児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

余罪と量刑(2) 判例タイムズ1303号

 近々、判決です。
 こんなのは、児童ポルノ・児童買春法制定の弊害ですよ。

4 余罪が他の刑事訴訟手続に係属している場合の問題点
ある罪と別の罪とが同時に又は相前後して捜査され.起訴された場合には.同一の裁判所に起訴されて併合審理を受けるのが通常であるが,平成20年法律第71号による改正前の少年法で、は,児童福祉法60条違反の罪等は家庭裁判所の専属管轄となっていたため(同改正前の少年法37条l項), [同罪が起訴されると同時に又は相前後してこれと併合罪関係にある別の罪が地方裁判所に起訴されたとしても.併合されることなくそれぞれ別個の手続のまま判決に至ることとなっていた。
これらの罪は相互に関連していることが多いが.他の手続に係属している犯罪事実を量刑上しんしゃくすることは許されるであろうか76)。
この点に関する高裁判例は.すべて,児童福祉法違反事件において.地方裁判所に係属する事件の内容を量刑上考慮することの是非が問われたものである

76) なお.少年法37条等.成人の刑事事件に対する家庭裁判所の専属管轄の規定は,平成20年法律第71号による少年法の改正により削除されており.今後は,本文記載のような.同一被告人に対する相互に関連する事件が地方裁判所家庭裁判所に同時に係属する事態は発生しなくなるであろうが.相互に関連する事件が併合審理されることなく,訴訟法上又は国法上別個の裁判所に係属する事態t;t今後も発生し得ると思われ.本文記載の議論はその参考にもなるものと思われる。

79) なお,現実にも,地方裁判所家庭裁判所のそれぞれの判決において他の裁判所に係属する罪を余罪として考慮すると.両者をあわせた刑は過酷なものとなり.二重処罰の疑いが生じかねない。原田196頁は.この点、を含め.上記名古屋高判は二つの判決を合計した刑を考慮した可能性を指摘される。
研究会においても.両事件全体の刑としてはどの程度が妥当であるか,また他の裁判所がどの程度の刑にするかを見極めて量刑をしないと.二重の処罰に近くなるから.慎重な判断が求められるが,これは.全体の刑から他の裁判所の刑を引き算するという趣旨でなく,社会的実体としては1個の事実に属する事件について被告人が別に処罰されようとしていることが情状となって.責任刑の幅の下限近くで量刑することとなるという趣旨であるとの意見があった。これに対し.平成20年改正前の少年法そもそも併合の利益を与えておらず.調整規定も置いていないから,全体の刑について考える必要はなく.それぞれの事件について量刑を考えるのが法の予定するところではないかとの反論もあった。