児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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師弟関係による準強制わいせつ罪(秋田地裁H25.2.20)

 性交・性交類似行為までやってれば、師弟関係の立証だけで児童淫行罪で有罪になりますが、そこまで至らない場合には「被告人の指導は非常に厳しく,練習内容はもとより,怒ると部員を無視したり練習の場から外したりすることもあり,また,礼儀や身だしなみ,授業態度など部活動以外の学校生活全般に及んでいた。しかしながら,部員らは,被告人の指導,指示に従うことが個人やチームの実力向上につながり,インターハイ出場も可能になるものと受け止め,被告人の指導力に信頼を寄せつつ被告人を尊敬し,被告人の厳しい指導に耐えながら部活動に励んできた。中でも,被害者らには,部活動に限らず学校生活の面においても被告人の指示は徹底しなければならず,これに反した場合には被告人の指導を受けられず,試合にも出してもらえないなどという意識が強く根付いていた。」を立証して準強制わいせつ罪にするか、青少年条例違反にするかということになります。

(罪となるべき事実)
 被告人は,秋田県立E高等学校教諭として平成21年4月から同校運動部の顧問兼監督を務めていたものであり,被害者A(当時17歳),被害者B(当時16歳),被害者C(当時16歳)及び被害者D(当時16歳。以下,4名を「被害者ら」ともいう。)は同部の2年生部員であった。
 被告人は,同部の監督に就任してから3年目の平成23年8月にはインターハイ出場を果たすまでの成果を上げ,被害者らを含めた部員全体は,被告人による指導の結果,チームの実力が向上し,インターハイ出場が可能になったものと認識していた。
 被告人の指導は非常に厳しく,練習内容はもとより,怒ると部員を無視したり練習の場から外したりすることもあり,また,礼儀や身だしなみ,授業態度など部活動以外の学校生活全般に及んでいた。しかしながら,部員らは,被告人の指導,指示に従うことが個人やチームの実力向上につながり,インターハイ出場も可能になるものと受け止め,被告人の指導力に信頼を寄せつつ被告人を尊敬し,被告人の厳しい指導に耐えながら部活動に励んできた。中でも,被害者らには,部活動に限らず学校生活の面においても被告人の指示は徹底しなければならず,これに反した場合には被告人の指導を受けられず,試合にも出してもらえないなどという意識が強く根付いていた。
 こうした被告人と被害者らの関係の下,被告人は,
第1 平成23年8月9日午前零時10分頃から同日午前1時頃までの間,秋田県由利本荘市α××番地所在のホテルc×××号室において,被害者Cに対し,「脱げ。」などと言い,被害者Cが「嫌です。」と答えたにもかかわらず,更に「脱げ。」と繰り返し言った上,なおも被害者Cが断ると,「これセクハラだか。これをセクハラだと言うんだったら,あとお前に用はないから出て行け。」などと言い,被害者Cが被告人に逆らうことができない状態にあるのに乗じ,被害者Cが着ていたTシャツの裾を両手で持ち上げるなどしてこれを脱がせ,被害者Cの上半身をブラジャーを着用しただけの半裸の状態にさせるなどし(平成24年5月29日付け起訴状公訴事実第1)
第2 同日午後9時過ぎ頃から30分くらいの間,同室において,被害者Bに対し,「鎖骨の部分出せるか。」と言い,被害者Bが「出せません。」と答えたにもかかわらず,「脱げるか。」などと言い,従うか迷っている被害者Bに対しさらにカウントダウンをするなどし,被害者Bが被告人に逆らうことができない状態にあるのに乗じ、被害者Bに着ていたTシャツを脱がさせ,左手でその右肩を押さえた上,ブラジャーの中に右手を差入れて乳房を弄び,さらに,被害者Bのブラジャーのホックを外すなどし(平成24年5月29日付け起訴状公訴事実第2)
第3 同年9月10日午後11時頃から同月11日午前3時頃までの間に,青森県F市所在の青森県立G高等学校敷地内にあるG会館3階廊下において,被告人に来るよう言われていたため同所に様子を伺いに来た被害者A及び被害者Bに対し,「来い。」,「寝ろ。」などと言って仰向けになって両腕を広げた状態で被告人が寝ていた布団に両名を入らせ,それぞれに被告人の腕を枕にするように添い寝させた上
1 被害者Aに対し,肘を内側に曲げて抱き寄せるようにして「これセクハラだが。」と言い,さらに,その後布団の中で被害者Aと二人だけになった際にも「これセクハラだが。」などと言って,被害者Aが被告人に逆らうことができない状態にあるのに乗じて,被害者Aが着ていたTシャツの裾から手を差し入れて胸部付近の素肌を手掌で触り,さらに,Tシャツの上から被害者Aの胸部を手掌で触るなどし(平成24年4月2日付け公訴事実第1)
2 被害者Bに対し,廊下に敷かれていた上記布団とは別の,被害者Bが1人で寝ていた布団の中に入り,腕枕をしていた腕の肘を曲げて抱き締め「セクハラだが。」と言い,被害者Bが「違うと思います。」と答えると,「思いますじゃ困る。」などと言って,被害者Bが被告人に逆らうことができない状態にあるのに乗じ,被害者Bが着ていたTシャツの裾から手を差し入れて,ブラジャーの上から乳房をつかんだ上,ブラジャーのホックを外して乳房を手で弄んだほか,パンツの中に手を差し入れ,被害者Bの陰部を手指で弄び,さらに,被害者Bの右手首をつかんで自己の勃起した陰茎に触らせるなどし(平成24年4月2日付け公訴事実第2)
第4 同月17日午後11時頃から同月18日午前零時頃までの間,青森県I市所在のJ高等学校●●ハウス2階の被告人及び同部コーチのd(以下「dコーチ」という。)が宿泊していた部屋において,被害者Dに対し,「脱げ。裸で待ってろ。そしたらd(dコーチ)喜ぶぞ。」などと言い,被害者Dが「嫌です。」と答えたにもかかわらず,「脱げ。」と繰り返し言い,さらに,その身体に覆いかぶさり,被害者Dが被告人に逆らえない状態にあるのに乗じ,右手を被害者Dのパンツの中に差し入れて股関節付近を触った上,被害者Dを膝立ちにさせて両手でその頭をつかんで被告人の股関付近にその顔面を引き寄せ,「俺のなめるか。」などと言って口淫を迫るなどし(平成24年5月29日付け公訴事実第3)
第5 同年10月21日午後10時頃から同日午後11時頃までの間,山形県長井市β×番××号d旅館××号室において,被害者Aを呼び出して2人きりになり,被害者Aに対し,「一緒にお風呂に入りたいな。」,「エッチしたいな。」などと言って,被害者Aが被告人に逆らえない状態にあるのに乗じ,その身体に覆いかぶさり,その口に接吻した上,被害者AのTシャツ,ブラジャーの中に手を差し入れて乳房を弄び,ハーフパンツとパンツを脱がせて,自己の陰茎を被害者Aの陰部に押しつけるなどし(平成24年4月24日付け起訴状公訴事実第1)
第6 平成24年2月2日午後6時5分頃から同日午後6時30分頃までの間,秋田県H市所在の秋田県立E高等学校敷地内にあるセミナーハウス内において,被害者Aと2人きりになり,被害者Aに対し,「一緒にお風呂入りたいな。」,「この前途中だったから続きがしたいな。」などと言って,被害者Aが被告人に逆らえない状態にあるのに乗じ,その口に接吻をした上,体操着,ブラジャーの中に手を差し入れて乳房を弄ぶなどし(平成24年4月24日付け起訴状公訴事実第2)
もって,それぞれ被害者らの抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。