、これまで判例の摘示方法として一般的慣行となつているものに過ぎないといえよう(ただし、事件番号は省略されることもある。)。そして、判例違反を主張する場合は、必ず当該判例の掲載されている文書(通常は判例集であろうが、法律雑誌、教科書等のこともありうる。)を参照しているはずであるから、右程度の記載をすることは、一挙手一投足の労に過ぎないはずであつて、訴訟上の権利の誠実な行使(刑訴規則1条2項)という点からも、当然のことと思われる。