児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

秋田県迷惑行為防止条例における、学校教室での着替え中の裸の盗撮行為について

 福岡の鐘ケ江啓司弁護士から聞きました。

改正後第4条3項
何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所(前項各号に掲げる場所を除く。)において当該状態でいる人を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を当該状態でいる人に向け、若しくは設置してはならない。

というのですが、
 4条3項は場所が
  場所(前項各号に掲げる場所を除く。)
という限定になっていて、
  (1) 公共の場所又は公共の乗物
  (2) 事務所、教室、貸切バスその他の特定かつ多数の人が集まる場所又は利用する乗物
を除外したので、教室での、「 衣服の全部又は一部を着けない状態でいる人を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を当該状態でいる人に向け、若しくは設置」する行為は処罰されないようです。

 4条2項で教室で「下着等(衣服等で覆われている人の下着又は身体)を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を人に向け、若しくは設置」するのは処罰されますが、「衣服等で覆われていない」場合は処罰されないように読めます。

改正前
公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例
(卑わいな行為の禁止)
第4条
1何人も、正当な理由がないのに、公共の場所又は公共の乗物において、人の性的差恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人の身体に、衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という)の上から接触し、又は直接接触すること。
(2) 衣服等で覆われている人の下着又は身体をのぞき見し、又は撮影すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所において当該状態でいる人を撮影してはならない。

改正後
秋田県迷惑行為防止条例
(旧:公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例)
令和2年4月1日施行

(卑わいな行為の禁止)
第4条 何人も、正当な理由がないのに、公共の場所又は公共の乗物において、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならな
い。
(1) 人の身体に、衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から接触し、又は直接接触すること。
(2) 衣服等で覆われている人の下着又は身体(以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる場所又は乗物において、下着等を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を人に向け、若しくは設置してはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物
(2) 事務所、教室、貸切バスその他の特定かつ多数の人が集まる場所又は利用する乗物
3 何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所(前項各号に掲げる場所を除く。)において当該状態でいる人を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を当該状態でいる人に向け、若しくは設置してはならない。

https://www.police.pref.akita.lg.jp/kenkei/news/p1979
秋田県迷惑行為防止条例
秋田県迷惑行為防止条例に改正!
(旧:公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例)
令和2年4月1日施行
盗撮の規制が強化されました!

規制場所の拡充
☆ 従来の規制場所であった「公共の場所・公共の乗物」に加え、「特定かつ多数の人が集まる場所又は利用する乗物」を拡充
禁止行為の追加
☆ 盗撮目的でカメラ等を人に向ける行為や設置する行為を規制対象に追加

県議会の会議録でもあまり議論されていません。


令和元年 第2回定例会《9月議会》 教育公安委員会 09月24日-02号
◆北林康司委員[分科員] 
 生活安全部長、迷惑防止条例の成案がまだ出来ていないということは、パブリックコメント等を実施していないからということで理解していいですか。

◎生活安全部長 
 条例の成案につきましては、現在、検察庁や県総務部総務課法制班と話を詰めている最中です。その後、10月中にはパブリックコメントを実施したいと思っております。

◆北林康司委員[分科員] 
 その詰めるべきところというのは、ここでは言えない話ですか。

◎生活安全部長 
 大まかなところは概ねきょう御説明したとおりですが、細かい表現等について検討しているところです。

◆北林康司委員[分科員] 
 分かりました。

◆沼谷純委員[分科員] 
 迷惑防止条例の改正のことで、何点かお伺いしたいと思います。基本的には厳罰化をする、あるいは時代に即した改正ということで、この方向でやっていただきたいと思っていますが、幾つか話を詰めていかなければならないところがあるのだろうと思っています。
 最初にお伺いしたいのは、例えば、盗撮の規制場所を拡充するとともに、「前段行為(盗撮目的でカメラを設置したり人に向けたりする行為)」も禁止の対象にしていく、あるいは、第5条の「つきまとい行為等」についても対象を広げていくとなっています。名称変更は別にして、全国的にこの3点--罰則の強化も含めて4点ですが、秋田県と同じように規制の拡充や強化をしている都道府県はどのくらいあるものですか。

◎生活安全部長 
 まず規制場所を拡充しているところですが、東北では宮城県福島県が既に拡充しております。全国では、26都道府県が規制場所を拡充しております。
 それから、「前段行為」については既に24都道府県が規制しています。

◆沼谷純委員[分科員] 
 もう一つ伺いたいのは、それぞれ都道府県によって、名称はともかくこういう条例があるわけですが、上位にある法律--上位法というのは何になるのですか。

◎生活安全部長 
 特にこの条例に関する上位の法令というのはありません。

◆沼谷純委員[分科員] 
 これは都道府県警察の所管、所掌を超えるわけですが、これから47都道府県の足並みが全て揃えばいいのですが、今のお話ですと、例えばA県に行くと学校では盗撮しても処罰の対象にならない、あるいはB県に行くと、例えばタクシーの中では処罰の対象にならないということになりますよね。その場合、同じ行為をしても都道府県によって犯罪になるところとならないところがあって--上位法がないのでそれぞれ都道府県警察の判断あるいは都道府県議会に任されている状況というのは、本来余りいい状況ではないと思うのです。
 そこで部長に伺いたいのですが、世の中がこういう流れになっていますから、1つの法律によって全国統一して規制していく、あるいはそれを国に働きかけていくというお考えはないですか。

◎生活安全部長 
 委員御指摘のとおり、都道府県によって条例の適用になったりならなかったりということはそのとおりです。ただ、全国的な流れは、今のところ承知しておりません。

◆沼谷純委員[分科員] 
 各都道府県の条例によって全部足並みがそろえばいいのですが、そろっていないのが現状でしょうし、都道府県によって同じ行為が禁止だったり、禁止ではなかったりということはいいことではないと思います。警察本部長も様々な全国規模の会議等に出席していると思いますので、そのような場で是非議題にしていただければということをお願いしておきます。
 続けてもう一つ、今回規制場所を拡充していこうという中で、会社の事務所や学校、タクシーとなっていますよね。現行の条例では、いわゆる「公共」と限定しているわけですが、これを「タクシー等」と改正すると、「等」がありますから、いろいろな解釈が出てくるのだろうと思います。伺いたいのは、条例に規制場所を全部列記して、「ここは駄目ですよ。」とは書けないと思いますので、逆に規制が難しい--例えば、個人のお宅等は難しいですよね。そういう意味で、ここはやはり拡充し切れない、というのはどういったところになりますか。

◎生活安全部長 
 一通り列挙しているつもりですが、今後の事案によってはそういうところが出てくるのかもしれません。今のところは、おおむね網羅されているのではないかと考えております。

◆沼谷純委員[分科員] 
 「タクシー等」とありますが、これは例えば自家用車に誰か第三者が乗った際に盗撮行為があった場合ですと、対象にならないことになりますか。

◎生活安全部長 
 特定かつ多数の方が利用するような状況があれば適用になるのですが、例えば親戚や家族だけであれば、通常立件には至らないものと思われます。

◆沼谷純委員[分科員] 
 なかなか線引きが難しいと思いますが、最近はデマンドタクシーや、NPOによる運送等、いろいろな運送形態があるものですから、特定か不特定か、あるいは多数か個人かの線引きが極めて難しいだろうと思っています。ですので、条例に明確に列記をするか考え方を整理するなど、なるべくそこをクリアにしてから周知していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

◎生活安全部長 
 パブリックコメントを実施する際に、もう少し具体的にお示ししたいと思いますが、単に盗撮目的だからといってすぐに立件できるかといえばそうではございません。周囲の状況、目撃者の状況、それから防犯カメラの状況などを総合的に判断して、立件していくことになろうと思います。なかなか一概には言えないところもありますので、御理解願いたいと思います。

◆沼谷純委員[分科員] 
 第5条のつきまとい行為等については、今回、SNSというような、正に今の時代背景を踏まえた行為が含まれているわけですよね。ここにも「等」が書かれているわけですが、SNS等で相手に対して拒まれているにもかかわらず、しつこくメールやメッセージを送ることも対象になるようですが、もう一方で、最近ではリベンジポルノといった、本人が望んでいないにもかかわらず、プライベートな写真をSNSに拡散されるといった行為も問題となっています。これについては、この条例の中で規制することができるのですか。

◎生活安全部長 
 リベンジポルノについては、別の法令で規制できると考えております。

◆沼谷純委員[分科員] 
 ちなみに……

◎警察本部長 
 少し補足させていただきます。いわゆるリベンジポルノにつきましては既に国のほうで法律が作られておりまして、望まれていないのにそういった性的な内容を拡散するような行為については罰則が設けられております。条文は今確認できませんが、一般的に法律ですので、条例よりも重い罰則が規定されているだろうと認識しております。

◆沼谷純委員[分科員] 
 お願いですが、この後パブリックコメントを実施したり、いろいろな御意見をいろいろな方から伺ったりする際に、この条例の改正のポイントだけの説明ですと、私が今伺ったリベンジポルノのようなものが条例で規制できるのかどうかがはっきりしないと思います。ですので、できれば今世の中で起きている様々な事例について、「こういうものは法律で規制されます。」とか、「この条例が対象にするのはこういうものですよ。」ということをはっきりお示しした上で、パブリックコメントで一般の方から御意見を伺っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

◎生活安全部長 
 委員御指摘のとおり、お手元にある資料には詳細が入っておりませんので、パブリックコメントを実施する際には、もう少し具体的なものをお示ししていきたいと考えております。

◆鶴田有司委員[分科員] 
 関連して、少し確認したいのですが、今沼谷委員からもありましたが、こういう犯罪は全国で起こり得るような内容だと思うのです。もしかしたら地域によって、傾向というのがあるのかもしれませんが、スマートフォンやSNS等は全国的に広く利用されているわけなので、これらによって起こり得る犯罪も、全国的なものになっていると思うのです。要は、県の条例よりも全国で統一された法律が制定されてもいいぐらいではないかと思うのですが、その辺どうでしょう。警察本部長、会議等でそういった話題は出ないものですか。

◎警察本部長 
 委員御指摘のとおり、条例というのは都道府県ごとに定めておりますので、全国一律ではございません。一方で、国のほうで統一した法律を作ろうという動きがあるとは聞いておりません。
 ただ、警察庁等も各県の条例がどうなっているかについて--当然我々の方から資料提供していますので、各県の比較ができるような状態にはなっていると思います。ですので、問題意識があれば、もしかすると新しい動きが何か出てくるかもしれませんが、現在のところ、国は各県の条例で対応ができているという認識であると推察されますので、大きな問題にはなっていないのが現状と認識しております。

◆鶴田有司委員[分科員] 
 東北では宮城県福島県で改正済みという話がありました。そうすると、残る3県については今のところそういう問題意識は余り起きていないということですか。

◎生活安全部長 
 他県の動きについては把握しておりません。

◆鶴田有司委員[分科員] 
 分かりました。ただ、全国どこでも起こり得るようなケースもあると思うのです。そうすると、全国的な会合などで、警察本部長の提案でそういう流れを持っていったほうがいいのではないかと思います。条例により各県個別に対応するよりも、全国統一で対応するほうが単純に考えていいのではないかなと私は思うのですが、その辺はどうですか。

◎警察本部長 
 仮に国で新しい法律が出来て、全国一律に規制されますと、法律のほうが上位なので、それと重なる条例の規定は無効となります。ですので、恐らく国も--県によって規制の内容がいろいろと違うところを一律にしてしまうと、かえって今まで厳しくしていたところが規制できなくなるといった問題もあるのだろうと考えています。我々としては、県内でどういう問題が今起きているかということをよく見て、県民からの御意見も承りながら、県内でしっかりと取り締まりができるように条例の規定を整備していきたいと考えております。

◆三浦茂人委員[分科員] 
 関連してですが、この条例の改正には、こういうことが起きたときはどのように罰するのか、ということが規定されているわけですが、一方で、こういうことが起きないように事前に対策することも大事だと思うのです。例えば、学校や公共の施設であればトイレを巡回して、この場所は常に人が目を光らせているとか、そういった抑止力になるような方策--条例とは別の分野になるかもしれませんが--そういったことを啓発していくことは県警では検討されていますか。

◎生活安全部長 
 現在のところは、そこまでは検討しておりません。いずれ条例の中では県民の責務という形で「こういったことをさせないようにしましょう。」ということを条例の前段でうたっていますので、今のところそこまで具体的には検討しておりません。

◆三浦茂人委員[分科員] 
 分かりました。いずれにしても、大人だからいいというわけではありませんが、子供ですと非常に慎重に対応しなくてはいけない場面もあると思います。特に学校はそういう安全、安心に関しては重要であり、教育の現場やそれに類するところでは、人の出入りを制限するなどの対策を講じていると思います。これは教育委員会の所管かもしれませんが、そういったことを是非県警でも研究できる時間がありましたら、抑止力という観点からも御検討いただければ幸いです。

◆児玉政明委員[分科員] 
 関連なのですが、今抑止力について話がありましたが、スマートフォンが急速に普及している中で、カメラで撮影しますとシャッター音が鳴るのですが、そのシャッター音を消すアプリがあるようです。盗撮被害防止の観点からも、シャッター音を消すアプリを規制するといったようなことはできないものでしょうか。例えばそういったアプリを開発しているところに、開発しては駄目ですよとか--そういったことについての話は特にないものですか。

◎生活安全部長 
 どういうところでそういったアプリを使うかというのは人それぞれだと思います。ですので、それを規制するということは今のところは考えておりませんし、働きかけもしておりません。

◆児玉政明委員[分科員] 
 そのとおりだと思います。そういうアプリを正しく使っている方がほとんどだと思うのですが、中にはアプリによってシャッター音を消して盗撮をしている人もいるのではないかと思いましたので、少し発言させていただきました



















令和元年 第2回定例会《9月議会》 教育公安委員会

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 令和元年9月25日(水曜日)
◆児玉政明委員[分科員] 
 済みません、1点だけお願いします。昨日の警察本部関係の審査で、迷惑防止条例の改正に関する質疑がありました。改正案では盗撮の規制場所等が学校や教室も規制の対象に拡充されるということで、罰則や取り締まりの対象になるということでした。今後教育委員会として、教職員の意識改革や意識啓発など、条例の改正に合わせてどういったことを計画しているとか、何か進めていく考えはあるかお聞かせください。

◎総務課長 
 対象範囲が拡大するという点につきましては検討していかなければならないと思いますが、まだ新聞報道等による情報しかございません。例えば、教室といっても体育館は含まれるのか、更衣室は含まれるのかなど、細かい情報が全然ありません。取りあえずは改正内容等が判明次第、それらを精査しまして、全教職員に通知した上で必要に応じて研修等についても考えていきたいと思っております。









令和元年 第3回定例会
令和元年秋田県議会第三回定例会会議録 第八号
議事日程第八号
  令和元年十一月二十六日(火曜日)
◎知事(佐竹敬久君) おはようございます。
 今議会におきましては、補正予算案及びその他の案件について御審議をお願いするものでありますが、提出議案の説明に先立ち、諸般の報告を申し上げます。
「公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例案」は、特定かつ多数の人が集まる場所等における盗撮行為を禁止するとともに、つきまとい行為等に対する規制を強化しようとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしく御審議の上、御可決賜りますようお願い申し上げます。



令和元年 第3回定例会
令和元年秋田県議会第三回定例会会議録 第十三号
議事日程第十三号
  令和元年十二月二十日(金曜日)
◆教育公安委員長(高橋武浩議員) ただいま議題となりました、
 議案第二百十四号は、公衆に著しく迷惑をかける行為の実態に鑑み、特定かつ多数の人が集まる場所または利用する乗り物における盗撮行為を禁止するとともに、つきまとい行為等に対する規制を強化しようとするものであります。
審査に当たっては、当局からそれぞれ説明を聞き、質疑を行いましたが、その主な内容について申し上げます。
 警察本部における「公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例」いわゆる「迷惑防止条例」の一部を改正する条例案についてであります。
 今回の条例改正により、規制場所等が拡充されるとのことだが、これにより、あらゆる場所を漏れなく規制対象とすることが可能となったのか。また、本県ではこれまで、条例の運用に際し、濫用してはならない等の条項を盛り込んでこなかったが、他の都道府県を見ると、約半数がそうした条項を明記している。今回の改正に当たり、濫用防止に関する条項を盛り込むことは検討しなかったか。併せて、学校等におけるのぞき見等の行為については、盗撮に類する卑劣な行為であるにもかかわらず、条例の適用としなかったことは、盗撮行為に対する罰則に比べ不均衡ではないかと感じるがどうかとただしたのに対し、条例改正により、規制場所はほぼカバーできたものと考えているが、場所だけでなく事案を総合的に勘案して、条例が適用となるかどうかを判断してまいりたい。また、当条例が制定された昭和三十年代から、濫用防止に関する条項を規定せずとも、問題なく運用してきた。警察法上に、憲法が保障する個人の権利の侵害や、自由を干渉してはならないことが規定されており、本改正案をもって、特段の問題が生じるおそれはないと考えている。条例の適用に当たっては、適正かつ慎重に対処してまいりたい。併せて、学校等におけるのぞき見行為については、軽犯罪法等の、他の法令を適用することが可能である。これまで、法令の適用等に支障は生じておらず、他の都道府県においても条例による規定はない。盗撮については、撮影された写真がインターネット上に流出するなどの二次被害も大きいことなどに鑑み、罰則を強化したところであるとの答弁がありました。
 質疑を終了し、討論なく、採決の結果、議案第二百十二号外八件は、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定した次第であります。





追記 2020/04/26
 記事によれば秋田県警は教室も「その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所」というのですが、最近の教室というのは浴場・更衣室・便所並みに裸なんですかね。
 さらに、改正前の条例では教室を除外するという規定がなかったので教室でも適用できそうだったのに、改正後は「(前項各号に掲げる場所を除く。)」ということで明文をもって「教室」を除外してしまっています

改正前
公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例
第4条
2何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所において当該状態でいる人を撮影してはならない。

秋田県公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例逐条解説2020年4月
(6)第3項
※ 「正当な理由がないのに」とは、
第3条の解説3(3)参照
本号における「正当な理由」としては、例えば、温泉広告ポスターの撮影、入浴シーンの映画撮影等が考えられる。
※ 「住居」とは、
人の起臥寝食の用に供せられている建物をいう。玄関であっても、衣服を着けないでいる場合があることから、ここにいう住居に当たる。
※ 「浴場」とは、
公衆浴場法(昭和28年法律第139号)第1条に規定する公衆浴場、旅館等の浴場、露天風呂、住居の風呂場等をいう。
※ 「更衣場」とは、
通常人が衣服の着替えを行う場所であり、洋服店の試着室等もこれに当たる。
※ 「便所」とは、
住居の便所、公衆便所、デパートなど各種施設に設置されている便所をいう。
※ 「その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所」とは、住居、浴場、便所、更衣室以外で、人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所をいい、例示したもののほか、病院の診察室、キャンプ場におけるテント、ホテルの一室、寝台列車の寝台、キャンピングカーなどがこれに当たる。
※ 「当該状態でいる人」とは、
浴場等で衣服を脱ぎつつある若しくは着つつある人又は裸体でいる人の姿態をいう。衣服を完全に脱衣した状態、用便のためスカートをまくり上げたり、下ろしている状態、これにより尻等が露出した状態等である。
※ 「撮影し」とは、
解説3(5)参照
本項の「撮影j行為は、写真機、ビデオカメラ、デジタルカメラ付き携帯電話等の機器を使用することを要件としており、直視したり、双眼鏡を使用して見る行為は該当しない。
ビデオカメラなどを使用して更衣場内を撮影したが、更衣場内に誰も居なかったり、衣服を着けている状態の人が撮影されていた場合は、本項違反には該当しないが、刑法第130条(住居侵入)や軽犯罪法第1条第23号(窃視の罪)の構成要件に該当する場合は、同法の適用を検討することとなる。
※ 「撮影しようとして」とは、
~ 解説3(5)参照
※ 「写真機その他の機器」とは、
解説3(5)参照
※ 「人に向け」行為の解釈上の既遂時期は、
解説3(5)参照
※第4条第3項に係る「向ける行為」の解釈
「撮影しようとして写真機等を当該状態でいる人に向ける行為」については、「通常衣服の全部又は-部を着けない状態でいるような場所」において、「衣服の全部又は一部を着けない状態でいる人」が存在する場合のみ違反が成立する。
映っている内容からは、衣服の全部又は一部を着けない状態でいる人を撮影したかどうか判別できない場合であっても、頭や腕の一部が撮影されているなど当該状態にある人の存在の可能性が認められる場合は、「向ける行為」を検討することとなる。
※ 「向ける行為」の具体的解釈
○更衣室に当該状態でいる人の存在有り
→条例違反
○更衣室に人が存在しない
→条例違反成立せず(「のぞき見」に該当すれば軽犯罪法違反)
○更衣室に服をきちんと着た人のみ存在
→条例違反成立せず(「のぞき見」に該当すれば軽犯罪法違反)
※ 「設置」とは、
解説3(5)参照
※ 「盗撮目的で写真機等を設置する行為」の解釈
盗撮目的で撮影可能な状態の写真機等を「設置」すれば、画像が撮影されなかった(できなかった) としても、本項違反となる(現実に、録画中でなくても自動シャッター等により、撮影可能な状態の写真機等を設置した時点で既遂となる。)。
つまり、盗撮目的で、当該状態でいる人を撮影しようとして、撮影可能な状態の写真機等を「設置」すれば、画像が撮影されなかった(できなかった) としても、本項違反となる。
軽犯罪法第1条第23号(窃視の罪)は、「場所」に対する規制であるのに対し、条例は、「人」に対する迷惑行為を規制するものである。設置時は、更衣場等に人は存
在しないが、営業中のプールの更衣室などにおいて、当該状態でいる人を撮影しようとして写真機等を設置する行為を規制するものである。
※犯行場所は、
制限はなく、自宅内において、自宅の浴場に仕掛けたカメラで、知人の裸体を撮影する行為等も本項違反に該当する。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200420-00011092-bengocom-soci
秋田県警の解釈
学校教室の着替え中の盗撮を改正条例で規制できるのか。可否について秋田県警察本部に問い合わせた。4月6日、県警本部生活安全部生活安全企画課が電話で回答した。
ーー秋田県の改正条例では学校教室など「特定かつ多数の人が集まる場所」での着替えの盗撮は規制できないのでしょうか

規制対象になります。「特定多数の人が集まる場所」においては、「事務所、教室」と例示していますが、あくまでも例示です。

改正条例では、大きく4条2項で盗撮を規定して、4条3項で衣服を脱ぐ場所での盗撮を規制しています。どの盗撮の項を適用するのかについて、その犯行が行われた場所の状態で判断するものです。ほとんどのケースにおいて規制対象になっています。

着替えとなると、世間一般的に「更衣室」の札がかかっている更衣場で着替える場合もあれば、状態的に更衣場として使っている実態のある場所もあるわけです。

学校に十分な更衣場がないとすれば、体育の授業などで、教室や会議室などを一定時間、更衣室として使う場合があると思います。そういった場合は、教室は「衣服を脱ぐ場所」とされるので、4条3項を適用し、盗撮は当然、違反となります。

犯行が行われたときの場所の使われ方の問題なので、着替えとして使っている場所が通常「教室」と呼ばれる場所であっても、捜査して行く中で、犯行時に着替えをしている場所だとわかれば、「通常人が衣服を全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所」に該当すると思う。そうすると4条3項を適用する。「いつもはプールの授業の前には教室で着替えてます」という場合です。

ーー条文の「(前項各号に掲げる場所を除く。)」という文言によって、教室での着替え中の撮影は規制できなくなるという指摘について

4条3項の「前号各号に掲げる場所を除く。」という文言が引っかかったと思います。2項で幅広くほとんどの場所が規制されています。一方、3項でも同じように盗撮を規制するため、2項で出てくるところと二重規制になってはいけません。

公衆トイレや公衆の更衣室など通常衣服を脱ぐ場所なのかどうか線引きが微妙な場所があるので、こうして条項を分けて条文を制定する場合は、一方では二重にならないように、除外を規定しないと、見るほうからわかりづらいので、こういう形になっています。具体的に何かの行為を除く表現ではありません。 規制は2項にも該当して、3項にも該当するものがないように考えたもの。ご理解してもらえればと思います。

ーー改めての確認ですが、「教室で、服を着ている人の、下着や姿を、盗撮することは、改正条例で規制できる」のでしょうか

そうです。

ーー「教室で、着替えをしている人の、盗撮は、改正条例で規制できる」のでしょうか

はい。その根拠としては「着替え中の教室」は「通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所」に該当するからです。ケースバイケースで状況を捜査する必要があります。

場所の状況といえば、たとえば学園祭開催中など不特定多数の人が出入りする状態で教室での盗撮があった場合は、4条2項第1号(「公共の場所」)を適用することになります。

ーー改正条例で盗撮を規制できない状況はありますか

今の現状では幅広く規制できます。上位の法律があって規制をかけられない部分はあると思いますが、以前よりも撮影場所が拡充されたうえに、撮影に至る前段の行為も規制対象になったという解釈です。

トイレや住居はプライベートに近い場所ですが、軽犯罪法の(規制する)場所とは違って、条例の場合は人の肢体を対象として撮影したり、向けたり、設置してはダメという規制をかけています。

●警察の回答について、鐘ヶ江弁護士の考え

残念ですが、秋田県警の回答は無理があると言わざるを得ません。

冒頭の条文を確認して欲しいのですが、条文では、(1)「衣服等で覆われている人の下着又は身体」(4条1項2号)の盗撮と、(2)「衣服の全部又は一部を着けない状態(でいる人)」(4条3項)の盗撮を区別しています。

そして、(1)については、4条2項で公共の場所と、事務所等の特定かつ多数の人が集まる場所につき規制しています。

(2)については、4条3項で「住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所(前項各号に掲げる場所を除く。)」につき規制しています。

秋田県警は、学園祭開催中の教室での着替え中の人の姿態などの盗撮を4条2項でも規制できると述べていますが、4条2項で規制対象になっているのは「衣服等で覆われている人の下着又は身体」だけです。着替え中、すなわち衣服の全部又は一部を着けない状態でいる人は規制対象になっていないのです。

少し長くなりますが、条文の構造が似ている、大分県迷惑行為防止条例の同種の規定を引用します。3項に除外規定がないことが分かると思います。

第3条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

(1) 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から、又は直接人の身体に触れること。

(2) 衣服等で覆われている人の下着若しくは身体(以下この号及び次号において「下着等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又は下着等を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を下着等に向け、若しくは設置すること(次号に規定する方法により行われる場合を除く。)。

(3) 衣服等を透かして見ることができる写真機等を使用して、下着等の映像を見、若しくは撮影し、又は下着等を撮影する目的で写真機等を人に向け、若しくは設置すること。

(4) 前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。

2 何人も、集会場、事務所、教室、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所又は乗物(公共の場所又は公共の乗物を除く。)において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、前項第2号又は第3号に掲げる行為をしてはならない。

3 何人も、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所に当該状態でいる人の姿態をのぞき見し、若しくは撮影し、又は当該状態でいる人の姿態を撮影する目的で写真機等を人に向け、若しくは設置してはならない。 

おそらく、全国各地の様々な条例を参考にして、既存の条例を改正するなかで、混乱が生じてしまったのだと思います。裁判では、秋田県警がどう考えているかではなく、条文に沿って判断がなされます。改正をしないまま運用すれば、不当逮捕等の問題が生じます。早急に手当すべきです。

そもそも、こういった問題が生じる背景は、国が性的盗撮について法律を作ろうとしないため、各都道府県が条例で対応しているからです。現状では、各地の条例の規制、運用がまちまちになっており、不公平な状況となっています。

また、法的な問題点として、住居などの私的空間における盗撮規制は、軽犯罪法1条23号の規制と抵触し違憲無効ではないかという議論もあります。性的盗撮について、地域ごとに規制に差をつける理由はありません。国が法律で定めるべきでしょう。