開設行為を作為の幇助とすべしという検察官の主張と、(プロバイダ責任制限法と同様に)違法画像を認知しながら放置した所為を不作為の幇助とすべしという弁護人の主張とが対立していました。弁護人の敗北。
他に、共謀共同正犯の訴因について幇助を認定した第1次第一審判決に検察官控訴なき場合、差し戻し後の第2次第一審においても共謀共同正犯の訴因は審判対象から外れるという判示もあります。こっちは検察官の敗北。
この事件は、差戻前の検察官が控訴し損なったために、幇助以外の結論はとれないのだが、掲示板開設行為は正犯だとした東京高裁との整合性については、一言も触れていない。同じ行為が正犯だったり従犯だったりするというのでは納得できないなぁ。そんなんで(執行猶予の場合でも執行の可能性があるのだから)「主文掲示の期間刑務所に入れ」とはいえないんじゃないか。
東京高裁H16.6.23
(3)所論は,要するに,児童ポルノ公然陳列罪は,状態犯と解すべきであって,被告人が本件児童ポルノ画像を認識する以前に既遂に達しているから,被告人を事後従犯に問うこともできないし,仮に本罪が継続犯であるならば,被告人には幇助犯が成立するにすぎないのに,被告人に児童ポルノ公然陳列罪の正犯が成立するとした原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第14)。
しかし,児童ポルノ公然陳列罪は,いったん陳列罪として既遂に達しても,その後も陳列がなされている限り法益侵害が続いており,また,陳列行為も続いているものと解することができるから,所論のように状態犯ではなく,継続犯と解するのが相当である。また,前記説示したところによれば,被告人は,自らの利益のために本件犯行に及んだものであって,その関与の態様,程度等に照らしても,被告人に児童ポルノ公然陳列罪の正犯が成立するとした原判決の判断は正当であって,所論のように幇助犯にとどまるものと解するのは相当でない。
論旨は理由がない。・・・・
所論は,被告人の刑事責任は,現に児童ポルノ画像を送信,掲載した者に比べれば従たるものにすぎないと主張するが,被告人は,自らが児童ポルノ画像を掲載したことはないとはいえ,本件掲示板を開設した際にこのような事態になることを予想しながら,自らの利益のためにこれを容認し,そのため多数の児童ポルノ画像が掲載されるに至ったものであって,その刑事責任は,児童ポルノ画像を送信した者に比してむしろ重いというべきである。この点の所論は採用できない。