児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

再び、光回線は電気通信回線か?

松川実「『著作権法における私法的解釈と刑法的解釈」青山法学論集 第49巻3号
本件は,刑事事件であるから,著作権法2条1項9号の5の規定する「送信可能化」,「電気通信回線」およびその元規定である電気通信事業法2条I号が規定する「電気通信」は罪刑法定主義に基づき厳格に解釈しなければならない。例えば, 「ファイバー」は光をエネルギーとして回線の中で信号を送受信するから電気をエネルギーとする「霞気通信」とは異なり,
従って,故意で「光ファイバー」を使って他人の著作物の送信を行う行為は著作権法119条1項の規定するところではない。とはいえ, 「光ファイパー」も「電気通信jも類似するから,同様に処罰すべきであるという類推解釈は,罪刑法定主義から許されない。これに対し,回線とは通常は電気をエネルギーとして送受信するものをいうが,光をエネルギーとして同じく回線を通して信号を送受信するものとすれば,法的には「回線」に含まれると解することもできる。これは回線を拡張解釈したものであり,形式的には罪刑法定主義に反しないことになろう。ガソリンカー事件では大審院94)は後者の拡張解釈の手法をとったものと思われる。
新しい技術が主主場したときに,それを従来の法律用語の概念に包摂させるには,様々な手法が採られるが,それを抽象的な文言を具体化する補充的解釈と呼ほうが,拡張解釈あるいは類推解釈と呼ぼうが,すでに結論が前から決まっていて, その結論に合致するように合目的的に解釈手法を選択するだけである。少なくとも拡張・類推解釈に関して興味ある指摘は,「拡張解釈は類推の論理を具体的事実が法文に包摂されることをいうために用いているのであり,拡張解釈と類推解釈とは実質的にまったく同じであり,当然,同ーの結論を導き出しうるものである。拡張解釈が認められるのなら類推解釈も認められるべきだという,一見乱暴に見える意見はこの意味ではきわめて正当である」95) という。

それに対し, Winny著作権法違反被告事件判決は,このような解釈手法ではなく, 「電磁波を用いて種々の情報を送信又は受信することが電気通信」であり,光ファイパ一通信も磁気波を用いて種々の情報を送信又は受信するのであるから,光ファイハ一通信が「電気通信」に該当することは明らかであるという論理を立てている。しかし「電磁波を用いて種々の情報を送信又は受信することが」すべて「電気通信」とはいえないはずである。「電磁波は波長によって様々な分類がされており,波長の長い方から電波・光、x線ガンマ線などと呼ばれる。電波は周波数が30Hzから3THzの電線波を指し, さらに波長域によって超低周波・超長波・長波中波、短波・超短波・マイクロ波と細分化される。( 中略〔筆者))光は波長がlmmから2nm程度のものを指l,波長域によって赤外線・可視光線紫外線に分けられている。波長がlnm以下ではX 線, lOpm以下ではガンマ線と呼ぶ」という96)。従って,仮に赤外線,紫外線を使って情報を送受信する技術があったとすれば, それを電気通信という上位概念で括ることは不可能であろう。京都地裁の判断はまずその点に誤謬がある
だけでなく, 京都地裁の技術的説明が正しいとすれば,電気通信と光ファイバー通信の上位にくる概念は,電磁波, あるいは電磁的方法であり, あえて電気通信と光ファイパ一通信の上位概念を打ち立てれば, それは「電磁的通信」あるいは「電磁波通信」である。電気通信事業法2条I号は,その下位概念の一つである「電気通信」しか規定していないのであるから,これが類推解釈か,拡張解釈かという議論をするまでもなく,論理が誤っているといわなければならない。従って,他の罪責は別に検討を要するが、97),送信可能化の侵害罪の範聞では有罪にすることはできないはずである。