マニュアルにはこう書いてありますが、児童買春罪が非親告罪とされた趣旨は、示談によって起訴を逃れることを防ぐと説明されていますので、それを理解している検察官に当たると、全く効果がありません。不勉強な検察官に当たった場合にのみ有効です。
どう転んでも執行猶予という事件で高額の示談をしていることがありますが、量刑には影響がありません。執行猶予付きの場合の刑期は水増しされているのでその水増し分に吸収されてしまうのでしょう。
実刑事案の場合は、示談を理由にして減軽した高裁判決がいくつかあります。これは刑期1ヶ月単位、未決算入1日単位というレベルで刑期が検討されるので当然の結果だと思います。
示談して悪い事情になることはないですが、弁護士に勧められて示談してお金を払ったけども起訴猶予にならなかった、軽くならなかったという苦情が来ないように十分説明しておく必要があります。
情状弁護ハンドブックP129
淫行条例や児童買春の場合,示談をして示談金を支払うと淫行や買春の代金を支払っているようでどうにも気が進まないのですが,どのように考えればよいのでしょうか。
A 確かに,被害児童に示談金を支払えば淫行や買春の対価の支払いのように思われてしまいます。ここで,未成年を被害者とする場合の事件の示談金を誰に支払うのかということを検討します。結論からいって親権者へ支払うことになります。そうすれば財産管理を親権者が行ないますので,被害児童に売春の対価を渡すことにはなりません。
未成年者が被害者の場合の示談交渉の相手方は誰か.両親が離婚している場合は親権者がどちらであるのかよく確認をし親権者と示談書を取り交わします。未成年者の親権者は通常は母親でしょうが.刑事事件の示談交渉ということで母親が父親に応援を求めることも不思議ではありません。示談交渉に離婚した父親が出てきたとしても示談書は親権者である母親と締結すべきです。被害児童の両親が離婚していることを進んで話すことも少ないでしょうから,検察官に相談をして,親権者が誰であるのか確認をします。住所が分かつていれば住民票や戸籍に遡って調査をすることも可能ですが,時間との関係で捜査機関の持っている情報を利用させてもらいましょう。
示談金は今後の被害児童の成長に役立つように親権者が考えて使ってくれればよいのです。被疑者・被告人がとやかくいうことではありません。むしろ.今後は未成年者にちょっかいを出すことを慎むようにしなければなりません。
被害者側がどうしても示談金を受け取らないと同辞している場合には, しょく罪寄付の方法も検討してください。少しでもよい情状資料を作っていくことが弁護人の役割です。
こういう非親告罪の趣旨を知っている検察官にあたると、示談しても起訴猶予にはなりません。
森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P84
(3) ところで、児童買春の罪は、被害者等の告訴がなくとも処罰す
ることができることとなっています。
この点、児童買春に閲する罪については、被害者である児童の名誉等を守るため、刑法の強姦罪、強制わいせつ罪のように親告罪にするべきであるという意見もありました。
しかし、児童買春の罪については、加害者やその背後の組織の報復を恐れて告訴できなかったり、保誰者への金銭の支払いで示談をし、告訴を取り下げさせたりするようなことが通常の性犯罪以上に多いことも考えられ、これを親告罪とすると、児童の保護を十分に閃ることが困難となり、性の商品化を防止することができなくなるので、非親告罪としました。
P167
Q25 強制わいせつ罪が原則として親告罪とされているのに児童買春罪を非親告罪としたのはなぜ、ですか。
A強制わいせつ罪は、犯罪の性質上、これを訴追し処罰することにより被害者の精神的苦痛等の不利益が増すことが考えられることから、被害者の保護の観点から親告罪としているものと解されています。
しかし児童員春罪については、加害者やその背後の組織の報復を恐れて告訴できなかったり、保護者への金銭の支払で示談をし、告訴を取り下げさせたりするようなことが通常の性犯罪以上に多いことも考えられ、これを親告罪とすると、児童買春の相手方となった児童の保護や、児童を性欲の対象としてとらえる風潮の抑制、児童一般の心身の成長への重大な影響の防止を十分に図るることが困難になるので、非親告罪としました。