児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

杉本尚子2歳女児が被害者となったわいせつ事件の捜査・処理(捜査研究739号)

 2歳が淫行するのか?
 強制わいせつ罪(176条後段)でいいじゃん。

第2 捜査経過
1 発覚の経緯
被疑者は,専業主婦だった妻,被害者である長女との3人暮らしの会社員であり,前科前歴はなかった。
被疑者は,別件の公然わいせつ事件(路上で女子高生に陰茎を見せつける行為)を敢行し,その際,通行人等に追尾され自宅に逃げ込んだため自宅が判明し,逮捕された。
そして,逮捕された際に所持していた携帯電話に入っていたマイクロSDカードに,被害者が何者かの陰茎をくわえている写真データ(撮影日時がデータのプロパティから分かるもの)が保存されていたことから,本件が発覚した。

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1 強制わいせつ罪での擬律の可否
本件の送致罪名は,強制わいせつ罪(刑法176条後段)であった。確かに,被害者は当時2歳なので13歳未満という要件にも該当するし,その判断力が乏しいことを前提に,暴行脅迫がなくともわいせつな行為をすることを処罰するとした,同条の趣旨に合致するようにも思えた。
しかし,強制わいせつ罪の保護法益は,個人の性的自由である。本件写真に写っていた被害者は,満面の笑みをたたえており.自らの行為の意味を全く理解できていないことは明らかで,性的感情を害されたといえるのか,そもそも性的感情を持っていたのかすら怪しい状態だったため,保
法益の侵害が認められるのかが問題であった。
文献の中には,幼児については性的感情の侵害が否定される場合があり得ることを示唆するものも見られ強制わいせつ罪として擬律した場合には,保護法益上の問題点をはらむことから,公判が紛糾してしまうおそれが認められた。
そこで,強制わいせつ罪以外での擬律ができないか検討した。

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第5 その後
1 本件の公判経過
本件は,結局,児童福祉法違反,児童ポルノ製造,公然わいせつ罪により公判請求され,被告人は,事実を争うことなく,執行猶予の判決が言い渡された。