判例秘書に出ましたので、独自のソースから公開しておきましょう。
児童福祉法違反被告事件
東京家庭裁判所平成21年3月9日
(訴因変更命令の職権発動を促す旨の申出について)
弁護人は,東京地方裁判所に起訴された被告人に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件(以下「別件被告事件」という。)と,当裁判所に起訴された被告人に対する本件児童福祉法違反被告事件は,日時,場所,客体,行為の点で一部重なり合い,両者は科刑上一罪の関係にあるから,平成20年法律第71号による改正前の少年法37条2項により,当裁判所で併せて審理すべきであるとして,別件被告事件の訴因を当審の訴因に含めるための訴因変更命令の職権発動を促す旨の申出をしている。
しかしながら,訴因の設定,変更等は検察官の権限に属し,原則として,裁判所は自らすすんで検察官に対し訴因変更の手続を促し又はこれを命ずべき責務はない(最高裁昭和30年(あ)第3376号同33年5月20日第三小法廷判決・刑集12巻7号1416頁参照)。しかるに,検察官は自らの権限(その際の判断には罪数判断も当然に含まれていると解される。)に基づき,各事件をそれぞれ別の裁判所に起訴し,当裁判所に対しても訴因変更の予定はないと明確に釈明しているところ,かかる検察官の判断が看過できないほど社会正義に反するとは認められず,これにより著しい不正を招来することが明らかであるなどともいうことはできない。以上に加えて,別件被告事件においては,平成21年1月28日に東京地方裁判所で被告人に対し懲役1年8月の実刑判決が下され,同事件の弁護人において控訴がされたといった事情等を踏まえると,当裁判所が,既にかかる状態にある別件被告事件を本件被告事件に実質的に併合審理することとなる訴因変更命令を行うことは,審理の経過に鑑み適当と認めることはできない。
したがって,弁護人の上記申出に対し,当裁判所は職権を発動しない。