児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害者の精神的苦痛

 強姦・強制わいせつは件数が多いので、公開されている裁判例も豊富です。量刑理由からプラスの要素・マイナス要素に分けて抽出すると、情状立証のポイントが見えてきます。
 最高裁webの性犯罪15件くらいの量刑理由から「精神的」で検索した結果。必ず、言及されているということです。ptsdが致傷と評価される恐れがあるし、示談金ではどうしようもないところです。
 福祉犯では被害が表面化しないのと対照的だと思いました。

 (4) このような被告人の行為によって,本件各犯行の被害者は,耐え難い肉体的・精神的苦痛を被り,その後の人生を一変させられたのであるから,生じた結果は誠に重大である。
 (イ) しかも,既にみたとおり,被害者丙は,被害を受けている際に,アルコールの影響により身体の自由が奪われる中,「何すんのよ」,「やめて,嫌だ」,「こんなのおかしいよ」などと精一杯の拒絶の態度を示していたのに,被告人らから,これを全く無視されたばかりか,《中略》などと同女を愚弄するような言葉を聞かされながら,ただひたすら被告人らの度重なる陵辱行為に耐えていたというのであり,その間に同女が受けた肉体的,精神的苦痛は誠に甚大である。
 (エ) しかも,被害者乙は,本件犯行に伴って,《中略》肉体的苦痛が多大であることはもとより,その被った精神的な衝撃や苦痛,恥辱感や喪失感・絶望感が余りにも重大かつ深刻であることは,いうまでもなく,同女は,現在もなお,その精神的な痛手から立ち直ることが相当に困難な状況にあることがうかがわれる。
 (エ) そのため,被害者丙は,被害直後に警察に本件被害を申告したものであるが,事件後の心境として,しばらくは人と接するのが怖くなった,その後,友人の支えを受けてどん底からは次第に立ち直っていったものの,平成15年10月ころに,人がたくさんいるような場所にいると,深刻な精神的ストレス等に基づき一時的に呼吸をすることが困難になるという過換気症候群を発症し,1か月くらいは,常にビニール袋を持ち歩く生活を余儀なくされ,その後も,時折その症状に悩まされていると述べている。
 (オ) そして,このような被害者乙の様子を目の当たりにしながら具体的な手助けを何もしてやれない両親の心労や心痛には,察するに余りあるものがあり,本件が,被害者乙のみならず,その家族に対しても重大な精神的衝撃及び苦痛を与えたこともまた明らかである。
 6 なお,被告人は,当公判廷において,被害者には申し訳ない気持ちでいっぱいですなどと繰り返し述べる一方で,被害者の処罰感情については,厳しすぎるところがあり,捜査官が創作又は誘導して作ったものだと思うと述べ,判示第17の犯行については,被害者と合意した上での性交だったと述べるなど,自ら犯した数々の犯罪行為の重大性と,その結果生じた数々の回復困難な損害,特に,身体的,精神的に深く傷付いた各被害者及びその家族の強い怒りや悲しみに,正面から向き合い,これを十分に認識して,真摯に受けとめているのか,やや疑問が残るといわざるを得ない。
 b のみならず,被告人は,犯行直後に,被害者丙から,判示の居酒屋の店内で涙ながらに抗議されても,これを無視するような態度をとり,同女に深刻な精神的ショックを与えているほか,その帰り道にも,共犯者らと「あれは合意の上だった」などと言い訳を述べ合うなどしているのである。
 オ 以上のように,各被害女性は,被告人らの蛮行によって,大学生活への期待を無惨にも踏みにじられたばかりか,陵辱の限りを尽くされて,その人生が一夜にして暗転させられたものであり,精神的に重大かつ深刻な打撃を受けた結果,それぞれに,既にみたような後遺症や精神的な苦痛に苛まれるに至っている。
 その際の心境について,同女は,《中略》目の前が真っ暗になるとともに,私の意識を失わせて,被告人らがこのように野獣のような行いをしていたかと思うと,身震いがし,とても人間のすることとは思えなかった,姉にだけ被害の事実を打ち明けて,2人で抱き合って泣き続けたなどと述べており,同女が受けた恥辱感ないし精神的衝撃は極めて大きなものであったことがうかがわれる。
 被害者は,何らの落ち度もないのに突如判示の被害を受けたもので,本件犯行後には精神的に不安定になり,現在もその症状に苦しんでいることがうかがえるのであって,被告人の厳重処罰を望んでいるのも当然であるが,被告人側からは何らの慰謝の措置も講じられていない。
 被害者らの多くは,被害後,夜道を1人で歩くことができず,犯行車両と同種類の車を見かけるとどうしようもない恐怖を感じたり,部屋に1人でいることができなくなったりしており,さらに,精神的に不調をきたして電車に飛び込みそうになった被害者や,勤めていた会社を辞めて実家に戻ることを余儀なくされた被害者,被告人から何とか逃れようと車両から飛び降りて頭部に重傷を負い,一命はとりとめたものの,嗅覚を永久に失うという後遺障害を負うこととなった被害者がいるなど,被告人の行為によって,深い傷を負わされ,その将来が大きく歪められる結果が生じている。
被告人らは,いずれも被害者の人格や精神的肉体的苦痛など一顧だにせず,自分達の歪んだ性欲や金銭欲を一方的に満足させることのみを考え,本件のごとき悪辣非道の犯行を繰り返していたもので,その劣悪な犯行動機に酌量の余地は全くない。
),路上で突然被告人らに拉致された挙げ句,各被告人から次々と強姦されたりするという極めて屈辱的で,恐怖に満ちたおぞましい被害に遭って,著しい精神的,肉体的苦痛を被ったほか,うち4名の被害者は被害の際に,外陰部腫脹等の傷害をも負わされている。
」「この二人の思い,関係のない被告人にナイフで刺される怖さ,痛さ,意識がなくなっていくつらさを分かって欲しい」などと述べ,その母親は,精神的負担等によって法廷での。
さらに,同女は,悩んだ挙げ句,同年夏ころ,本件被害を母親には打ち明けたものの,相当なショックを受けている母の姿を見て申し訳なく思うとともに,父親に対しては,心底傷つくと思われるので,被害事実を絶対に話すことができないと述べているのであって,同女が本件被害による精神的なダメージから現在もなお苦しめられ続けていることは明らかである。
そして,本件が被害児童らの健やかな成長を願っていた保護者らに与えた精神的衝撃も大きく,本件後,被害児童の安全を図るため,保護者らが登下校に付き添ったりするなど,相当な負担を余儀なくされた家庭もあり,本件が被害児童本人ばかりでなく,その保護者らに及ぼした影響も看過することができない。
その他の犯行においても,被害者らの肉体的・精神的苦痛は甚大であったと考えられる上,幼い被害者らの心に刻み付けられた傷がその後の人生に深刻な影響を及ぼすのではないかとの危惧も大きく,現に,一人でいることを怖がるようになったり,男性に恐怖感を抱くようになるなど様々な後遺症に苦しんでいる被害者もいる。
また,被害を知ったときに両親が受ける苦しみ,悲しみのことを考えると,とても打ち明けられないなどとして,生涯,被害のことは両親には言わないつもりであると述べているのであり,同女が現在もなお抱えている精神的苦痛や苦悩,更には,自己の最も深刻な悩みを両親にも打ち明けられないことからくる葛藤を考えると,本件犯行が同女に与えた打撃は甚大というべきである。
以上によれば,被告人の刑事責任は重大であって,被告人が,当公判廷において,自分の身勝手な思いや行動から罪のない人に肉体的精神的苦痛を与えて申し訳ない,被害者に償いたい旨述べるなど本件について反省の情を示していること,将来的には被害弁償をしたいとの意思を有していること,いずれの犯行も計画的なものではないこと,判示第2の強盗致傷事件については,被害額が多額ではなく,被害品は被害者に還付されていること,判示第2の犯行により自衛隊を懲戒免職になり,一定の社会的制裁を受けていること,被告人の父親が今後の監督を誓約していること,被告人にはこれまで前科がないことなど,被告人のために酌むべき事情を最大限考慮しても,被告人の責任の重大性からすれば,主文掲記の刑は免れないと判断した。
現場付近を通行していて突然被告人に襲われ,強烈な暴行脅迫を受けて姦淫され,あるいは姦淫されそうになった被害者らの肉体的苦痛はもちろん,その精神的苦痛は計り知れず,その恐怖感や屈辱感は誠に大きいものであったと考えられる。
他方で,姦淫行為は未遂に終わっていること,被告人は,当公判廷において,被害者に対して精神的苦痛を与えて申し訳ない,今後は被害者宅の向かい側にある実家には戻らずに姉宅で生活し,酒も断ち,今後二度と同様の犯行を行わない旨述べるなど本件について反省の情を示していること,将来的な弁償の意思は有していること,前刑出所後本件までは真面目に稼働し,フォークリフト等の資格も取得するなど被告人なりに更生の途を歩む努力をしてきたこと,被告人の今後を心配し,被告人に励ましの手紙を送付している母親や姉妹がいることなど被告人にとって有利な事情も認められる。
被害者の中には,それまで通っていた学校を辞めざるをえない状態に陥ってしまった者もあり,各被害者は,いずれも現在もなお恐怖や苦痛に苛まれながらの生活をしているのであって,本件は各被害者のその後の生活に大きな影響を与えており,とりわけ,被害当時年少者であった被害者らの将来にわたる精神的負担は極めて強く懸念されるところである。
被害者は,一連の暴行により全治約3週間を要する性器出血等の傷害を負った上,「暴れると殺される」などと考えて被告人の暴力等に必死に耐えたこと,事件のことを思い出すと何度も死にたくなったことなどを供述しており,身体的苦痛に加え,その被った精神的な被害も計り知れない。
被害者は,当夜知り合った被告人から夜道で何度も話しかけられてもこれに応じようとはしていなかったにもかかわらず,不意に襲われ,前記のような著しく人格を踏みにじられる屈辱的な被害に遭遇し,救助も求められない状況下で,体格においてはるかに上回り腕力もある被告人にいかなる酷い目に遭わされるかもしれないとの深刻な恐怖を味わわされており,本件直後は母親に添い寝を求め,眠りについてからもしばしばうなされたことがあり,それ以降も夜一人でいるととても怖い気持ちになることがあると述べるなど,その精神的打撃にも大きなものが認められ,被害当時16歳という年齢を考慮すると,将来にわたって心に傷が残ることも懸念され,今なお外出する際は最寄りの駅まで母親に送り迎えをしてもらうなど,その生活にも実際に影響が出ていることに照らせば,本件の結果は到底軽視できない。
被害者はいずれも年若いのに,強姦された挙げ句に金品までも奪われたもので,その精神的肉体的苦痛は大きく,被害感情に厳しいものがあるのも当然である。
欲望の赴くままに被害者らの人格を蹂躙し続けた,その悪質な犯行態様,被害者を自動車で追尾して人通りの少ない路上で待ち伏せ,あるいは宅配業者を装って住居に侵入するなどの高い計画性と犯行の巧妙さ,同種事案に比しても抜きん出た犯行回数,そして何より,多くの被害者に与えた耐え難い肉体的・精神的苦痛と,一人一人のかけがえのない将来に及ぼした重大な影響にかんがみれば,上記の被告人に有利な情状を最大限考慮しても,なお,被告人に対しては,自ら犯した犯罪行為に相応の責任を負わせるべく,無期懲役をもって臨むほかはない。