児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ画像のキャッシュとか削除した画像の単純所持の問題

 ドットコムの回答でも「保管罪」なんてトンチンカンな回答があるので、警察でちょっと聞いてきたので、手堅い解釈を示しておく。
 まず、「所持」というのは児童ポルノを、自己の事実上の支配下に置くことです。
 キャッシュでも削除済みでも「視覚により認識することができる」媒体が手元にある場合は、保管罪ではなく所持罪の問題です。
 物理的破壊が理想的です。
 破壊できない場合には、再生可能性が残ります。所持罪を疑われる危険がある

江口寛章ら「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部改正」警察学論集第67巻第10号
・「所持」及び「保管」の意味如何。
(1) 「所持」及び「保管」の意義について
? 児童ポルノの「所持」とは、有体物(写真、DVD・ハードデイスク(記録媒体)など)である児童ポルノを、自己の事実上の支配下に置くことをいう。
? これに対し、電磁的記録の「保管」とは、電磁的記録を自己の実力支配内に置いておくことをいう。
具体的には、当該電磁的記録をコンビュータのレンタル・サーバに保存したり、自己が自由にダウンロードすることができるリモート(プロパイダのメールボックスに入れられたメールを閲覧できる機能)の記録媒体に保存する行為がこれに当たる(これに対し、自己の所持するパソコンのハードディスクに保存している場合は、ハードディスク(有体物)の所持罪に該当する。)。
(2)故意について
?所持罪が成立するためには、児童ポルノであることを認識し、かつ、所持について認容している必要がある。
? メールで児童ポルノを送り付けられた場合や、パソコンがウイルスに感染し勝手に児童ポルノをダウンロードしてしまった場合でも、そのことを知らない場合は、所持罪は成立しない。

 故意過失を問わず、児童ポルノ画像を閲覧すると、インターネット一時ファイルに画像が保存されています。これをキャッシュといいます。

http://windows.microsoft.com/ja-jp/internet-explorer/manage-delete-browsing-history-internet-explorer#ie=ie-11
キャッシュされた画像とインターネット一時ファイル
PC に保存されたページ、画像、その他のメディア コンテンツのコピー。ブラウザーはこれらのコピーを使用して、次回これらのサイトにアクセスしたときにコンテンツをすばやく読み込みます。

 保存場所はこんなフォルダ。
C:\Users\...\AppData\Local\Microsoft\Windows\Temporary Internet Files
 たとえば
http://www.npa.go.jp/
を閲覧すると、

という画像がパソコンに暫く保存される。
 ここにある児童ポルノ画像ファイルは児童ポルノなのかというと、下記の定義に当てはめるしかなく「視覚により認識することができる」限り、児童ポルノに該当するとしかいいようがない。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
(定義)
第二条  3  この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一  児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二  他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三  衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

 キャッシュを削除したとか、保存していた画像を削除した場合でも、復元可能性がある限り、「視覚により認識することができる」ということで、児童ポルノに該当する。

 じゃあ、そういう媒体を所持していることはやむを得ないとして、単純所持罪になるのかというと、単純所持罪の規定は

児童ポルノ所持、提供等)
第七条  自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。

ということなので、
  児童ポルノの認識がないこと
  所持の認識が無いこと
  自己の性的好奇心を満たす目的がないこと
で、逃れられそうだ。
 持ち物から児童ポルノが発見されると、主観的要件でしか逃げ道がないというのは、自白すれば終わりという厳しい状況になる。

 具体的には要領良く

 ネットを見ただけで保存されるとは知りませんでした。「視覚により認識することができる」とは思いませんでしたし、所持している認識もないし、自己の性的好奇心を満たす目的もありません
・・
 ゴミ箱に入れて、削除してあるので、復元できるとは思いませんでした。「視覚により認識することができる」とは思いませんでしたし、所持している認識もないし、自己の性的好奇心を満たす目的もありません

という弁解をすれば罪には問われないだろう。

 なお、罰則はh27.7.15の施行だが、所持はすでに禁止されている。

(児童買春、児童ポルノの所持その他児童に対する性的搾取及び性的虐待に係る行為の禁止)
第三条の二  何人も、児童買春をし、又はみだりに児童ポルノを所持し、若しくは第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管することその他児童に対する性的搾取又は性的虐待に係る行為をしてはならない。


 国会での説明を参考にして下さい。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2014pdf/20141001036.pdf
「真に児童の権利の保護に必要な規制を目指して」 立法と調査 2014. 10 No. 357(参議院事務局企画調整室編

ウ「自己の性的好奇心を満たす目的」を要件とした趣旨
「自己の性的好奇心を満たす目的」を要件とした趣旨について問われた。
提出者からは、「様々なケース、例えば、嫌がらせなどによりメールで児童ポルノを送りつけられた場合、あるいは、本人がネットサーフィンをしている間に、意図しないアクセスで児童ポルノが自分のコンピューターに入ってしまう場合、あるいは、パソコンがウイルスに感染して勝手に児童ポルノをダウンロードした場合、また、インターネット上の掲示板に児童ポルノが掲載された場合における、掲示板の管理者やサーバーの管理者が、自分が作ったサイトにそれが投稿されてしまうことによって事実上持ってしまうような場合、それらを処罰するというのは合理的ではないので、処罰範囲を合理的に限定するために、『自己の性的好奇心を満たす目的』というものを要件として、所持の対象を明確化した」旨の答弁があった14。
エ「自己の性的好奇心を満たす目的」の有無の判断方法等
「自己の性的好奇心を満たす目的」の「目的」とは何か、どう判断するのかについて問われた。
法務省からは、「一般論として言うと、これは目的犯であり、目的犯におけるこの自己の性的好奇心を満たす目的を立証する場合には、当該の具体的事案における客観的事情をまず基本とし、かつ、被疑者、被告人を含む関係者の供述をも踏まえて行うものと考えている。したがって、この自己の性的好奇心を満たす目的については、児童ポルノを所持するに至った経緯、所持している児童ポルノの内容や量、所持の態様などの客観的な諸事情を基本とし、それに関係者の供述を総合して判断することになると考える」旨の答弁があった15。
オ「自己の性的好奇心を満たす目的」といった主観的要件を課すことになると、捜査機関による自白強要を誘発することにならないかとの危惧
「自己の性的好奇心を満たす目的」のような、個人の内心に踏み込むような主観的要件を課すことになれば、捜査機関による自白強要を誘発することにならないかについて問われた。
提出者からは、「客観的事情からの推認によって立証されないと、性的好奇心を満たす目的を持っているとは判ぜられず、捜査当局による恣意的な運用を招く規定ではない」旨の答弁があった16。

カ自己の意思に基づいて所持・保管するに至った者に該当するか否か
児童ポルノを第三者から勝手にメールで送りつけられたり、勝手にかばんの中に放り込まれたり、自分のロッカーの中に入れられてしまったような場合には、自己の意思に基づいて所持するに至った者には該当せず、処罰対象とならないかについて問われた。
提出者からは、「基本的には、このような事例については自己の意思に基づいて所持するに至った者には該当しない。もっとも、送りつけられた時点では自己の意思に基づくものでなかったとしても、その後、メールに添付された児童ポルノ画像を開き、当該ファイルが児童ポルノであることを認識した上で、性的好奇心を満たす目的を持って、これを積極的な利用の意思に基づいて自己のパソコンの個人用フォルダに保存し直すなどしたときは、その時点で新たに自己の意思に基づいて所持するに至ったということが認められると考えている」旨の答弁があった17。
なお、法務省も、「基本的に同様の理解をしている」旨の答弁があった18。
ク改正法施行前に所持するに至った児童ポルノについて、罰則規定が適用される改正法施行の1年後までに自己の性的好奇心を満たす目的がなくなった場合に処罰対象となるか否か
児童ポルノを入手することが処罰対象となるような時点以前には、自己の性的好奇心を満たす目的で入手したが、処罰対象となる罰則規定施行時点では既に自己の性的好奇心を満たす目的は失われ、当該児童ポルノの所在もよく分からないような場合に処罰対象となるのかについて問われた。
提出者からは、「自己の性的好奇心を満たす目的とは、当該事件において立件対象となる所持の時点においてその有無を判断すべきものであり、その有無は、所持者の内心についての供述だけでなく、児童ポルノの所持の態様、分量、所持している対象の内容等の客観的事情からの推認により認定されるべきものである。その上で、個別具体的な証拠関係により本来認定すべき事柄ではあるが、立件対象となる所持の時点で自己の性的好奇心を満たす目的が認められない場合には単純所持罪で処罰されることはなく、かつては自己の性的好奇心を満たす目的を持って児童ポルノを収集し、現在も家のどこかに児童ポルノが保管されていると認識している場合であっても、罰則適用開始後の所持の時点において自己の性的好奇心を満たす目的がないときは処罰されず、そのような場合に、家捜しまでして見つけ出して廃棄することは求められないと解している」旨の答弁があった20。
なお、法務省も、「基本的に同様の理解をしている」旨の答弁があった21。