児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

16歳少女がAV19作品に出演…元芸能プロ社長を逮捕

 過失は程度問題ですし、量刑にも響きます。
 姉の免許証が本物で、似てれば、過失も小さいかもしれません。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101007-00000573-san-soci
課によると、少女は姉の運転免許証を提示して成人を装っていたといい、容疑者は「もう少し確認すればよかった」などと容疑を認めているという。
 少女が出演したAVは19作品に上り、うち15作品のDVD約8万5千枚が流通しており、すでに約2万8千枚が販売されたという。
 逮捕容疑は、当時16歳だった千葉県の無職少女(17)に十分な年齢確認をせず、1月中旬に都内や近県のスタジオなどで男優を相手にわいせつ行為をさせ、その様子を撮影したDVDを製造したとしている。
 同課によると、家出中だった少女が携帯電話の掲示板サイトで「モデル募集、高収入」とする容疑者らの書き込みを見て応募。しかし、面接で容疑者から「AVなら月80万円を保証する」と持ち掛けられ、出演を了承した。
 その後、少女は地元でAV出演の風評が出たことから、4月末に引退した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101007-00000082-mai-soci
逮捕容疑は、1月中旬ごろ、当時16歳だった少女(17)の年齢を十分確認しないまま、渋谷区などのスタジオで少女のわいせつ行為を撮影し、アダルトDVDを製造したとしている。2人は容疑を認めているという。
 少年育成課によると、少女は「遊ぶ金がほしかった」と話している。会社の面接には22歳だった姉の運転免許証を見せ、成年のふりをしていた。
 少女は4月末まで19作品に出演し、15作品の約2万8000枚が既に流通。少年育成課は制作会社に販売停止と回収を求めている

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101007-00000115-jij-soci
年齢確認後も回収せず=2万8000枚出回る―16歳アダルトDVD・警視庁
時事通信 10月7日(木)17時40分配信
 16歳だった少女をアダルトDVDに出演させた事件で、逮捕された男らが少女の年齢を知った後も、販売中止や回収をしていなかったことが7日、警視庁少年育成課への取材で分かった。
 少女は19作品に出演しており、約8万5000枚を製造。同課が回収を求めたが、15作品の約2万8000枚が販売済みだった。

演技とはいえ、ほんとに淫行(性交又は性交類似行為)やってるとすると、児童淫行罪のほうは、

第60条
第三十四条第一項第六号の規定に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
?児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、前三項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

製造罪の方は、5項製造罪(不特定多数)と9条

第7条(児童ポルノ提供等)
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
第9条(児童の年齢の知情)
児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

 5項製造罪(不特定多数)は包括一罪、児童淫行罪も包括一罪。
 5項製造罪(不特定多数)と児童淫行罪の最高裁判例はありませんが、たぶん併合罪なので、上限は15年になります。
 年齢知情条項の法的性格については、判例がないので、はっきりしません。

 法9条は7条全部にかかるので、提供罪とか公然陳列罪にも適用がありますが、撮影以外の場合、どういう場合に使用関係と言えるのかは、わかりません。



参考文献

安冨潔「特別刑法の諸問題」捜査研究608号P55 
具体的な年齢調査の程度や方法については、個別に検討しなければならないが、一般的には、児童本人・周旋者の供述や、児童の身体の外形的な発育状態のみによって一八歳以上であると信じたとしても調査義務を尽くしたとはいえないのであって、保護者等に問い合わせたり、戸籍謄(抄)本や住民票、転出証明書、身分証明書等の客観的資料の提出を求める方法などが考えられる(最判昭和三0・一一・八刑集九巻一二号二=一八二頁等)。したがって、捜査官としては、児童を使用する者と児童の双方から児童を使用するようになった経緯、面接時の児童の身体的外観、会話内容、身分証明書等の確認の有無、年齢確認のために行った具体的方法、児童でないと信じた理由児童を使用するに至った後の児童の稼働状況、それに対する児童を使用する者の指揮、監督状況、使用時間や使用条件などについて供述を得て調書を作成するだけでなく、児童の保護者や関係者の取調べ、公務所への照会などによって、これを裏付ける証拠の収集をしておくことが求められよう。
なお、児童買春等処罰法でいう「児童を使用する者」は、児童福祉法第六〇条第三項と同様であり、一般的には、児童との聞に継続的な雇用関係ないし身分関係にある者に限られず、ひろく児童との間に、社会通念上その年齢確認を義務付けることが相当として是認されるだけの継続的な支配従属関係があると認められる者をいう(平野龍一ほか編『注解特別刑法七』17頁など)。

少年・福祉犯罪「各種福祉犯罪」鈴鹿寛著
執務資料 福祉犯罪の捜査三訂版
最高裁執務資料児童福祉法売春防止法
江口三角「児童福祉法60条3項に規定する児童の年齢不知に関する過失の有無」警察研究(良書普及会、1960.07)
検察資料〔169〕「児童福祉法罰則関係執務資料集-判例・質疑回答-」