児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3項製造罪(姿態とらせて製造)によるかすがい現象

  1. 同一被害児童に対する数回の3項製造罪(姿態とらせて製造)は包括一罪
  2. 同一被害児童(13歳未満)に対する数回の姦淫・わいせつ行為は併合罪

ですよね。ここまではいいとして、

  1. 姦淫・わいせつ行為とその際の撮影行為は観念的競合
  2. 同一被害児童(13歳未満)に対する数回の姦淫・わいせつ行為+撮影行為は包括一罪

ですか?
 1軒に住居侵入して数人に姦淫・わいせつ行為したのと、同じだと言えば同じですけど。
 そもそも奥村は次々複製された場合の訴因特定を問題にしていて、製造罪を包括一罪にすべきだと主張したことはないのですが、判例上、包括一罪ということになっちゃっています。

阪高裁H14.9.10
児童ポルノの頒布,販売目的等による製造等を処罰することにした趣旨からみて,新たに児童ポルノを作り出すものと評価できる行為はいずれも製造に当たると解するのが相当であるところ,これを写真についてみてみると,上記のとおり児童ポルノ製造罪は撮影によって既遂となるが,現像,焼付けもまたそれぞれ製造に当たるものと解され,各段階で頒布,販売等の目的でこれを行った者には児童ポルノ製造罪の適用があり,ただ,先の行為を行った者が犯意を継続して彼の行為を行った場合には包括一罪となるものと解される。

東京高裁H15.6.4
?「製造」とは,撮影,編集等により新たに児童ポルノを作り出すことをいうところ,電子データも児童ポルノであり,MOに蔵置されたデータは,撮影されてコンパクトフラッシュカードにいったん蔵置されたデータを,ハードディスクを経由して無編集でコピーしたものであるから,MOの作成は不可罰的事後行為ないし所持罪を構成するものにすぎず,製造罪(法7条2項)には当たらない(控訴理由第9),・・・という。
・・・
?の点は,全く同一のデータを異なる媒体にコピーした場合であっても,その媒体は新たな取引の客体となり得るのであって,「製造」というを妨げない。デジタルカメラで撮影し,コンパクトフラッシュカードにその映像を蔵置した行為も当然製造に当たるところ,犯意を継続させてMOにそのデータを転送すれば,両者が包括一罪として評価されることになるが,そうであるとしても,後のMOの作成行為が不可罰となるわけではない。

札幌高裁H19.9.4
そこで、検討するに、児童ポルノ法7条3項は、「姿態をとらせ、これを記録媒体その他の物に描写することにより、児童ポルノを製造すること」を処罰しているのであって、「姿態をとらせ」てから「その姿態を描写する」までの間の経過については、何ら制限を加えていないから、「姿態をとらせ」てから姿態が描写された児童ポルノが作成されるまでの間に、複数の児童ポルノが製造されることを排除していないと解され、また、児童ポルノ法の「製造」とは、児童ポルノを作成することをいい、児童ポルノは、一定の操作を行うことによって児童の姿態を視覚により認識することができれば足りるから、例えば、フイルムカメラによる写真撮影の場合には、?撮影、?フイルムの現像、?フイルムのプリント・焼付けのそれぞれが児童ポルノの製造に当たると解される。このように、児童ポルノの製造においては、「撮影して写真を作製する」といった、社会通念的に一つの固まりと見られそうな行為であっても、その過程で児童ポルノに当たる物が順次製造されるごとに製造行為が観念でき、当初から意図されていた物が製造されるまでに複数の製造行為が連なっていると見られる場合が少なくない。そして、同一の者が犯意を継続してこれらの行為を行ったような場合には、その全体として包括一罪となると解するのが相当である。

東京高裁H17.12.26
被告人の判示別紙一覧表番号1ないし6の各所為は,「包括して」児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,1項,2条3項1号ないし3号に該当する