児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「性欲を興奮させ又は刺激する」についての裁判例

 判例は意外にないんですよ。くだらない主張ですし、現物の写真を公開できないので、公刊物では公開されていません。
 普段から子供達が上半身裸で生活している国で、6歳にどんなポーズを取らせても、被告人以外の性欲を興奮させ又は刺激するものではないと主張したのですが。

大阪地裁平成14年4月26日
2 弁護人は,(1)本件のような写真は「性欲を興奮させ又は刺激する」との要件を満たさない,(2)写真を焼き付けず現像までを行ったにすぎない本件行為は製造に当たらない,(3被害者及びその母親の承諾があり,犯罪成立を阻却する,などと種々の主張をしている。
しかし,(1)本件写真は,判示のとおり,単なる裸体でなく両脚を開かせ性器を露出させた露骨な描写をしており,一般人の性欲を興奮させ又は刺激する内容といえる。
(2)撮影行為それ自体で既に被撮影児童の心身に有害な影響を与えており,十分に可罰性が認められる。そして,撮影によって記録として作出されれば,現像や焼き付け等はその後行うことが比較的容易であり,現像あるいは焼き付け前でも流通が可能であっ七,児童一般の心身の成長に悪影響を及ぼす危険性もあるといえる。なお,本件では,現像まで行われているところ,撮影,現像及び焼き付けは製造の一連の過程というべきであり,撮影及び現像を製造行為と認定した。
(3)本件児童は僅か6歳であり,真摯な承諾があったと評価することは困難であるし,児童ポルノの製造等が描写された児童の心身に有害な影響を与え児童一般の心身の成長に重大な影響を与えることに鑑みこれを処罰する法の趣旨に照らしても,犯罪成立を阻却するとは考えられない。弁護人のその他の主張も理由がないことが明らかである。

阪高裁H14.9.10
論旨は,①原判決は,本件ネガにつき,単なる裸体ではなく両脚を開かせ性器を露出させた露骨な描写をしており,一般人の性欲を興奮させ又は刺激すると判示しているが,被害児童は6歳であって,このような児童の姿態からは,どのようなポーズを取らせてみても,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものとは解されず,本件ネガが児童ポルノに当たるとはいえず(控訴理由第9),②被告人も,本件ネガが一般人の性欲を興奮又は刺激されるものであるとの認識はなかったから,被告人に故意があるとはいえないのに(控訴理由第10),本件ネガが児童ポルノに当り,被告人にもその認識があったとして児童ポルノ製造罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認ないし法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,捜査報告書(「差し押さえにかかる証拠品ネガフィルムの焼付けについて」,原審検甲5,6号証)によれば,被害児童は当時6歳の女児であるが,被告人によって撮影された被害児童の姿態は,幼女のあどけない自然な裸の姿ではなく,寝そべって両足を開いたり,足を立てて座ったりして,ことさら性器を露出するなど煽情的なポーズをとっており,これが鮮明に撮影されているものであるから,一般人の性欲を興奮又は刺激することのある態様のものと認められ,本件ネガが児童ポルノに当たることは明らかであり,また,上記のような被害児童のポーズを被告人がとらせたものであるから,これを撮影した被告人に児童ポルノ製造の故意があることも明らかであり,被告人に対し児童ポルノ製造罪の成立を認めた原判決に事実誤認ないし法令適用の誤りがあるとは認められない。論旨は理由がない。
平成14年9月10日
大阪高等裁判所第1刑事部
裁判長裁判官瀧川義道
裁判官平澤雄二
裁判官奥田哲也