児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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青少年条例違反(淫行・わいせつ行為)による権利侵害

 何千万円もの損害賠償請求をされることもあるんですが、個人の権利侵害性は薄いようです。

最高裁判所判例解説刑事篇
昭和60年度201頁
福岡県青少年保護育成条例違反被告事件昭和60年10月23日
高橋省吾
前掲各裁判例が説示するように、刑法の強姦罪等は主として個人の性的自由を保護法益とし、その処罰の対象となる性行為も自由意思の制圧ないしこれに準ずる場合としているのに対し、本条例の淫行罪は青少年の特質にかんがみてその健全な育成を図る見地から、青少年の育成を阻害するおそれのある淫行を禁じ、たとえそれが青少年の同意に基づくものであったとしてもその相手方を処罰することにしたものであるから、両者は処罰の趣旨・目的、内容(対象となる性行為の態様)等を異にするというべきである。そして、本条例の淫行処罰規定の保護法益を右のように解する以上、右規定違反の行為について必要な捜査が行われ公訴の提起がなされたとしても、そのことが直ちに青少年の保護育成上有害であるとはいえないのであって、親告罪とするか否かは右規定のもたらす現実的影響、地方的特性等をも考慮した立法政策上の問題というべきものと思われる。
また、刑法一八〇条一項は、被害者の感情を考慮して強姦罪等を親告罪としているが、二人以上の者によって現場において強姦罪等が犯された場合(同条二項)や被害者に致死傷の結果を生じた場合(同法一八一条)には、被害者
の感情を尊重すること以上に犯人を処罰することの必要性が大きいと考えられるところから、もはや親告罪とされていない。本条例の淫行罪は、前叙のとおり、強姦罪等とは罪質・保護法益を異にしている上(注一五)、青少年が合意の上で淫行をしたときには、その青少年が強姦罪等のそれと同様の被害者とはいえないと思われること、また、親告罪としたのでは、合意の上での淫行の場合、規制目的を達しえないことも考えられることなどに徴すると、本条例の淫行罪が青少年の告訴を要件としていないとしても、必ずしも刑法との整合性を欠いて不合理であるとはいえないと思われる。因みに、児童福祉法の淫行罪(同法三四条一項六号、六〇条一項)は非親告罪である。
長島裁判官の補足意見は、本条例と刑法との関係につき、次のとおり指摘する。
「一三歳以上の女子であっても、年齢的に、心身の未成熟又は身体と心の発達の不均衡の故に、性的行為の意義について正しい十分な理解をもたず、したがってこれに対する同意ないし積極的な欲求そのものが完全な自由意思に基づく自由な自己判断によるものとは認めることのできない年齢層の女子が存在することは顕著な事実である。刑法は、このような性的な無知に乗じて前記のような手段によらないでこれらの少女を性的行為の対象とするような行為を直接処罰する規定を設けていないが、そのことによって、刑法が、そのような行為は社会一般の倫理観に反するとはいえず、およそ刑事罰の対象とすべきではない、とする価値判断を示したものと即断することはできない。いわんや、児童の保護と健全育成という社会的見地から、」のような性的被害にかかりやすい年齢層にある青少年を保護するための立法が、刑法と抵触しないことは明白である。」