児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

親告罪、見直しできぬか

 児童買春罪は、そういう理由で非親告罪になっています。
 たとえば11歳を児童買春すると、実体法上は、強姦との観念的競合ですが、起訴前に示談すると強姦罪は落ちて、児童買春罪だけで起訴されます。結局、被害者は尋問の危険にさらされますが、それはやむを得ないという立法判断です。
 

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20080305ddm004070012000c.html
強姦罪親告罪である理由は、加害者に対する被害者の処罰意思を国家の刑罰権より優先しているからだ。被害者の意思を無視して国家が捜査を進めることが、周囲の目や捜査協力、心の傷に悩む被害者をさらに傷つけかねないという理屈だが、今回の事件は「処罰意思優先」の論理が逆に少女を追い込み、司法による真相解明の道を閉ざす結果になったと言えないか。ジレンマはあるが、これを機に親告罪のあり方を見直すことはできないだろうか。

 青少年条例違反は親告罪じゃないので、適用可能です。

沖縄県青少年保護育成条例
http://www3.pref.okinawa.jp/site/view/contview.jsp?cateid=83&id=7904&page=1
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第17条の2 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
(罰則)
第22条 第17条の2第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

 こういう判例があります。

名古屋高裁金沢支部H14.3.28
1 所論は,原判示各行為は,被害者らの真摯な承諾なく抗拒不能の状態でされたもので,強姦,準強姦,強制わいせつ,準強制わいせつ罪に当たるとし,いずれについても被害者らの告訴はなく,親告罪たる強姦罪等の一部起訴は許されないから,本件起訴は違法であって訴訟手続の法令違反があるという(控訴理由第23)。
 しかしながら,児童買春罪や児童買春処罰法7条2項の児童ポルノ製造罪(以下,単に「児童ポルノ製造罪」という。)は親告罪ではなく,しかも強姦罪等とは構成要件を異にしていて,児童買春罪等が強姦罪等と不可分の一体をなすとはいえず,原判示第2ないし第4が強姦罪等の一部起訴であるとはいえないから,告訴欠如の如何を論ずるまでもなく(最高裁昭和28年12月16日大法廷判決・刑集7巻12号2550貢参照),所論は失当である。

阪高裁H14.9.10
②被告人は,被害児童の撮影を自己の性欲を満たすために行ったものであり,しかも,被害児童は 歳であるから,暴行脅迫がなくとも,これを裸にして撮影した被告人の行為は強制わいせつの実行行為にあたるところ,強制わいせつ罪は親告罪であり,公訴を提起するには,被害児重ないしその保護者の告訴が必要であるが,本件においては被害児童の保護者は犯人を告訴しない旨供述しているのであるから,強制わいせつ罪より法定刑の軽い児童ポルノ製造罪で起訴して処罰することは,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨に反し許されないのに,被害児童の保護者の告訴のないまま起訴した点において,原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,・・・というものである。しかしながら,・・・②についは,児童ポルノ製造罪の保護法益は上記第1記載のとおりであり, この処罰の目的は,個人の性的自由を保護法益とする強制わいせつ罪のそれとは異なることは明らかであり,児童ポルノ製造罪が強制わいせつ罪の構成要件の一部とはいえず,また,児童ポルノ製造罪が親告罪とされなかったのは,親告罪とすると,加害者やその背後の組織からの報復を恐れて告訴できなかったり,あるいは保護者に対する金銭的な示談で告訴を取り下げさせたりすることが通常の性犯罪以上に予想され,所期の目的が達成ができないためであり,従って,本件において,被害児童の保護者に被告人を告訴する意思がないのに本件公訴を提起したことは,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨を潜脱することにはならない。

 青少年条例違反で立件しないのは、この辺の理由じゃないか?
 なぜか殺人と強姦に限定されてます。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/rem_01.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/rem_keiji_01.html
刑事裁判手続に係る日米合同委員会合意(平成7年10月)
一  合衆国は、殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的な考慮を払う。合衆国は、日本国が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合について同国が合同委員会において提示することがある特別の見解を十分に考慮する。
二  日本国は、同国が一にいう特定の場合に重大な関心を有するときは、拘禁の移転についての要請を合同委員会において提起する。
英文)
The United States will give sympathetic consideration to any request for the transfer of custody prior to indictment of the accused which may be made by Japan in specific cases of heinous crimes of murder or rape. The United States will take full account of any special views Japan may put forward in the Joint Committee as to other specific cases it believes should be considered.

169 - 衆 - 安全保障委員会 - 2号 平成20年02月22日

○下地委員 逮捕状の内容が強姦の場合を大臣とはお話ししている。地位協定が対象になるのは、殺人か強姦か、二つしかありませんから、その他の傷害だったら、私はこの場所で言いません。私が、逮捕状をとって警察庁が言ってというのは、強姦であった場合というふうなことを申し上げているので、そのことは私も重々知っておりますから、それはぜひそれでやっていただきたい。
 それと、再発防止策について今論議して、私は、非常に外務大臣は前向きにいろいろなことをやられているというふうに評価をさせていただきたい。
 渡辺議員と私たちも行きましたけれども、今、地位協定の根本改定は難しいと言いながらも、残りの教育の問題に関しても、そして基地の外にいらっしゃる方々に関しても、それとパトロールの件にしても、今検討なされているということでありますから、ぜひ検討して実行していただきたい。
 あと、私たちが要望しました運用の改善の中の項目をあと三つ挙げてくれと。今回の場合を含めて未成年者の強制わいせつの件、そしてもう一つは、危険運転の致死傷罪の件と放火を新たに運用改善で早急に入れるように日米で協議をしてもらいたいというようなことについて、先ほど触れられておりませんでしたけれども、これは何とか協議をするということはできないでしょうか。

○高村国務大臣 そういう要望を直接受けまして私なりにいろいろ考えてみたんですが、今の日米合同委員会合意は、殺人または強姦という凶悪な犯罪の特定の場合についての規定のほか、合衆国は、日本国が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合について、日本国が合同委員会において提示することがある特別の見解を十分に考慮する、こういうふうに規定しているわけであります。
 必ずしもこういう三つを挙げなくとも、こういう場合に我が国が、これがまさに考慮されると信ずるべき場合であれば、これは向こう側の考慮を求めることができるようになっていますので、この三つの犯罪だけを今加えてやるべきかどうかというのは、なお検討が必要だ、こういうふうに思っています。
○下地委員 項目の中に二つ、殺人と強姦という項目を入れていますから、新たに項目を入れることは、今の大臣のお話だったら、考慮するということを書いて、殺人も強姦も書かなくてもできるんですよ。しかし私は、事件、事故の抑止力という意味では、殺人、強姦、放火、今の未成年者に対する問題だとか、危険運転とかを入れることが非常に抑止力につながるんじゃないか、文面を、項目をちゃんとつくることがいいのではないかということです。
 あとは、アメリカ側の配慮という問題は変わらないわけですから、これを入れると、非常にまた教育の中で、こういうふうな問題が新たに加えられましたとなると、やはり沖縄で今駐留している兵隊の皆さんにもある意味の抑止力になるんじゃないかと私は思うので、そう言わずにこの部分を一回前向きに検討してみる、これはアメリカももう検討してもいい事項だと思いますよ。
 昔、何年前ですか、上間悠希さんの、飲酒運転で、スピード違反で、ひき逃げでというケースがありましたけれども、あのときの私たちの状況からしても、ぜひこの三つだけは新たに入れていただければ、僕はそれが事件、事故の大きな抑止力になるというふうに思っていますので、もう一回大臣のお考えを聞かせてください
○高村国務大臣 私の弁護士としての経験からいうと、この三つの犯罪を入れたからそれが抑止力になるというふうには余り考えないんですが、せっかく委員の御提案でありますから、さらに考えてみたいと思います。
 九五年に、こういう運用改善のときも、アメリカと日本側の本当にぎりぎりのせめぎ合いがありまして、アメリカというのは日本にだけ駐留しているわけじゃなくて、いろいろな国に軍隊を派遣しているわけでありますが、世界に全くない、日本だけの特別なことを獲得しているわけで、さらにここというのはなかなか困難だと思います。それは御理解をいただいた上で、私もちょっと考えてみたいと思います。
○下地委員 弁護士は総理大臣になれませんからね。政治家が総理大臣になりますから、政治家の視点で決着をつけて外交をやってもらいたいなというふうに思います。