一定の身分関係の間の性犯罪・福祉犯で被疑者の実名だすと、被害児童が特定されてしまうことがあるので、慎重にお願いします。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080305-00000015-ryu-oki
大野裁判長は、報道が公益を図る目的で、報道機関がその内容を真実と信じる相当の理由があれば違法性は阻却されるとする最高裁判例を挙げ「報道機関が警察の公式発表を信頼するには相当の理由がある」とした。
教諭は精神疾患で休職中だったにもかかわらず4社が実名報道したのは違法だとも訴えていたが、判決は「教諭の精神疾患が刑事責任能力を疑わせる程度のものとは認められない」と判断した。
教諭の代理人は「記者が警察発表をすべて信用するなら、国民の知る権利はどうなるのか不安だ。実名報道で原告は教師としては再起不能になっている」とあらためて実名報道のあり方に疑問を呈した。教諭は控訴する方針。
琉球新報は女子生徒が特定されるおそれがあるなどの理由で、教諭の逮捕を匿名で報じた。
逮捕事件は記者クラブにFAXで流されていて、報道機関は独自の判断でチョイスしているというんので、信用毀損の事件で、被害者の店名を流布させたのは、警察・報道機関じゃろうという主張をしたことがあります。
大阪高裁H14.6.13
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり,これに対する答弁は,検察官S作成の答弁書に記載されたとおりであるから,これらを引用する。
論旨は,原判決は原判示第1の事実を認定した上,これが刑法233条の信用毀損罪及び業務妨害罪に該るとしているが,被告人が警察官であるAに対しコンビニエンスストアで購入した紙パック入りオレンジジュースに異物が混入していた旨の虚偽の申告をすることは,虚偽の風説を「流布」したことにはならないし,被告人のこのような行為によって同店の「借用」が毀損されたわけでもなく,また,被告人には同店の信用を毀損する故意もなかったのであるから,被告人には信用毀損罪は成立せず,仮に,被告人の行為が同罪及び業務妨害罪に該当するとしても,上記事実については,軽犯罪法1条16号の虚構申告罪を適用すべきであるから,原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認ないしは法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,記録を調査しても,原判決がその挙示する証拠を総合して原判示第1の事実を認定し,これが刑法233条の信用毀損罪及び業務妨害罪の構成要件に該当するとして同条の適用を認めたのは正当である。
以下,所論に即して検討する。
1 「流布」について
所論は,刑法233条の「流布」とは,不特定または多数人に虚偽の事実を伝播させることをいうところ,本件では,Aという特定人かつ1人の者に告げたものであるから,「流布」には該当しない旨主張する。確かに,同条の「流布」の意義は所論指摘のとおりであるけれども,特定少数人に対して虚偽の事実を告知した場合であっても,その着から順次その事実が不特定多数人に伝播される可能性があり,そのことを認識している限り,その者の人数の如何を問わず,同条の流布にあたると解すべきであるから,これと見解を異にする所論は採用できない。なお,所論は,このような場合にまで「流布」にあたると認めると,その意義が際限なく拡大され,罪刑法定主義に反すると主張するが,虚偽の事実の告知を受けた特定少数人からの伝播可能性については,単に伝播の抽象的な恐れがあるというのではなく,告知した者と告知を受けた者の関係,告知を受けた者の地位や立場,告知の状況等を総合して具体的にその可能性の有無を判断すべきものであるから,「流布」の意義は限定されているということができ,所論は失当である。
また,所論は,原判決は被告人が申告した虚偽の事実が警察官Aから他の警察職員に伝わり,それが報道機関に伝播する可能性が存在することを前提にしているが,Aや他の警察職員には法律上守秘義務があり,原則として捜査に関する情報が報道機関に公開されることはないのであるから,およそこのような経路で伝播する可能性は客観的に存在しない旨主張する。確かに,Aや他の警察職員には地方公務員法や刑事訴訟法等において守秘義務が課せられていることは所論が指摘するとおりである。しかしながら,警察は,個人の生命,身体及び財産の保護に任じ,犯罪の予防等に当たることをもってその責務としている(警察法2条1項)のであるから,被疑者の犯罪にかかる事実であっても,その犯罪の罪質,態様,結果,社会的影響,公表される事実の内容とその方法等に照らし,これを公表することが職責上許される場合があると解するのが相当である。これを本件についてみると,被告人が申告した事実は,上記のとおり,コンビニエンスストアで購入した紙パック入りオレンジジュースに異物が混入していたというものであるところ,仮にこれが真実であったとするならば,公衆の生命,身体に危険を生じかねない重大事犯で,その犯行態様は不特定の者を無差別に狙ったものである上,被告人の検察官調書によれば,本件当時,飲食物に異物を混入するという被告人が告げた虚偽の内容と同様の事犯が現実に全国各地で多発していたことが認められるのであって,これらの事情に照らすと,Aから被告人の申告内容を伝えられた警察職員が,事件発生の日時,場所,被害者の氏名や被害状況,飲物の内容及びその鑑識結果はもとより,その飲物の購入場所等の情報をも報道機関に公表することは,類似の犯罪の再発を予防し,その被害を未然に防ぐため公衆に注意喚起する措置として許容されるものというべきであるから,所論は採用できない。
更に,所論は,本件において報道機関の情報入手ルート等に関する証拠がなく,被告人のAに対する虚偽の申告と報道機関からの報道との間の因果関係が明らかでない上,そもそも報道機関は警察の広報機関ではなく,独自の判断で報道しているのであるから,被告人の上記申告と報道機関の発表との因果関係をおよそ認めることはできない旨主張する。しかしながら,司法警察員作成の報告書によって認められる新聞記事の内容と,司法警察員作成の報告書によって認められる警察による報道機関への発表内容に照らすと,上記新聞記事の内容が警察による報道機関への発表内容に基づくものであることは明らかであって,その因果関係を認めることができる。そして,報道機関が警察の広報機関ではなく,独自の判断で報道していることは所論が指摘するとおりであるが,上記のような罪質,態様,本件当時の社会状況等に照らすと,報道機関が警察発表に基づき上記事件を報道することは当然考えられるから,所論が指摘する報道機関の立場をもって,上記因果関係を認めることの妨げにはならないというべきであり,所論は採用できない。