児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

韓国における性犯罪者の再犯防止対策

 韓国では反対論は大きくはなかったようです。


http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/234/023405.pdf
韓国における性犯罪者の再犯防止対策―情報公開と位置追跡電子装置―
白井京
これら2つの法律による種々の規制は、諸外国の性犯罪再犯防止策の中でも強硬策に位置付けられるものだろう。韓国国内でも、人権の観点や効果への疑問から、問題の提起がなされてきた。
しかし、ここ数年の韓国では、凶悪な性犯罪事件が大々的に報道されることで、市民感情が高まり、強硬策を受容するコンセンサスが形成されている。その社会的圧力から人権団体による人権重視の主張が弱まり、結果的にこれら2つの法律が可決にまで至ったのである。地域住民にまで顔写真の閲覧権を拡大した情報公開や、電子腕輪の装着に対しては、今後の施行の過程で違憲論争が起きる可能性が高い。
関連諸機関が、どのような形で決着をつけるのか注目される。
最後に、韓国における性犯罪防止対策に関する新しい動向を若干、付け加えておきたい。
第一に、グルーミング(grooming)行為に対する規制である。グルーミング行為とは、インターネットなどにより、性的虐待を最終的な目的として青少年に接触し、実際に会う提案をする等の行為である。英国では、2003年性犯罪者法(Sexual Offences Act 2003)により、既に規制されている。国家青少年委員会は、2007年5月からタスクフォースチームを発足させ、英国の規定等をモデルにグルーミング行為に対する処罰規定の新設について検討を開始して(注16)いる。
第二に、性犯罪者の新しい矯正プログラムとして、法務部による治療監護法改正案が立法予告されて(注17)いる。これは、性暴力犯罪で禁錮以上の刑に該当する罪を犯した者に対し、出所後に最長で7年間の治療監護を行うというものである。
また、韓国における性犯罪の量刑の軽さや不透明さを批判し、重罰化を求める声もある。ただでさえ表面化することの少ない韓国の性犯罪において、公訴を提起される者のうち、実刑判決を受けるのは20%弱で(注18)ある。韓国性暴力相談所のイ・ミギョン所長は、「実際に電子腕輪をはめるのは、100人のうち6人が起訴され、そのうち実刑を受ける人…結局100人中1人か2人が該当するかしないか」であると指摘して(注19)いる。

http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/24101/02410106.pdf
【韓国】 再犯防止のためのGPS監視に対する評価と対象範囲の拡大
海外立法情報課・白井 京
近年、日本においても、出所した犯罪者の体にGPS全地球測位システム)を装着し再犯防止のため行動を監視する「電子監視制度」の導入が議論されている。韓国では2008年から性犯罪者を対象にこの制度を導入しており、2009年には対象範囲を拡大する改正が行われた。
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改正法では対象者を拡大したため、法名称から「性犯罪」がとれ、「特定犯罪者に対する位置追跡電子装置の装着等に関する法律」となった。
法務部は、前述の「施行1年の成果と課題」において、2009年秋の定期国会において監視対象犯罪に殺人、強盗、放火等を追加する改正案を発議する予定であるとしている。