児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

渡部直希「児童ポルノに該当するDVDをインターネット・オークションで販売し、タイ王国から日本国内にいる落札者にあてて国際郵便で送付した行為について、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条6項違反・・・」警察公論2008.9 

 そう考えるんなら、この罪ができたときの解説書に書いておいてほしいですね。そんな理屈、控訴審の検察官も唱えてませんでした。

被告人及び弁護人は,第一審では事実関係を認めた上,法律上の主張もせず,判決は公訴事実どおり認定した。
しかし,弁護人は,控訴審段階から種々の法律論を展開して犯罪の成立等を争い,その中で,①児童ポルノの外国からの輸出罪では輸出先において不特定又は多数の者に提供する目的が必要であるところ,本側における買主はエンドユーザーであり,そこから更に不特定文は多数の者に提供されることはないため同罪は成立しない,②同罪では児童ポルノを不特定又は多数の者に提供する目的が必要であるところ,被告人は特定少数の者に提供する目的で外国から児童ポルノDVDを輸出したに過ぎないため同罪は成立しない, と主張した。
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具体的には,不特定又は多数の者への提供罪が設けられている(児童ポルノ処罰法7条4項)ところ,買受人を決定して外国から当該買受人にあてて児童ポルノを発送する行為は提供罪の一部を構成すると解される以上,外国からの輸出罪を敢えて別に規定している趣旨は,不特定又は多数の者への提供の前段階の行為を処罰する,つまり,たとえば日本国内で児童ポルノ販売業を行おうとの意図で,外国から日本圏内の共犯者にあてて児童ポルノを発送するような場合を処罰する趣旨と解すべきではないか,という問題である。
たしかに,海外から児童ポルノを販売しているような場合,海外から児童ポルノを発送する行為も児童ポルノ提供行為の一部を構成する。しかし,ある罪に該当する行為が別の罪にも該当することは珍しいことではない。問題は,提供罪とは別に輸出罪の成立を認めるべき理由があるかどうかである。
この点,外国からの輸出は,当該外国から他国へと児童ポルノを拡散させる行為であり,描写された児童の人権を大きく侵害するとともに,児童を性的行為の対象とする風潮を国際的に蔓延させる高度の危険性を有するもので,高い違法性が認められるところである。そこで,不特定又は多数の者への提供に至るか否かにかかわらず,外国から輸出した時点をとらえて処罰の対象としているものと解される。
このように,輸出行為自体に違法性を認めて処罰の対象としている以上,不特定又は多数の者に対する提供罪の一部を構成する行為であっても,外国からの輸出罪に問うことは何ら問題はないと解される。したがって,不特定又は多数の者に対する提供」の手段として外国からの輸出行為を行った場合には,まさに「不特定又は多数の者に提供する目的」で「児童ポルノを外国から輸出した」のであるから,外国からの輸出罪が成立すると解されるのである。