児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

いわゆる迷惑防止条例(痴漢・盗撮)における「公共の場所」について

 弁護士ドットコムの先生はホテルの個室も「公共の場所」に当たるというのですが、「不特定多数の人が、同時に利用し得る性質」じゃないから、「公共の場所」に当たらないと思います。

合田悦三「いわゆる迷惑防止条例について」(『小林充・佐藤文哉先生 古稀祝賀刑事裁判論集 上巻』)
禁止の場所
これについては、先に述べたとおり、すべての都道府県条例が、「公共の場所」と「公共の乗物」に限定している。そして、「公共の場所」と「公共の乗物」の定義規定もすべての条例に置かれており、細部には同一ではない部分はあるものの、それらをまとめて言えば、「公共の場所」については、「道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場、飲食席、遊技場その他の公共の場所」とされている。有償・無償を問わず不特定多数の者(公衆)が、自由に出入りし利用することができる場所を指すのであり(曾出・前掲331)、飲食店が閉店中であるなど公開されていないときは該当しない(安冨五六頁)。 同様に「公共の乗物」については、「汽車、電卓、乗合自動車、船舶、航空機その他公共の乗物」とされている。 有償・無償を問わず不特定多数の者(公衆)が、自由に利用することができる乗物を指す。 タクシーや貸切りのバス・列車は含まれない(會田・335頁)。

風俗・性犯罪シリーズ捜査実務全書9第3版
P366
「公共の場所」とは、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場等が例示されているほか、乗車券等を公衆に発売する場所(出札口、発売窓口、プレイガイド等)を含むことが明らかにされている。また、「公共の乗物」については、汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機が例示されている。

P372
「公共の場所」については、第2 条の解説参照。なお、公共の場所でない場所(例えば、作業員宿舎)から公共の場所(例えば、道路)にいる人に対し卑わいな言動をなした場合であっても、行為者と相手方とが至近距離にあり、相手方が自己に向けられた言動であることを覚知し得る状態にあって行為者が公共の場所で、行ったのと同様の効果があり、公共の場所における善良な風俗環境が阻害されるようなものであるときは、本項違反が成立する。
「公共の乗物」とは、有償たると無償たるとを問わず、不特定多数の者が自由に利用し得る乗り物をいう。 例えば、電車、パス、船舶、航空機、ロープウエー、ケーブルカー、エレベータ一等がこれに当たる。しかし、タクシー、貸切バス、貸切列車等は、不特定多数の人が、同時に利用し得る性質のものではないから公共の乗り物には当たらない。

警視庁防犯課長 乘本正名「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の制定について(2)」警察研究 第33巻12号P36
第一項は、婦女に対して卑わいな言動を行なうことを禁止している。軽犯罪法は、迷惑をかける行為、あるいはけん悪の情を催させるような行為を禁止しているのであるが、これらの行為は、いずれも不特定多数の公衆を対象とする行為として・とらえられている。これに対し本項は、特定の婦女に対する行為をとらえて規制するものであるが、またそれによって、行為の悪性はより強く作用するととに在り、単なるしゅう恥や迷惑に止まらないで、著しいしゅう恥や不安を與えるととになる。従って本項はこのようま刑法の脅迫ないしは強制わいせつの周辺的な行為を対象とするものである。
・・・
第一項、第二項とも、公共の場所または公共の乗物に沿いて当該行為が行なわれた場合に違反が成立するのであるが、公共の場所または公共の乗物とは、当該場所または乗物の使用または利用について、不特定多数の者の自由に委かされているものをいい、有償であると無償であるとを関わず、また管理者が、私人であると公共機関であるを問わない。公共の場所または公共の乗物の用例故、他の法令にも多くみられるところであるが、具体的には当該法令の目的趣旨によって自らその内容が限定されるものである

宮田正之編著 供述調書記載例集P302
2 公共の場所
「公共の場所」とは,都条例2条1項において「道路,公園,広場,駅,空港,ふ頭,興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。以下「公共の場所」という。)」 と規定しており, 「公共の場所」とは,不特定かつ多数の者が自由に出入りし又は利用し得る施設及び場所をいう。例えば,商店の店舗,飲食店,遊技場,デパート,ホテルのロビーなどでマンションの廊下も含まれる。
3 公共の乗物
「公共の乗物」とは,都条例2条1項において「汽車,電車,乗合自動車,船舶,航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)」と規定しており,有償,無償を問わず,不特定かつ多数の者が自由に利用し得る乗物をいう。
「その他の公共の乗物」の例として,エレベーター, ロープウェーが挙げられるが,エレベーター内については, 「公共の乗物」として処理している場合と「公共の場所」として処理している場合とがあり,都道府県によって取り扱いが異なっているのが実情であり,各都道府県の例によるほかはないであろう。これについての判例は見当たらない。
なお,エスカレーターを「公共の乗物」として処理している例は見当たらず, 「公共の場所」としてとらえている。

安冨潔「第4回 迷惑防止条例」捜査研究 第51巻7号
「公共の場所」とは、不特定かつ多数が自由に利用し、又は出入りすることができる場所をいう。道路、公園、広場など国や地方公共団体の所有地・施設に止まらず、駅、桟橋・ふ頭、デパート、飲食底、興行場等も公共の場所に当たる(なお、秋田では水泳場、富山では水浴場を例一目的に挙げている)が、これらの場所であっても、公開されていない状態にあるときは、公共の場所とはいえない(法務省刑事局特別刑法研究会『特別刑法犯捜査ハンドブック』)。なお、公共の場所でない場所(例えば、作業員宿舎)から公共の場所(例えば、道路)にいる人に対し卑わいな言動をなした場合であっても、行為者と相手方とが至近距離にあり、相手方が自己に向けられた言動であることを覚知し得る状態にあって行為者が公共の場所で行ったのと同様の効果があり、公共の場所における善良な風俗環境が阻害されるようなものであるときは、この罪が成立する(會田・前掲書三三五頁参照)。

乗本正名 他「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例解説」P22
その他の公共の場所とは、例示されたもののほか、不特定かつ多数の者が自由に出入し、または利用しうる施設および場所をいう(注八)。例えば、飲食店、ダンス・ホール、遊技場、公会堂、百貨店、商店、ホテルのロピー等がこれである。しかし概念的にはこれらに当たる一場所または施設であっても、現に不特定かつ多数の者によって利用されうる状態におかれていないものを含まない。すなわち、公共の場所とは、場所の属性ではなく状態である。従って、公開時間以外の興行場、飲食店、遊技場や一部または全部を借り切って区画閉鎖し、現に利用中の者以外の者は利用し得ない状態にある場所は、公共の場所とはいえない
〔注八]公共の場所の用語例としては、公安条例(昭和二五・七・三、都条例44)第一条、軽犯罪法第1条十三号、売春防止法〈昭和一一二・五・二四、法律一一八)第五条、酒に静って丑朱に迷惑をかける行為の防止等に関する法律第三条等にみられるところであるが、不特定多数の人が自由に利用し、または出入することのできる場所をいう点で、ほぼ一致している

北海道警察本部「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例解説」S40
(1)
「その他の公共の場所」とは、例示されたもののほか、不特定かつ多数の者が自由に利用し、または出入しうる場所および施設をい

例えば、ダンスホール、遊技場、公会堂、百貨店、商店、ホテルのロビー等がこれである。
しかし、概念的には、これにあたる場所または施設であっても、現に不特定かつ多数の者によって利用されうる状態におかれていないものは含まない。すなわち、公共の場所とは、場所の属性でなく状態である。従って、公開時間以外の興行場、飲食店、遊技場あるいは一部または全部を借り切って区画閉鎖し、現に利用中のもの以外のものは、利用しえない状態におる場所は、公共の場所とはいえない。
(2)
「その他の公共の乗物」とは、例示されたもののほか、有償たると無償たるを間わず、不特定多数の者が自由に利用しうる乗物をいう。
例えば、ケーブルカー、ロープクエ|、エレベーター等が考えらるo タクシー、貸切バス、貸切列車等は特殊な場合を除き、不特定多数の人が同時に利用することができる性質のものでないから、公共の乗物でない。「公共の場所」で述べたように、乗物自体の属性ではなく、その状態である。

 奈良県警本部長の答弁もあります

http://gikai02.kaigiroku.jp/kaigiroku/cgi-bin/WWWdocHatugen.exe?A=docHatugen&RA=frameNittei&USR=naraken&PWD=&XM=000100000000000&L=1&S=15&Y=%95%bd%90%ac18%94%4e&B=-1&T=1&T0=70&O=-1&P1=&P2=&P3=&P=1&K=20&N=126&H=400476&W1=%93%90%8e%42&W2=&W3=&W4=#400476_1
平成18年  9月 定例会(第281回)-09月28日−04号
P.254 ◆ 三番(井岡正徳)
最後に、警察本部長にお伺いします。
 本年五月十日、交通事故処理中の田原本警察署員が、救急車内でデジタルカメラを使って盗撮行為に及んだという不祥事が発生したことは、前警察本部長との事務引き継ぎなどで既に承知されていることと存じます。私はこの事案が発生したことにより次のような思いを持ちました。
 その一つは、ほとんどの警察官は県民の安全と安心を守るために、まじめに活動していただいているにもかかわらず、ごく一部の警察官がこのような行為をしたことにより、警察に対する信頼が失墜してしまうことであり非常に残念な思いであります。
 その二点目は、救急車内は公共の乗り物、公共の場所に該当しなかったことにより、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例、一般的には迷惑防止条例と呼ばれる条例でありますが、この条例を適用できなかったことであります。悪いことをしたのは事実であるのに、なぜ取り締まることができなかったのかという思いであります。
 前者につきましては、事案発生後、直ちに適切な対応をし、厳正な処分をしていただいているところであります。また、犯罪防止活動など県警察の総力を挙げて安心・安全のまちづくりに努めていただいていることと承知しているところであり、今後とも県警察が一致団結して県民の安全確保に努めていただくことで、県民の信頼は得られるものと考えます。
 さて、私が一番問題としているのは後者の問題であり、会社の会議室や各種学校の教室等で盗撮したり、利用者が限られる車両内、例えば救急車、パトカー、タクシー、貸し切りバス等で盗撮した場合においても、条例が適用されないから事件にできない、つまり悪いことをしても捕まらないという問題です。
 県警察におかれましても、この点が問題と考えたことから、迷惑防止条例の改正の必要性を強く認識され、去る七月七日から八月四日までの間、広く県民の意見を聴取するためのパブリックコメントを実施したと理解しているところであります。
 そこで、警察本部長にお尋ねします。
 先に申し上げましたパブリックコメントの実施結果について答弁していただくとともに、この結果を受け、県警として今後どのような方針を持って対応されるのか、本部長の方針をお伺いします。
 以上、壇上からの質問を終わらせていただきます。
 議場におられる皆様方、ご清聴ありがとうございました。(拍手)
◎警察本部長(坪田眞明) (登壇)三番井岡議員のご質問にお答えいたします。
 迷惑防止条例に関するご質問でございます。
 ご指摘の田原本警察署員のケースによりまして、条例を含む現行法令が全く適用できない盗撮行為の形態があるということが判明いたしましたわけで、こうした卑劣な行為に対する規制のあり方として、十全なものかどうかということで、現条例の盗撮の規定というのを精査をしたいと考えまして、そのために条例のあり方の見直しを視野に入れて、県民の皆様方のご意見をちょうだいするために、今回のパブリックコメントを実施させていただいたわけでございます。
 今回のパブリックコメントは七月七日から八月四日までの間実施しておりまして、県民の皆様方から現行の迷惑防止条例の盗撮に関する規定の見直しについてご意見をちょうだいするという形で行っております。
 この意見募集の内容でございますけども、三つございます。一つは、公共の場所または公共の乗り物以外での下着等の盗撮行為について。二つ目が、浴場、脱衣場、更衣室、便所、その他外部から内部を容易に見通すことができない施設にいる人の衣服を脱いだ姿の盗撮行為について。三つ目が、その他、盗撮行為や痴漢行為の規制についてでございます。
 この三点につきまして、県内外八十三名の方から意見をちょうだいいたしまして、その結果、第一番目の公共の場所、公共の乗り物に限定しないで盗撮行為を規制すべきだというご意見につきましては、条例によって規制すべきだという意見が五十二件。条例じゃなくて全国的に法律で規制すべきじゃないかという意見が十七件ございます。合わせて六十九件、全体の八三%が何らかの形で規制をしていただきたいというご意見でございました。
 二番目の浴場、脱衣場、更衣室、便所、その他外部から内部を容易に見通すことができない施設にいる人の衣服を脱いだ姿の盗撮行為を規制すべきという意見は、これも条例によって規制すべきだという意見が五十三件、条例によらず全国的に法律で規制すべきだという意見は十六件でございまして、合わせて六十九件、これも全体の八三%が何らかの形で規制すべきだというご意見をいただいております。
 このパブリックコメントの結果については以上のような状況でございます。
 今後、県警察としてはどうするかということでございますけども、実はこのパブリックコメントのほかにも、県民サービス課が八月に実施しました警察活動等に関する県民の意識調査、これまだ集計中でございますけども、アンケート調査を実施しまして、こうした中でもこの盗撮行為の禁止についての県民のご意見というのを幅広く聴取いたしております。したがいまして、今後こうした県民の方々の意見を参考にしつつ、条例のそのもののあり方につきまして、関係機関との連携を図り、慎重に検討を重ねていきたいと思っておりますので、ご理解をいただきたいと思います。

滋賀県迷惑行為等防止条例の解説 滋賀県警h16 
(2) 「公共の場所」
不特定かつ多数の者が自由に出入り(有償、無償を問わない。)し、又は利用し得る場所及び施設である。
「その他の公共の場所」 とは、例示された道路、公園等のほか、遊技場、公会堂、百貨店、一般商店、ホテルのロビー等がこれに当たる。
しかし、観念的には、これらに骸当する場所又は施設であっても、現に不特定かつ多数の人に利用される状態におかれていないものは公共の場所とはいえない。
すなわち、公共の場所とは、場所の属性ではなく状態である。
したがって、公開時間以外の興行場や閉庖後の商厨は公共の場所ではないし、また、営業中の飲食店や料理店又は公会堂であっても、その一部又は全部を借り切って区画閉鎖し、現に利用中の者以外が利用することのできないような場所は、公共の場所とはいえない。
(3) 「公共の乗物」
不特定かつ多数の者が同時に自由に(有償、無償を間わない。)利用し得る乗物をいう.
「その他の公共の乗物」 とは、例示のほか、エレベーター、ロープウェー等が考えられる。しかし、タクシー、貸し切りパス、貨物列車等は、不特定多数の者が同時に利用し得ることができる性質のものでないから、公共の乗物とはいえない。
すなわち乗物自体の属性ではなく、その状態をいうものである。