児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

通帳詐欺の論点

 詐欺罪もやってます。

 違法な目的を秘して口座を開設したことが、銀行に対する詐欺罪(通帳・カード)を構成するか?
 1件上告しました。
 犯罪収益と知らずに運用して利益を得ていた銀行の「財産的損害」とはなんでしょう?
 だいたい、ネットバンクをみれば通帳なんて必ずしも必要ないのに。



 追記1128
 前例としては、福岡地裁H16.6.23、東京高裁H16.11.16があって、文献としては

  • 松並孝二「他人に譲渡する意図を秘して自己名義の預金口座を開設し、金融機関から預金通帳等の交付を受けた行為に詐欺罪を適用した事例」研修674
  • 辻裕教「他人に譲渡する意図を秘し、自ら利用するように装って、預金口座を開設し、銀行から自己名義の預金通帳及びキャッシュカードの交付を受けた行為について詐欺罪の成立を認めた事例」警察学論集第58巻第9号
  • 実例捜査セミナー 自己名義預金口座開設に伴う通帳等詐欺事犯の捜査について / 日野 浩一郎 捜査研究. 53(11) (通号 639) [2004.11]

がある。

阪高裁H18.9.21
第5控訴趣意中,詐欺罪に関する法令の解釈適用の誤りの主張について(控訴理由第8)
論旨は,原判決は,その判示第5の詐欺につき,被告人がYと共謀の上,Yが開設した口座を自ら使用する意思はなく,かつ,交付を受けた預金通帳及びキャッシュカード(以下「通帳等」という。)を被告人に直ちに譲渡する意図を秘して,金融機関から自己名義の通帳等をだまし取った事実を認定し,本件詐欺の事実につき被告人を有罪としたが,口座開設時の金融機関の関心は,当該口座開設者が通帳等を自己の用途に使用するか,第三者に譲渡する意図であるかという点にはなく,また,通常そのような確認は行われていないから,口座開設者においてこれを告げる義務もなく,たとえその目的を秘していたとしても詐欺罪の欺同行為には当たらない,それにもかかわらず,上記事実につき詐欺罪の適用を認めた原判決には,刑法246条に関する法令の解釈適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,通帳等を預金口座名義人以外の第三者に貸与ないし譲渡してはならないことは通常預金規定上明記されている上,近時マネーローンダリングを防止する観点から,預金口座の名義人とその実際の利用者との一致が求められ,口座開設時における本人確認の徹底が図られていることにも照らせば,名義人のみが預金口座及びその通帳等を利用し,それ以外の者が利用しないことは,金融機関にとって極めて重要な事項といえる。そうすると,もし,通帳等を他人に譲渡する目的で預金開設を申し込んだことが当初から判明していれば,金融機関として当該預金口座の開設に応じないのは当然であって,このような目的を秘し,自ら利用するかのように装って口座開設及び通帳等の交付を申し込む行為が,金融機関に対する欺同行為に当たることは明らかである。
なお,所論は,本件が不作為による詐欺に当たることを前提に,口座開設者において第三者に譲渡する意図を告知する義務はないから,これを秘していたとしても詐欺罪の欺岡行為には当たらない,と主張する。しかし,本件において,Yは,前記のとおり真意と明らかに矛盾する外観を積極的に装ったものであって,作為による詐欺と評価すべきものであるから,所論はその前提を欠くというべきである。