児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

松井茂記「LAW IN CONTEXT 憲法 -- 法律問題を読み解く35の事例」


LAW IN CONTEXT 憲法 - 法律問題を読み解く35の事例

LAW IN CONTEXT 憲法 - 法律問題を読み解く35の事例

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641130845
第1問 同性婚の拒否と平等権・結婚の自由
第2問 裁判員制度と取材・報道の自由
第3問 代理出産憲法
第4問 テロ目的の資金の提供ないし寄付と憲法
第5問 古紙持ち去りと憲法
第6問 図書館と憲法
第7問 インターネットと青少年保護
第8問 愛国心教育と教育の自由・思想の自由
第9問 カラスにえさをやる自由
第10問 議員の党籍変更の自由と政党の結社の自由
第11問 ホームレスの人の人権
第12問 空港におけるコンピューターの検査
第13問 重婚の禁止と信教の自由
第14問 著作権表現の自由
第15問 海賊対処法案と憲法
第16問 憲法裁判所
第17問 新型インフルエンザと感染症予防法
第18問 私立大学補助と憲法
第19問 児童ポルノの規制と表現の自由
第20問 靖国神社政教分離原則
第21問 地方公共団体の権限と地方分権
第22問 予防接種と自己決定権及び補償 ほか全35問

松井茂記 law in context 憲法p197
しかし自分で自分の写真を撮影し.自分の思い出のためにそれをサーバーで保存し.本人しかアクセスできないような場合はもちろん, もし少数の友人同士でのみ写真の共有が可能であるような場合にも処罰が許されるかどうか問題がないではない。このような場合にも児童ポルノを処罰すべき根拠があるかどうか怪しいからである。
 実際,カナダの最高裁判所は,児章ポルノの所持の禁止の合憲性を一般的に支持しながら,未成年者が自分で楽しむために自分の性行為を録画したものを所持していた場合や.未成年者のカップルが自分たちで楽しむために自分たちの性行為を録画したものを所持していた場合にまで禁止が及んでいる限りにおいて.禁止の範囲が広すぎると判断している。
 同様に,提供についても.限られた友達同士の間での提供であれば,児童ポルノを禁止しなければならない危害の発生の危険性はないとも考えうる。そうであれば. 日本でも.このような場合には.危害発生の危険性がないことを理由に.処罰は;憲法21条1項に反すると主張することも可能であろう。

 単純所持規制についてはプライバシー侵害を問題にされるようです。

P197
 児童ポルノから児童を保護する必要があり,児童ポルノを排除するためには児童ポルノにアクセスし,所持する行為をも処罰すべきだとの主張も強い。
 ただ,わいせつな表現物の場合は販売,頒布,公然陳列及びこれらの目的のための所持だけが禁止されているが(刑法175条),児童ポルノの場合にはこれを超えて単純所持さらにはアクセス自体を処罰する必要があるであろうか。

児童ポルノを根絶するためには。児童ポルノヘのアクセス及び単純所持をも禁止する必要があるとの主張には,たしかに強い説得力がある。わいせつな表現物の禁止は,最小限度の性道徳の保護のための措置と捉えられており,児童ポルノのように,モデルとされる児童の保護及び児童ポルノを見て他の児童に性的虐待を行う危険性を防止するという目的とは異なる。それゆえ,わいせつな表現物の場合と異なり児童ポルノの場合に限ってのアクセスの禁止及び単純所持の禁止も正当化されうるかもしれない。
 だが。同時にここには問題点もある。児童ポルノヘのアクセス,所持については,児童ポルノと知らずに行なう危険性が高まるし,他の人が児童ポルノであることを隠してあるいは偽って画像を送信し,児童ポルノヘのアクセスもしくは所持に問われる可能性も残されるからである。児童ポルノであることが明らかであり,それと知っていてアクセスした場合やダウンロードした場合に限定する仕組みがない限り,憲法21条1項違反の問題が生じそうである。
 さらにこの場合,児童ポルノヘのアクセスや所持は,公共の場所で行われた場合は別として,おそらくほとんど場合は自宅で行われる可能性が高い。はたして自宅で私的に行った行為をも処罰の対象とすることはプライバシーの侵害とならないのかの問題を生じさせる。もちろん,自宅であっても麻薬を所持しそれを使用するような行為の場合には処罰の対象とすることが許されることは否定できないであろうから,自宅で私的に行われた行為がすべてプライバシーとして保護されうるとはいえない。しかし,自宅でどのような
表現にアクセスし,どのような本を所持しているのかを探り,それを理由に刑罰を科すことは本当に妥当であろうか。
 しかも,そのようなアクセスや所持を禁止しても,実際に,インターネット上でアクセスしたことを探知し,証明することは難しい。たまたまハードディスクに児童ポルノ画像が保存されていることが発覚したような事例以外では,所持を理由に逮捕・起訴することも難しい。児童ポルノ画像をインターネットにアップロードし,画像を配布している場合には,サービスプロバイダーを通してその発信元のアドレスを確認し,誰が送信したのかをつきとめて,発信者を逮捕・起訴することが可能であるが,誰がその画像をインターネット上で閲覧し。ダウンロードしたのかを確認することは容易ではない。
その意味で,児童ポルノヘのアクセスや所持を禁止することにどれだけの効果があるのかを疑問とすることもできよう。