児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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刑事局青少年課長曰く「児童福祉法の淫行罪についての以上のような理解を前提とすると、条例の淫行罪の性格は、おのずから明らかになるといえよう。両者は、共に児童の健全な成長を保護法益とするものであるが、条例の性質上、後者は、前者に対する補充法的性格を有するものであること、後者が単に児童の淫行の相手方となることを構成要件としていること等からみれば、前者が「淫行」と「させる」の2要件によって、児童の健全な成長に対する現実の侵害ないしはそれに対する具体的危険を対象とするのに対して、後者は、児童が淫行をすることによる抽

 大学図書館の地下まで行って引っ張り出してきました。

亀山継夫「判例研究 児童に淫行をさせる罪 その2」(研修347号60頁)刑事局青少年課長
児童福祉法の淫行罪についての以上のような理解を前提とすると、条例の淫行罪の性格は、おのずから明らかになるといえよう。両者は、共に児童の健全な成長を保護法益とするものであるが、条例の性質上、後者は、前者に対する補充法的性格を有するものであること、後者が単に児童の淫行の相手方となることを構成要件としていること等からみれば、前者が「淫行」と「させる」の2要件によって、児童の健全な成長に対する現実の侵害ないしはそれに対する具体的危険を対象とするのに対して、後者は、児童が淫行をすることによる抽象的な危険を対象とするものと解する。
児童を相手方とする全く任意の性的交渉は、もし相手方が成人であれば単に不道徳な行為というにとどまるものであり、まして児童の側からの誘いかけがあったような場合には、その誘いに応じたというだけで処罰の対象となる点において広きに過ぎるという感があることは免れないが、これを前掲13ないし15の裁判例のように、構成要件的に限定しようとすると、児童福祉法の淫行罪との違いが明らかでなくなってしまい、ことに、15ないし18のような限定をすると、淫行を「させる」ということと同じになる。(自己が淫行の相手方となるか、第三者を相手方にさせるかという点に違いがあるという考え方もないではないが、これについては後述する。〉条例の補充的性格、青少年保護育成条例の趣旨、目的、条例の淫行罪の体裁等を総合して考えると、条例の淫行罪は、性道徳上社会的に是認されないような性的交渉は、おとなにとってはともかく、児童にとってはそれ自体で健全成長に対する抽象的危険を招くものであるという認識に立った上で、成人に対して、ζのような危険を回避すべき義務を課したものと解するのが最もすなおな見方であろう。したがって、前出9ないし12の裁判例の考え方が是認されるべきであろう。もっとも、淫行罪の成立を否定した前掲裁判例のうち、15ないし18は、先に指摘したように一八歳以上ではあるが20歳未満の少年の犯した事犯に関するものであり、この年齢層が成人でもなく児童でもない特殊な中間層であること、青少年保護育成条例の罰則は児童か犯した場合には適用しないとされている例が多いとと、成人と同様の回避義務ないしは児童保護義務を要求するわげにはいかないこと等を考えると、結論的には妥当なものであったかもしれないということができるが、その理由付けは、違法性ないしは責任の大小、有無の点によるべきであったと思われ、構成要件の限定解釈によってその結論を理由づけようとしたところに無理があったと思われる。