弁護人がこういう判例を捜すようではダメです。
普通1か月くれるんですが、1週間前までにはだいたい起案して被告人に送って読んでもらうようにしています。
規則第238条(期間経過後の控訴趣意書)
控訴裁判所は、控訴趣意書を差し出すべき期間経過後に控訴趣意書を受け取つた場合においても、その遅延がやむを得ない事情に基くものと認めるときは、これを期間内に差し出されたものとして審判をすることができる。
高検速報 22号3頁
判特 32号37頁
札幌高裁昭和28年 7月 8日
控訴棄却決定に対する異議事件
本件異議理由は「原決定裁判所は、被告人宮川昇に対する詐欺被告事件について被告人たる申立人からの控訴趣意書の提出が期間経過後になされたことを理由として控訴棄却の決定の裁判をなしたものであるが、申立人としては控訴趣意書は弁護人において期間内に必ず提出することを確信していたため自ら趣意書を差し出さなかつたところ右弁護人はやむを得ない事情で趣意書の提出がおくれてしまつた。従つて被告人の控訴趣意書の提出の遅延はやむを得ない事情に基くものとして控訴審の審判を得たく原決定の取消を求むるため本件異議に及んだ」というにある。
被告人宮川昇提出の控訴趣意書、弁護士島村鋭郎作成の証明書と題する書面、同弁護士提出の上申書、札幌高等裁判所函館支部裁判所書記官補小林広吉提出の報告書を綜合すると、被告人は昭和二十八年六月四日函館拘置所において弁護人である弁護士島村鋭郎に対し、被告事件の控訴趣意書の作成及びその提出方を依頼した際同弁護士から控訴趣意書は同弁護士において全責任を以て法定提出期間内に作成提出すべき旨の言明を得たのでこれを信頼して、自ら趣意書を提出しなかつたものであるところ、被告人の弁護人となつた島村弁護士は右被告事件の控訴趣意書提出期間の最終日である昭和二十八年六月十日午後十一時五十三分過頃控訴趣意書を持参して札幌高等裁判所函館支部構内に到り、宿直室の外部から宿直員を喚び起こそうと努めたが既に就眠中の宿直員を起すことができないまゝに時間が経過してしまつたので、やむなく一応帰宅し翌朝六月十一日午前六時三十分過頃宿直室に赴いて右趣意書を同室内の机の上に置いて立戻り更に同日午前九時頃同支部書記官室に赴き同裁判所書記官補小林広吉に対し控訴趣意書の提出が期間後になつた点につき前夜の事情を説明して了解を求めたことが認められる。
右の事情について考えてみると刑事被告事件において被告人の立場を擁護し司法の適正な運用に関与するという重大な職責を担う弁護士としては、控訴趣意書提出期間の遵守については万全の配慮をなすべきものであつて、この観点からして島村弁護士が右期間のわずか数分前に至つてようやく本件趣意書を持参し遂に期間内にその提出をなし得なかつたということはその職責を完うするについていさゝか欠くるところなしとはしないのであるが、他面前記認定のような事情は趣意書提出の遅延につきやむを得なかつたものとすることができると言うことができる。
島村弁護士の期間遅延について右事情が認められる以上、被告人が提出期間内に控訴趣意書を提出せずその経過後である同年六月十一日に同弁護人から控訴趣意書が提出された本件においては、右遅延は被告人にとつて真にやむを得ない事情に基くものと認められる。然らば控訴裁判所において刑事訴訟規則第二百三十八条により右趣意書を法定期間内に差し出されたものとして審判をすべきであつて、本件控訴を棄却した原決定は失当であると言わねばならない。