児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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被害少女の公判供述は,同女が平成21年3月19日に本件ホテルで男性と性交したという限度では信用することができるが,その相手の犯人が被告人であるという点については,信用することができないといわざるを得ないとした事例(福岡高裁H23.1.27)

福岡県青少年健全育成条例違反被告事件
福岡高等裁判所平成23年1月27日
本件は,被告人が,被害少女(当時16年)に対し,同女が18歳未満であることを知りながら,同女と性交し,青少年に対し,淫行をしたとされる事件の控訴審で,被告人は,その当時,住居地周辺から離れておらず,原審判決認定の日時・場所における犯行は不可能と主張した。控訴審は,本件被害の相手及び被害日の特定は,被害者の公判供述によるしかないが,裏付け証拠などがなく信用性が担保できないとして,原判決を破棄し,改めて無罪を言渡した事案
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
       主   文
 1審判決を破棄する。
 被告人は無罪。
       理   由
 第1 弁護人の控訴理由(事実誤認)及び事実取調べの結果に基づく弁論
 1 控訴理由
 1審判決は,被告人は,平成21年3月27日か28日ころ,福岡市中央区(以下略)ホテル「△△ホテル&リゾート」(以下「本件ホテル」という)の客室で,本件条例違反の淫行に及んだと認定しているが,被告人は,その当時,佐賀県唐津市内から出ておらず,1審判決認定の日時・場所における犯行は不可能であって,被告人は無罪であるのに,上記有罪認定をした1審判決には,明らかな事実誤認がある。
2 弁論
 被害少女は,被害の日について,捜査段階では同月19日と一貫して述べていたのに,公判供述時に,突如,同月19日か27日か28日と供述を変遷させているし,同女の公判供述を裏付ける客観的な証拠はなく,これを信用することはできないから,被告人は無罪である。
 第2 検察官の答弁及び事実取調べの結果に基づく弁論
 1 答弁
 被害少女の公判供述は十分信用することができるのに対し,アリバイを主張する被告人の供述は信用できず,弁護人の主張には理由がない
・・・・
キ 以上によれば,関係証拠上,平成21年3月19日に,被害少女が本件ホテルを利用した可能性が高い一方,その相手が被告人であるとは認められないことになる。そうすると,被害少女は,同日,被告人以外の者と本件ホテルを利用した可能性が高いと考えざるを得ないが,この事態を合理的に説明するとすれば,同女の記憶違いであるか,あるいは,同女が被告人以外の者との関係を秘匿するために,現に性交の相手となったことがある被告人について,その日時や場所については虚偽を述べている可能性を考えるしかない(被害少女は,被告人以外にも□□のサイト上で知り合った複数の男性と思われる人物に携帯電話メールアドレスを教えたり,あるいは,教えてもらったりしており,その後,携帯電話メールで直接やり取りをしていることがうかがわれ,しかも,その中には,ドライブに連れて行ってあげると誘う者に対して,同女から携帯電話メールアドレスを教えているケースもあること(当審検21),そして,同女は,上記の職務質問の際に,被告人の本名や実際の年齢を知り,被告人に嘘をつかれていたことを知って,捜査の当初のころは,被告人に対して怒っていたこと(1審公判供述)からすると,既に警察や保護者の知るところとなった被告人を相手として供述した可能性は否定しきれない)。
 ク 小括
 以上のとおり,被害少女の公判供述は,同女が平成21年3月19日に本件ホテルで男性と性交したという限度では信用することができるが,その相手の犯人が被告人であるという点については,信用することができないといわざるを得ない。
・・・・・

第4 破棄自判
 以上のとおり,1審判決が本件公訴事実について,被告人を有罪と認めた点は,事実の誤認があり,その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかである。
 そこで,刑訴法397条1項,382条により,1審判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して,当裁判所において更に判決する。
 既に説明したとおり,被告人が公訴事実記載の日時に本件ホテルで被害少女に対する淫行に及んだという事実は認定できず,犯罪の証明がないから,刑訴法336条により,被告人に対して,本件公訴事実について無罪の言渡しをする。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成23年1月27日
    福岡高等裁判所第3刑事部
        裁判長裁判官  陶山博生
           裁判官  溝國禎久
           裁判官  岩田光生