児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

自転車事故の民事訴訟(月刊大阪弁護士会2010.6 P49)

 被害は大きくても保険がないので、弁護士に依頼しにくい事件ですよね。

自転車が加害者の事故
「(1)自転車が加害者となる交通事故の近年の係属件数・処理件数について、?対人事故、?対自転車事故の別にお教えください。(2)自転車が加害者となる事故に関する過失相殺について、別冊判例タイムズにて類型化されている過失相殺基準はどのように参考にされているでしょうか。また、自転車が加害者となる事故の過失相殺基準を今後類型化される予定等はありますでしょうか。(3)その他、自転車が加害者となる事故において、訴訟指揮など、特に留意されている点があればお教えください。」という当会の質問に対し、以下のとおり回答がありました。
(1)自転車が加害者となる交通事故の近年の係属件数・処理件数について、第15民事部として統計を取っていないので正確には把握できないが、平成21年11月30日の時点では、自転車対歩行者の事故は7件、自転車対自転車の事故は5件が確認できた。最近の印象としては、少なくとも常時その程度の件数が係属しているとの感想を持っている。
(2)自転車が加害者となる事故についても、別冊判例タイムズの基準は一応参考とはしているが、修正要素が多いことから、必ずしも個別事例の判断として判例タイムズの基準に沿った形になっているとはいえない。抽象的には、自転車対自転車の交差点における事故で、前方注視義務が問題となるような事例では、自動車事故の例がある程度参考になるが、自転車の動きの特性などの問題があるので、必ずしもそのまま当てはまるとはいえない。自転車事故の場合には、遵守すべき交通法規と一般的な運転態様との間に若干の乖離があること、運転者に自転車が軽車両であるという認識が乏しいこと、急な方向転換や急加速により動静予測が困難な場合があるため、自動車事故と同様には必ずしも考えられないことは、平成20年12月1日実施の懇談会でも指摘したとおりである。過失相殺基準の類型化については、裁判所も関心を持っているが、類型化を行う具体的な予定は今のところない。考慮すべき要素が非常に多様であり、類型化が困難という問題があるほか、事故類型の分類や基準となる過失割合についても、共通認識が形成されているとはいえない状況と考えている。今後、類型化できるのか、できるとすればどういった類型化が適切か、基準となる過失割合をどう見るかを検討しなければならないと考えている。
(3)自転車が加害者となる事故の訴訟指揮については、基本的には自動車事故の場合と異なるものではない。ただし、自転車事故の場合、自賠責が適用されず後遺障害等級認定手続がないことから、後遺障害の程度が争われるケースが多く、仮に争われた場合は、カルテや医師の意見書などから裁判所が直接判断する必要があり、審理が難航する場合もある。また、保険がない場合も多く、被告の資力の問題のほか、事前交渉の段階で定型的な資料が収集されていないという問題もあるので、資料の収集について、訴訟の争点整理手続の中でやっていく必要がある場合もある。
さらに、被告が本人訴訟となる比率が比較的高く、欠席してしまう場合もある。裁判所としては、事例によっては欠席判決や、被告に実質的な反論が期待できない場合を想定して、事案の早期把握のため、訴状審査の段階で原告側に対して実質的な主張と立証の補充を求める場合がある。早期に審理を進めるという目的があるので、そのような場合には協力をお願いしたい。
審理の特徴としては、いずれにせよ被告の支払能力が乏しい場合には、事案に応じて適切な審理を進めるという観点から、争点整理しを進める前に和解勧告を行う場合もある。このような場合もご協力をお願いしたい。