児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

犯罪捜査のため第三者に対する強制

 車掌に確保された窃盗犯人の逃走防止ということだと、乗り合わせた乗客は強制捜査に強制的に協力させられたことになります。大菩薩事件の判例を見ても、根拠法はないけどある程度許容されるようです。乗客は赤軍派扱いになります。詳細は渡辺咲子先生に聞いて下さい。
 

http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20130927-OYO1T00648.htm?from=main2
新幹線(16両、乗客310人)は広島駅行きの最終で、被害は同駅に着く直前に発覚。到着後、県警が犯行状況などを確認するためJR西日本に要請して全乗客を約30分間、車両内にとどめた。JR西も乗り継ぎの在来線の出発を最大37分遅らせ、延べ約760人に影響が出た。
 発表では、容疑者は26日午後11時50分頃、東広島―広島間を走行中の東京発広島行き「のぞみ129号」内で、座席で寝ていた男性会社員(42)のバッグから約4万円などが入った財布を盗んだ疑い。犯行を目撃した別の乗客が車掌に通報し、車掌が容疑者を取り押さえた。
 連絡を受けた県警は、容疑者の逃走防止などを目的に、到着後も新幹線のドアを開けないようJR西に要請。当時、多くの乗客が寝ており、逮捕容疑の被害者とは別に数人が窃盗被害を訴えていることから、県警が調べている。

渡辺咲子「任意捜査の限界101問(四訂)」P28
第7問
任意捜査において第三者に対する有形力の行使が認められる場合があるか。
〔関係条文〕刑訴法一九七条一項
一任意捜査においても、被疑者に対して有形力の行使が認められる場合があることは、前問において検討したとおりであるが、同様に、第三者に対しても有形力を行使できる場合があるであろうか
もとより、警察力は、その行使を必要とする原因を作出した者(犯罪容疑者など)に対して行使されるのを原則とし、それ以外の者に対しては緊急の必要がない限り行使し得ないものであるから、第三者に対しては、被疑者と同様の有形力の行使が許されないことはいうまでもない。
しかし、個人の自由も公共の福祉のためには相応の制限を受けるもので、警察の責務を遂行するために緊急の必要のある場合、相当な限度内で第三者の自由を制限することが許容される場合がある。
二これについては、昭和五九年の最高裁の判断が参考となる。
これは、在日韓国大使館に抗議行動に押し掛けた集団の一人が、警備の警察官に暴行を加えて傷害を負わせた事案で、被害を受けた警察官は犯人の人相等を確知したが、犯人が集団の中に紛れ込んでしまったため、応援を求めて犯人探索のため集団を停止させ、その場から立ち去ろうとしていた集団の一員の肩に手を掛けて制止しようとしたものである。最高裁は、この警察行による集団の停止について、犯罪に関わりのない多数の第三者の自由を約することとなるのであるから、警察官の職務執行として軽々に許されるべきものではないとしながら、犯罪の内容が決して軽微と言えないこと、集団の中から犯人を検挙できる可能性が極めて高かったが、停止方法以外に犯人検挙に有効適切な方法がなかったこと、あらかじめ停止を求める発言があり、停止を求めた際、警察官の身体や楯が集団の先頭部分にいた者の身体に接触する程度にとどまるもので、説得の手段の域にとどまるものであること、停止の時間も六、七分の短時間で第三者の受けた不利益がさして大きくないこと、集団を離れようとした者に手を掛けた行為も説得の手段の域にとどまること等を総合すると、犯人検挙のための捜査活動として許容される限度を越えたものでないと判断した(最決昭五九・二・二二刑集三八巻二号二九五頁)。
なお、強制捜査に関しては、通常逮捕に際して、そばに居合わせた者の身体を拘束することが許容された事例として、赤軍派集団の寝泊りしていた場所で、その一人を逮捕するため、全員の身体を一時拘束したものがある(いわゆる大菩薩事件、東京高判昭五三・五・三一)。
右の最高裁決定も、犯人を発見すれば緊急逮捕すべき事案であり、任意捜査一般に第三者規制を認めたものではないことに留意しなければならないが、ここに挙げられた犯罪の軽重、捜査の必要性・緊急性、特に他の手段の有無、第三者に対する自由制限の程度が説得の手段の域にあるか否か、第三者に与えた不利益の程度等の具体的状況を比較検討してやむをえない場合には、第三者に対する規制が認められることとなろう。

P40
第13問
職務質問を行うために第三者を規制することができるか。

酒に酔った集団によるけんかがあった場合の職務質問や、人通りの多い場所での職務質問を行う場合、質問の対象者以外の者の一言動によって、職務質問が困難となる場合がある。
このような場合、質問の相手方に対しては、派出所等への同行を求めるのが適当であろうが、質問・同行に応じるように説得中にその仲間や野次馬が説得行為を妨害しようとしたり、質問の相手方は質問・同行に応じようとしているのに、その仲間等がこれを妨げようとすることがある。
警職法が定めるのは、質問の相手方に対する措置のみであって、第三者について特に規定しないが、職務質問の日的を達するためには、第三者の妨害排除のための説得が当然認められるし、職務質問の必要性と妨害の程度に応じた、ムリ理的最小限度のものであるかによって、その説得の限度は定まるものと言える。
第三者の妨害が、犯罪を構成する場合は、現行犯人逮捕等の手続を採ることを検討しなければならない。また、「犯罪がまさに行われようとする」場合に当たれば、警職法五条に規定する警告・制止を行うべき場合もある。
第三者が、積極的に妨害の行為に出ていなくとも、職務質問の必要性・緊急性に照らし、具体的状況によっては、第三者に対する規制が必要な場合もある。
第7問に挙げた最高裁判例は、捜査における第三者規制として警察官の第三者に対する停止措置を認めたものであるが、この決定の原審である東京高判昭五五・五・二二(刑裁月報一二巻四・五号一二七一頁)は、これを職務質問を実施するための態勢を整えるための措置であって、個々人に対して強制力を行使したものではなく、警職法二条一項の趣旨から認められるとしているのが参考となろう

爆発物取締罰則違反、殺人予備、兇器準備結集、兇器準備集合、建造物侵入、威力業務妨害公務執行妨害、強盗予備
東京高等裁判所判決昭和53年5月31日
【掲載誌】  高等裁判所刑事裁判速報集2304号
       刑事裁判月報10巻4〜5号883頁
       東京高等裁判所判決時報刑事29巻5号103頁
       刑事裁判資料241号511頁
       刑事裁判資料230号535頁
       刑事裁判資料224号70頁
【評釈論文】 別冊判例タイムズ9号153頁
       別冊判例タイムズ11号64頁

  (五)、現行犯逮捕に先行した自由制限の適否
   (1)、前示のように原判決が、現行犯逮捕に先行して集団の全員が身柄を拘束されたと認定しながら、これを適法と判断したことについて、所論は、概ね、次のように主張して原判決の右判断を論難する。
   (イ)、右の身柄拘束は法律上の根拠を欠く違法なものであるのに、これを適法とした原判決の判断は、憲法三一条・三三条・刑訴法一九九条の解釈適用を誤つたものである。
   (ロ)、仮に右の事前拘束が許される場合があるとしても、本件においては、その要件は充足されておらず、警察官らもその趣旨で身柄を拘束する意思はなかつた。
   (ハ)、本件では、当時の警察官の人数・装備をもつてすれば、逮捕された■■■を直ちに護送することは十分可能であつたから、遅くとも、■■■逮捕の完了をもつて、右のような全員の身柄拘束や、逮捕者の身の安全確保のための捜索などの必要性は消滅した。それ以後の身柄拘束ないし捜索が違法であることは一層顕著である。
   (2)、たしかに、通常逮捕状を執行するに際し、同逮捕状の効力として、被疑者以外の者すなわち第三者の身柄拘束が許されることを法律上直接明示した規定は見当らない。しかし、第三者によつて被疑者に対する逮捕状の執行が妨害されるおそれがあり、とくに、逮捕状の執行に従事する捜査官の生命・身体に危害が加えられるおそれがあつて、右の捜査官において右のおそれがあると判断するについて相当な理由がある場合には、緊急やむを得ない措置として、逮捕状の執行に必要かつ最少の限度において、相当と認める方法により一時的に右の第三者の自由を制限することができると解するのが相当である。けだし、刑事訴訟法が逮捕状の執行という強制措置を認めている以上、これに対する妨害の予防ないし排除のために、右の程度の緊急措置は刑事訴訟法ないし警察官等の職務執行に関する法によつて当然に予定し、是認されているものと解すべきであり、このように解する以上、かかる強制手段の対象から第三者を除外すべきいわれはないからである。