児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

①当時14歳から19歳までの被害女性合計7名に対し,略取した上(1名を除く),強いて姦淫又はわいせつ行為に及び,加えて,うち1名には下着の強取にまで至ったというわいせつ略取及び強姦3件(判示第6,第9,第17),わいせつ略取及び強制わいせつ3件(判示第1,第3,第10),強制わいせつ1件(判示第4),強盗1件(判示第2),②当時11歳の被害女児を逮捕略取して監禁し,その監禁中に強いてわいせつ行為に及び,さらに口止めのために脅迫したというわいせつ略取,逮捕監禁及び強制わいせつ1件(判示第14)並びに脅迫1件

第4(平成26年6月18日付け追起訴状記載の公訴事実第2に対応する。)
   女性にわいせつな行為をしようと考え,平成24年5月9日午後9時30分頃,神奈川県藤沢市内の路上において,被害者C(当時17歳)に対し,持っていた包丁及びカッターナイフを順次示し,「静かにしろ。」などと言い,その腕をつかんで引っ張るなどの暴行脅迫を加え,同市内の林まで同人を連行した後,その頃から同日午後9時38分頃までの間,同所において,同人に対し,「頑張ってしごかないと家に帰してあげないよ。」などと言う脅迫を加え,同人の乳房をもみ,同人に手淫させるなどし,もって強いてわいせつな行為をした。
第5(平成26年6月18日付け追起訴状記載の公訴事実第3に対応する。)
   平成24年5月9日午後9時32分頃から同日午後9時35分頃までの間,前記第4記載の林において,被害者Cが18歳に満たない児童であることを知りながら,同人に,被告人を相手方として性交類似行為をする姿態等をとらせ,それらを撮影機能付携帯電話機で撮影し,その動画データを電磁的記録媒体である同携帯電話機の内蔵記録装置に記録して保存した上,同年9月11日午前2時13分頃,東京都町田市(以下略)所在の当時の被告人方において,同携帯電話機の内蔵記録装置に記録された同動画データを電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。

(量刑の理由)
 本件は,被告人が,約2年半の間に,①当時14歳から19歳までの被害女性合計7名に対し,略取した上(1名を除く),強いて姦淫又はわいせつ行為に及び,加えて,うち1名には下着の強取にまで至ったというわいせつ略取及び強姦3件(判示第6,第9,第17),わいせつ略取及び強制わいせつ3件(判示第1,第3,第10),強制わいせつ1件(判示第4),強盗1件(判示第2),②当時11歳の被害女児を逮捕略取して監禁し,その監禁中に強いてわいせつ行為に及び,さらに口止めのために脅迫したというわいせつ略取,逮捕監禁及び強制わいせつ1件(判示第14)並びに脅迫1件(判示第16),③前記①及び②の被害女性のうちの18歳未満の5名について,姦淫行為又はわいせつ行為の際にこれを動画撮影して児童ポルノを製造したという児童ポルノ製造5件(判示第5,第7,第11,第15,第18),④ナンバープレートを盗んだという窃盗3件(判示第8,第12,第13)の事案である。
 まず,①の一連の犯行の態様は,夜間,路上でいきなりナイフ等を示すなどして脅迫し,6件では被害者を原動機付自転車に乗車させて略取した上,1件では腕を引っ張るなどして,いずれも人気のないところに連行して被害者が助けを求めることができない状況下に追い込んだ上で姦淫行為やわいせつ行為に及んだ点において,卑劣かつ危険で悪質な常習的犯行といえる。事前に凶器等を準備した上で女性を物色していたという点で計画性もある。また,未成年である被害者らの受けた肉体的,精神的苦痛は甚大であることからすれば,各被害者やその家族らが被告人の厳重処罰を望んでいることも当然である。加えて,特に第9の犯行後には,自己の犯行の痕跡を残さないようにする目的で,晩秋の深夜という寒空の下,全裸の被害者に冷水を浴びせかけた上,衣類をすべて持ち去るなど,事後の情状も悪い。また,第1の犯行の際に犯した第2の強盗の犯行も決して看過することはできない。すると,①の一連の犯行は,被告人は,多くの事案では,犯行後,被害者らが帰宅しやすいと考えられる場所まで移動した上で被害者らを解放しているほか,その理由はともかくとして姦淫行為に際しては避妊の措置を講じ,また,後記②の犯行も含め,被害者に性経験がなかったりすると,強姦には着手しようとしていない点などを考慮しても,強姦罪を複数犯した事案の中では,かなり重い部類に属するものと認められる。
 次に,②の犯行は,女児を拉致して自宅に監禁し,わいせつ行為をしようと企て,脅迫や拘束に使う道具やわいせつ行為の際に使う性的玩具等を準備し,拉致に使う自動車には盗んだナンバープレートを付け替えた上,拉致できそうな女児を物色して及んだというもので,計画性が高い犯行である。その上で,路上で発見した被害女児に対し,カッターナイフを示すなどして同児を自動車に押し込んで逮捕略取し,手足に手錠をかけ袋詰めにした上で被告人の当時の自宅に連行し,約3日半にもわたって監禁した上,その間,同児の人格を顧みることなく,自己の欲求を満たすためだけの道具のように扱う執拗なわいせつ行為を繰り返し行ったという態様は,極めて卑劣かつ身勝手で,悪質な犯行である。何とか家に帰りたい一心で被告人からの行為に耐えていたという同児の被った肉体的,精神的苦痛は想像を絶するものであり,被害当時11歳という心身ともにいまだ幼い同児の今後の成長過程への悪影響も大いに懸念される。さらに,同児に対し,口止めのために行われた脅迫も巧妙かつ卑劣な犯行で軽視できない。同児及びその両親の処罰感情が峻烈であることは当然である。してみると,②の犯行は,略取,逮捕監禁を伴う強制わいせつ事案の中では,非常に重い部類に属するものと考えられ,量刑の加算要素として大きく考慮する必要がある。ただし,被告人は,被害女児を駐在所にほど近い場所で,駐在所までの道順を教えた上で解放しており,監禁期間がより長期間にわたりわいせつ行為をした時間もより長い事案などと比較すると,本件は同種事案の中で最も重いとまではいうことができない。
 また,③の各犯行は,被害者に被害申告を思いとどまらせるとともに,後に再生して自己が楽しむなどの目的で姦淫行為やわいせつ行為の様子を動画撮影したという被害者らの心情を顧みない身勝手で悪質な犯行であり,被害者らは事件後もインターネット上への動画データ流出の不安を抱えるなど精神的被害も大きいことからすれば,量刑を加重する要素として十分考慮する必要がある。
 そして,④の各犯行は,被害者を略取する際に使用する車両に取り付けて,犯行発覚を防ぐという狡猾な目的で行われたもので悪質であり,量刑上加算要素として若干は考慮する必要がある。
 以上によれば,本件の犯情を強姦罪を複数犯した事案の中で見ると,①の一連の犯行のみをもってしても,かなり重い部類に属すると考えられる上,上記②から④までの量刑上の加重要素をも考慮すると,最も重いとまではいうことができないものの,非常に重い部類に属する事案と認められ,これまでの同種事案の量刑分布の中でも相当長期の懲役刑は免れない。
 そこで,他の事情について見ると,被告人が概ね素直に事実を認め,被害者らへの謝罪の言葉を述べるなど,一応反省の態度を示していることや,被告人の父親が証人として出廷し,受刑後も更生へ協力する旨述べていることは,被告人の更生を多少は期待させる事情として若干は有利な事情といえるため,これらの事情も考慮した上で,主文の刑期が相当であると判断した。
 したがって,主文のとおり判決する。
(公判出席)検察官   高橋 健
      国選弁護人 遠藤秀幸
(求刑 懲役25年)
  平成27年3月12日
    横浜地方裁判所第4刑事部
        裁判長裁判官  成川洋司
           裁判官  大森直子
           裁判官  高市惇史