児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項製造罪(姿態とらせて製造)の「姿態をとらせて」は実行行為か・第二次製造(複製)は3項製造罪か・第一次製造(撮影)と第二次製造(複製)の関係

なんとか辻褄をあわせたいとおもうんですけど、合わないですよね。
 立法ミスと言ってもいいんじゃないですかね。
 裁判所は立法者説に従わずに、思い思いの解釈をしていますが、文言を離れているので、何でもありという感じです。

H16.6.18→改正法公布→実行行為説→第二次製造は3項製造罪ではない→第二次製造不可罰
H16.8.1→島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08→実行行為説→第二次製造は3項製造罪ではない→第二次製造不可罰
H16.8.1→島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」捜査研究0408→実行行為説→第二次製造は3項製造罪ではない→第二次製造不可罰
H16.8.1→衆議院法制局第二部第一課 井川良「児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」法令解説資料総覧(第一法規、2004)→実行行為説→第二次製造は3項製造罪ではない→第二次製造不可罰
H16.10.1→島戸純「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」現代刑事法04.10→実行行為説→第二次製造は3項製造罪ではない→第二次製造不可罰
H17.3.1→「よくわかる改正児童買春ポルノ法」→実行行為説→第二次製造は3項製造罪ではない→第二次製造不可罰
H17.6.9→名古屋高裁金沢支部→実行行為ではない→第二次製造は3項製造罪である→第一次製造と第二次製造は包括一罪
H17.12.26→東京高裁→実行行為説→
H18.2.20→最高裁→実行行為ではない→第二次製造は3項製造罪である→第一次製造と第二次製造は包括一罪
H18.6.1→判例タイムズ判例タイムズ1206号→実行行為ではない→第二次製造は3項製造罪である→第一次製造と第二次製造は包括一罪
H19.3.8→札幌高裁→実行行為説→第一次製造と第二次製造は包括一罪
H19.9.4→札幌高裁→実行行為説→第二次製造は3項製造罪である→第一次製造と第二次製造は包括一罪
H19.11.21→判例時報第1980号→実行行為ではない(付随的状況説)→第二次製造は3項製造罪である→第一次製造と第二次製造は包括一罪
H19.12.4→大阪高裁(原判決)→実行行為説→第二次製造は一個の3項製造罪の一部である→第一次製造と第二次製造は単純一罪

 姿態とらせて撮影された後、数段階の複製を経た場合について、最高裁H18.2.20は最終的な媒体についても3項製造罪(姿態とらせて製造)が成立すると判示したものの、理由が全く明らかにされておらず、下級審ではますます解釈が混乱しているようである。
 最高裁H18.2.20について判決に理由を付けずに後から雑誌で調査官が重ねて理由を説明しているところをみると、最高裁H18.2.20の理由付けは疑わしいものである。結論も疑わせる。
 特に最近の高裁判決をみると、法文を見る限り、「姿態とらせて」は実行行為と介さざるを得ないが、一方で最高裁H18.2.20が示した結論には逆らえないので、理由付けに難儀して右往左往しているようである。

h18.6.1の判例タイムスの匿名解説で、「『姿態をとらせ』は実行行為ではない」と解説したにもかかわらず、札幌高裁は実行行為説を連発し、h19.11.21の判例時報顕名解説で、重ねて「『姿態をとらせ』は実行行為ではない」と解説しても、高裁はまだ、実行行為説を採るのである。
 また、大阪高裁が判例との辻褄を合わせようとして、児童ポルノである携帯電話をわざと看過して単純一罪説(初登場である!)を採ったことも明かである。