もう古いんじゃないでしょうか。
はじめに
児童期の性的搾取及び性的虐待(以下「性的被害」) が暴力犯罪、窃盗、売買などの反社会的行動やひきこもりなどの非社会的行動へのひきがねとなるなど被害児童の心身に深刻な影響を与えることは、米国を中心として研究が進めらている。特に、最近では費用対効果の経済的観点から、性的虐待予防と早期治療のあり方が反社会的行動あるいは非社会的行動などの非行行動の軽減に及ぼす影響を解明する研究がなされ、被害児童の保護施策に生かされている。一方、わが国の場合、いわゆる「援助交際」など児童の性的搾取をはじめとする性的被害の長期的影響に関する実態が必ずしも十分把握されていない。「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の施行(1999.11.1)に伴い、国及び地方公共団体は啓発及び調査研究に務めること(第14 条)、心身に有害な影響を受けた児童の保護(第15 条)とその体制の整備(第16 条)を講ずること等が明記された。
本研究は、潜在化しやすいと言われている性的被害の実態を保健医療福祉および司法の立場から検討し、早期発見の方法、地域における関係諸機関相互間の協力体制の構築方法、性的被害児童を発見した援助者/専門家や機関がとるべき望ましい初期対応に関するガイドライン/マニュアル等を作成するとともに、今後の被害防止・再被害防止に資するための基礎資料を作成することを目的とした。
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おわりに
「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の施行(1999.11.1)以来、児童福祉法や都道府県の青少年保護育成条例・迷惑条例による福祉犯被害児童として保護・補導される実数が減少傾向にあるにもかかわらず、「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」によって保護される少年の実数が増加傾向にある。専門家の中には、比較的法定刑が軽く(児童福祉法の淫行罪は10 年、「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」では3 年)、立証要件も容易な「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の適用に流れているのではと懸念している者もいる。また、「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」では心身に有害な影響を受けた児童の保護(第15 条) とその体制の整備(第16 条)を講ずることが明記されているにもかかわらず、保護児童の再被害・再々被害と加害者の再犯事例が増加している。
本研究が、潜在化しやすいといわれている性的被害の実態の解明、早期発見の方法、地域における関係諸機関相互間の協力体制の構築方法、性的被害児童を発見した援助者/専門家や機関がとるべき望ましい初期対応のあり方とともに、今後の被害防止・再被害防止に資するための基礎資料となれば幸いである。