児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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「強姦行為は陰茎の沒入を以て既遂とするけれども、なにもその行為にのみ限局するべきものではなくて、これに接着する猥褻行為もまた姦淫行為に包含せられる観念である。すなわち、いやしくも犯人が姦淫の目的を以て暴行脅迫を用い婦女に対して猥褻行為をした事実があれば、その猥褻行為は強姦着手後の行為であつてこれに対し刑法第百七十七条又はその未遂罪の規定を適用するべきである」ならば、強姦場面の撮影行為も、わいせつ行為として、強姦罪の実行行為に含まれるから、さらに3項製造罪を立件するとすれば、強姦罪とは観念的競合になる。

 ということですよね、この判例は。φ( ̄ー ̄ )メモメモ

阪高裁昭和29年 2月25日
事件名 強姦致傷事件
 弁護人は、本件の被害者、Tの陰部にある負傷は、陰茎の挿入によつて生じたものではなくて、手指で女子の陰部をもてあそんだときにできたものである、そして被告人は同女の陰部をもてあそんでから姦淫の意思を生じたのであるから、右の致傷は強姦着手前のものであつて、本件の強姦行為には関係がなく、本件は単なる強姦未遂罪である、と主張するについて案ずるに、刑法第百八十一条の強姦致傷罪は、強姦既遂又は未遂行為に原因して他人に傷害の結果を生ぜしめた場合において成立するものであつて、その傷害はかならずしも強姦行為自体又はその手段たる暴行々為によつて生じたものでなくても、強姦行為をするに当つてその被害者に傷害を加えた場合もまた強姦致傷罪を構成するのである。そして、右にいわゆる強姦行為は陰茎の沒入を以て既遂とするけれども、なにもその行為にのみ限局するべきものではなくて、これに接着する猥褻行為もまた姦淫行為に包含せられる観念である。すなわち、いやしくも犯人が姦淫の目的を以て暴行脅迫を用い婦女に対して猥褻行為をした事実があれば、その猥褻行為は強姦着手後の行為であつてこれに対し刑法第百七十七条又はその未遂罪の規定を適用するべきであるから、犯人が、婦女を姦淫する目的で暴行脅迫を用い、手指を婦女の陰部に挿入し又はこれをもてあそんだために傷害の結果を生じたときには、姦淫行為の既遂未遂を問わず強姦致傷罪が成立するのである。(この場合、婦女の意思に反して手指を陰部に挿入し又はこれをもてあそぶことそれ自体暴行である)。原判決の認定した事実によると、被告人は、T、Kの両小女に対してその体重、身長、月経の有無などを尋ねたうえ、乳房の発育状況をみてやると称し、まずKの、ついでTの乳をもてあそんだあげく、劣情を催し、Kに対し「下の方で景色のよい所を探しておいてくれ」と申し向け、たくみに同女をその場から立ち去らせたうえ、両手でTの腰をさわり、ズボンのホックをはずさせ、やにわに左手で同女の腰を抱き、右手を同女の股間に差しこみ、指でその陰部をもてあそび、接吻を試みたのち、驚きと恐怖とで声も立てられずもがいている同女を仰向けに押し倒して馬乗りとなり、強いて同女を姦淫し、因て同女に対し治療二日間くらいを要する大陰唇内面表皮剥脱等の傷害を蒙らせたものである、というのであつて、原判決の挙示する証拠に当審証人西田健三、同Tの供述を綜合すると、前記の傷害は所論のように被告人がTの陰部を手指を以てもてあそんだためにできたものであると認められるが、その被告人の行為は、被告人が姦淫を決意し、強姦行為に着手したのちにおける猥褻行為であることもまた明らかであるから、本件が刑法第百八十一条所定の強姦致傷罪に該当することは明白である。この点の論旨は理由がないが、強姦罪の既遂は、交接作用すなわち陰茎の沒入を以て標準とするところ、前記の証拠によると、被害者Tを被害当日診察するに、同女の負傷は、大陰唇内面に米粒大の表皮剥奪があり、陰裂部一帯に発赤しているだけで、処女膜には新しい創痕を認めず、被告人は射精したと陳述しているにかゝわらず腟内に精虫を認めず、同女もまた陰部に陰茎を当てられたと感じたのみで、それによる疼痛を感じなかつたと陳述しているところからみて、姦淫を遂げるに至らなかつたと認めなければならない。従つて本件は強姦未遂行為によつて人に傷害を加えたことになるから、原判決は右の点において事実の誤認があると言わねばならない。そして、本件の犯行は、いずれにしても刑法第百八十一条に当ることに変りはないが、強姦既遂致傷と同未遂致傷とでは刑の量定すなはち判決の主文に差異を生ずると認められるから、右の誤認は、判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨はこの点において理由があり、原判決は破棄を免れない。