児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

性の問題、その治療とは〜【第59回】榎本稔さん(榎本クリニック・理事長)

 ある事件でお世話になりました。

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/21830.html
―性依存症は他の依存症と違い、性犯罪につながりやすく、結果として被害者が出てしまうという問題がありませんか。

 その通りです。性犯罪が起きると世間の目は被害者側につくわけです。「なんというひどい犯人だ、あいつはどうにかしないといけない、もう閉じ込めておけ」という声の中で、加害者(が性依存症であった場合)の治療プログラムを行うにしても、「あいつは治るわけない」と思われるわけです。では、そういうプログラムをやっているところは、もしかしたら加害行為に加担しているのではないかと思う人もいるわけですよ。
 ここで、使えるのがアディクションモデルです。被害者が加害者を理解するのは無理ですが、回復のための治療を受けていく過程の中で、加害者について考えるときが必ず出てきます。その時に、あれは性依存症という病気なのだという理解の仕方ができることで自分の問題を整理するときに有効であると感じます。
 ただ、病気という枠組みをつくることで、加害者の中には開き直る人が出てくる。俺は病気だ、俺は悪くない、病気だから仕方ないじゃないかと。つまり、病気であるということには、メリット・デメリットがあり、あまりにも病理化してしまうと、本人が背負う責任を免じさせてしまう機能を持っている。この辺りが非常にデリケートなところです。

―性依存症の治療は、逸脱した性行動を正常に戻すということなのでしょうか。
 そういう考えではありません。例えば、アルコール依存症の人は酒を飲みたいという気持ちは一生続くといいます。
 性依存症も、例えば露出したいといった願望が頭に浮かぶことは止めようがない。ただ、それをどうコントロールするかという方法を教えることしかないと考えています。気持ちそのものは我々にはどうすることもできない。それが統合失調症などの治療と違うところです。統合失調症の幻覚や妄想は、薬を出せば抑えられる。私たちは、性依存症の患者が、SAGに通うことによって社会問題化させないことを目指しているわけです。